冷凍空調機器に封入されている冷媒には,地球温暖化係数が低いものへの転換が求められている.本研究では,その候補物質の1つR1123 (Trifluoroethene)を対象に,分子シミュレーションの課題を明らかにし,量子化学計算と室温付近の測定データを活かした低温域の物性予測精度向上のための方策について提案する.R1123の二量体間相互作用から修正すべきLennard-Jonesパラメータに見当をつけ,飽和液密度の測定値を参照し微調整を行った.調整後の分子力場を用いて飽和圧力,表面張力,ならびに第2ビリアル係数に対し十分な再現性を得ることができた.一方で,蒸気の誘電率や第3ビリアル係数の予測には大きな誤差が生じることが明らかになった.