Journal of Mammalian Ova Research
Online ISSN : 1347-5878
Print ISSN : 1341-7738
ISSN-L : 1341-7738
21 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
総説
  • 山野 修司
    2004 年 21 巻 4 号 p. 177-184
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿では現代の生命倫理学の原則ならびに胚の倫理学的地位について解説した.現代の生命倫理学はベルモント報告書に報告された三つの原則に基づいており,この諸原則は人格の尊重,善行,公正からなっている.この中では人格の尊重がもっとも重要で,優先される.原則同士がコンフリクトするような事例に遭遇した場合,最優先権をある原則に与える必要がある.しかし,どのようにしてひとつの原則を最優先権あるものとして選択するかはいまだに解決されていない問題である.一方,胎児の倫理学的地位を考えた場合,最も重要なことはいつ胚や胎児が人格性を持つかということである.カトリックは受精した瞬間から胚を人格とみなすと1974年に宣言している.しかし,多くの生命倫理学者は自律的な行為者とは,自分の個人的な目的を熟慮でき,その熟慮の結果に従って行動できる人と考えている.この考えに従うと人工妊娠中絶を認めるのみ留まらず,嬰児殺しまで許容することになる.本稿の後半では胎児の倫理学的地位について説明する.
  • 中井 美智子, 菊地 和弘, 小市 麻衣子, 柏崎 直巳
    2004 年 21 巻 4 号 p. 185-191
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/25
    ジャーナル フリー
    ブタにおいて,卵細胞質内精子注入(ICSI)により作出した胚(ICSI胚)の発生率の低さが指摘されている.ブタICSI胚の発生能を改善するために,ICSIの際の,精子が受精におよぼす生理学的な要因やICSIに用いる精子への人為的な操作,およびその精子が受精の完結や発生の継続に及ぼす影響に関する最近の研究の動向について紹介する.
原著
  • 吉沢 香織, 吉澤 緑, 佐々木 志野
    2004 年 21 巻 4 号 p. 192-199
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/25
    ジャーナル フリー
    12および3ヶ月齢のBALB/cとICR雌マウスより得られた卵子の体外受精を行い,第1および第2卵割期の染色体の正常性を調べた.第1卵割期の高齢区では排卵率が低い傾向にあり,1頭あたりの排卵卵子数が顕著に少なかった.第2卵割期の高齢区では異常卵出現率が顕著に高かった.第1卵割期の染色体分析では,12-ICR区では他の区に比べ受精率が有意(p<0.05)に低く,また同一系統区内の高齢区では分裂中期像を示す胚の率が低かった.一方,多倍性胚の出現率は,12-BALB区では他の区に比べて有意(p<0.05)に高かった.しかし,第2卵割期の分析では,高齢区で3倍体の出現率が高い傾向があったが,12-BALBと3-ICR区間において2細胞期胚の倍数性に有意な差は見られなかった.以上の結果から,雌の高齢化は無排卵や多精子侵入,受精の遅延もしくは得られる胚の非同期的発生により繁殖成績の低下を招くことが明らかとなった.
  • 高岡 栄美子, 鬼塚脇 明子, 徳永 弘美, 沼田 礼子, 野村 哲哉
    2004 年 21 巻 4 号 p. 200-203
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/25
    ジャーナル フリー
    primary ICSIの適応を,精液所見や女性の年齢,採卵個数とその各々の受精率及び妊娠率から検討した.conventional IVFにおいて,精子濃度が10×10 6/ml未満の症例では,受精率13.3%(18/135),妊娠率0%(0/21)で妊娠症例を認めなかった.しかし運動率に対しては,20%未満でも33.1%(43/130)の受精率と19.0%(4/21)の妊娠率が得られた.swim up後の精子濃度では1×106/ml未満の場合に受精率2.3%(2/86),妊娠率0%(0/13)で妊娠症例を認めなかった.女性の年齢や採卵個数に対しては,conventional IVFにおいて受精率に相関は認められず,受精率からはprimary ICSIの適応とは考えにくい.したがって精子濃度10×10 6/ml未満,swim up後の精子濃度が1×106/ml未満の場合をprimary ICSIの適応と考えるべきである.
