熱物性
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35 巻, 3 号
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  • 森田 慎一, 羽二生 稔大, 高井 和紀, 山田 貴延, 早水 庸隆, 権田 岳, 堀部 明彦, 春木 直人
    2021 年 35 巻 3 号 p. 76-82
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/07/29
    ジャーナル フリー

    本研究は,多層カーボンナノチューブ(MWCNT: Multi-Wall Carbon Nanotube)分散混合水の,熱伝導率推定に適する理論推定モデルの検討を目的とする.MWCNT分散水の分散質と連続相の熱伝導率比は,MWCNTが高い熱伝導率を有していることから,これまでに評価された範囲を超えて大きい.適正な理論推定モデルは,MWCNT組成質量割合と温度をパラメータとし,細線加熱法による実測定値との比較により検討を行った.非常に細く長い形状を有する供試MWCNTは,変形し交錯した状態で連続相中に分散していると考えられる.よって,MWCNT分散水の熱伝導率推定は,球体分散モデルと円柱配置モデルにより検討した.熱伝導率実測値は,熱流が軸方向である円柱配置のRayleighモデルおよびHamilton式による推定値と良く一致する結果が得られた.

  • 依田 智, 竹下 覚, 小野 巧, 夛田 亮佑, 大田 英生
    2021 年 35 巻 3 号 p. 83-89
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/07/29
    ジャーナル フリー

    低密度でナノ多孔構造を持つシリカエアロゲルは,真空断熱材以外で最も小さい見かけの熱伝導率(0.02 W/(m∙K)以下)を示す材料として知られている.近年,シリカエアロゲルを不織布やポリマーのシートと複合化した断熱材料の開発と実用化が進んでいる.このような材料については,適合する測定法が限られること,試料サイズが限定される場合が多い等の問題があり,熱伝導率の測定方法が十分確立されていない.本研究では,我々が開発したシート状シリカエアロゲルについて,異なる方法での熱伝導率測定値の比較や,試料厚さ,大きさが測定値に及ぼす影響を検討した.熱流束計(HFM)法を用い,薄い試料を熱伝導率既知の材料で挟み込む手法により,保護熱板(GHP)での測定値とほぼ一致した測定値(0.016 W/(m∙K))が再現性よく得られることを確認した.また,試料のサイズがHFM法での測定値に及ぼす影響や,熱線法での測定値との比較を検討した.

  • 中林 玲音, 川南 剛, 石橋 優人, 藤田 麻哉, 杵鞭 義明
    2021 年 35 巻 3 号 p. 90-96
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/07/29
    ジャーナル フリー

    本研究では粉末状の二酸化バナジウムから成型された構造材の熱挙動の把握を目的として,焼結成型体およびバインダー成型体を実際に作製し,加温実験および熱回路網法を用いたシミュレーションによる熱特性の検討を行った.その結果,二酸化バナジウムの相転移温度において潜熱の影響により温度維持の効果がある事,熱回路網法による温度変化の予測が可能であるという結果が得られた.さらに,バインダーの種類を変えた場合には,バインダーの熱物性値により,成型体そのものの熱挙動が大きく変化することがわかった.

  • 大関 駿太郎, 太刀川 純孝, 大村 高弘, 長坂 雄次
    2021 年 35 巻 3 号 p. 97-104
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/07/29
    ジャーナル フリー

    字宙用断熱材は耐放射線性,高断熱性,高耐熱性,軽量性が求められる.そこで,それらの特性を有するポリイミドフォームに着目している.新しい断熱材の開発段階において簡便かつ小型の評価装置が望まれるため,52mm径の小型試料を対象として有効熱伝導率測定を行うことを試みた.断熱材の有効熱伝導率測定は,保護熱板法によって行われるのが一般的であるが,本論文では保護熱板を用いない簡便な設計にすることで装置の小型化を目指した.しかし,高断熱かつ小型である試料を測定対象としているため,熱損失の影響が相対的に大きくなり,測定値の信頼性が低下する.そこで,試験体温度差を用いた熱流分離法を適用することで熱リークを考慮した測定を行った.また,モンテカルロ法を導入してふく射の遠隔作用を考慮した解析プログラムを作成し評価も行った.

  • 細野 和也, 西 剛史, 太田 弘道
    2021 年 35 巻 3 号 p. 105-113
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/07/29
    ジャーナル フリー

    フラッシュ法を用いた熱拡散率等の解析をラプラス空間で行う場合,ラプラス変数を設定する必要がある.裏面温度理論式と同条件で測定したデータであれば問題が無いが,異なる条件での測定となる場合が多くこのことによりラプラス変数の適正領域が決定される.本論文では単層材の熱拡散率とビオ数の解析を想定し,理論式と異なる測定条件として測定データ有限性と時刻原点のずれを取り上げ,それぞれのラプラス変数適正領域を確認した.ラプラス変数の適正領域はラプラス変数pと測定時間tmの積(p×tm)により確認した.測定データの有限性はラプラス変数適正領域の下限を決定し,時刻原点のずれはラプラス変数適正領域の上限を決定する.解析時にはラプラス変数をこの上限と下限で挟まれる範囲に設定することになる.ラプラス変数適正領域は測定時間が長いほど範囲が広くなり,時刻原点のずれが大きいほど狭くなる.熱拡散率に対するラプラス変数の適正領域は,ビオ数に対する適正領域より広い.

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