日本小児血液・がん学会雑誌
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第65回日本小児血液・がん学会学術集会記録
JSPHO&JCCG特別企画 ジョイントシンポジウム:長期フォローアップの問題点と今後の展望
  • 小澤 美和
    2025 年 62 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/17
    ジャーナル 認証あり

    目的:小児がん経験者(CCS)の長期フォローアップにおける包括的な健康の質の評価,CCSの健康教育,これらをシステマティックに行う体制構築を行うこと.対象:①同意取得の時点で18歳以上の者 ②小児がん診断後10年以上かつ現病に対して5年以上無治療の者 ③治療サマリーを持っている者 方法:事前自己評価アンケート後,病院付属の予防医療センターにて半日,病院にて半日,臨床心理士による半日の評価を行う.後日,本人へ報告書を渡すと共に健康教育を行う.晩期合併症の有無は,modified CTCAE v4.0に準じた.結果:研究開始前の2010年12月から2015年12月に,担当医の裁量によって検査・診察が行われたCCS(一般的フォローアップ群)110人を対象群として,2016年2月から2019年9月までに『聖路加AYAコホート研究』に参加した(包括的スクリーニング群)58人の晩期合併症を比較した.Grade 1以上の晩期合併症の検出率は,包括スクリーニング群:一般的フォローアップ群=93.1:67.3(%).Grade 3以上の晩期合併症の出現率は2群間の頻度に差を認めなかった(p=0.157).臓器別に晩期合併症の検出頻度は,肺機能異常,認知機能異常,眼科的異常,歯の異常において包括的スクリーニング群での検出率が優位に高かった(p<0.001).さらに特筆すべきは,精神的合併症が治療強度とは関係なく検出されたことである.結語:肺機能異常,眼科的異常,歯の異常,認知機能異常,精神の異常の晩期合併症は見落とされやすい.

シンポジウム1:CAR-T 療法 ~「これまで」と「これから」~
  • 加藤 格
    2025 年 62 巻 1 号 p. 6-13
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/17
    ジャーナル 認証あり

    tisagenlecleucelが日本で薬事承認されてから5年以上が経過した.日本CAR-Tコンソーシアムは,本邦におけるtisagenlecleucelのリアルワールド(RW)での使用経験を把握するために,tisagenlecleucelを投与された小児AYA世代再発・難治性B-ALLのデータベースを構築した.2019年5月22日以降,日本の11施設が参加し,2022年2月1日時点で合計42例の輸注患者が解析された.

    全奏効率(CR/CRi)は93%であった.Tisagenlecleucel輸注後の1年OS率は82%,EFS率は56%であった.27例(64%)の患者はtisagenlecleucel輸注前の骨髄リンパ芽球が5%未満の患者で1年EFS率が80%であったのに対して骨髄中の芽球5%以上の症例では1年EFS率が24%であった(p<0.0001).多変量解析により,造血細胞移植(HSCT)の既往(n=23,55%)患者が予後良好であることが明らかになった.HSCT既往患者の1年EFS率は75%であったのに対し,HSCT未実施例では24%であった.

    これらの患者集団の長期フォローアップデータおよび患者サンプルのさらなる詳細な解析により,CAR-T治療に関するさらなる知見が期待される.

シンポジウム7:小児血栓止血診療の課題がどこまで解明され,どのように今後展開されていくのか?
  • 森 麻希子, 石黒 精, 東川 正宗
    2025 年 62 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/17
    ジャーナル 認証あり

    2022年,日本小児血液・がん学会血小板委員会は,「小児免疫性血小板減少症診療ガイドライン2022」を策定した.病名や病期の変更に加え,出血症状の評価に修正Buchanan出血重症度分類を導入した.血小板数だけでなく,出血症状,活動度や生活様式,医療機関へのアクセスなど多面的な評価に基づき,患者の健康に関連した生活の質(HRQoL)の向上を目指した治療介入を提案した.これまで以上に個別化した対応が求められ,鑑別診断のすすめ方に加え,治療選択の決定において血液専門医との連携が容易にできる体制も必要である.