  • 濱田 由香里, 藤原 睦子, 竹林 浩一, 高橋 健太郎, 野田 洋一
    2004 年 21 巻 4 号 p. 204-208
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/25
    ジャーナル フリー
    ICSIの適応は精液所見からと既往治療歴から予測される受精障害とに大別される.まず,精液所見から客観的にICSIの適応を検討するために,精子の前進運動を評価できるとされているSperm Quality Analyzer(SQA)で得られるSperm Motility Index(SMI)の有用性を評価した.また,Split cycleの成績を解析して,受精障害の予測を検討した.Poor群(0≦SMI<80),Medium群(80≦SMI<160),Good群(160≦SMI)とし,SMIと受精率,妊娠率との関係を検討したところ,Poor群(n=10),Medium群(n=9),Good群(n=43)で受精率56.4%,69.6%,71.1%,妊娠率20.0%,33.3%,48.8%であり,各群間において有意差は認められず,SMIのみによってICSIの適応を決定することは困難であった.Split cycleについては,conventional IVF 周期(n=188),Split周期(n=14),ICSI周期(n=72)の受精率は,64.8%,63.0%,56.0%であり,妊娠率は46.6%,57.1%,31.7%であり,各群間に有意差は認められなかったが,Split cycleの適応別に比較すると,前回受精障害の受精率はconventional IVFとICSI で差を認めず,ICSIの適応とするには慎重であるべきと考えられた.
  • 橋本 洋美, 後藤 栄, 坪内 美紀, 泉 陽子, 吉村 由香理, 笠原 優子, 塩谷 雅英
    2004 年 21 巻 4 号 p. 209-213
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/25
    ジャーナル フリー
    IVFとICSIを回収された卵子の半数ずつに行うSplit ICSIを考慮すべき精液所見を検討することを目的とした.当院で初回ARTを施行した682症例の精液所見を目視法で調べ,精液濃度および運動率別の受精率,妊娠率の検討を行った.受精率30%が以下の症例では受精率50%以上の症例と比較し妊娠率は有意に低かった.精子濃度が2,000万/ml未満の症例では受精率は50.0~53.8%であり,2,000万/ml以上の症例における受精率の65.0~79.5%と比較して有意に低率であった.精子運動率が20%未満の症例では受精率は0~29.6%であり,運動率20%以上の症例の受精率66.8~76.8%と比較して有意に低率であった.精子濃度2,000万/ml未満または精子運動率が20%未満の症例に対してはsplit ICSIを考慮すべきと考えられた.
学術奨励賞受賞研究
  • 江頭 昭義, 元石 睦郎, 杉岡 美智代, 永渕 惠美子, 大津 加奈子, 西垣 明実, 吉岡 尚美, 蔵本 武志
    2004 年 21 巻 4 号 p. 214-219
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/25
    ジャーナル フリー
    当院でのICSIの適応基準を明らかにするため,IVFにおける精子処理後の直進運動精子数,女性の年齢,治療歴をもとに正常受精率,正常受精の得られなかった周期率の検討を行った.また,初回のIVFで正常受精の得られなかった周期のその後の治療成績について調べた.精子処理後の直進運動精子数100万~500万/ml未満,500万~1,000万/ml未満,1,000万~1,500万/ml未満,1,500万~2,000万/ml未満および2,000万/ml以上の5群での正常受精率は,48.8%,60.2%,59.1%,63.2%および66.6%で,100万~500万/ml未満の群が他群に対して有意に低率であった(P<0.05).正常受精が得られなかった周期率は,それぞれ21.7%,16.4%,12.0%,8.3%および5.4%であった.30歳未満,30-34歳,35-39歳および40歳の4群の正常受精率を比較した結果,いずれの群でも60%以上の良好な成績が得られたが,高齢患者では運動精子数の低下に伴い正常受精率が低下する傾向が見られ,正常受精の得られなかった周期率が高くなる傾向が見られた.ARTの治療回数別でみると,正常受精率に差はないものの正常受精の得られない周期率では5回目以上の群が4回目以下の群に対し有意に上昇した.初回のIVFで正常受精が得られなかった44周期にICSIを施行し,ICSI後に変性卵となった3周期を除く41周期すべてにおいて正常受精卵が得られた.以上のことから,精子処理後の直進運動精子数が100万~500万/ml未満の症例は,ICSIの適応症例と考えられた.また,500万~1,000万/ml未満の媒精濃度が確保できるIVF症例の場合でも,採卵個数,女性の年齢やこれまでの治療歴,移植キャンセル率等も十分考慮に入れ治療方針を決定すべきであると考えられた.
テクニカルノート
エラータ
  • 2004 年 21 巻 4 号 p. E1
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/25
    ジャーナル フリー
    (誤)英文要旨が付いておりませんでした。
    (正)Abstract: It is essential for successful ICSI to select the spermatozoa with good motility and morphology and keep the quality of gametes throughout ICSI procedure. Embryogists are required a fundamental knowledge of the gametes for protection of them. Especially, we must take grate care to treat cumulus oocyte complexes with hyaluronidase solution and immobilize motile spermatozoa and inject a spermatozoon into oocyte.
    Key words: ICSI, Immobilization of spermatozoa, Polyvinyl pyrrolidone, Spindle
feedback
Top