医療経済研究
Online ISSN : 2759-4017
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6 巻
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巻頭言
投稿論文
  • ―疾病及び症状を考慮した推定―
    井伊 雅子, 大日 康史
    1999 年6 巻 p. 5-17
    発行日: 1999/10/29
    公開日: 2025/01/29
    ジャーナル フリー

    国民生活基礎調査基本調査('86、'89、'92、'95)の個票を用いて、軽医療、つまり入院する程度ではないが、自覚症状がある場合の対処方法に関する意思決定を分析した。その際に、軽医療の範囲である疾病名で明確に定義し、慢性疾患あるいは重症の疾病を排除した。これによって、従来の研究よりもより正確に軽医療を定義することができる。その結果、医療サービス需要の価格弾力性は0.123~0.149、また、自覚症状別に行った推定でも若干の例外を除いて1以下である事が確認された。

  • -都市部に居住する中壮年男性を対象とした実証研究-
    山本 武志, 田村 誠, 山崎 喜比古
    1999 年6 巻 p. 19-36
    発行日: 1999/10/29
    公開日: 2025/01/29
    ジャーナル フリー

    近年の医療保障政策は、患者負担を増大させる政策をとっている。しかし、自己負担が患者の受療行動に与える影響について、わが国ではあまり検討されていない。本研究では、外来医療の利用における自己負担割合の影響について検討した。

    方法は、東京都在住の成人男子約700名を対象に調査を行い、外来医療の利用の有無と利用回数を、「1割負担群」と「3割負担群」で比較した。さらに、利用の有無・利用回数と収入との関係についても検討した。結果は以下に示す通りである。

    1. 1年間に外来医療を一度でも利用した割合が高かったのは、負担の軽い「1割負担群」であった。

    2. 1年間の利用回数では、2群間で差がみられなかった。

    3. 利用の有無・利用回数と収入の相関関係については、負担割合による違いはみられなかった。

    以上により、自己負担割合が外来医療の利用に与えている影響として、自己負担割合が直接関与する可能性と、交絡要因である可能性の両面から議論した。

  • -マーケティングの視点から-
    中村 真規子
    1999 年6 巻 p. 37-53
    発行日: 1999/10/29
    公開日: 2025/01/29
    ジャーナル フリー

    本稿は、骨髄移植治療に必要な骨髄を提供するドナー募集を担当する日米の骨髄バンクであるアメリカのNational Marrow Donor Programと日本の骨髄移植推進財団が、臓器を必要とする需要側である患者と供給側である臓器提供者とを結びつけるために行っている活動を比較検討するものである。

    まず、それぞれの組織形態を従来の経済学とマーケティング理論に依拠して整理する。そして、その二つの組織がどのような視点で、マーケティング活動、特にプロモーション活動を行っているかをキャンペーンポスターを中心に考察し、その違いを明確にする。その違いの中から今後の非営利組織のキャンペーン活動とりわけ日本におけるその課題を検討する。

  • -シミュレーション分析による薬価制度改革の予測と評価-
    姉川 知史
    1999 年6 巻 p. 55-75
    発行日: 1999/10/29
    公開日: 2025/01/29
    ジャーナル フリー

    この研究は日本の1980年から1997年の医薬品産業全体のデータを使用して、医薬品需要量の決定要因を推定した。需要量の薬価弾力性と市場販売価格弾力性を区別して推定し、医薬品需要量は市場販売価格に対して弾力的であると共に、さらに薬価に対する弾力性も-0.61であったことを示した。これは1980年以降の薬価低下政策が医薬品需要量を増加させるように作用して、政策担当者の意図に反した医薬品支出額増大のあったことを意昧する。さらに推定結果を利用してシミュレーションを行った結果、1992年以降の需要量減少が構造的であることが示され、同年に行われた薬価政策変更の影響の大きさが推定された。さらに1997年以来、議論されている薬価制度改革のもたらす経済的帰結を予測、評価した。そこでは、政策内容を「需要量の薬価弾力性」、「薬価低下率」、「市場販売価格低下率」の組合せによって表現し、薬価制度改革が2005年までの将来にわたって需要量、医薬品売上額、生産者余剰、薬価差益、薬価比率にどのような影響を与えるかについて定量的な予測を行った。この結果、政策の経済的帰結の予測と評価が可能となった。例えば薬価水準が需要量に影響を与えないような政策がとられた場合、市場価格の低下が需要量を増大させるが、生産者余剰、市場販売価格表示の売上額は停滞すること、他方、薬価表示の売上額は減少すること等が数値によって予測された。このとき薬剤費抑制という政策担当者の意図は実現されるが、製薬企業・卸業者の利益は停滞すること、市場販売価格が薬価を上回り、その差額が患者負担となる可能性が増大することなどが示された。

研究報告
  • -共通尺度による日米独医療費国際比較-
    田中 滋
    1999 年6 巻 p. 77-95
    発行日: 1999/10/29
    公開日: 2025/01/29
    ジャーナル フリー

    田中をチーフとする医療経済研究機構内の研究ティームは、一国全体の医療費について共通の分析概念を開発し、これを「国内総医療支出(Total Domestic Health Expenditures)」(TDHE)と名づけた。TDHEは、厚生省が調査・発表する国民医療費にあたる部分だけではなく、さまざまな医療関連サービス支出、第三者支払機関(保険者+政府の該当部門など)の運営費、および医療機関等に対する公的補助金を含んでおり、いわば「社会が医療のために国内で支出した総金額」と表せる。われわれは4年にわたって調査を継続すると共に、分析技法を発展させ、また国際比較にも取り組んた。共通の推計手順を経て求めたTDHE対GDP比の国際比較(1995)については、日本6.5%、アメリカ12.3%、ドイツ9.5%という数値が導かれた。

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