Journal of Mammalian Ova Research
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27 巻, 4 号
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総説
  • 久慈 直昭
    2010 年 27 巻 4 号 p. 165
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 達也, 柴原 浩章, 鈴木 光明
    原稿種別: 総説 特集:精子側からみた受精現象—capacitation・hyperactivationと細胞膜融合を中心に
    2010 年 27 巻 4 号 p. 166-175
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    哺乳動物において射出精子は,透明帯との結合,先体反応および卵子との受精のために雌性生殖路内で複雑な生理学的,機能的変化をとげねばならない.この精子が受精可能となる変化を受精能獲得(capacitation)と呼ぶ.capacitationを完了した精子は,透明帯を貫通するための特殊な鞭毛運動である超活性化(hyperactivation)と呼ばれる変化を示す.またcapacitationの過程で,精子表面や精子細胞膜の変化,Ca 2+やHCO3イオンの変化,アデニル酸シクラーゼ/cAMP/PKA経路そして精子タンパク質リン酸化の変化を起こす.将来的に,詳細なcapacitationのメカニズムの解明により男性不妊症における精子機能検査法や男性不妊治療法を開発できるかもしれない.
  • 向井 千夏, 奥野 誠
    原稿種別: 総説 特集:精子側からみた受精現象—capacitation・hyperactivationと細胞膜融合を中心に
    2010 年 27 巻 4 号 p. 176-182
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    体内受精を行う哺乳類では,精子鞭毛は射精にともない運動を活性化し,雌生殖器官内での受精能獲得時には超活性化と呼ばれる運動を示す.精子は卵に出会うまで,鞭毛運動を維持するためにATPが必須であるとともに,活性化や超活性化の運動変化を引き起こす細胞内シグナル伝達においても,cAMPの生成やタンパク質リン酸化にATPが必要となる.ATPの供給経路としては解糖系と呼吸系の2つがあげられるが,従来,精子の形態やその生産効率からミトコンドリアによる呼吸系が主であると考えられてきた.しかし,近年の研究成果により,鞭毛主部における解糖系によるATP供給が主要な働きをしていることが明らかとなってきた.本稿では,マウスでの知見を中心に,精子の鞭毛運動とシグナル伝達に関わるATP供給について解説する.
  • 井上 直和, 岡部 勝
    原稿種別: 総説 特集:精子側からみた受精現象—capacitation・hyperactivationと細胞膜融合を中心に
    2010 年 27 巻 4 号 p. 183-190
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    交尾後,子宮内に進入した精子のごく一部が輸卵管に移行する.その後,精子は輸卵管膨大部に存在する卵子に向かい,卵丘細胞層,透明帯を通過して受精に至る.この過程では,非常に多くの精子の中からたった1匹だけが受精にあずかることができる.精子が選別される過程は,極めて精巧な制御システムが存在していることが考えられる.実際に,6種類の遺伝子欠損マウスでは,精子の卵管への移行に異常があり,不妊になることが知られている.受精の最終ステップは精子と卵子の融合である.これまでに抗体などを使用した生化学的な解析によってfertilinが融合に関わる因子であると報告された.ところがfertilinのノックアウトマウスを作製しても,精子—卵子の膜融合に異常が見られず,fertilinを介する融合の分子メカニズムは崩壊した.我々も同様に受精阻害抗体とノックアウトマウスを用いた解析からIZUMO1を同定することに成功した.本稿では,IZUMO1を中心に精子側の膜融合機構について紹介したい.
  • 河野 菜摘子, 吉田 恵一, 原田 裕一郎, 大浪 尚子, 竹澤 侑希, 宮戸 健二
    原稿種別: 総説 特集:精子側からみた受精現象—capacitation・hyperactivationと細胞膜融合を中心に
    2010 年 27 巻 4 号 p. 191-197
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    受精は,新しい生命の誕生には必要不可欠で,多段階の過程を経て細胞融合にいたる現象である(図1).その多段階の過程のうちの1つでも異常が認められると,受精の進行が妨げられ,次世代の個体ができなくなる“不妊”という生命のサイクルにとって致命的状況を招いてしまう.不妊は動物,植物を含めたすべての生物種の集団としての存続を脅かす難治性疾患とも考えられ,環境および内在性因子の影響から,診断法,治療法など,数々の未解明な問題を含んでいる.Izumoは精子側因子として1),CD9は卵側因子として膜融合に必須であり2–4),精子および卵子の細胞膜に存在すると考えられてきた(図2).しかし最近の研究から,CD9は卵子から放出されるナノサイズの膜構造体の主要な構成成分であることが明らかになった5).本稿では,CD9を介した配偶子融合の分子メカニズムについて紹介したい.
  • 黒田 恵司
    原稿種別: 総説 特集:精子側からみた受精現象—capacitation・hyperactivationと細胞膜融合を中心に
    2010 年 27 巻 4 号 p. 198-203
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    動物種の受精卵において普遍的に細胞内カルシウムイオン濃度([Ca2+]i)が劇的に増加する.これが卵活性化(egg activation)の引金となる.哺乳類では第二減数分裂中期で停止していた卵(MII arrest)と精子の2つの配偶子の膜融合直後に,精子細胞質ファクターが卵に移行し,イノシトール3リン酸(IP3)受容体を介する小胞体からの反復性のCa2+遊離を誘起する(Ca2+オシレーション).その精子ファクターはIP3産生酵素であるホスフォリパーゼCゼータ(PLCζ)でほぼ間違いない.Ca2+オシレーションにより,卵表層顆粒の開口分泌を誘発し,透明帯タンパク質ZP3の精子結合部位を分解する結果,次の精子は先体反応を起こせず,複数の精子の卵への侵入を防ぐ多精拒否機構が成立する.一方で中期促進因子(MPF)が不活性化され,MII arrestが解除され分裂を再開する.分裂により第二極体が形成され,減数分裂が完了する.卵内の精子および卵子核は雌雄前核となり,1細胞期胚に入り,雌雄前核は合同し,第一卵割に至る.ここでは精子ファクターであるPLCζと卵活性化のメカニズムを概説する.
