-
南 貴大, 藤生 慎, 高山 純一
2020 年 1 巻 J1 号 p.
406-413
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
近年,東北地方太平洋沖地震や平成28年熊本地震などの大規模地震が発生している.地震動によって多くの橋梁が被災し,人命救助や物資輸送の妨げとなっている.本研究の対象地域とした横浜市では,橋梁の耐震補強が進んでおり,重要な橋梁については 99%対策済みとなっている.しかし定期点検によると各橋梁の損傷程度にはばらつきがあり,健全な橋梁と比較して既損傷が生じている橋梁については地震によって被災するリスクが高い可能性がある.そこで本研究では,定期点検データを用いて地震によって損傷の受けやすい部材である支承部の既損傷の劣化予測を統計的に行った.また今後想定しうる地震動と地震時に損傷を受けやすい既損傷の程度により被災リスクの評価を行った.
抄録全体を表示
-
原田 紹臣, 藤本 将光, 酒匂 一成, 水山 高久, 松井 保
2020 年 1 巻 J1 号 p.
414-420
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
我が国では,昭和43年の飛騨川バス転落事故を契機に道路防災点検が開始され,これまで多くの技術知見が蓄積されてきた.今後,これらの知見を活用させた危険度評価指標のAI化により,更なる点検精度の向上や,これらの技術知見の発展途上国等への技術移転等が望まれる.なお,我が国における既往の危険度評価方法は定量的なスコアリングシートを参考に,実際の運用においては専門の点検技術者による定性的な総合的判断に基づく評価が必要であるとされている.そこで,近年の説明責任を考慮した意思決定時における定量的な判断指標の一つとして,これまで蓄積されてきた既往の道路防災点検(意思決定)結果に基づいて AIを活用して,現行の評価方法の高度化を図り,新たな危険度評価システムを提案する.
抄録全体を表示
-
叶井 和樹, 山根 達郎, 石黒 聡士, 全 邦釘
2020 年 1 巻 J1 号 p.
421-428
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
日本では,地震や豪雨に伴う斜面崩壊が数多く発生している.被害状況の把握のために,国土地理院などにより航空写真から斜面崩壊領域を示した地図が作成されているが,斜面崩壊領域の判読は作業者が目視・手作業で行っており,多大な労力およびコストを要している.また,目視・手作業では迅速な地図作成が難しく,被害状況の迅速な把握の妨げになっている.その解決を目指し,深層学習に代表される人工知能技術を活用して斜面崩壊領域の検出を行う研究が進められている.しかし,いまだ研究は発展途上にあり,手法の蓄積が必要な段階にある.そこで本研究では,斜面崩壊領域の選定作業の効率化を目的とし,深層学習によるSemantic Segmentationを用いた斜面崩壊領域の自動検出手法の提案を行う.これにより,斜面崩壊領域を効率的に検出し,被害状況の迅速な把握を目指す.
抄録全体を表示
-
岡村 未対
2020 年 1 巻 J1 号 p.
429-436
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
河川堤防の高水時破堤メカニズムの一つに,パイピング破壊がある.この破壊形態は,破堤直前まで破堤の切迫度がわからないことが堤防管理上の大きな問題である.本論文は,堤体や堤体直下の基礎地盤内にパイプが形成されると,堤体法面表面に特有の形状をもつ凹部が形成されることを利用し,堤体表面形状の情報からパイピング進展度を評価する方法を模型実験により構築し,それをパイピングが発生した堤防に適用した結果を述べたものである.堤体内部や基礎地盤の詳細な材料や構造の情報が無い現状で,この方法はパイピング位置をほぼ正確に評価できる方法であることが実験によって明らかとなった一方,実際の堤防に適用する際には,正確な堤体表面形状を計測することが必要であり,植生の影響を如何に除去するかが課題であることも分かった.
抄録全体を表示
-
堤 浩志, 小濱 健吾, 小泉 圭吾
2020 年 1 巻 J1 号 p.
437-444
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
近年,異常気象による予測不可能な斜面崩壊が増加している.道路管理者には利用者の安全を確保するために斜面崩壊の迅速な検知が求められている.斜面の異常を検知する新しい監視システムとしてSDARアルゴリズムを用いたChange Finder1)による変化点検知手法が提案されているが,検知精度に関する課題が残されている.本研究では, 衛星を用いた測位システムであるRTK-GNSSデータに含まれるマルチパスによる誤差,および偶然誤差を事前処理することによって検知精度の向上を試みた.具体的には,マルチパスによる誤差の処理として恒星日差分法を,偶然誤差の処理としてローパスフィルタを適用し,両者を併用することによりChage Finderによる検知の可能性が向上することを確認できた.
