日本小児血液・がん学会雑誌
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会告
第60回日本小児血液・がん学会学術集会記録
シンポジウム10: 小児がん治療後の晩期合併症に対する新しい治療
第61回日本小児血液・がん学会学術集会記録
シンポジウム2: 小児脳腫瘍における分子診断の新展開
  • 山崎 文之, 高安 武志, 髙野 元気, 米澤 潮, 田口 慧, 大西 俊平, 竹石 雄介, 杉山 一彦
    2020 年 57 巻 3 号 p. 203-209
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    World Health Organization (WHO) の脳腫瘍分類は2016年にアップデートされ,分子遺伝学的な特徴が脳腫瘍の診断において重視されることとなった.分子遺伝学的特徴により髄芽腫はWNT, SHH, group 3, group 4の4亜型に分類され,後頭蓋窩の上衣腫はposterior fossa ependymoma-A (PF-EPN-A) とposterior fossa ependymoma-B (PF-EPN-B) に分類された.小児の後頭蓋窩腫瘍で頻度が高いのは髄芽腫,上衣腫,毛様細胞性星細胞腫だが,術前に分子遺伝学的特徴を含め,これらを鑑別できれば,治療の意思決定に有用な情報となる.拡散強調画像から得られる見かけの拡散係数(apparent diffusion coefficient, ADC)は腫瘍の細胞密度と逆相関することから,腫瘍の鑑別診断に有用で,バイオマーカーとしても着目されている.髄芽腫,上衣腫,毛様細胞性星細胞腫はADCで鑑別可能であり,髄芽腫は高い細胞密度を反映してADCが低値の一方,毛様細胞性星細胞腫は細胞密度が低く,ADCは高値となる.上衣腫はそれらの中間のADC値となり,高いb値の拡散強調画像から得られるADCを使用することでさらに鑑別診断率は向上する.髄芽腫はさらに,WNTはCP angleや外側陥凹,SHHは小脳半球,group 3/4は第四脳室に発生することで亜型が鑑別可能で,group 3は造影が強いこと,group 4は造影が弱いまたは乏しいことで鑑別する.後頭蓋窩上衣腫は造影率でPF-EPN-Aと-Bを鑑別する.本稿ではWHO2016アップデートに対応した小児後頭蓋窩腫瘍の術前画像診断のアルゴリズムを紹介する.

シンポジウム3: 小児がんの国際共同臨床試験の現状と課題
  • 小野 滋, 黒田 達夫
    2020 年 57 巻 3 号 p. 210-214
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    胚細胞腫瘍は良性腫瘍である成熟奇形腫から極めて悪性度の高い腫瘍まであり,発生母体も性腺と性腺外に分けられ多岐にわたる.そのため病理組織学的分類は複雑で悪性度も様々である.そのほかにも年齢による生物学的差異や原発部位による予後の差が存在する.加えて,小児と成人での特に性腺原発胚細胞腫瘍に対する考え方や治療ストラテジーの相違が存在する.そこで,統一された病期分類や新たなリスク分類の確立が必要と考えられ,米国小児がんグループ(Children’s Oncology Group: COG)を中心に悪性胚細胞腫瘍の国際consortiumが設立された.そのなかで低リスク症例に対する過剰治療と治療合併症の軽減,および高リスク症例に対するスタンダード治療の確立などが課題として取りあげられ,国際共同臨床研究が検討された.現在,COGの主導で国際共同臨床研究(AGCT1531)が進行中であり,①標準リスク群に対して,従来のBEP療法におけるシスプラチンの晩期毒性を避ける目的でカルボプラチンに変更したプロトコールについてBEP療法とのランダマイズ試験を実施する.②低リスク群に対して,旧来予後良好とされた精巣のみならず全ての原発巣の病期1症例に対して手術療法単独で経過モニタリングを行い,従来の化学療法併用療法との非劣性を証明する.の2試験を行っている.我が国でも,JCCGの胚細胞腫瘍委員会が中心となって,この国際共同臨床試験に参画し,現在国内の主要16施設に限って症例登録を開始している.

シンポジウム4: 凝固異常症のupdate
  • 西村 志帆, 溝口 洋子, 冨岡 啓太, 小林 正夫
    2020 年 57 巻 3 号 p. 215-219
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    血友病は乳幼児期早期からの表在性出血とともに関節内や筋肉内などの深部出血を繰り返す.小児期からの第VIII因子製剤,第IX因子製剤の定期補充療法の導入は長期予後の改善と関連することが示され,血友病病患者のquality of life(QOL)を大きく向上させている.しかし,小児,特に低年齢では血管確保が難しく頻回の静脈注射は本人,家族にとって大きな課題となっていた.2014年にわが国で初めて半減期延長製剤(EHL)が市販され,当院でEHL製剤に変更して1年以上経過した血友病A 9名,血友病B 7名についてEHLの有用性について検討を行った.血友病A,血友病Bともに定期投与の注射回数を減らすことが可能となり年間出血回数も低下した.また,活動性の高い患者では標準型製剤と同様の方法で高いトラフ値を保てるようになった.当院包括外来を受診した患者において,定期補充療法で使用している製剤の割合から,血友病Aでは約7割,血友病Bでは全例がEHL製剤に変更していた.EHL製剤に変更した患者の満足度は高く,QOLは大きく向上した.エミシズマブの開発に伴い,血友病A治療薬の選択肢が拡がったことから,患者個々の状況に適した補充療法,個別化治療を行うことが重要となる.

