Journal of Mammalian Ova Research
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14 巻, 1 号
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Review
Original
  • 有馬 俊和, 山口 知里, 高橋 寿太郎, 安田 泰久
    1997 年 14 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    マウス4細胞期割球の電気融合により同一胚由来の2倍体/4倍体モザイク胚を作出し,その生存性について検討した.処理胚の51.3%が2倍体/4倍体モザイク胚になり,そのうちの77.8%が胚盤胞に発生した.この発生率と融合に失敗した2倍体胚の発生率(73.9%)との間には有意差はなかった.コンパクションは6細胞期に観察され,それは対照胚と同じ時期に起こった.また,胚盤胞の細胞数は対照胚のほぼ4分の3であった.これらの胚盤胞を仮親に移植したところ,妊娠11.5日の検査では90.0%が着床し,25.9%が胎子に発生し,64.1%は胎子に発生しなかった.染色体解析では胎膜からは一部4倍体細胞を検出したものの,胎子部分からは全く検出されなかった.また,2匹の仮親から合計7匹の正常な子が生まれたが,大腿骨骨髄細胞の染色体解析では,4倍体細胞は検出されなかった.以上の結果から,4倍体細胞は着床前の拡張胚盤胞までは高率に発生するが,着床後の発生の胎子部分への寄与率は低いと推察された.
  • 鎌田 宣夫, 寺社下 浩一, 上田 乙也, 内田 さとみ, 鈴木 宏志
    1997 年 14 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    マウスES細胞の簡便かつ効果的なサブクローニング法を開発する目的で,以下の三つの方法について検討した.I. 単離法:トリプシン-EDTA処理によって単一細胞としたES細胞をマイクロマニュプレーターを用いて,細胞の形態別に,球形および非球形を呈していたものに選別して培養した.II. 沈降法:ES細胞を単一細胞とした後,15~45分間インキュベター内で静置した.次いで,シャーレに接着した細胞と浮遊細胞とに分けて培養した.III. コロニーピックアップ法:形態的に正常と思われるコロニーを選定し,これを単一細胞化した後に培養した.それぞれのサブクローニング法の評価は,サブクローニング前後の正常染色体数を有する細胞の割合および体外における分化能の検定によって行った.サブクローニング前の正常核型を持つ細胞の割合は30%~48%であったが,単離法および沈降法ではこの割合を改善しなかった.コロニーピックアップ法においては,68%~78%の細胞が正常核型を示し,さらにsimple embryoid bodyおよびcystic embryoid bodyの形成日は,それぞれ3~4日および7~8日であった.以上の成績から,これら三つのサブクローニング法のなかでは,コロニーピックアップ法が最も有効であると考えられた.
  • 寺社下 浩一, 上田 乙也, 鈴木 宏志
    1997 年 14 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    精子保存の簡便な方法は,その保存可能時間がたとえ短くても遺伝子資源の輸送には有効に利用できる.短時間の精子保存のための効果的な方法を確立するために,流動パラフィン中4℃にて保存した精巣上体尾部より採取したマウス精子の受精能の検討をした.流動パラフィン中にて24時間保存したICRとC57BL/6Jマウスの精巣上体尾部より採取した精子の受精率は,それぞれ89%と69%であった.また,これらの受精卵子のほとんどは,精子添加後96時間に胚盤胞に発生した.受精率は保存時間の延長とともに低下し,96時間保存したものにおいてはICRで13%およびC57BL/6Jでは1%と低率であった.4℃にて保存した精巣上体尾部より採取したHとFノックアウトマウスの精子を用いた体外受精卵を移植した結果,それぞれ,50%および41%が産仔にまで発生した.これらの結果から,精巣上体尾部の流動パラフィン中での低温保存は,マウスにおいても精子の輸送に簡便であり効果的な方法であることが示唆された.