抄録全体を表示
-
伊藤 真一, 小田 和広, 小泉 圭吾, 酒匂 一成
2020 年 1 巻 J1 号 p.
445-452
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
斜面の現地計測データを有効活用して豪雨時の斜面崩壊の発生予測を行うためには,陣雨量から土中水分量を予測できるモデルが必要である.本研究では,体積含水率の現地計測データを予測するための手法としてのリカレントニューラルネットワークの適用性の確認を目的として,通常の降雨時における現地計測データに基づいてモデルを推定し,より強い降雨時の現地計測データに対する予測性能について検証した.その結果,データ同化手法を適用して推定された浸透解析モデルを用いた解析結果よりは予測性能が低いものの,リカレントニューラルネットワークを用いた場合の解析結果は十分な精度で現地計測データを再現できており,リカレントニューラルネットワークが体積含水率の現地計測データを予測するための手法として有効であることが明らかになった.
抄録全体を表示
-
箱石 健太, 荒木 健, 一言 正之
2020 年 1 巻 J1 号 p.
453-458
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
本研究は,近年頻発する水害に対してより適切な水防活動や避難行動を行うため,数時間先の水位予測の精度向上を目的としている.予測対象は大淀川水系の樋渡(ひわたし)地点流域とし,上流部の水位観測所,流域周辺の雨量観測所の情報を用いて水位予測を試みた.水位予測モデルはGBDT(Gradient Boosting Decision Tree)モデルを用いて1~6時間の予測を行った.スタッキングモデルでは,近い時間の予測から段階的に行うものとし,予測結果を次の時間の予測を行うための特徴量として加えることで,時系列的な水位予測に適用した.構築したモデルとスタッキングを行わないモデルとの精度比較を行い,スタッキングモデルによる精度向上を確認した.
抄録全体を表示
-
一言 正之, 澤谷 拓海, 植西 清
2020 年 1 巻 J1 号 p.
459-464
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
深層ニューラルネットワークを用いたダム操作モデルにおいて,予測流入量誤差が及ぼす影響について検討した.検討に用いたダム操作モデルは,時々刻々と変化する状況(現時刻までのダムの実績水位,実績流入量,6時間先までの予測流入量)に応じて,洪水調節のためのダム放流量を決定するモデルである.対象は筑後川水系の松原ダムとした.モデルの学習は,実績降雨の引き延ばしなどによる仮想出水データを用い,強化学習(Deep Q Network)を適用した.モデルの検証のため,仮想出水の流入量に人為的な誤差を加え,実運用時の予測誤差を模擬したデータを作成した.計画規模を上回る 仮想3出水での検証において,予測流入量の誤差に対しても大きな影響を受けることなく,モデルは妥当な操作判断を示した.
抄録全体を表示
-
安野 貴人, 中島 道浩, 野田 一弘, 岡野 将大
2020 年 1 巻 J1 号 p.
465-472
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
我が国の約70万橋の橋梁が老朽化するなか,5年に1回の橋梁点検を持続可能にすることが根本的な課題となっている.点検から措置までのサイクルをペースアップするため,ばらつきを抑え一貫性のある健全度判定を行い,数値指標を用いた補修工法の選定が求められている.本稿では,橋梁部材の損傷画像から損傷の特徴を抽出するために,床版ひび割れの画像とその教師ラベルを対象に,セマンティック・セグメンテーションにより,損傷の特徴抽出に有用な領域検出器を学習し,劣化指標を自動計算する手法を提案する.最後に,橋梁点検支援ツールの汎用化の課題に言及する.(264字)
抄録全体を表示
-
南 貴大, 福岡 知隆, 藤生 慎, 寒河江 雅彦
2020 年 1 巻 J1 号 p.
473-480
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
老朽化が進んでいる道路橋に対して,5年に1度の頻度で定期的に近接目視点検が義務付けられている.しかし,近接目視による点検は,財源・人材・技術力の不足の課題があり,今後継続的に同様の質で点検を行うことが困難である.そのような中,画像を用いた損傷の自動検出技術による点検業務の効率化が期待されている.本研究では,画像認識を用いることで点検項目の一つであるひびわれの検出作業を補助する技術を開発する.高解像度カメラで撮影された広範囲のコンクリート構造物の画像に対してメッシュ分割を行い複数の画像に分割し,各画像をCNNで作成した画像分類器によりひびわれの有無を判定した.またメッシュ分割の位置を移動した結果を合成し平均値をとること(Average Shifted Mesh)でひびわれ箇所の検出精度・出力結果の分解能の向上を図った.