  • 柏倉 裕志, 大森 司
    2020 年 57 巻 3 号 p. 220-226
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    血友病はX連鎖型の遺伝性出血性疾患であり,F8(血友病A)あるいはF9(血友病B)遺伝子の変異が原因となる.重症患者では,関節内や筋肉内の出血を予防するために,濃縮凝固因子製剤の定期的投与が必要となる.血友病は単一遺伝子による遺伝性疾患であること,治療効果の評価が容易に可能であることなどから,遺伝子治療の良い標的疾患と考えられている.現在,複数の血友病遺伝子治療臨床試験が行われ,その多くがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて,凝固因子遺伝子を肝臓へ遺伝子導入している.最近の臨床試験の結果では,一回の投与で長期にわたり凝固因子レベルが上昇し,出血率,凝固因子製剤の使用量,生活の質(QOL)を改善させている.一方,AAVベクターによる遺伝子治療は,細胞分裂により治療効果が減弱するため,対象は成人患者に限られる.そこで,小児期からの永続的な効果が期待される根本治療として,染色体DNAにアプローチするゲノム編集技術に大きな関心が寄せられている.実際に,AAVベクターを利用して,ゲノム編集ツールを肝臓に届け,肝細胞だけをゲノム編集する血友病治療も治験が進んでいる.近い将来,血友病に対する遺伝子治療を一般診療で進めていくには,長期的な有効性・安全性の観察に加え,高額な医療費に対する議論が必須である.

  • 石黒 精, 内山 徹, 國島 伸治
    2020 年 57 巻 3 号 p. 227-234
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    先天性血小板減少症・異常症(本症)は,血小板の産生・機能の異常に起因する多様な疾患の総称である.慢性・難治性ITPの10%程度は本症といわれており,ITPとして長期ステロイドや摘脾などの誤った治療を受けている例もある.MYH9異常症では進行性の腎合併症・難聴を合併し,転写因子異常を伴う本症では悪性腫瘍に進展しうる.ハイスループットの遺伝子解析によって,その責任遺伝子が明らかになりつつあるが,半数は未だ病因不明である.2018年,AMEDからの研究費を受けて国立成育医療研究センター内に中央事務局を置いてレジストリを構築し,全国から臨床情報と生体試料の収集を開始した.既知の56遺伝子からなるパネルを作成し,次世代シーケンサーを用いた遺伝子検査体制を確立し,ナショナルセンターバイオバンクとの連携も整えた.2020年6月までに85例をレジストリに登録し,遺伝子パネル解析を70例,蛋白解析を50例について実施した.その結果,MYH9WASVWFITGA2BITGB3RUNX1ANKRD26ACTN1ETV6CDC42FLNAなどの病的バリアントを検出した.既知の遺伝子異常が見つからない例には,全エクソン解析による原因遺伝子探索を実施している.診断・登録・検体保存体制の確立によって,本症の病態解明が進み,適切な治療・管理方針の選択に貢献できるであろう.

シンポジウム6(二学会合同): 小児がんに対する放射線治療のメディカルスタッフの役割―最適な放射線治療チーム構築に向けて
  • 副島 俊典, 鈴木 毅, 越智 悠介, 青柳 崇, 伊藤 麻衣, 野崎 美和子
    2020 年 57 巻 3 号 p. 235-239
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    放射線治療はがん治療の中で重要な治療法であるが,その点は小児がんの治療においても同様である.しかし,放射線治療の患者数は増加傾向にあり,さらに放射線治療が高精度化するに従って,多くの時間がかかるようになっている.この状況下で小児がんに対する治療に十分時間をかけて治療することはかなり難しい状況になってきている.また,小児がんに対する治療をどのようにするか,その中でどのようなメディカルスタッフとタイアップし,どのような最適な放射線治療チームを構築していくかは重要な課題である.今回は麻酔科医,診療放射線技師,看護師,チャイルドライフスペシャリストにそれぞれの立場から講演いただき,上記の問題の対処法などを議論した.小児・AYAがんの治療とケアは,放射線治療チーム内で完結するものではなく,患者さんの状況に応じて,複数の科,複数の職種にまたがる包括的なチーム医療の提供が必要となる.多職種医療チームがone teamとして共通の目標に向けて専門的知識を結集して最良の治療やケアを提供することが求められることが確認された.

