動物種の受精卵において普遍的に細胞内カルシウムイオン濃度([Ca
2+]
i)が劇的に増加する.これが卵活性化(egg activation)の引金となる.哺乳類では第二減数分裂中期で停止していた卵(MII arrest)と精子の2つの配偶子の膜融合直後に,精子細胞質ファクターが卵に移行し,イノシトール3リン酸(IP
3)受容体を介する小胞体からの反復性のCa
2+遊離を誘起する(Ca
2+オシレーション).その精子ファクターはIP
3産生酵素であるホスフォリパーゼCゼータ(PLCζ)でほぼ間違いない.Ca
2+オシレーションにより,卵表層顆粒の開口分泌を誘発し,透明帯タンパク質ZP3の精子結合部位を分解する結果,次の精子は先体反応を起こせず,複数の精子の卵への侵入を防ぐ多精拒否機構が成立する.一方で中期促進因子(MPF)が不活性化され,MII arrestが解除され分裂を再開する.分裂により第二極体が形成され,減数分裂が完了する.卵内の精子および卵子核は雌雄前核となり,1細胞期胚に入り,雌雄前核は合同し,第一卵割に至る.ここでは精子ファクターであるPLCζと卵活性化のメカニズムを概説する.
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