Journal of Mammalian Ova Research
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13 巻, 2 号
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Review
Original
  • 小薗井 真人, 金 相勇, 高橋 壽太郎, 安田 泰久
    1996 年 13 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/02/19
    ジャーナル フリー
    全胚盤胞培養法によって,2株のC57BL/6系マウスに由来する胚幹(ES)細胞株(OKB6-Iおよび-II)が樹立され,分離効率は3.9%(2/51)であった.これらは多能性を保有しており,核型は正常で,アルカリ性フォスファターゼ活性陽性であった.また,染色体の大きさおよび形態から,OKB6-Iは雌株,OKB6-IIは雄株であることが示された.ICR胚との共培養によってキメラ作出を試みた結果,OKB6-Iからはキメラは得られなかったが,OKB6-IIからは,毛色キメラ雌1匹と生殖系の異常なアルビノ個体1匹が得られた.交配試験では,OKB6-II⇔ICRキメラは3匹の生存産子を分娩したが,いずれもアルビノ型であった.また,生殖系の異常な個体は生殖不能であり,卵巣および精巣様構造を対側性に有する半陰陽体であることが示された.
  • 中野 由起子
    1996 年 13 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/02/19
    ジャーナル フリー
    ICSIによるヒト着床前期胚の性染色体モザイシズムをFISH法で分析し,非侵襲的着床前性別診断法の信頼性を検討した.2PNを確認した2から8細胞期のICSIによる着床前期胚を分離した割球を検体とし,DXZ1,DYZ1を用いdual color FISHで分析した.正常男性および女性の末梢リンパ球間期核で検討した.シグナル検出感度は,XY92.0%(460/500),XX89.4%(447/500)で,単一割球の固定率は88.7%(86/97)であった.同一胚内の割球の分析結果がすべて一致した胚は20/25個(80%)で残りの5個(20%)の胚に性染色体モザイクを認めた.2個の割球の結果が正常で一致しても,残りの胚がモザイクである可能性は12%(3/25個)であった.したがって1個の割球を生検して胚全体の性別を診断するよりも2個の割球を分析すれば88%の信頼性でモザイシズムも否定でき,より正確な判定が可能であることが示唆された.
  • 辻井 弘忠, 中野 匡博
    1996 年 13 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/02/19
    ジャーナル フリー
    マウス初期胚をM16およびEDTA添加M16液で培養した場合のグルコースとピルビン酸の取り込みと酸化を測定した.両方の培養液ともhCG投与後40および45時間目のグルコース取り込みおよび酸化は有意に減少した.一方,ピルビン酸の取り込みおよび酸化は胚の発生に応じて増加し,hCG投与40および45時間目の有意の減少はみられなかった.M16液で6時間培養後のグルコースおよびピルビン酸の取り込みと酸化は,EDTA添加M16液の場合と比較してhCG投与後40,45および50時間で有意に低かった.これらのことから,マウスの2細胞期以降の胚の発生にはEDTAが生存能力を高めるものと思われた.
  • 新比惠 啓志, 坂田 太二, 本田 勝也, 藤原 利久, 浅野 裕三
    1996 年 13 巻 2 号 p. 110-114
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/02/19
    ジャーナル フリー
    サイ(rhinoceros)のような外観を呈するライノ様突然変異マウスの精子凍結保存を行い,体外受精・胚移植によって新生仔を得た.すなわち,18% Raffinoseに3% Skim Milkを加えた保存液を用い,マウス精子を液体窒素中で保存した.凍結約2.5ヵ月後にこの精子を融解しICR系マウスの卵子と体外受精を行った.その結果,精子の蘇生率は約20%,受精率は14%(13/95)であったが,受精卵の92%(12/13)が胚盤胞へ発生した.この胚盤胞を偽妊娠マウスに移植したところ,75%(9/12)が新生仔として誕生した.これらライノ様遺伝子をヘテロに持つ新生仔(雄7匹雌2匹)には脱毛およびライノ様形質は認められなかったが,性成熟後,兄妹交配を行い,得られた計39匹の仔(F2)の約1/4にあたる11匹(雄5匹雌6匹)にはライノ様形質が発現した.すなわち,生後2~3週から脱毛がみられ,6ヵ月齢で皮膚は全体的に肥厚し皺壁の形成が認められ,その病理組織学的観察では,表層部にはpilary canal cystが,また中,深層部にdermal cystが認められた.以上の結果からライノ様突然変異マウスの遺伝子の保存および形質の再発現が可能なことが明らかとなった.