  • 長谷川 昭子, 内藤 子来, 井上 みゆき, 山崎 則行, 香山 浩二
    1997 年 14 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    ブタ透明帯構成成分pZP1は,マウス透明帯において第2精子レセプターとして作用することが報告されているmZP2と高いアミノ酸配列相同性を持つ.本研究ではpZP1(1~198)を遺伝子組換体(r-pZP1)として大腸菌に発現させ,r-pZP1が直接精子に結合するか否かを調べた.ブタ精子を卵丘細胞とともに2時間培養すると,r-pZP1は卵丘に進入したブタ精子の先体部に結合した.しかし,培養液単独で培養したブタ精子には結合しなかった.卵丘成分との接触により先体部に何らかの変化を受けた精子のみがr-pZP1との結合能をもつに至ったものと考えられる.一方,ブタ卵との共培養により透明帯に接着したブタ精子は,後帽部から尾部にかけての領域でr-pZP1と反応した.これらの結果は,先体反応誘起過程でr-pZP1と結合する精子リガンドの局在が変化することを示唆している.一方,Ca++イオノフォア処理で先体反応誘起したヒト精子を用いた実験でも,ブタ精子の場合と同様に,反応時間の推移と共にr-pZP1の反応部位が,赤道部から中片部,尾部へと変化した.また,ブタ精巣上体精子抽出成分のwestern blottingにより,r-pZP1と反応するタンパク分子はMr55K,Mr40K,Mr25Kの3種であることがわかった.
  • 新村 末雄, 神宮 美香
    1997 年 14 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    胚盤胞形成過程にあるマウス,ラット,ウサギおよびウシの胚について,ライソソーム様小体(LB)の分布変化をアクリジンオレンジ(AO)染色で調べた.割球が変形を起こしていないマウスの8および16細胞胚,ウサギの32細胞胚およびウシの16細胞胚では,AO陽性LBは,すべての球形割球の細胞質全域に分布していたが,ラットの8細胞胚では,核上部の細胞質表層に分布していた.一方,これらの動物の桑実胚において,この小体は,内側の球形割球では細胞質全域に分布していたが,外側の扁平割球(マウス)および立方形の割球(ウサギとウシ)では核周囲に,ラットの扁平割球では核上部の細胞質表層に分布していた.この小体は,すべての動物の胚盤胞の内細胞塊細胞では細胞質全域に,栄養膜細胞では核周囲に分布していた.マウス胚において,このようなLBの分布変化はin vitroで発生した胚でも同様にみられた.以上の結果から,マウス,ウサギおよびウシの胚では,LBの分布変化と割球の変形および分化とは密接な関係があることが推察された.
  • 保地 眞一, 金森 明, 木村 建, 花田 章
    1997 年 14 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    ウシ卵丘卵母細胞複合体の二段階凍結において,体外成熟段階が融解後の卵母細胞の受精とその様式に及ぼす影響を調べた.0,6,12,及び24時間のいずれかの時間,成熟培養した卵母細胞を10%エチレングリコールと0.1 Mシュクロースの両方を含む媒液において凍結融解した.凍結前後の合計の体外成熟時間が24時間になるようそれぞれの群の卵母細胞を追加培養し,凍結融解ウシ精子を用いて体外受精した.受精率は培養0,6,12,24時間の凍結群でそれぞれ40,47,49,54%と対照群(77%)よりも有意に低かった.培養24時間目の凍結群では多精子受精が多く観察された(53% vs. 対照群18%).媒精時の精子濃度はこの多精子受精の高発生とは関係しなかった.
  • Pedro Prudencio B., 桜井 孝志, 枝重 圭祐, 葛西 孫三郎
    1997 年 14 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    超低温保存卵子の耐凍剤除去過程に蔗糖を含む高張液が多用されているが,この過程に卵子が浸透圧的傷害を受ける可能性がある.そこで,Metaphase II~拡大胚盤胞期のマウス卵子を25℃の蔗糖添加PBSに30分間保持し,生存性に及ぼす影響をしらべた.新鮮な卵子は,蔗糖濃度が0.75 M以下では影響を受けなかったが,1.0 M以上では生存性が低下した.特に,Metaphase IIおよび8細胞期の卵子では低下が大きく,一方,2細胞期胚と拡大胚盤胞では低下は小さかった.これに対して,ガラス化保存した卵子を回収直後に高張液処理した場合には,いずれのステージにおいても,新鮮卵子に比べて生存性は急激に低下し,超低温保存卵子が高張ストレスに対する耐性が低いことが明らかになった.また,ガラス化保存卵子を高張液処理前に短時間培養することによって耐性が回復することも判明した.
