我が国は医療の現場へのIT機器の導入は先進的であったが、データの利活用は諸外国に比べて遅れていた。しかし、2006年の政府のIT新改革戦略移行、データベースの整備は急速に進みつつある。2005年に個人情報保護法が施行され、ヘルスデータの扱いと患者等のプライバシー保護に一定の方向性が示されたことも加速化の要因ではあったが、ITの進歩は早く、それに伴い、いわゆるビッグデータ利用への要求も高まっている。もちろんエビデンスに基づく医療や政策決定は重要であり、公益的利用は促進されるべきであるが、一方でプライバシー侵害に対する懸念も高まっている。このような背景の元、2016年に個人情報保護法が改正され、2017年5月末に実施された。プライバシー保護は強化されたが、一方でデータの二次利用の制限が強くなり、公益利用を促進するために次世代医療基盤法が制定された。このような現状を紹介するとともに、今後の課題について論じたい。
欠測値を除外したパネルデータを用いた既存研究において、精神的に不健康な者が家族介護に回答しなかった影響が見落とされていると思われる。本稿では、家族介護非回答者の特性を明らかにし、非回答の潜在的なバイアスを考察した。回答者の精神的健康状態が悪いことが非回答と関連しており、女性の非回答は継続する傾向がある。身体的健康状態が悪い者や服薬もしくは通院している者ほど家族介護の質問に回答するが、婚姻歴がない者や精神的健康状態が悪い者は、家族介護について回答しない。男性の非回答の決定的要因は悪い精神的健康状態である。男性の家族介護が精神的健康状態に与える影響は過小評価されているかもしれない。非回答者を含むパネルデータによる分析が今後の課題である。
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