Journal of Mammalian Ova Research
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22 巻, 4 号
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総説
  • 桑山 正成
    2005 年 22 巻 4 号 p. 193-197
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/28
    ジャーナル フリー
    1972年マウス胚ではじめて成功した哺乳動物胚の凍結保存技術は,ヒト体外受精プログラムにおける余剰胚を有効に利用する目的で,80年代前半にまず緩慢凍結法,そして90年代にはガラス化保存法として臨床への応用が開始された.さらに近年,ヒト胚のガラス化保存法は,その手法が冷却-加温速度の改善された超急速ガラス化保存法として確立され,保存-融解後のきわめて高い胚生存性から,今日の体外受精プログラムにおける有効な基幹技術として,ヒト胚凍結保存の主流になりつつある.
  • 京野 廣一, 中條 友紀子, 熊谷 志麻, 佐々木 幸子
    2005 年 22 巻 4 号 p. 198-205
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/28
    ジャーナル フリー
    1980年代前半まで卵子の採取は入院管理の上,全身麻酔・腹腔鏡下で行われるのが主体であったが,それ以降は経膣超音波下に行われ,さらに,カラードプラーや細い採卵針の導入により侵襲性を軽減し,安全・確実かつ迅速に行えるようになってきた.胚移植については最初の報告から大きな手技の変化はないが,卵管水腫・頸管粘液の除去,超音波断層下,軟らかいカテーテル使用,出血・鉗子を避け,子宮底に触れずに底から1.5 cmの位置に移植,抗プロスタグランデイン製剤の使用などの工夫により着床率の改善がみられている.本稿では,最近のこれらの手技について,文献的考察と著者の経験を交えて解説する.
  • 川瀬 洋介, 鈴木 宏志
    2005 年 22 巻 4 号 p. 206-210
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/28
    ジャーナル フリー
    現在,液体窒素を用いた精子の凍結保存法が積極的に利用されている.しかしながら,凍結精子の保存・輸送には様々な問題が存在し,これらの問題点を解決すべく,液体窒素を利用しない次世代の精子の保存・輸送方法として,凍結乾燥が注目されている.運動能をもたない凍結乾燥された精子においても,卵細胞質内精子注入法(ICSI)を利用することで凍結乾燥精子由来の産子を得ることが可能であることから,遺伝子資源の保存に凍結乾燥精子を利用することへの期待が高まっている.従って,凍結乾燥精子の数十年,数百年といった長期保存の可能性の保証や凍結乾燥精子を比較的高い温度で長期保存可能な凍結乾燥条件を見出すことが重要な課題である.最近,これらの課題を克服するために,医薬品の安定性を速度論的に考察するのに利用されている「アレニウスプロット」を用いた加速試験を応用することによって,凍結乾燥精子の長期保存性の予測が実現化された.
  • 兼子 智
    2005 年 22 巻 4 号 p. 211-215
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/28
    ジャーナル フリー
    これまでARTにおける授精法選択の指標として,精液所見,特に精子濃度,運動率などが重要視されてきた.射精精液中の精子は不均一な集団であり,顕微鏡所見による一般精液所見だけでは機能異常を把握できない場合が多い.授精法の高度化は媒精に供する精子数を減じたが,雌性生殖路で行われる精子の質的選別,生理的変化を in vitroで代行する必要を生じた.ARTにおける各種授精法の特性に対応した精子選別(調製)を行うべきである.
  • 久保 春海
    2005 年 22 巻 4 号 p. 216-226
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/28
    ジャーナル フリー
    HMGとrFSHは,ARTにおけるCOSにとって両者とも同等の優れた成績を示している.rFSHが潜在的に無制限の供給の可能性を持ち,費用効果が優れている.また,人種間較差がないので,日本人に対しても有効と考えられた.したがってrFSHは,ARTのCOSを受けている日本の不妊女性にとって新しい治療オプションとなる.またrFSHは皮下注(SC)投与であり,安全性,有効性の面で受け入れられ,その自己注投与ルートが認められれば,利便性が高い.また,rFSHはuFSHと比較して産科学的あるいは新生児に関する問題の発生率と無関係であった.