Brief Note
原著
  • 銭 暁喬, 稲垣 宏, 佐々田 比呂志, 菅原 七郎
    1996 年 13 巻 2 号 p. 118-121
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/02/19
    ジャーナル フリー
    本実験は,ジスルフィド結合還元剤処理による牛精子核の膨化を検討した.実験1: in vitro下で影響を調べた.その結果,Tris-HCl中の50 mM以上の高濃度ジチオトレイトール処理で,30分後,80%以上の精子核膨化が認められた.5 mMのジチオトレイトールと1%のドデシル硫酸ナトリウム界面活性剤の併用処理ですべての精子核が速やかに膨化した.一方,50 mM以下のグルタチオン還元型の単独処理あるいは界面活性剤との併用処理では精子核の膨化がみられなかった.実験2では,ジチオトレイトールの単独処理による精子核の膨化状態は溶液中の塩濃度に影響されることがわかった.実験3:Tris-HCl中の5 mMのジチオトレイトールあるいは5 mM濃度のグルタチオン還元型で前処理した牛精子を体外成熟牛卵子へ顕微注入し精子核の変化を調べた.注入6時間後で雄性前核形成率はそれぞれ49.0と7.4%であった.対照区ヘパリン処理精子(5.3%)と比べ,前者は有意に高かった(P<0.01).以上の結果,牛における顕微受精の場合,注入精子の雄性前核形成にプロタミンのジスルフィド結合の還元を誘起する前処理を行うことが有効である可能性が示唆された.
  • 島津 美樹, 内藤 邦彦
    1996 年 13 巻 2 号 p. 122-124
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/02/19
    ジャーナル フリー
    イヌは排卵の2~3日前から交配が可能であること,排卵時の卵子は卵核胞期(GV期)であることから,GV期の卵子に精子が侵入し正常に発生する可能性が考えられる.本試験では排卵直前のGV期の卵子を採取直後媒精し72時間後まで培養することにより,精子侵入率,精子侵入卵子の核ステージ及び精子核の膨潤化の関係を調べ,イヌのGV期卵子が受精に携わる可能性について検討した.精子侵入率は媒精後24時間ではすでに64.4%と最高値に達していたが,その精子侵入卵子の成熟率は6.9%であった.従って,GV期の卵子が精子の侵入を受けたと考えられた.その後,精子侵入率と成熟率は媒精後48,72時間でそれぞれ57.1%及び17.9%,54.3%及び60.0%となった.媒精後72時間の成熟受精卵の26.7%に雌雄両前核が認められた.以上の結果より,イヌではGV期に受精した卵子が前核を形成することが示され,GV期卵子が正常受精に携わる可能性が示唆された.
  • 角川 博哉, 浜野 晴三, 伊藤 隆司, 高橋 ひとみ, 山田 豊, 仮屋 尭由
    1996 年 13 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/02/19
    ジャーナル フリー
    1個のウシ初期胚から作成したアンチセンス(aRNA)RNA溶液をRT-PCR法の材料として用いる方法(aRNA-RT-PCR法)により,1胚内の複数の遺伝子発現を調べることが可能かどうか検討した.凍結保存した2細胞期~胚盤胞期までの体外成熟・体外受精卵を材料として用いた.T7-RNA合成酵素の認識結合配列が連結したoligo(dT)逆転写用プライマーによる逆転写と2本鎖cDNA合成の後に,T7-RNA合成酵素を用いた転写反応によって100 μlのaRNA溶液を作成した.aRNAの逆転写には,増幅鋳型として5 μlのaRNA溶液(1/20)と,ウシの β -アクチン(bActin)の塩基配列を基に合成したセンス側(aRNAに対する第1cDNA鎖合成に必要)またはアンチセンス側(mRNAに対する第1cDNA鎖の合成に必要)のプライマーを用いた.続いて両プライマーを用いたPCRを行い,アガロースゲル電気泳動により増幅産物を確認した.その結果,aRNAの逆転写でセンス側プライマーを用いた場合に増幅産物が確認され,アンチセンス側プライマーのみを用いた場合には確認されなかった.以上のことから,aRNA-RT-PCR法によりウシ初期胚の複数の遺伝子発現を検討できる可能性が示唆された.
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