抄録全体を表示
-
青島 亘佐, 山本 拓海, 中野 聡, 中村 秀明
2020 年 1 巻 J1 号 p.
481-490
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
社会インフラの維持管理において,目視点検の省力化および効率化を図ることが近年の喫緊の課題の一つとなっている.そこで,本研究では,この課題を解決するため,デジタルカメラにより取得した画像に対して深層学習によるセグメンテーション手法を適用し,変状を自動的に検出して変状の程度の区分(ランク)に関するクラス分類を行う手法について検討を行った.また,深度画像を併用した手法についても検討を行い,RGB-Dカメラが,目視点検の省力化および効率化に有効なデバイスであることを確認した.
抄録全体を表示
-
山根 達郎, 上野 雄也, 叶井 和樹, 泉 翔太, 全 邦釘
2020 年 1 巻 J1 号 p.
491-497
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
維持管理を目的に橋梁の3次元モデルを作成する場合,損傷の具体的な位置をモデルに反映することで,モデル上での損傷の位置や形状の確認が容易になると考えられる.また,代表的な損傷であるひび割れについては,コンクリート表面の撮影画像からひび割れを自動検出する手法が多く研究されているが,コンクリート以外の物体が画像内に写り込んでいると検出が困難になる.本研究では,橋梁撮影画像からSemantic Segmentationを用いて予めコンクリートの領域のみを抽出することで,様々な撮影画像からひび割れの検出を行えるようにした.さらに,ひび割れ検出を行った撮影画像を基に,Structure from Motionによって橋梁の3次元モデルを構築することで,ひび割れの位置を反映した3次元モデルの構築を行った.
抄録全体を表示
-
光谷 和剛, 山本 佳士, 園田 潤, 木本 智幸
2020 年 1 巻 J1 号 p.
498-507
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
既設コンクリート構造物の性能を正確に評価するためには,表面だけでなく構造内部のひび割れ位置,寸法,角度等の詳細情報までを取得できる方法が望まれる.そこで本研究では,レーダ画像からGANを用いてコンクリート内部の欠陥の位置・角度情報を推定・可視化する手法の適用を試みた.具体的には,まず,人工欠陥を,位置,寸法,角度を変えて配置した供試体を作製してレーダ画像を取得する.取得したデータをGANの応用技術の一種であるpix2pixに学習させ,レーダ画像から欠陥を含む断面画像を推定・可視化した.検討の結果,提案手法は,欠陥の位置,寸法,角度情報を概ね再現できるものの,欠陥位置が深くなると欠陥からの反射波は実際より浅く推定され,精度が低下する傾向が見られた.
抄録全体を表示
-
吉田 龍人, 藤井 純一郎, 大久保 順一, 天方 匡純
2020 年 1 巻 J1 号 p.
508-513
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
現在の河川の点検は,目視を基本とした定性的な管理が行われているため,定量的かつ合理的な点検手法への転換が求められている.この問題を受け,筆者らはAIを用いた護岸のひび割れ検出に取り組み,これまでに自動検出の可能性を示した.
そこで本論文では,AI検出結果の幅をピクセル単位で計測する手法と,SfM解析によって空間解像度を統一した画像生成技術を併用することで,ひび割れ幅を実寸で自動計測する手法について検討した.その結果,本手法によって従来の人手の作業では困難であった網羅的なひび割れの計測が可能となった.
抄録全体を表示
-
江本 久雄, 馬場 那仰, 浅野 寛元, 長瀬 大和
2020 年 1 巻 J1 号 p.
514-521
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
J-STAGE Data
コンクリート構造物の点検等においてコンクリート内部の劣化の状態を調査する方法として,打音検査がよく用いられる.この手法は,熟練技術者にとっては非常に有効な手法であるが,若手技術者やロボットへの適用を検討するとその音データと劣化の程度の関係の複雑性により定量化・システム化が非常に困難である.このような問題では,明らかとなっていない要因が含まれていると考えられる.しかし,工学的な定量化・システム化に取り組み,実務での有効な技術の開発も重要である.そこで,近年このような課題に対して AI技術の活用が期待されている.ここでのAI技術は機械学習を意図し,その中でも特にニューラルネットワークを基礎とする深層学習を主な対象とする.本研究は,機械学習による識別の手法の有効性や自己符号化器の適用方法について検討をしたものである.
