日本消化器集団検診学会雑誌
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40 巻, 4 号
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  • 野口 哲也, 今野 豊, 島田 剛延, 渋谷 大助
    2002 年 40 巻 4 号 p. 327-334
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    胃集団検診における精度と効率を考えると偽陽性の検討は重要と思われる。当センターでの精検結果をもとに検討した。精検該当者は一次検診者と比較し, 平均年齢が高く, 初回受診者, 男性が多く認められた。また, 精検該当者には, 逐年精検該当者は少なく, 初回精検該当者が多く認められた。偽陽性無病変群64.4%, 偽陽性有病変群33.0%, 陽性群2.6%であった。偽陽性有病変群には胃潰瘍・潰瘍瘢痕, ポリープ, 粘膜下腫瘍, 腺腫等経過観察が必要な症例が約70%を占めた。読影の判定基準は±例 (存在診断疑い) が全体の89%を占め, そのうち約70%が無病変群であった。間接読影所見で偽陽性率は直接所見が低く, 間接所見が高く認められ, この傾向は±群においてもみられ, 間接所見が偽陽性と成り易かった。診断チェック部位において, 無病変群は, 小弩, M領域・胃角部が多くみられた。偽陽性無病変の特徴を踏まえ, X線所見のみではなく, 既往歴, 検診受診歴, 自覚症状, 前回X 線写真などを参考に慎重に読影する必要があると思われる。
  • 齋藤 洋子, 福富 久之, 真田 勝弘, 海老原 次男, 対馬 健祐, 中原 朗, 柿元 まゆみ
    2002 年 40 巻 4 号 p. 335-342
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    平成12年度の胃がん検診を基本健康診査と総合検診で実施した5市町村1,540人中, 事前の同意が得られた1,524人に対し, 間接X線撮影法とペプシノゲン (以下PG) 法の同時併用でモデル検診を実施した。PG法の判定は1+: PGI 70ng/ml以下かつI/II比3.0以下, 2+: PGI 50ng/ml以下かつI/II比3.0 以下, 3+: PGI 30ng/ml以下かつI/II比2.0以下を用い, 2+, 3+を要精検扱いとした。モデル検診全体の要精検率は31.4%, 間接X線法単独は9.2%, PG法単独は17.7%, 間接X線法とPG法共に要精検は 4.5%であった。モデル検診の癌発見率は0.26% (4名) で内訳はPG法のみ要精検から前壁発生の2名の粘膜内癌, 間接X線法のみ要精検から病期IVの進行癌1名, 病期IIの早期癌1名であった。毎年の同時併用では癌発見率は高くなるものの要精検率, 費用とも高くなり, 地域検診では従来の間接X線法に加え5年毎にPG法を同時併用する方法が効率的, 現実的であった。
  • 宇野 昭毅, 細井 董三, 小田 丈二, 中橋 栄太, 水谷 勝, 入口 陽介, 大浦 通久, 中村 尚志, 斉藤 雄介, 中井 呈子, 山 ...
    2002 年 40 巻 4 号 p. 343-346
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    今回, 我々は大腸m癌143例, sm癌119例を対象に, スクリーニング法としての注腸X線検査による早期大腸癌の示現能について検討した。ルーチン注腸X線検査による示現率は, m癌は923%, sm癌は 95.8%であった。部位別にみた示現率ではm癌, sm癌とも右側結腸で描出が悪かった。肉眼型と部位別の検討ではm癌, sm癌とも隆起型に比べ表面型の示現率が低かった。示現不能例はm癌が11例, sm癌が5例であった。示現不能の原因として, m癌ではバリウムの残存やバリウムのひび割れ等検者の技術不足によるものが多く, 前処置不良も3例認めた。sm癌では全例が右側結腸にあったこと, 5例中 4例は表面型でかつ5mm以下の微小病変であったことなどが要因と考えられた。
    我々の検討では右側結腸の癌および表面型大腸癌の示現能に問題が明らかになり, その点を念頭に置きながら細心の注意をはらって検査に望めば, スクリーニングとしての役割は充分に果たしうると考えられた。
  • 池田 敏
    2002 年 40 巻 4 号 p. 347-353
