医療経済研究
Online ISSN : 2759-4017
Print ISSN : 1340-895X
21 巻, 3 号
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巻頭言
特別寄稿
  • 西村 周三
    2010 年21 巻3 号 p. 279-289
    発行日: 2010年
    公開日: 2025/01/29
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    As a memorial lecture of the retirement of Graduate School of Economics, Kyoto University, I gave an essay on the past experience of my lecture about Health economics and Social Security and presented my view on Social Security in Japan. During past 20 years, I taught health economics and social security based on the way which behavioral economics suggests, as well as the orthodox principle of neoclassical economics suggests. In this essay, I picked up several topics on designing social security system. My emphasis is placed on the difference of difficulty of predicting future long-term economic growth and predicting the degree of technological progress in health care. As a final remark of this essay, I proposed the necessity of the research of these topics to relate recent development of economics of happiness.

論文
  • -DPCによる包括支払制度導入前後の白内障手術の在院日数分析への応用-
    縄田 和満, 川渕 孝一
    2010 年21 巻3 号 p. 291-303
    発行日: 2010年
    公開日: 2025/01/29
    ジャーナル オープンアクセス

    2003年4月からDPC(Diagnosis Procedure Combination、診断群分類)による包括支払制度が、82の特定機能病院に対して導入され、2004年4月より、(導入を希望し一定の条件を満たす)一般病院に対して順次制度の施行が開始されている。米国等採用されている包括支払制度であるDRG/PPS(Diagnosis Related Group/Prospective Payment System、診断群別定額払い方式)と異なり、我が国のDPCによる包括支払制度は、一日当たりの定額制となっている。さらに、この制度は完全な包括支払制度ではなく、DPCによる包括評価部分と従来の出来高評価部分に分かれている。DPCによる包括評価部分は基本入院料、検査、画像診断、投薬、注射、処置(1,000点以内)、リハビリ等で使用した薬剤料のみであり、他は、従来の出来高評価部分となっている。また、包括評価部分に関しては、DPCコードごとに基準となる入院期間 I、入院期間 II、特定入院期間が定められている。一日当たりの支払点数は、入院期間が長くなるほど低くなるように定められている。DPCによる包括支払制度の導入は診療報酬支払における大改革であり、医療資源の有効活用のための将来の支払制度の改革において、その適正な評価および分析は必要不可欠である。
    本論文では、まず、病院間の在院日数の分析モデルを新たに提案した。このモデルは、トービットタイプのモデルでありCoxの比例ハザードモデル(proportional hazard model)などの既存のモデルを代替するもので、生存時間解析の問題一般に幅広く利用可能で既存のパッケージ・プログラムによって簡単に推定できるものである。次に、DPCによる包括支払制度導入前後の両方でデータが得られる5病院について、白内障手術における在院日数の変化の分析を行った。手術・処置等の違いの影響を除くため、片眼に白内障手術・眼内レンズ挿入術のみを行なった患者のデータを対象として分析を行った。患者数は2,533人である。この結果、制度導入以前の在院日数が短い病院では、制度導入後、在院日数の減少は認められなかった。一方、制度導入以前の在院日数が長い病院では、在院日数が短縮したことが認められた。この結果は、制度導入以前に在院日数が長い病院では在院日数を短縮しようとするインセンティブが働いたが、すでに短い病院では働かなかったとする仮説と整合的である。今後の制度の見直しにおいては、この点を考慮し、医療資源の有効な活用を図るための適正なインセンティブを与えるなどの制度の改善の重要性が示唆された。

  • 湯田 道生
    2010 年21 巻3 号 p. 305-325
    発行日: 2010年
    公開日: 2025/01/29
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    国民健康保険制度が抱える様々な構造的な問麗を解決するために、国保保険者の都道府県への再編・統合は、現在の医療保険制度改革における重要な政策課題の一つになっているが、この改革案は実態を理由として提案されたものであって、科学的な根拠によるものではない。加えて、近年、いわゆる「平成の大合併」により、市区町村国保保険者は、ある程度(強制的に)統合されたため、新たに再編や統合を行う必要はない保険者も存在するかもしれない。そうした背景を踏まえて、本稿では、国保における一人当たり運営費が最小になる最小効率規模(MES)を推計した。この分析は、これまで実態ベースでしか議論されてこなかった国保の統合・再編問題に対して、統計的なエビデンスを提供するものと位置づけられる。
    実証分析の結果、国保の一人当たり運営費には規模の経済性の存在が確認された。このことは、保険者の統合を行うことによって、この費用を削減できうることを示している。また、推定結果から計算されるMESと、2005年度末時点の被保険者数を、保険者ごとに比較した結果、平成の大合併がほとんど終了した後でも、約65%の保険者の被保険者規模はMES以下のままであった。具体的には、市区では約 9割、町村では約 6割の保険者において、被保険者数はMESを下回っていた。さらに、 MESと2005年度末時点の二次医療圏、及び都道府県の被保険者総数とを比較した結果、それがMESに満たない保険者は、前者では全市区町村保険者の約4%、後者では皆無であった。

  • 牧野 智一, 竹内 信仁, 渡辺 潤爾
    2010 年21 巻3 号 p. 327-339
    発行日: 2010年
    公開日: 2025/01/29
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    本論文の目的は、医療サービス供給からの社会的余剰を比較することにより、自治体合併後に自治体病院をどのように運営することが社会的に望ましいかを分析することである。本論文は、医療サービスを考慮したホテリングモデルを拡張し、自治体病院をどのように運営することが社会的に望ましいかを3つのケースに分け比較、検討をする。
    この分析により、以下の結果を得ることができる。第1に、社会的余剰の観点から見た場合、自治体合併後の社会的に望ましい自治体病院の運営は、住民の病気が治ることによる効用の大きさに依存して決まる。第2に、医療サービス供給の公的負担の観点から考えた場合、自治体合併後、2つの自治体病院を運営するときに、医療サービス供給の公的負担は最も少なくなる。

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