本研究では,ウシ個体毎の卵母細胞を用いた体外受精胚による効率的子牛生産を目的とし,体外受精後の胚発生率改善のための体外培養法(実験1)および特定個体由来の少数卵母細胞からの子牛生産について検討した(実験2).実験1では,体外成熟・受精・発生培養(IVMFC)を1ドロップ(100
μl)当たりの卵母細胞数を10個前後になるように調整し行い,体外発生培養液はCR1aa,TCM199を単独あるいは組み合わせて用いた.胚盤胞期胚の発生率は,媒精後72時間までをCR1aa,以後TCM199で培養した場合42.4%であり,CR1aaおよびTCM199単独の場合の31.3%,22.5%と比べ高率であった(P<0.05,P<0.01).実験2では,個体毎の卵母細胞数により1ドロップあたり10ないし2~9個としIVMFCを行った.10個とそれ以下の卵母細胞数毎の胚盤胞期胚の発生率は,それぞれ13.6%,13.7%であり差は認められなかった.10個以下のドロップから発生した胚を移植し,正常な子牛を得た.以上から,CR1aaとTCM199を組み合わせた体外発生培養は,体外受精後の胚の発生率改善に有効であり,少数卵母細胞のIVMFCで発生した胚盤胞期胚は子牛までの正常な発生能を持つことが明らかとなった.
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