卵巣嚢腫(OCと略)の乳牛115頭と正常乳牛36頭の卵巣から卵胞内の卵子を各々451個,159個回収し,それらの直径をもとに卵胞と卵子の相対的な成長の推移を比較した.卵子の直径と卵胞の直径の関係を正常牛(A)とOC牛(B)に分け,OC牛をさらに顆粒層細胞の被覆状況により正常(B-hc)と変性卵子(B-dc)に,卵子核の状況により正常(B-hn)と変性卵子(B-dn)に区分し,各々を回帰分析したところ,いずれも双曲線回帰式への当てはまりが最適であった(R
2=0.994~0.999).これら各回帰式を微分した式から卵子の成長率を求め,同率が,いずれの式においても0.5
μm/mm以下の値をとる卵胞の直径6.0 mm以上の測定値をもとに直線回帰式を当てはめた.統計分析の結果,各回帰式の真の勾配=0が95%信頼区間に含まれること,さらに真の切片と勾配における各回帰式間(A,B間,B-hc,B-dc間,B-hn,B-dn間)の帰無仮説がいずれも棄却できないことが示された.以上のことから,卵子の正常,変性とか,その判定方法に関係なく,OC牛,正常牛ともに卵胞が直径6.0 mm以上に成長すると卵子が最大直径に達し,その後,成長しないことが明らかにされた.
抄録全体を表示