抄録全体を表示
-
新保 弘, 溝渕 利明, 尾関 智子, 野嶋 潤一郎
2020 年 1 巻 J1 号 p.
522-529
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
コンクリート構造物の劣化に伴う剥離やひび割れを簡便に知る方法として,打音探査は広く利用されている.しかし,その探査精度は技術者の技量や経験によるところが大きく,定量的・安定的な評価が難しい.ここでは,打音探査の定量化を目標として,機械学習による打音判定の検討を行った.具体的には,スペクトログラム変換により打音を画像化し,畳み込みニューラルネットワークにより分類した.本法を模擬欠陥を与えたコンクリート試験体及び塩害劣化した実構造物で試験を行い,軽量なデータにより熟練技術者と同程度の精度でコンクリートの欠陥を診断可能であること,また得られたニューラルネットワークには一定の汎化性能が認められることなどを示した.
抄録全体を表示
-
木下 幸治, 加藤 瑳那子, 多賀 翔一, 小塚 正博
2020 年 1 巻 J1 号 p.
530-535
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
本研究では,鋼製フィンガージョイントを対象に,定期点検の間に発生する変状の兆候あるいはその初期段階を発見する手段として,点検者の点検技術と補完し合い異常を検知するシステムの構築を目指し,車内に発生する通過音に基づいた異常検知を検討した.はじめに,溶接部の損傷を模擬した伸縮装置の通過音から損傷に起因する通過音の傾向を明らかとした上で,この傾向を基に供用中の伸縮装置の損傷を評価できる可能性があることを示した.続いて,経時的な通過音の収集として約1年後の通過音の計測を実施し,通過音の傾向の比較から,損傷に至るまでの伸縮装置の通過音のデータを蓄積することで,通過音による異常検知が可能となる可能性を見出した.
抄録全体を表示
-
久野 元, 蘇 迪, 長山 智則
2020 年 1 巻 J1 号 p.
536-544
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
列車の走行安全性や乗り心地の向上のためには,軌道管理が重要である.軌道の異常の一つである,浮きまくらぎは,短波長で動的な変状であるため,軌道検測車からの検測が難しく,目視による検査も多くの問題を抱えている.これらの問題点を解決するために,本研究では,列車の振動計測データを対象とした,非線形性の強い時系列の予測でも有効なLong Short-Term Memory (LSTM)と,予測の不確実性を推定できるモンテカルロドロップアウトに基づく,浮きまくらぎ検知手法を提案した.そして,提案手法を数値シミュレーションのデータに対して適用し,検知性能を検討した.提案手法により,既往手法と比べて性能が改善し,2本以上の浮きまくらぎならば高精度に検知できた.
抄録全体を表示
-
吉倉 麻衣, 南 貴大, 福岡 知隆, 藤生 慎, 高山 純一
2020 年 1 巻 J1 号 p.
545-553
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
老朽化が進む橋梁の維持管理のため,2014年より道路管理者に5年に1度の近接目視点検が義務付けられた.しかし財源や人員が不足する自治体では,継続的な近接目視点検が困難な状況である.そこで代替手法による点検の研究が進められている.我々は,橋梁画像から画像認識で損傷検出する「損傷点検支援システム」を開発した.画像による点検は,効率化・省力化に期待ができる一方,膨大なデータ量の橋梁画像の伝送には,高速通信が求められる.本研究では,システムへの橋梁画像伝送に5Gを活用し,模擬遠隔橋梁点検における画像伝送の時間計測を行い,橋梁現場と遠隔地を連携させた遠隔橋梁点検の有用性を検討した.また,システムの活用可能性や課題について橋梁点検者にヒアリングを行い,遠隔橋梁点検におけるコミュニケーションの課題を把握した.
抄録全体を表示
-
亀田 敏弘, 岡本 健宏, 新田 恭士, 秋山 成央, 二宮 建, 森川 博邦
2020 年 1 巻 J1 号 p.
