ヒトICSIにおいて,Piezo-ICSI法と内径5 μm厚さ0.5 μmの極薄ピペットを組合せたImproved-Piezo-ICSI(IPI)法によるICSI後の卵子破損率および受精率の改善効果の有無,ならびにそのメカニズムを明らかにするため,3種類の手法,すなわち①群:Conventional-ICSI(CI)法,②群:内径5 μm厚さ1 μmの標準厚ピペットを用いてのConventional-Piezo-ICSI(CPI)法および③群:内径5 μm厚さ0.5 μmの極薄ピペットを用いてのIPI法の比較試験を行った.CI法,CPI法およびIPI法における卵子の細胞膜穿破時のICSIピペット内への吸引卵細胞質量(平均±標準偏差)はそれぞれ,2792±952,0±0および0±0 μm
3であり,CI法が最も多かった(
P<0.0001).CPI法およびIPI法における卵子の細胞膜穿破面積はそれぞれ,18および8 μm
2であった.また,CI法,CPI法およびIPI法のICSI後の卵子破損率ならびに生存卵子当たりの受精率はそれぞれ,10,5および1%ならびに78,79および89%であった.卵子破損率はIPI法が最も低く(
P<0.0001),受精率はIPI法が最も高い値であった(
P=0.0021).Piezo-ICSI法と内径5 μm厚さ0.5 μmの極薄ピペットを組合せたIPI法は臨床のICSIにおいて,穿刺による卵子破損率を有意に減少させ,かつ受精率を有意に改善できる有用な方法であることが明らかとなった.
抄録全体を表示