造血細胞移植後には予防接種が推奨されるが,本邦の小児移植医療現場における移植後予防接種の現状は明らかでない.
日本小児血液・がん学会 造血細胞移植委員会による全国規模の多施設共同研究として,移植後予防接種に関する施設アンケート調査を施行した.
回答率は67%(57/85)であった.全施設で日本造血・免疫細胞療法学会のガイドラインは周知されおり,移植後予防接種の方針が決まっている施設は88%(49/56)であった.不活化ワクチンの開始基準は,慢性移植片対宿主病(GVHD)の悪化がない,免疫抑制剤の終了(いずれも34/49),生ワクチンの開始基準は移植後2年経過(36/49),慢性GVHDの悪化がない(39/49),免疫抑制剤の終了(40/49)としている施設が多く,不活化ワクチンでは27/49施設,生ワクチンでは37/49施設が免疫学的指標を使用していた.各ワクチンの接種回数は,麻疹風疹,水痘等はガイドライン通りの施設が多かったが,ガイドラインで既定のない日本脳炎等のワクチンは接種回数が決まっていない施設が多くみられた.
本研究から,多くの施設がガイドラインに沿って移植後予防接種を行っていることが明らかになった.またガイドラインに規定はないが,多くの施設が免疫学的指標を参考にしていた.移植の種類は多様化しており,個々の免疫状態に応じた予防接種が行えるよう情報の集積が望まれる.
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