554-559
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
センサ・通信デバイスの進歩により,社会基盤の多様なデータは,無線接続での取得が可能となっている.LPWA通信でのデータ取得方法は,設置に際して無線局免許が不要で,低消費電力かつ安価なハードウェアが供給されており,大量のセンサをローコストにて設置可能なため,大きな期待を集めている.しかし,社会基盤データの特徴として,災害時などの非常時にこそ昀も必要とされるものも多く,電源喪失の極限状況であってもデータ収集・配信の継続が求められる.著者らは,スーパー台風襲来による長時間停電が発生し公衆通信が途絶する危機的状況下であっても,複数の水門の開閉状況データを継続的に取得し一元監視可能なシステムの実現を目標に研究を進めており,LPWAネットワーク型データ取得における電源喪失時のレジリエンス向上について議論する.
抄録全体を表示
-
大澤 脩司, 藤生 慎, 小橋川 嘉樹, 高山 純一
2020 年 1 巻 J1 号 p.
560-569
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
2018年にクルーズ船の寄港回数が過去最高を記録するなど,我が国ではクルーズ観光分野が堅調に成長しており,クルーズ観光は我が国の観光産業の発展における重要テーマの1つとなっている.しかし,このためのクルーズ旅客の観光実態を把握する試みには十分な研究蓄積がないのも実情である.本研究ではWi-Fiパケットセンサを用いてクルーズ旅客の観光行動を把握することを試みる.石川県金沢港に寄港した複数のクルーズ船の旅客を対象に,金沢市内の主要な観光地に設置したセンサから得られる観測データをもとに,観光地の訪問比率に着目して,クルーズ船の特性によって旅客の観光行動には差異が生じる可能性があることを示した.また,本調査データの分析を通して,さらなるクルーズ旅客の観光実態把握に向けて取り組むべき研究の方向性を整理した.
抄録全体を表示
-
出水 瑛, 藤生 慎, 髙山 純一, 大澤 脩司
2020 年 1 巻 J1 号 p.
570-579
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
近年,人口減少及び高齢化が進む我が国において,拡散型都市構造に伴う生活利便性の低下やまちの魅力の喪失といった問題に直面する可能性がある.そこで,集約型都市を目指すため,ある程度の都市機能やインフラなどのストックがある中心市街地を活性化させることは重要である.
本研究では,中心市街地の現状を分析するため,市民の詳細な来街行動を把握するために,大規模なアンケート調査から,中心市街地内・外の住民の特性,市街地内における平均周遊ヵ所数,昼夜間別の行動特性,来街を阻害する要因となる不満度等を明らかにした.また,アンケート調査では得られない市民の動向を把握するために,小型コンピュータのラズベリーパイを用いて夜間における繁華街の Wi-Fiパケットセンサ調査を行い,訪問者の時間帯分布をエリアごとに示した.
抄録全体を表示
-
高橋 悠太, 藤井 純一郎, 天方 匡純, 山下 隆義
2020 年 1 巻 J1 号 p.
580-587
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
我が国は,その国土に多くの河川を有し,管理作業の多くは人の手により行われている.ドローン(UAV)技術の発展により,河川監視への適用事例が増えており,得られた画像に人工知能を適用し,不法投棄等を認識検知する研究も行われてきた.人による地上での撮像は,作業量も多く,場所の制約や,ばらつきに影響される.空撮画像は地上画像とは異なる画角を持ち,撮影条件も異なる.本研究では,河川維持管理データベースシステムRiMaDISが有する大量の地上画像を,現在ではまだ数少ない空撮画像での検知精度向上に活用する.画像特徴量に基づき分類した不法投棄に関する画像をFaster R-CNNに入力し,推論結果を比較する.検証により,Bounding Boxの画像占有率などが検知精度向上に寄与することを明らかにした.
抄録全体を表示
-
藤井 純一郎, 吉田 龍人, 天方 匡純, 山下 隆義
2020 年 1 巻 J1 号 p.
588-595
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
我が国は,その国土に多くの河川を有し,点検・巡視などの河川維持管理業務の多くは目視により行われている.中でも頻度の高い河川巡視では巡視員が現場で異常の記録や河道の状況把握などを行っているが,その一部はUAVによる写真測量と深層学習による画像認識を組み合わせることで効率化できると考えられる.本研究ではUAV写真測量で得られたオルソ画像に対して,深層学習による画像認識手法の一つであるSemantic Segmentationを適用し,河道内の砂州・樹木等の領域を分類する手法を提案する.深層学習モデルは撮影高度の異なる空撮画像を混合して学習を行い,高い精度の河道領域分類モデルを得ることができた.当該のモデルを地上画素寸法(GSD)を変えたオルソ画像に適用する実験を行い,教師データとGSDが異なるオルソ画像に対しても汎用的に領域分類が行えることを確認した.
