補体の第一成分であるC1の精製は数多く紹介されている。その多くは塩入操作後, カラムによるゲル濾過あるいはアフニティークロマトグラフィーなどによって分離されており, その溶出液中のC1の分画は赤血球溶血反応によりC1活性の認められた分画を集めている。今回我々は, C1活性の確認を溶血反応を用いずに, C1の構成成分のCIrと Clsの酵素特性を利用し開発された特異的合成基質を用いて行った。結果, 過去に報告されているものとほぼ同一のものが精製された。更に, 精製過程にセリンプロテアーゼの一般的な活性インヒビターであるdiisopropy目f-uorophosphateあるいはphenylmethyl sulfonyl fluorideを共存させたが, DFPでは非活性型C1 (前酵素) として血清中に存在する状態のC1が得られ, PMSFでは精製過程で活性化されて直ちに酵素活性を示す活性型C1が得られた。以上の結果からセリンプロテアーゼインヒビターの効果が, 単に酵素活性を阻止するだけでなく, 精製過程においてこれらのインヒビターが非活性型C1 (前酵素) を保護しながら精製できる効果の有するものと有しないものがあることがわかった。この原理で阻害剤を利用して精製したC1を更に溶血反応を用いずに活性型と非活性型を確認しながらの精製法は, 今後のC1の研究手段として役立つものと考えられる。
抄録全体を表示