  • 小林 秀行, 中島 耕一, 上村 修一, 永尾 光一, 石井 延久
    原稿種別: 総説 特集:精子側からみた受精現象—capacitation・hyperactivationと細胞膜融合を中心に
    2010 年 27 巻 4 号 p. 204-207
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    精巣組織に含まれる精原幹細胞は,精子の源となる細胞であり,一生の間に自己複製および精子への分化を絶えず行っている.最近,マウスにおける精原幹細胞に関しては, in vitroでの培養が可能となったが,ヒト精原幹細胞に関しては,まだまだ不明な点が多く,謎に包まれている.最近,体細胞に特定の遺伝子を導入することにより多能性幹細胞を誘導することが可能となり,人工多能性幹(iPS)細胞と呼ばれている.また,ヒト精巣組織から培養条件を変えることによって多能性幹細胞が誘導されたとの報告がなされた.このように,ここ5年間で幹細胞に関する研究分野は急速に発展している.これら幹細胞に関する研究は,将来的に男性不妊症の解明や治療に大きく貢献することが期待されている.今回,ヒト精原幹細胞およびヒト精巣組織由来の多能性幹細胞について最新の知見を含めて報告する.
解説(特別寄稿)
  • 浅田 義正
    原稿種別: 解説(特別寄稿)
    2010 年 27 巻 4 号 p. 208-215
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    近年,ART(Assisted Reproductive Technology: 生殖補助医療技術)はめまぐるしく発展・普及し生殖医療の中心的役割を担ってきた.ARTの成績向上の為,技術の進歩が多く寄与してきた.調節卵巣刺激法も変化し発展したが,より良い刺激のため卵巣予備能の評価が重要であり,従来からの評価では十分でなく,最近AMH(Anti-Müllerian Hormone)が卵巣予備能のマーカーとして注目されてきた.AMHは月経周期に左右されず体外受精による採卵数と非常によく相関する.従来のbasal FSHは卵巣予備能が極端に減少してから変化するのに比べ,AMHは定量的に予備能を予知でき不妊治療の治療方針決定に重要である.一般不妊患者の中にAMHが0に近い卵巣早発不全予備軍が多数存在するが,いつまで治療可能かの目安をAMHで示すことができる.高齢の不妊患者が急増し,生殖期の不妊治療から生殖不能期へ不妊治療がシフトする中,閉経移行期の不安定なbasal FSH,E2はあてにならない.AMHが果たす役割は増々大きく,不妊治療ルーチン検査となりうる.
原著
  • 福元 隆浩, 庄司 憲明, 小野寺 大, 櫻井 威織, 平尾 幸久, 田中 哲二, 畑村 育次
    原稿種別: 原著
    2010 年 27 巻 4 号 p. 216-219
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    セロトニン(5-HT)は神経伝達物質として知られ,精神疾患の作用因子として理解されている.卵胞形成過程に於ける5-HTは,脳下垂体を介した性腺刺激ホルモンの調節下で作用すると考えられていた.最近の知見より,セロトニン受容体を介したシグナル伝達がプロゲステロンの卵胞内分泌を調整することが示唆され,かつ卵胞における5-HTはHPLCにより幾種もの動物で検出されている.卵胞組織において5-HTが分泌される可能性を検討する為,我々はセロトニン合成酵素である,TPH1,DDCと5-HTの解析をマウス卵胞で行った.5-HTは原始卵胞から検出され,卵胞成熟過程では卵胞透明帯で陽性反応が認められると同時に内包量が増大した.他方,セロトニン合成酵素の遺伝子発現の亢進が認められた.結果,卵胞成熟にはセロトニン合成経路が作用していることが明らかになり,卵胞組織で5-HTが分泌される可能性が示唆された.
  • 櫻井 威織, 幸田 敏明, 福元 隆浩, 畑村 育次, 平尾 幸久
    原稿種別: 原著
    2010 年 27 巻 4 号 p. 220-224
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,4?5日齢の雌マウスの腹腔にTestosterone propionate(TP)を皮下に注射した.TP投与後,5週齢に達したマウスの膣スメアは発情期や発情間期の像を示し,6,7と13週齢についても同様に変動が見られなかった.これらの卵巣組織では,観察した週齢の卵巣に共通して大きな卵胞腔をもつ卵胞が多数見られ,しかも黄体が存在していなかった.これは無排卵の状態になっていることを示しており,ヒトや他の動物で報告されている多嚢胞性卵巣の組織像や生理機能においてそれらの特徴とよく一致した.このことからTP投与後,5週齢でPCOマウスになることが明らかとなった.しかもこのようなマウスの卵巣を詳しく観察すると,正常では見られない二次卵胞に含まれる卵母細胞に限って減数分裂の再開や卵の活性化が見られた.このような現象はTP投与でもたらされた産物といえる.何故このような現象を示すのか,ヒトPCOSとの類似性と合わせて,本マウスが種々の分子レベルでの研究解析のモデルとして利用できることを示している.
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