抄録全体を表示
-
党 紀, 松山 当也, 全 邦釘, 史 紀元, 松永 昭吾
2020 年 1 巻 J1 号 p.
596-605
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
効率的に橋梁などのインフラストラクチャを維持管理するため,UAVやロボットが橋梁で撮影し得られた画像から自動的に損傷を認識する手法が近年注目されている.特に,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を代表とする深層学習手法を用いた損傷認識が検討されている.今までの研究では,実験室環境で得られたひび割れ写真や点検報告書から得られた損傷写真を用いた研究が多いが,UAV点検で実橋梁から撮影された写真に適用すると,背景や健全な構造を損傷と誤認識する問題がよく生じる.本研究ではこの問題を改善するために,点検写真とUAV写真を両方用いたデータベースを構築し,背景誤認識の問題を改善する試みを報告する.特に,画像分類のための深層学習方法で処理できる画像のサイズが小さいため,UAVでとられた4K写真小さく分割して適用する必要がある.そして本稿では,画像分割に影響されず,ピクセルレベルで損傷認識するためのFCN手法を適用し,高精度の腐食認識を試みた.最後に,損傷分類だけではなく,画像分類による損傷区分判定への適用性についても検討した.
抄録全体を表示
-
福岡 知隆, 南 貴大, 藤生 慎, 鷹合 隆栄, 高山 純一
2020 年 1 巻 J1 号 p.
606-612
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
水力発電には発電施設よりも高い位置にある水源の水が用いられる.水は水圧鉄管を通って水源から発電施設に運ばれるが,この水圧鉄管は直径が数十cmから数m,長さは数十mから数kmにも及ぶ場合がある.これらの水圧鉄管に対して定期的な点検が行われているが,現在の点検手法は作業員が直接現地に赴き水圧鉄管全体の損傷具合を確認しており,時間と労力を要する.
我々はこの問題に対してドローンと画像処理技術による損傷確認の自動化手法を提案し,評価を行った.また,屋外の水圧鉄管は泥や落ち葉などが付着している場合があり,可視画像だけではそれらノイズと錆の判別が困難である.我々は温度変化による赤外線画像上の違いに着目し,ドローンによって撮影された赤外線画像と可視画像を比較し,赤外線画像が有用であるかを検討した.
抄録全体を表示
-
石井 明, 菅原 宏明, 小篠 耕平, 天方 匡純
2020 年 1 巻 J1 号 p.
613-622
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
大量の社会インフラの老朽化が今後急速に進展するため,適切な維持管理のもと機能を維持していく必要がある.しかし,限られた人的・財的社会環境下において,従来の点検や診断方法では対応できなくなる懸念がある.そのため,最新技術を活用し,効率化・高度化した新たな点検手法の適用が今後進展していくものと想定される.
そこで本稿では,効率的なダム堤体の点検・診断・管理の実現を目指し,トータルステーションを活用した非GNSS環境下のUAVの自律航行の確立と,自律航法によるジオタグ付きの等距離正対空撮画像を活用した写真測量技術の精度改善およびAIによる画像劣化情報検知手法を提案する.また,提案手法は宮ケ瀬ダムで現場実証し,その有用性を示した.
抄録全体を表示
-
党 紀, 菊池 高博, 全 邦釘, 史 紀元
2020 年 1 巻 J1 号 p.
623-633
発行日: 2020/11/11
公開日: 2020/11/18
ジャーナル
オープンアクセス
自動運転車や自動掃除機など機械の自立化が進んでおり,建設業界でも機械の導入そして機械の自立化が期待されている.建設業の中でも技術者不足や老朽化橋梁の増加などの問題がある橋梁点検においてUAVの自律飛行による橋梁点検が有効な手段であると考える.また,汎用型UAVとスマートフォンアプリケーションという多くの人が操作できるものを使用して橋梁点検を行う.さらに,損傷の自動検知を行うためにUAVのカメラで撮影した動画や画像を用いて対象物の2Dモデルを作成する.したがって,汎用型UAVとスマートフォンアプリケーションを使用した自律飛行 UAVによる橋梁点検の妥当性や2Dモデルおよび自動検知の妥当性を検討することを目的とする.
抄録全体を表示