中央社会保険医療協議会では医療技術の保険収載の可否などの判断基準として導入を検討している費用対効果評価について、質調整生存年(Quality Adjusted Life Years:以下、OALY)を効果指標の1つとして用いることを検討している。医療技術にはリハビリテーション(以下、リハ)が含まれるが、現段階ではリハにおける費用対効果の報告は数少ない。また、海外では効用値尺度について測定特性の検証が盛んに行われているが、本邦においては効用値尺度の測定特性については明らかにされておらず、効用値尺度を用いてOALYを算出する際にはその尺度の特性を踏まえた上での尺度の使用が重要であると考えられる。本研究ではリハをうけている患者に対して効用値尺度の中でも、先行研究で識別力の最も高かったHealth Utilities Index Mark 3(以下、HUI3)について項目反応理論(Item Response Theory:以下、IRT)分析を行い、日本語版HUI3の測定特性を検証した。
対象者は全国6つの病院に入院している脳血管障害患者412名である。HUI3はGlobal score 0.05、視覚0.83、聴覚0.84、会話0.67、移動0.29、手指の使用0.55、感情0.65、認知0.49、疼痛0.76であり、移動、手指の使用、認知で低値を示した。IRT分析による識別力は、視覚0.99、聴覚1.36、会話2.37、移動2.89、手指の使用2.17、感情1.70、認知2.68、疼痛1.75であり、特に移動と認知で高値、視覚と聴覚で低値を示した。困難度については、視覚(-2.91~0.68)、聴覚(-1.94~-1.13)が低値を示し、移動(-0.40~1.45)については高値を示した。会話(-1.13~0.51)、疼痛(-2.03~0.98)に関してはやや低値、手指の使用(-1.06~1.28)、感情(-2.61~3.42)、認知(-0.89~1.21)についてはやや高値を示した。HUI3尺度全体の特性については、健康状態の広い範囲で識別カ・情報量が高く、特に健康状態がやや高い対象者で最も情報量が多かった。
脳血管障害患者におけるHUI3による評価は、健康状態の広い範囲で有用であり、特に健康状態が高い対象者で最も有用であることが分かった。その中でも脳血管障害患者で障害の出やすい、移動、手指の使用、認知の項目では特に識別力が高く、情報量が多く、HUI3での測定が有用であることが示唆された。
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