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    C型肝炎多発地区で肝癌検診を行った。274人の住民がのべ1, 016回受診し, HCV抗体陽性率は79.6% と非常に高率であった。肝癌高危険群 (HRG) 90人に対する年2回の腹部超音波検査を含めた追跡検診はのべ528人が受診し, 5例 (0.95%) の肝癌が発見された。定期的な追跡で発見された肝癌症例の腫瘤径は20mm以下であった。対象地区の予後調査により他に5例の肝癌が確認され, 4例は我々の基準でHRGと判定されていた。1例はHRGと判定されていなかったが超音波検査で肝硬変を認め, 毎年受診していたなら肝癌で死亡する迄に必ず拾い上げ可能と思われた。HRGの医療機関受診状況は病院通院42人, 診療所24人, 通院なし24人で, 特に通院なし群に対して積極的な受診勧奨が必要と考えられた。検診で発見されたHCV抗体陽性者の事後管理は, 医療機関と連携を図りながら, 地域保健師と協力して通院状況, 生活歴など個々の状況に応じたきめ細かい指導が重要と考えられた。
  • 窪川 良廣, 有山 襄, 須山 正文
    2002 年 40 巻 4 号 p. 354-361
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    切除胆嚢癌104例についてUS所見を検討し, さらに胆嚢結石, 急性胆嚢炎合併例, 膵・胆管合流異常併存例についてUS所見を検討した。胆嚢癌ではUSで癌の存在診断ができない例の多くは胆石, 急性胆嚢炎の併存例であった。切除胆嚢癌の胆石合併率は57.7%で, 無石例は1例を除いて存在診断ができたが, 有石例の診断率は早期癌では26.7%のみ, 進行癌でも6.9%にとどまった。さらに急性胆嚢炎合併例では早期癌は全例で診断できず, 進行癌でも40%の診断率であった。膵・胆管合流異常併存例は胆嚢癌合併16例, 非癌例21例を比較した。40歳以下の例は胆嚢癌の症例はなく, 40歳以上の例では40.7%が胆嚢癌であった。非癌例は21例中17例と多くが過形成粘膜を併存し, これらは2または3層の層構造の描出が特徴的であった。一方胆嚢癌症例では早期癌の2例で膵・胆管合流異常の過形成粘膜に特徴的なUS所見のみ描出されたが, 早期癌2例を含めた他の14例のUS所見は通常の胆嚢癌のUS所見と同様であった。胆石, 急性胆嚢炎の例は胆嚢癌の存在に注意が必要で, また層構造を有する胆嚢の壁肥厚がみられた際には, 膵・胆管合流異常の存在を疑い, 精査すべきである。陶器様胆嚢も胆嚢癌のハイリスクグループとされ, 精査が必要である。
  • 山陰地区における読影委員会の現状と問題点
    三浦 邦彦, 謝花 典子, 岸本 幸廣, 古城 治彦
    2002 年 40 巻 4 号 p. 362-367
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    島根県胃がん検診および米子市胃がん施設検診, この両読影委員会の変遷を把握し, 山陰地区におけるX線読影医育成の現状と問題点について検討した。両読影委員会ともX線読影医の固定化, 高齢化が顕著にみられた。平成7年以降, 新人の加入は殆どみられず, これは若手読影医が育成されていないことに大きな原因があった。胃X線読影医の育成には基幹病院における若手医師に対する胃X線診断学への教育が最も重要であり, この分野に興味と情熱を持たせる事が必須である。著者らも現状を反省し, 今回の検討で明らかになった研修施設の減少, 内視鏡検査優位の最近の風潮などの問題点をひとつずつ解決するために, 今後, 真剣に努力を重ねるべきと考える。また, 当地区においては, 若手医師の消化器集団検診学会への入会が極めて少なく, 学会からの若手医師に対する啓蒙, メッセージなども大切な事と思われる。
  • 志和 忠志, 菱木 智, 牧 由美子, 野村 正征
    2002 年 40 巻 4 号 p. 368-372
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    当センターでは平成6年度より直接X線による検診を開始し, 平成8年度より直接X線と内視鏡を受診者が自由に選択する方式とした。平成6年度に41.5%だった胃検診の受診率は平成12年度には69.5% に上昇し, 平成8年度に12.0%だった内視鏡選択者の比率は平成12年度には73.4%に上昇した。胃癌発見率は内視鏡が0.23%と, 直接X線の0.18%より高かったが, 有意差はなかった。良性病変の発見率は, 消化性潰瘍, 潰瘍瘢痕, 胃ポリープとも, 内視鏡が有意に高かった。胃癌1件を発見する費用は, 内視鏡では575万4千円と, 二次精検の費用を併せた直接X線の729万3千円より安かった。内視鏡による職域胃検診にはいくつかの問題点もあり, 今後100%内視鏡による胃検診を行うためには, 内視鏡検査時の苦痛軽減, 定期健診と同日に受診できるシステム作りなどの努力が必要であると考えられた。
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