積層材の層間熱抵抗等をフラッシュ法により解析する手法を検討した.まず試料表裏面から放射損失がある条件で層間熱抵抗を有する積層材の裏面温度式をラプラス空間で導いた.次に層間熱抵抗を有する2層材の層間熱抵抗等をラプラス空間における試料裏面温度式の値と測定される裏面温度データをラプラス変換した値との二乗偏差の最小値から求める方法を開発した.求める物性値(層間熱抵抗,表面層か裏面層どちらかの熱拡散率, ビオ数)を全て独立変数とする解析方法(直接法)と実空間における試料裏面温度低下領域の減衰時定数を用いて解析する方法(時定数法)の2方法を検討し, 両方法とも層間熱抵抗等が求められることを確認した.
ガラス等は半透明体に分類され,その熱伝導現象は,概略,①伝導伝熱,②試料内の吸収・放射現象による熱伝導,③端面間の直接的な放射伝熱の和で表される.このような半透明体に特徴的な第2項,第3項の放射伝熱による熱伝導を簡便なモデル化をすることにより,それぞれの現象に基づく熱伝導率式を導いた.半透明体の熱伝導率は,①~③の熱伝導現象による個別熱伝導率の和として近似的に表される.
血糖値(血液中グルコース濃度)は通常約110mg/dL以下と低濃度領域にあり,その濃度変化に伴う物性値変化は微小である.本論文では,血糖値に対応するグルコース微小濃度変化の非接触センシング技術開発に向けて,まずグルコース水溶液濃度変化に対する物性値の相対変化率を調査し,最大変化率を持つ旋光度に着目した.そして,回転位相子法と呼ぶ非接触な旋光度測定装置を新たに開発し,低濃度領域においてグルコース水溶液の約100mg/dLの濃度分解能を達成した.またグルコース以外の生体内旋光性物質の影響を考慮し,2波長の光源を用いて生体内タンパク質とグルコースの混合水溶液の測定を行うことで,多成分系中でのグルコース濃度分離手法の提案を行った.