IgA血管炎は小児に好発する全身性の小型血管炎であり,一般的に予後良好であるが,特異的な治療法はない.典型的な症状としては紫斑と関節痛,腹部症状,腎障害が挙げられる.紫斑は全ての患者に出現し,関節痛は約74%,腹部症状は約51%,腎障害は約54%の患者に認められる.腹部症状に対して非ステロイド性抗炎症薬,ステロイド,第ⅩⅢ因子が投与されるが,それらの治療でも効果がみられない場合がある.今回,治療抵抗性の腹部症状にDapsone(以下DDS)が著効した1例を経験したため報告する.症例は4歳の女児である.再燃したIgA血管炎の腹痛に対して非ステロイド性抗炎症薬の内服やステロイドと第ⅩⅢ因子の経静脈的投与を行ったが改善しなかった.そこで第20病日からDDS(1.5mg/kg/day)の投与を開始したところ速やかに症状が改善した.IgA血管炎の腹部症状に対するDDS投与に関して,小児では自験例も含め22例の報告がある.全例で効果があり,副作用は5例(メトヘモグロビン血症2例,ダプソン過敏性症候群 1例,溶血性貧血1例, 汎血球減少1例)で認められたが,DDSの中止や減量でいずれも改善している.症状が重篤でステロイドでの治療が困難なIgA血管炎の腹痛に対して,DDS投与は治療の選択肢になり得る.
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