  • 森田 眞紀, 杉本 実紀, 宮本 元, 眞鍋 昇
    1997 年 14 巻 1 号 p. 72-78
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    マウス卵管上皮細胞における分泌活動を微細構造から明らかにした.卵管膨大部おいて,発情前期・発情期・発情後期に粘液様物質が分泌細胞の管腔側の細胞質中に集積した.発情期および発情後期には,様々な大きさをもつ分泌顆粒が観察された.分泌顆粒と細胞膜の吻合である,開口分泌は発情後期に観察された.一方,発情休止期には分泌細胞は退行した.卵管膨大部からの分泌物により,受精および初期胚発生に適した環境がつくられていると考えられる.峡部において,発情後期に大きく拡張した粗面小胞体が観察された.分泌顆粒は発情前期と発情期の分泌細胞でみられた.それらは主に発情前期に開口分泌により管腔内に放出される.峡部卵管上皮から分泌される物質は精子の受精能獲得に寄与していると考えられた.本研究より,マウスにおいて卵管膨大部と峡部の分泌細胞は性周期依存性の因子により異なって制御されていることが示唆された.
  • 能登 貴久, 前田 信二, 豊岡 やよい, 奥田 智彦, スギモト ミキ, 宮本 元, 眞鍋 昇
    1997 年 14 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    プロテインキナーゼC(PKC)活性化剤が,マウス後期桑実胚の発生に及ぼす影響について形態学的に検討した.PKC活性化剤としてphorbol-12-myristate 13-acetate(PMA,0.01~1.0 nM)あるいは1-oleoyl 2-acetyl-sn-glycerol(OAG,0.1~10 μM)を添加した培養液中で後期桑実胚を24時間培養し,経時的に胞胚腔の形成を観察し,併せて細胞内アクチンフィラメントの局在を免疫組織化学的に検出観察した.PMA処理群においてデコンパクションの誘発と胞胚腔形成の遅延が認められ,OAG処理群では若干の発生遅延が認められた.また,PMAあるいはOAG添加下で培養した胚では,細胞内アクチンの再構成が観察された.これらの知見は,PKCの活性化によって,マウス後期桑実胚においては,アクチンの再構成を含む形態学的変化が惹起されることを示唆している.
  • 趙 佳, 服部 眞彰, 藤原 昇
    1997 年 14 巻 1 号 p. 84-94
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    ウシの未成熟卵子および体外成熟した卵子を凍結・融解した場合の生存性ならびに体外受精後の胚の発育状況について比較検討を行った.その結果,体外である程度成熟させた卵子を凍結・融解した場合に,胚が受ける傷害の程度が比較的に少ないことが確認された.一方,凍結・融解処理をした卵子を電子顕微鏡(TEM)で観察したところ,卵細胞の微細構造が著しく変化し,致命的傷害を受けていることが明らかとなった.この場合,未成熟卵子よりも体外である程度成熟させた卵子の方が微細構造の変化が少ないことも証明され,上記体外発育胚の成績を裏付ける結果が得られた.
  • 泉 徳和, 佐藤 英明, 鈴木 宏美, 島 由里香, 榊田 星史, 吉村 ジョルソン
    1997 年 14 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    卵巣嚢腫(OCと略)の乳牛115頭と正常乳牛36頭の卵巣から卵胞内の卵子を各々451個,159個回収し,それらの直径をもとに卵胞と卵子の相対的な成長の推移を比較した.卵子の直径と卵胞の直径の関係を正常牛(A)とOC牛(B)に分け,OC牛をさらに顆粒層細胞の被覆状況により正常(B-hc)と変性卵子(B-dc)に,卵子核の状況により正常(B-hn)と変性卵子(B-dn)に区分し,各々を回帰分析したところ,いずれも双曲線回帰式への当てはまりが最適であった(R2=0.994~0.999).これら各回帰式を微分した式から卵子の成長率を求め,同率が,いずれの式においても0.5 μm/mm以下の値をとる卵胞の直径6.0 mm以上の測定値をもとに直線回帰式を当てはめた.統計分析の結果,各回帰式の真の勾配=0が95%信頼区間に含まれること,さらに真の切片と勾配における各回帰式間(A,B間,B-hc,B-dc間,B-hn,B-dn間)の帰無仮説がいずれも棄却できないことが示された.以上のことから,卵子の正常,変性とか,その判定方法に関係なく,OC牛,正常牛ともに卵胞が直径6.0 mm以上に成長すると卵子が最大直径に達し,その後,成長しないことが明らかにされた.
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