Journal of Mammalian Ova Research
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29 巻, 4 号
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総説(特集:卵子のエネルギー代謝 ―ミトコンドリア機能について―
  • 山海 直
    2012 年 29 巻 4 号 p. 145-
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/03
    ジャーナル フリー
  • 伊藤 潤哉
    2012 年 29 巻 4 号 p. 146-154
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/03
    ジャーナル フリー
    ほとんどすべての動物種において,受精時には卵内カルシウムイオンの上昇が認められる.このカルシウムイオンの上昇は,第二減数分裂からの減数分裂再開,表層顆粒の放出および雌雄前核の形成といった“卵の活性化”を引き起こすことが知られている.特に哺乳動物の受精においては,反復的なカルシウムイオンの上昇(カルシウムオシレーション)が起こる.近年の研究により,カルシウムオシレーションは卵の活性化だけでなく,その後の発生にも影響を及ぼすことが示唆されている.カルシウムオシレーションは精子内に存在する卵活性化因子(phospholipase C zeta, PLCζ)が卵細胞質内に放出されることで起こると考えられており,PLCζによりPIP2が加水分解され,その結果生産されたinositol 1,4,5-triphosphate(IP3)が小胞体上にあるIP3受容体に結合し,小胞体内に蓄積されたカルシウムを卵細胞質内に放出することで誘起される.我々は,実験動物(マウス)あるいは家畜(ブタ)をモデルとして用い,特にPLCζとIP3受容体の機能に着目し研究を行ってきた.本稿では,これら分子に関する最近の知見を紹介したい.
  • 若井 拓哉
    2012 年 29 巻 4 号 p. 155-160
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/03
    ジャーナル フリー
    卵母細胞が受精可能な卵子へと発育する過程でミトコンドリアの細胞内局在は大きく変動する.そこで,その局在の詳細を明らかにするために成長および成熟過程の卵母細胞におけるミトコンドリアの生細胞観察を行った.成長期の卵母細胞におけるミトコンドリアは細胞膜直下および核周辺に特に集中しているのに対して,成長を完了した卵母細胞では細胞質全体に拡散して分布しており,同一の細胞周期にある卵母細胞においても成長段階に応じてミトコンドリアの細胞内局在は異なることが分かった.また,成熟過程における卵母細胞のミトコンドリアをGFPでラベルし経時的に追跡したところ,局在のダイナミックな再構築が観察され,さらにそれは微小管の影響を受けていることが分かった.こうしたミトコンドリアの時間・空間的な制御は受精やその後の発生を支持するために必要と考えられる.
  • 河村 悠美子, 栗原 裕基
    2012 年 29 巻 4 号 p. 161-169
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/03
    ジャーナル フリー
    初期胚発生は正常な代謝調節のもとに成立している.着床前胚では受精から胚盤胞に至る短期間にダイナミックに代謝経路が変化するが,その攪乱は胚発生の異常のみならず,生後の生理状態や病態形成にも影響を及ぼすことが指摘されている.ミトコンドリアは酸化的リン酸化反応による主要なエネルギー産生源として機能しているが,一方で活性酸素種を副産物として産出するため,酸化ストレスの産生源ともなりうることから,その機能調節は初期胚発生にとって非常に重要である.近年,ミトコンドリアに局在するタンパク質の多くがアセチル化修飾による制御を受けていることが明らかになってきた.本稿では,ミトコンドリアタンパク質の脱アセチル化酵素であるSirt3の機能に注目し,初期胚発生期における脱アセチル化酵素を介したミトコンドリア機能調節に関して紹介する.
  • 横尾 正樹, 阿部 宏之
    2012 年 29 巻 4 号 p. 170-174
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/03
    ジャーナル フリー
    卵子の品質はその後の初期胚発生や妊娠の成立,維持に影響を与えることから,その評価方法は重要である.卵子の細胞レベル,分子レベルでの品質評価法は,卵子の能力を正確に判定することはできても,卵子に対して侵襲的なものである場合が多く,卵子の生存性は失われ,臨床現場の評価方法としては意味を持たない.一方,我々が開発した電気化学的呼吸測定技術は,非侵襲的に細胞のミトコンドリア機能(呼吸活性)を評価できるため,哺乳動物の受精卵や卵子の新しい品質評価法として期待されている.本稿では,電気化学的呼吸測定技術の概要を説明するとともに,ブタ卵子を用いた呼吸活性解析の一例を紹介する.