    セカンドライン治療に位置づけたTPO受容体作動薬,リツキシマブは,国内においては長らく小児ITPへの用法・用量の設定がなく,各施設の倫理指針などにそった導入の検討を余技なくされていたが,本ガイドラインも後押しとなり,今年4月に小児への適応拡大が認められた.サードライン以降の治療にはいずれも適応外であり,より安全で有効性の高い新薬の開発が求められている.新薬の標的分子として,脾臓由来チロシンキナーゼ,ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬,胎児性Fc受容体阻害薬などがあり,小児ITP診療においても今後の展開に期待したい.

    いくかの課題に向き合いつつ,本ガイドラインの普及につとめ,臨床現場の選択がどのように変化したかを検証し,次期の改訂に反映させたいと考えている.

シンポジウム8:血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管奇形に対する新しい治療戦略
  • 小関 道夫
    2025 年 62 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/17
    ジャーナル 認証あり

    皮膚や軟部組織に異常な血管やリンパ管が発生する疾患群は血管腫・血管奇形(脈管異常)と呼ばれるが,小児血液腫瘍の診療の中では,乳児血管腫だけでなく,カサバッハ・メリット現象を伴う血管性腫瘍や,リンパ管疾患,静脈奇形,クリッペル・トレノネー症候群など難治な症例に出会うこともある.治療法は病変の大きさや症状により個別に決定され,小さな病変は経過観察や完全切除可能な場合は手術,硬化療法が選択肢となるが,切除困難な巨大病変など,難治例に対しては治療が確立されていない.近年の研究でPI3K/AKT/mTOR,RAS/MAPK/MEKシグナル伝達経路上の遺伝子異常が原因として特定され,病態との関連性が注目され,それをきっかけに新しい治療薬の開発が進んでいる.2024年1月には本邦でmTOR阻害剤であるシロリムスが承認された.病変の縮小や出血,疼痛などの軽減に有効とされているが,その薬理作用のみならず,使用方法や治療適応など,まだ十分にわかっていない面も多い.本総説では小児血液腫瘍の臨床現場において出会う難治性血管腫・血管奇形を紹介するとともに,シロリムスの治療適応や実際の治療についてまとめる.

学術賞講演 大谷賞
  • 佐藤 篤
    2025 年 62 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/17
    ジャーナル 認証あり

    血友病の治療が目覚ましい進歩を遂げる中,近年では出血が十分予防されているかだけではなく,患児・家族の生活の質(QOL)の向上も重要な治療評価の指標となってきている.エミシズマブは抗体製剤として,皮下注射による投与であること,半減期が長いことなど,これまでの血液凝固第VIII因子製剤とは異なる特徴を有している点から患児・家族のQOLの向上が期待されている.実際,HAVEN studyなど国際臨床試験,第1/2相試験,HOHOEMI試験など国内の患者を対象とした臨床試験や,その他の調査の結果から,小児,成人いずれにおいてもインヒビターの有無にかかわらず,QOLの向上が多く報告されてきている.またエミシズマブは選好度調査も行われているが,エミシズマブが投与された小児,成人患者いずれからの評価も高い結果であり,その理由には前述のエミシズマブの特徴が関連していた.宮城県立こども病院における投与例の調査からは小児血友病A患児ばかりでなく,その家族のQOL向上にも貢献している可能性が示唆されている.今後,エミシズマブの広がりやさらなる治療薬の進歩によって,血友病患児・家族のQOLのさらなる向上が期待される.

第66回日本小児血液・がん学会学術集会記録
シンポジウム3:造血細胞移植の前処置としての全身照射
  • 梅田 雄嗣
    2025 年 62 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/17
    ジャーナル 認証あり

    小児の様々な血液悪性疾患,非腫瘍性疾患の同種造血細胞移植において,残存する腫瘍細胞の根絶や生着不全のリスクを減らすために,全身照射の役割は依然として重要である.一方,TBIに関連した有害事象による長期的な生活の質への影響の観点から,非照射前処置や強度減弱前処置(RIC)の開発が試みられてきた.