原著
  • 矢野 浩史, 久保 敏子, 大橋 いく子, 矢野 知恵子, 古谷 公一
    2005 年 22 巻 4 号 p. 227-230
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/28
    ジャーナル フリー
    Laser assisted hatching(LAH)をヒト胚に施行して,その後の発育ならびにhatchingに及ぼす影響について検討した.半導体レーザー(1.48 μm infrared diode laser)を使用するOCTAX Laser Shot systemにより行なった.IVFあるいはICSIにより得られた比較的良好なDay3胚のうち,胚移植が行われなかった余剰胚を患者の同意のもとに使用した.レーザーによる透明帯開孔を行なったものをLAH群,無処理のものをcontrol群とした.6~8細胞期胚にLAHを施行した後5日間培養を継続し,それぞれの群における胚盤胞形成率およびhatched胚盤胞率を検討した.胚盤胞形成率はLAH群37.5%(9/24),control群42.1%(8/19)であり,2群間で有意差は認めなかった.hatched胚盤胞率はLAH群88.9%(8/9),control群12.5%(1/8)であり,LAH群において有意に高かった(P<0.01).LAHは胚発育に影響を及ぼすことなくhatchingを促進すると思われた.LAHを施行して5例の妊娠が得られ,4例(単胎3例,双胎1例)が出産した.児は異常無く順調に発育している.LAH施行例における妊娠,出産の報告は本邦では初めてと思われる.
  • 小島 章弘, 藤井 俊策, 福原 理恵, 中村 理果, 木村 秀崇, 山口 英二, 福井 淳史, 水沼 英樹
    2005 年 22 巻 4 号 p. 231-235
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/28
    ジャーナル フリー
    Day 4に新鮮桑実胚を1個以上移植した306周期を対象とし,桑実胚の形態と治療転帰との関係を検討した.妊娠率は,最良桑実胚におけるcompaction率が「100%」で55.7%,「75%以上」で32.5%,「75%未満」で16.3%(P<0.0001),輪郭が「ほぼ球形」で62.8%,「浅い凹み」で46.3%,「深く凹み不整」で24.4%,「分葉」で11.1%(P<0.0001),fragment率が「5%未満」で50.3%,「5-25%」で29.4%,「25-50%」で19.4%,「50%以上」で33.3%であった(P=0.0004).単一桑実胚移植周期(n=121)では輪郭にのみ有意差(P=0.03)を認めた.透明帯厚は,最良桑実胚においては非妊娠周期の9.3±1.8 μmに対し妊娠周期では7.9±2.1 μm(P<0.0001),単一桑実胚移植においても非妊娠周期の9.7±2.0 μmに対し妊娠周期では8.5±1.9 μmと薄かった(P=0.004).妊娠成立へのロジスティック回帰分析では,最良桑実胚においては透明帯厚(P<0.0001),輪郭(P=0.0003)とfragment率(P=0.02),単一桑実胚移植においては透明帯厚(P=0.01)が有意な寄与因子であった.したがって,桑実胚においては透明帯厚と胚の輪郭が形態学的評価項目として有用である.
  • 高山 智子, 片寄 治男, 熊耳 敦子, 菅沼 亮太, 林 章太郎, 小宮 ひろみ, 佐藤 章
    2005 年 22 巻 4 号 p. 236-240
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/28
    ジャーナル フリー
    ヒトではICSIは通常IVFより胚盤胞形成率が低いことが広く指摘されている.この原因として注入精子核のクロマチン構造に注目し検討した.対象は2004年1月から10月までの期間のIVF21例,ICSI22例である.あらかじめ同意を得て回収された余剰の原精液洗浄精子をN-ethylmaleimide(NEM)と反応させ-80℃で凍結保存した.測定時に検体を解凍して強酸と反応させ,acridine orange(AO)液で染色した.flow cytometry(FACScan:BECTON DICKINSON)を用いて測定し,Cells outside the main population(COMP;%)と胚盤胞形成率との関係について検討した.この結果,ICSIにおけるCOMPと胚盤胞形成率との間に正の相関を認めた(r=0.477,p=0.025,n=22).以上より,ICSIでは核内disulfide結合(S-S結合)の少ない精子を有する症例ほど,胚盤胞形成率が有意に良好であることが指摘された.これは注入される精子核のジスルフィド結合の多寡が卵内での前核形成過程のdyssynchronyを生じ,以後の胚発生にも影響を及ぼす可能性も示唆した.
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