  • 橋本 周, 山中 昌哉, 天羽 杏実, 森本 義晴
    2012 年 29 巻 4 号 p. 175-179
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/03
    ジャーナル フリー
    余剰胚を凍結し,凍結融解胚移植を実施することにより採卵あたりART成功率は飛躍的に向上している.それゆえ,高い発育能を持つ凍結融解胚の見極めが重要となる.哺乳動物初期胚が消費する酸素量を個別に測定する技術は複数のグループより提案され,ヒト胚の臨床現場でも使用されるに至っている.上述の計測技術を用いて我々はヒト凍結融解胚盤胞が融解数時間で利用する酸素量に基づいて,高い発育能力を持つ凍結融解胚盤胞の選別系を構築した.本稿ではヒト凍結融解胚盤胞が利用する酸素量に基づいた,発育能の高い胚盤胞の選別系について紹介したい.
原著
  • 小林 万優, 住田 翔太郎, 新村 末雄
    2012 年 29 巻 4 号 p. 180-186
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/03
    ジャーナル フリー
    成熟モデルマウスの初期胚について,ブリリアントクレシル青(BCB)に陽性と陰性の胚の出現率とそれらの胚盤胞への発生率を調べた.2細胞期ないし桑実胚期の胚において,BCB陽性のものの出現率は,94.2ないし96.4%であり,BCB陰性胚の出現率に比べ,すべての時期で有意に高かった.また,BCB陽性胚の胚盤胞への発生率(85.7ないし96.7%)は,BCB陰性胚の0ないし50.0%に比べ,すべての時期で有意に高かった.一方,加齢モデルマウスから採取した2細胞胚および桑実胚において,BCB陽性のものの出現率は,79.5および58.6%であり,BCB陰性胚の出現率(20.5および41.4%)に比べて有意に高いとともに,BCB陽性胚の胚盤胞への発生率(77.1および79.4%)も,BCB陰性胚の発生率(0および45.8%)に比べて有意に高かった.なお,BCB陽性の2細胞胚と桑実胚の出現頻度は,成熟モデルマウスから採取したものに比べて加齢モデルマウスから採取したもので有意に低かったが,胚盤胞への発生率は,両モデルマウスから採取した胚の間で相違なかった.以上の結果から,BCB陽性胚の体外での胚盤胞への発生率はBCB陰性胚に比べて有意に高いことが確かめられた.また,卵子と初期胚におけるBCBに対する染色性とG-6-PDH活性との間には相関のあることが考えられた.
レター
  • 古橋 孝祐, 片岡 信彦, 緒方 洋美, 十倉 陽子, 山田 聡, 緒方 誠司, 水澤 友利, 松本 由紀子, 岡本 恵理, 苔口 昭次, ...
    2012 年 29 巻 4 号 p. 187-190
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/03
    ジャーナル フリー
    胚培養士が配偶子・受精卵について,患者に直接説明する機会は少ないため培養士外来を開設した.受診された85人を対象に①患者内訳,②年齢・採卵回数・胚培養士外来受診数,③所要時間,④具体的な質問,⑤患者の反応,⑥患者の要望に応えられたかについて集計した.その結果,①妻のみ56.7%,夫婦41.7%,夫のみ1.7%であった.②妻の平均年齢,平均採卵回数,平均培養士外来受診数は37.6歳,3.7回,1.1回であった.③妻のみ41.3分,夫婦41.7分,夫のみ20分.④受精卵の状態43.1%,今後の治療17.6%,過去の治療9.8%,精液所見9.8%.⑤よく理解が85.0%,まずまず理解が15.0%だった.⑥十分に応えられたが73.3%,まずまず応えられたが23.3%,あまり応えられなかったが3.3%だった.胚培養士から情報提供をすることは,患者と接する良い機会となり患者の思いを再認識する良い機会となった.
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