    小児血液悪性疾患に対しては残存腫瘍細胞の根絶を目指した高線量全身放照射(TBI)を併用した骨髄破壊的前処置(MAC)が依然として主要な移植前処置である.一方,多くの非腫瘍性疾患に対する移植前処置は,生着不全の頻度を増加させずにTBIに関連した合併症のリスクを減らすために低線量放射線照射を併用した強度減弱前処置が主流となってきている.乳幼児や一部の放射線感受性の高い疾患ではTBIに関連した合併症が問題となるため,これらの小児の特性を配慮した新規放射線照射技術の導入が期待される.

総説
原著
  • 南條 由佳, 佐藤 篤, 鈴木 資, 福島 啓太郎, 森本 哲, 長澤 正之, 井口 晶裕, 平山 雅浩, 田内 久道, 安井 昌博, 加藤 ...
    2025 年 62 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/17
    ジャーナル 認証あり

    造血細胞移植後には予防接種が推奨されるが,本邦の小児移植医療現場における移植後予防接種の現状は明らかでない.

    日本小児血液・がん学会 造血細胞移植委員会による全国規模の多施設共同研究として,移植後予防接種に関する施設アンケート調査を施行した.

    回答率は67%(57/85)であった.全施設で日本造血・免疫細胞療法学会のガイドラインは周知されおり,移植後予防接種の方針が決まっている施設は88%(49/56)であった.不活化ワクチンの開始基準は,慢性移植片対宿主病(GVHD)の悪化がない,免疫抑制剤の終了(いずれも34/49),生ワクチンの開始基準は移植後2年経過(36/49),慢性GVHDの悪化がない(39/49),免疫抑制剤の終了(40/49)としている施設が多く,不活化ワクチンでは27/49施設,生ワクチンでは37/49施設が免疫学的指標を使用していた.各ワクチンの接種回数は,麻疹風疹,水痘等はガイドライン通りの施設が多かったが,ガイドラインで既定のない日本脳炎等のワクチンは接種回数が決まっていない施設が多くみられた.

    本研究から,多くの施設がガイドラインに沿って移植後予防接種を行っていることが明らかになった.またガイドラインに規定はないが,多くの施設が免疫学的指標を参考にしていた.移植の種類は多様化しており,個々の免疫状態に応じた予防接種が行えるよう情報の集積が望まれる.

  • 福岡 講平, 栗原 淳, 荒川 ゆうき, 森 麻希子, 大嶋 宏一, 三谷 友一, 本田 護, 松下 裕子, 日比谷 優子, 市村 香代子, ...
    2025 年 62 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/17
    ジャーナル 認証あり

    緒言:DNAメチル化解析を用いた分子分類は小児中枢神経腫瘍の診断,分類において大きなインパクトを与えているが,本分類についての日本からのまとまった報告は少ない.方法:当院の保存腫瘍検体のDNAメチル化解析を実施し分子分類,コピーナンバー解析結果を得た.結果:解析対象は合計53例61検体であった.結果の確度が高いとされるcalibrated scoreが0.9以上を示した症例は28検体(全体の46%)で,うち1検体が診断の変更を示唆し(有用性A),4検体はWHO分類第5版に基づく診断を付記でき(有用性B),18検体はWHO分類には含まれないが予後に関連した分類もしくはコピーナンバー異常の情報を付加でき(有用性C),5例で病理診断を支持する分類結果が得られた(有用性D).さらに,calibrated scoreが0.9未満でも0.5以上を示した13検体では,1検体が有用性A,1検体は有用性B,5例で有用性C,6例で有用性Dの結果が得られた.また,Calibrated score高値を示すためには髄芽腫であることが統計学的に有意な要因であった(オッズ比12.56,p=0.004).結語:DNAメチル化解析を用いた分子分類は分子分類は,大半の症例で病理診断をサポートする,もしくは予後に関連する臨床的に有用な情報を得られ,さらに多数例での前方視的実施が望まれるため,現在臨床研究を実施中である.

