医療経済研究
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最新号
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巻頭言
特別寄稿
  • 山本 隆一
    2025 年36 巻2 号 論文ID: 2024.08
    発行日: 2025/03/24
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル オープンアクセス
  • 白岩 健
    2025 年36 巻2 号 論文ID: 2024.10
    発行日: 2025/03/24
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:ローカルドラッグ(あるいはカントリードラッグ)は、日本国内でしか薬事承認・市場流通していない医薬 品を指す。一方のドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスは、海外で承認されている医薬品が国内で承認・流通しないこと の問題として、2000 年代前半より大きく取り上げられてきた。前者について医薬品が「開発され過ぎる」問題とす れば、後者は「開発されなさ過ぎる」問題である。本稿では、このような問題の現状について定量的に明らかにする ことを目的とする。
     方法:ローカルドラッグについては、日本で2017 年から2023 年に承認された医薬品を取り扱った。上記期間中 に、医薬品医療機器総合機構で承認された医薬品リストを作成し、米・欧での承認状況と紐付けた。ドラッグ・ラ グ、ドラッグ・ロスについては、FDA で新規化合物として2017 年から2023 年に承認された医薬品を対象とした。 これらの医薬品リストにIQVIA 社のMIDAS(Multinational Integrated Data Analysis System)データから抽出され た販売会社名、各国における上市日等を成分名ごとに付与して解析対象とした。対象は、独自に承認審査を行ってい る以下の10 カ国・地域とした。すなわち、欧州(ドイツで代表する)、イギリス、日本、スイス、カナダ、オースト ラリア、ニュージーランド、韓国、台湾、シンガポールである。
     結果:新規成分を含まない薬剤のうちローカルドラッグの割合は、全体で約4 割、内資に絞ると約6 割程度であっ た。開発は規模の小さい企業に集中している。新規有効成分含有製剤では全品目の約2 割、内資で約4 割が米・欧い ずれでも承認されていなかった。新規有効成分についても規模の小さい企業はよりローカルドラッグを生み出しやす い。再生医療等製品に目を転じると、医薬品よりもローカル製品が多かった。日本で初承認されても、全品目で約7 割が、内資に限れば約8 割が少なくとも米・欧いずれかの国では承認されていない。一方でドラッグ・ラグあるいは ロスについては、以下のような結果が得られた。日本におけるFDA 承認品目の上市割合は、欧州(ドイツ)やイギ リスには劣後するが、カナダやスイスと同程度であり、アジア・オセアニア諸国と比べればその割合はかなりの程度 で高い。現在問題とされている抗がん剤、オーファンドラッグ、新興企業開発品目においても傾向は大きく変わらな かった。日本の上市速度はカナダやスイスと同程度であり、アジア諸国と比べれば早期に多くの品目が承認されてい る。特に日本における抗がん剤の上市速度はドイツ・イギリスをのぞき最も早い。一方でオーファンドラッグについ ては、韓国を除き最も遅い傾向があった。
     考察:ローカルドラッグは、日本において一定の割合で存在している。また、今回検討を行った10 カ国・地域の うち、欧州(ドイツ)とイギリスを除けば、日本は最も医薬品アクセスが良好であることが示唆された。なお、ドイ ツは欧州でもっとも医薬品アクセスがよい国であることから、平均的な欧州諸国と比べれば、それらの国より日本は 医薬品アクセスがよい可能性もある。このような現状を踏まえて、どの程度の追加コストをかけ、どの程度までラグ やロスを解消するのか、その費用対効果も含めて検討していく必要がある。
研究論文
  • 沢田 拓哉
    2025 年36 巻2 号 論文ID: 2024.12
    発行日: 2025/03/24
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル オープンアクセス
     本稿は日本の医薬品市場について、広告が企業の売上高や営業利益、売上高当たりの利益率を増やす効果があるの かを検証する。医療用医薬品または一般用医薬品を生産する企業52 社の有価証券報告書のデータを用い、固定効果 モデルを用いて推定を行った。この結果、医薬品市場において広告支出を増やすことにより売上高と営業利益を増や すことができるが、広告の弾力性を見ると効果の大きさは小さいことが分かった。ここで広告の性質を踏まえ、医療 用医薬品と一般用医薬品を生産する企業のサブサンプルを用いて広告の効果を医薬品の種類ごとに推定した。このと き医療用医薬品を生産する企業について、売上高と営業利益に対して広告ストックは正で有意な結果となった。一 方、一般用医薬品を生産する企業の場合ではすべての被説明変数に対して広告ストックは正だが有意でない結果が確 認された。金額としては医薬品市場全体では広告支出を1 万円増やすことで売上高が9.26 万円、営業利益が3.92 万円増えることが分かった。
  • 加島 遼平, 高田 琢弘, 小林 秀行, 王 薈琳, 佐々木 毅, 高橋 正也
    2025 年36 巻2 号 論文ID: 2024.14
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:職場のソーシャルサポートが充実していると労働者の精神的健康が良好になることは広く知られている。し かしながら、先行研究は横断調査による検討が多く、観測不能な個人特性由来の交絡因子の存在が考えられる。本研 究では、個人特性を統制しても職場のソーシャルサポートの充実が精神的健康および疲労の回復状況と正の関連を示 すか、またそれらの係数の推定値の大きさが個人特性の統制の有無で異なるのかを検討することを目的とした。
     対象と方法: 2021 年11 月に日本の就業者構成を模した10,000 名の調査会社のweb モニター就業者に対して横 断調査を行い、翌年に追跡的に調査を実施した。最終的に2,410 名の正社員労働者を解析の対象とした。2 期の縦断 調査データを用いた固定効果推定を行うことで、個人属性(時間を通じて変化しない個人属性、以下同)を統制した うえで職場のソーシャルサポートと精神的健康指標(抑うつ傾向、主観的幸福感、ワークエンゲイジメント)および 疲労の回復状況との関連を検討した。
     結果:分析の結果、個人属性を統制しても、職場のソーシャルサポートと抑うつ傾向、主観的幸福感、ワークエン ゲイジメントおよび疲労の回復状況との間には、正の有意な関連が確認された。個人属性を統制した固定効果推定に よる係数値と横断的な推定手法(横断調査データのみを用いた推定や、縦断調査データを横断調査データと同様に扱 う推定手法)による係数値の大きさを比較すると、固定効果推定の係数値の方が絶対値がより小さくなることが示さ れた。また、男女別にみても概ね同様の正の関連と係数の絶対値の縮小が示された。
     考察と結論:先行研究から示唆されていた職場のソーシャルサポートと精神的健康および疲労の回復状況の正の関 連は、2 期間の縦断調査を用いた固定効果推定からも確認された。しかし、固定効果推定の結果は、横断的な推定手 法による結果よりも係数の絶対値の大きさが小さく、横断的な推定手法の結果には個人特性由来のバイアス分を含ん でいる可能性があるため、係数の推定値の大きさを割り引いて考える必要性が示唆された。
活動報告
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