Journal of Mammalian Ova Research
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23 巻, 4 号
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総説
  • 小林 久人, 有馬 隆博
    2006 年 23 巻 4 号 p. 143-149
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/25
    ジャーナル フリー
    ゲノムインプリントは,母親と父親由来のゲノムに親の由来が記憶される現象である.この現象は動物では胎盤をもつ哺乳類にのみ存在し,2本ある対立遺伝子(アレル)の親の由来が識別された結果,片親性発現を示す数多くのインプリント遺伝子が報告されている.これらの遺伝子発現制御には,卵子・精子が成長する過程で各ゲノムDNA上に起こる性特異的なDNAメチル化が必須であることが,マウスを使ったこれまでの研究で明らかにされた.本稿ではゲノムインプリント機構とDNAメチル化の関連性について概説する.
  • 小澤 伸晃
    2006 年 23 巻 4 号 p. 150-157
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/25
    ジャーナル フリー
    均衡型の染色体構造異常保因者では表現型には異常を来たさないものの,不妊症や不育症,不均衡の染色体構造異常児の出産など様々な生殖異常の原因となる可能性がある.そのためIVFの着床不良症例や習慣流産患者では,一般集団に比べて高率に相互転座やロバートソン転座などの染色体異常が検出されている.減数分裂の過程で生じた不均衡型の染色体構造異常の配偶子により生殖異常が引き起こされるが,転座する染色体や切断点の部位により異常配偶子が生成される確率や自然淘汰を受ける時期は異なっており,各々の症例で生殖異常に対するリスク判定と治療手段を決定しなければならない.近年,異常保因者に対する治療法として着床前診断(PGD)が導入され,選択的に正常(均衡型)胚を移植することが行われている.自然妊娠での経過との比較など議論の必要性はあるが,症例によっては妊娠成績の向上に役立つことは確かであり,今後異常保因者に対する管理指針が充実していくことが期待できる.
  • 緒方 勤, 鏡 雅代
    2006 年 23 巻 4 号 p. 158-162
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/25
    ジャーナル フリー
    近年,生殖補助医療後に出生した児においてインプリンティング異常の頻度が高いことが報告されている.発生の機序に関しては不明であるが,インプリンティング異常症としてBeckwith-Wiedermann syndrome(BWS)とAngelman syndrome(AS)がある.そして,生殖補助医療と関連する可能性のある異常症としてSilver-Russell症候群(SRS)がある.生殖補助医療における遺伝的安全性の検討は重要事項であるが,今後はインプリンティング異常症との関連についても検討しなければならない.
  • 山海 直, 下澤 律浩
    2006 年 23 巻 4 号 p. 163-175
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/25
    ジャーナル フリー
    研究者は動物実験を行うとき,その目的に応じて使用する動物種を選択しなければならない.サル類はヒトに最も近縁な動物であり,前臨床試験等を実施するうえで必須の動物種といえる.ただし,研究者はサル類の特性を十分に把握しヒトとの類似点,相違点を知ったたうえで実験を行うべきである.本稿では生殖医療のためのサル類の発生工学の基本技術を紹介し,実験動物としてのサル類の位置づけを明確にしたい.
報告
  • 遠藤 克, 柳田 薫, 香山 浩二, 吉村 泰典, 野田 洋一, 井上 正人
    2006 年 23 巻 4 号 p. 176-183
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/25
    ジャーナル フリー
    不妊治療に大きな役割を持つ生殖補助医療に携わる胚培養士の質的向上を目指して,日本哺乳動物卵子学会では平成14年4月から胚培養士の認定制度を発足させた.これまでに生殖補助医療胚培養士として認定した455名について分析した.性別では女性が78.7%を占めた.年齢階級別比較では25~29歳が197名(43.3%)と最多レンジであった.胚培養士の最終学歴の分析では,4年制大学の卒業者が最も多く37.1%を占めた.学位取得の状況を検討すると取得者は86名(18.9%)に達している.生殖補助医療における培養室従事期間では,1~2年が最も多く43.1%であった.次いで3~4年の経験者が25.1%であり,施設での入れ代わりが活発であることがうかがえる一方で,この職種が新しいことを裏付ける結果でもある.勤務地域の分布では,関東地域が最も多く31.9であった.勤務施設別では最も多いのが産婦人科医院・クリニックで60.6%を占めていた.この報告で胚培養士の実態が明らかとなった.ヒトの生殖細胞ならびに胚を直接的に取り扱う胚培養士は,ARTに対応するための知識,錬磨された技能,高い倫理性と品位を兼ね備えていることを要求される.そのような専門性の高い技術者である培養士には公的認定制度が望ましい.また,認定制度に伴って生殖医療施設における組織改革と胚培養士の職責の明確化がなされ,社会的地位の向上につながるものと考えられる.
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