症例報告
  • 竹村 理璃子, 野口 侑記, 堺 大地, 吉田 眞之, 松浦 玲, 梅田 聡, 銭谷 昌弘, 臼井 規朗, 竹内 真
    2025 年 62 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/17
    ジャーナル 認証あり

    症例は11歳の女児である.易疲労感と黒色便を認め,息切れと顔色不良の増悪のために近医を受診した.血液検査でHb 6.8 g/dLの貧血を認め,腹部造影CT検査で小腸の腫瘤像を認めたため,精査・加療目的に当院へ搬送された.小腸の腫瘤が出血源と考え,摘出術を施行した.術中所見では,空腸に粘膜下層から腸管壁内外に向けて突出する充実性の腫瘤を認めた.腫瘤と腫大リンパ節を含めた小腸部分切除術を施行した.病理所見から,炎症性筋線維芽細胞性腫瘍inflammatory myofibroblastic tumor(IMT)と診断した.IMTは全身のあらゆる部位に発生する中間悪性群の腫瘍である.診断には免疫組織染色が有効であり,特にanaplastic lymphoma kinase(ALK)陽性を示す症例が多い.治療は完全切除が重要で,切除術後は予後良好であるが,局所再発や転移の報告もあるため画像検査による長期的な経過フォローが必要である.補助化学療法は行っていないが,切除術後10ヶ月の現在,再発なく経過している.

  • 渡壁 麻依, 荒川 ゆうき, 入倉 朋也, 石川 貴大, 金子 綾太, 本田 護, 三谷 友一, 窪田 博仁, 森 麻希子, 福岡 講平, ...
    2025 年 62 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/17
    ジャーナル 認証あり

    我々は出血傾向を伴う免疫性血小板減少症(ITP)難治例に対してミコフェノール酸モフェチル(MMF)が有効と考えられた1例を経験した.症例は8歳女児.紫斑と鼻出血を契機にITPと診断し,二次性ITPのスクリーニングで有意な所見を認めなかった.Evans症候群の母,母方家系で血小板減少症罹患者1名の家族歴を有した.免疫グロブリン大量療法,ステロイド,ステロイドパルス療法は無効であり,当院倫理委員会の承認を得た上でトロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA),リツキシマブを使用したが効果は一時的なものであった.MMF導入後に血小板数は安定し,MMF開始5か月,6か月,14か月後にそれぞれステロイド,TPO-RA,MMFの投薬を終了できた.小児難治性ITPに対してMMFは有効な選択肢となる可能性がある.

  • 増田 泰之, 濱端 隆行, 田坂 佳資, 荻野 佳代, 澤田 真理子, 納富 誠司郎, 脇 研自
    2025 年 62 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/17
    ジャーナル 認証あり

    症例は9歳女児.主訴は頭痛,嘔吐と傾眠.血液検査で白血球数1,106×103/µLの異常高値と貧血,血小板低下を認め,KMT2A::AFF1陽性のB前駆細胞性急性リンパ性白血病と診断した.初診時に多発脳出血を認め,直ちに大量輸液と少量ステロイド投与,交換輸血を開始した.白血球増多症は速やかに補正され,2日後には覚醒し,引き続き寛解導入療法を施行した.寛解導入療法終了後に寛解を達成し,徐々に神経学的異常も改善し後遺症を認めていない.白血球増多症は急性白血病の致死的合併症の一つであり.緊急の対応が必要とされる.交換輸血は白血球増多症をはじめ乳児症例において広く臨床応用されている.本症例のように年長児の脳出血を伴う白血球増多症でアフェレーシスの非適格症例においても,先行治療に加えて速やかな交換輸血の施行は選択肢になりうると考えられた.

  • 磯部 清孝, 杉山 正仲, 田尾 佳代子, 荒川 歩, 前島 亜希子, 金田 朋也, 福田 隆浩, 今留 謙一, 小川 千登世
    2025 年 62 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/17
    ジャーナル 認証あり

    慢性活動性EBウイルス病(CAEBV)の寛解中に節外性NK/T細胞リンパ腫(ENKL)を発症した例は報告がなく,その治療法も明らかではない.今回我々はCAEBVの臨床的寛解中に,右下腿の皮下組織にENKLを発症し,SMILE療法および同種造血幹細胞移植が有効であった1例を報告する.症例は14歳男児.10歳時にCAEBVと診断され,同種造血幹細胞移植を施行された.以後,臨床的寛解を維持していた.14歳時に右下腿腫瘤,皮膚潰瘍を認め,生検の結果,ENKLと診断した.2コースのSMILE療法後にpartial metabolic responseとなった.SMILE療法を1コース追加後,同種造血幹細胞移植を施行した.移植後19か月の時点で,無病生存中である.CAEBVの臨床的寛解中に発症したENKLに対して,SMILE療法に続き同種造血幹細胞移植を施行することで長期生存が望める可能性が示唆された.

