熱物性
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34 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 橋本 将明, 田口 良広
    2020 年 34 巻 4 号 p. 109-116
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー

    本論文では,ミリ長ストロークを低電力で達成する熱駆動切り紙MEMSアクチュエータを提案する.紙を切って折るだけで立体構造を造形する切り紙のコンセプトは,様々な工学デバイスに応用されている.著者らは,ジュール加熱によって面外方向ステップ状に変形する切り紙式熱バイモルフ薄膜アクチュエータを設計した.薄膜直径2mmのシングルステップ型および直径4mmのマルチステップ型の2種類のアクチュエータをMEMSプロセスを用いて作製した.シングル型は供給電力131mWでストローク0.2mm,マルチ型はわずか128mWでミリ長ストローク1.1mmを達成した.本稿では,提案した切り紙MEMSアクチュエータの熱・機械特性を明らかにした.

  • 細野 和也, 西 剛史, 太田 弘道
    2020 年 34 巻 4 号 p. 117-128
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー

    フラッシュ法で不透明体層試料の層間熱抵抗の接触圧依存性を測定する場合,接触圧を調整するために試料を透明体で挟み接触圧を調整してフラッシュ法で測定する方法が考えられる.この際,加熱光は不透明体試料表面で吸収され,試料裏面では不透明体試料裏面温度に比例した放射熱流束が測定されるものとして層間熱抵抗解析を行う.この際,測定試料と透明体が熱的絶縁状態であればよいが,実際には試料と透明体の熱的接触が生じるためこの接触に伴う測定への影響が考えられる.本論文では試料裏面の放射熱流束に大きく影響すると思われる裏面側の透明体の影響を評価することとし第層単層不透明体試料と第層透明体が接した層材を想定し,第層試料表面をパルス加熱する場合に第層透明体裏面より放射される放射熱流束を求め,この強度変化を温度上昇として透明体が無いものとして第層不透明体試料の熱拡散率を解析した場合の値から透明体層の影響を検討した. ①第層の光学厚さが程度以下,②第層の特性時間の第層特性時間に対する比と第層熱容量の第層熱容量の比の積をより小さくすることによりハーフタイム法で%程度の精度で試料の熱拡散率が得られることを確認した.また解析に用いるデータは測定時間後方になるほど透明体層の影響を受けるため測定試料の特性時間の倍程度のデータを用いることが望ましいと考えられる.

  • 渡部 剣太, 垣内田 洋
    2020 年 34 巻 4 号 p. 129-136
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー

    低放射フィルムの放射率(カタログ値0.13)を,結露時を含め測定し,小規模部屋の窓ガラス(放射率≈0.9)に後貼りして,冬の窓の結露が室内の温熱環境と快適性に与える影響を調べた.放射率測定では,乾燥・結露時の表面で値を得た.小規模部屋の温熱環境実験では,窓表面,室内外空気,窓際の黒球温度を測定し,夜間データを解析した.乾燥時,単板ガラス窓の部屋に比べて低放射フィルム窓の部屋は,表面温度が低く黒球温度が高かったが,結露時は,表面と黒球の温度はともに,これら二部屋間で差が縮まった.以上の結果を放射・対流熱伝達の観点で説明した.さらに標準有効温度(SET*)を用い,低放射フィルム導入および結露発生と快適性との関係を考察した.

  • 大村 高弘, 石井 健登, 田坂 太一, 近藤 光, 内藤 牧男
    2020 年 34 巻 4 号 p. 137-146
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー

    近年のナノ粒子断熱材や真空断熱材などの高性能断熱材開発において,非常に重要な役割を担う熱伝導率測定方法に関して,フーリエ則を適用できない不均一な温度勾配が一部に存在するような温度場でも測定できる方法を提案し,その適用可能な条件を検討した。既に,300mm×300mmの正方形状試験体に対して,100℃~600℃の温度範囲で適用可能な測定原理と条件を見出している.本報では,150mm×100mmの長方形状試験体に対して,100℃~900℃の温度範囲で測定可能な原理と条件,装置を提案した.さらに,測定精度を評価するための無次元数を定義し,精度向上のための測定方法を示すと共に,試験体の大きさと測定精度の関係を示した.この装置を使って,フュームドアルミナ断熱材の熱伝導率を測定したところ,周期加熱法の結果に対して±10%以内で一致する値が得られた.

  • 森田 慎一, 羽二 生稔大, 山田 貴延, 高井 和紀, 早水 庸隆, 権田 岳, 堀部 明彦, 春木 直人
    2020 年 34 巻 4 号 p. 147-153
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー

    本研究は,断熱式発熱量測定装置を用い,農業用途を想定するバイオマス・廃棄物燃料の発熱量を評価した結果を示すものである.我が国においては,寒冷期に農作物の生育遅延または不能となるため,施設栽培農業においても冬期の出荷が抑制される.寒冷期の出荷実現を目指す農家は,近郊で得られる様々なバイオマス・廃棄物燃料燃料を施設栽培用燃料に活用したい要望があるが,農業用燃焼暖房器に使用することで営農が成り立つか否か見極める必要がある.しかしながら,この種の燃料の発熱量データは稀少であり,設計が困難であることが未利用燃料の利用普及を妨げている.本報は,針葉樹,広葉樹,木炭,竹,家畜糞堆肥,エンジンオイルフィルターおよびコンデンサー用セパレータ紙廃棄物の発熱量測定結果を示し,燃料の多様化につながる実用資料を提供するものである.

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