  • 水島 喜隆, 福岡 講平, 市村 香代子, 田波 穣, 本田 護, 三谷 友一, 大嶋 宏一, 森 麻希子, 荒川 ゆうき, 福島 紘子, ...
    2025 年 62 巻 1 号 p. 80-83
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/17
    ジャーナル 認証あり

    症例は生来健康な9歳女児.右臀部から右下肢の疼痛を契機に腰部脊柱管内の硬膜内髄外腫瘍に気づかれた.腫瘍は肉眼的に全摘出され,組織学的にmesenchymal chondrosarcoma(MCS)と診断し,後にNCOA2 break apart probeを用いたfluorescence in situ hybridizationでsplit signalを認めた.術後にビンクリスチン・ドキソルビシン・シクロフォスファミド/イホスファミド・エトポシドの交代療法と50.4 Gyの局所陽子線照射を行い,診断後1年2ヵ月時点で無再発生存している.脊柱管内発症のMCSは極めて稀であるが,既報ではその6割は小児例である.診断は主に組織学的所見に基づいて行われるが,疾患特異的な融合遺伝子としてHEY1::NCOA2が同定されており診断に有用である.脊柱管内MCSの臨床像は脊柱管外MCSと異なる可能性があり,今後の症例の蓄積が望まれる.

  • 山下 あかり, 羽賀 洋一, 西原 友紀, 有働 みどり, 松岡 正樹, 髙月 晋一, 漆畑 真理, 高橋 浩之
    2025 年 62 巻 1 号 p. 84-89
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/17
    ジャーナル 認証あり

    壊疽性膿瘡は,有痛性の紅斑や硬結で始まり,急速に進展して水疱,膿瘍化と潰瘍形成に至る重症皮膚感染症である.しばしば免疫不全患者に発症し,緑膿菌菌血症が原因となることが多い.今回私たちは,急性リンパ性白血病の化学療法による好中球減少時に発症した壊疽性膿瘡の2症例を経験したので報告する.1例目は9歳女児で,強化療法後に右上腕に壊疽性膿瘡を発症した.タゾバクタム・ピペラシリンにより治療し,好中球の回復とともに2週間で病変は改善した.2例目は12歳女子で,寛解導入療法中に左大腿に壊疽性膿瘡を発症した.セフェピムを開始したが,深い潰瘍と肉芽腫病変に進行し,局所デブリードマンが必要であった.白血病に対する化学療法を継続していたため治癒には5か月を要した.化学療法による好中球減少時に,発熱を伴う有痛性の紅斑や水疱を認めた場合は,壊疽性膿瘡を念頭に緑膿菌に有効な抗菌薬投与を含めた速やかな対応が必要である.

  • 片山 美花, 矢内 里紗, 北澤 宏展, 濱 麻人, 吉田 奈央
    2025 年 62 巻 1 号 p. 90-93
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/17
    ジャーナル 認証あり

    症例はT細胞性急性リンパ性白血病の4歳女児.寛解導入療法後に第1寛解を,早期強化療法後に微小残存病変陰性を確認したが,TCF7::SPI1陽性のため予後不良と判断し,第1寛解期に強度減弱前処置を用いて非血縁者間臍帯血移植を実施した.移植後3日目に発熱を認めCOVID-19を発症した.胸部CT検査で左下肺に肺炎像を認めたが,レムデシビルを10日間投与し重症化なく経過した.移植後23日目に生着後もsevere acute respiratory syndrome coronavirus 2のポリメラーゼ連鎖反応検査陽性は遷延し,陰性化までに89日を要した.造血細胞移植後早期のCOVID-19は重症化リスクが高いが,早期の治療介入が重症化回避に有効であったと考えられた.一方,既報と同様に造血細胞移植後の免疫抑制下ではウイルス排泄遅延を来し得ることが確認された.

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