教育セッション1: AML
  • 盛武 浩
    2020 年 57 巻 3 号 p. 240-250
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    小児白血病における急性骨髄性白血病(AML)の頻度は約25%とされ,日本では毎年約180例が新規に診断される.そして急性前骨髄球性白血病(APL),ダウン症関連骨髄性白血病(ML-DS),これら以外に分けて治療を行う.APLは抗がん剤にレチノイン酸を併用することにより安全な治療が可能となったが,三酸化ヒ素,ゲムツズマブ・オゾガマイシンの導入により晩期合併症の回避に加えてさらなる治療成績向上が期待できる.ML-DSは毒性を考慮し強度を弱めた化学療法により一定の治療成績は担保されるが,再発難治例の予後は著しく不良で初発治療の最適化が求められる.そこで,フローサイトメトリーとGATA1遺伝子変異を利用した微小残存病変検出による層別化が最適化に繋がることが期待されている.上記2つを除いたAMLは,染色体・遺伝子解析結果および初期治療反応性に基づくリスク分類により3群の層別化治療を行うが,再発難治例の予後改善が大きな問題である.さらなる成績向上のためには既存薬剤による治療では限界があり,近年成人に保険適用となったFLT3阻害薬をはじめとする新規薬剤の導入が必須である.

教育セッション2: 抗がん剤曝露(倫理)
  • 佐伯 康之, 松尾 裕彰
    2020 年 57 巻 3 号 p. 251-256
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    抗がん薬は,1990年代までは一般薬と同様に特別な曝露対策を施すことなく取り扱われていた.しかし,抗がん薬を取り扱う医療者における抗がん薬曝露の影響について海外で数々の報告がなされたことから,ガイドラインの制定に至り,現在では多くの施設で曝露対策が施されている.抗がん薬による曝露は,正常細胞に対して毒性を生じ,その発現時期によって皮膚炎,頭痛などの急性毒性,発がん,催奇形性などの慢性毒性に分けられる.経路は,経皮,吸入,経口に加え,針刺しによる直接的な体内への取り込みが挙げられる.機会は,取揃え,調製・調剤,搬送,投与,投与後の処理など抗がん薬取り扱いすべての手順が含まれる.対象は,抗がん薬を直接取り扱う医療職に加え,掃除者,介護人,ご家族などの非医療者まで,抗がん薬治療中の患者に関わるすべての人が対象となる.曝露予防対策は,一般的に閉鎖式接続器具等の導入,安全キャビネット使用,調製者等の人的管理,ガウン・マスク・ゴーグル・グローブなどの個人防護具の着用を複数組み合わせて実施する.また,環境曝露発生時には,スピルキットを用いるが,あらかじめ運用手順を定めて施設内に広報しておくことが重要である.抗がん薬曝露のリスクは,各手順の曝露経路および抗がん薬ごとの毒性について正しい知識を持ち,安全な取り扱い方法を実践することにより,軽減することができる.

教育セッション4: 免疫不全症
  • 髙木 正稔
    2020 年 57 巻 3 号 p. 257-263
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    原発性免疫不全症primary immunodeficiency: PIDは免疫調節機構にかかわる遺伝子の異常により,易感染性や自己免疫,自己炎症などの免疫制御機構の破たんがもたらす疾患群で,400以上にわたる疾患,責任遺伝子が同定されてきている.このなかでいくつかは悪性腫瘍,特にリンパ系腫瘍を高頻度に合併する.悪性腫瘍の発症メカニズムとしては,責任分子がリンパ球の分化や制御に直接かかわっている場合,またはリンパ球の免疫監視機構の欠如によってEBウイルスなどの感染が排除できず,腫瘍化する場合などが想定される.PIDの発症に関連するいくつかの遺伝子は,血液腫瘍においても体細胞変異として認められるものが多く,相互の理解がリンパ球の腫瘍化を考える上で重要な視点となる.

原著
  • 松井 俊大, 庄司 健介, 寺島 慶太, 三上 剛史, 小村 誠, 松本 公一, 宮入 烈
    2020 年 57 巻 3 号 p. 264-270
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    抗菌薬適正使用支援プログラム(antimicrobial stewardship program: ASP)は,薬剤耐性菌対策として有効である.がん患者や造血細胞移植患者においてもASPは重要であるが,定まった方策はなく,特に小児においては報告も限られている.当院におけるASPの効果を検証する目的で,2012年度から2016年度までの5年間の当院小児がんセンターの抗菌薬使用延べ日数(days of therapy: DOTs),DOTs/1,000患者日数を後方視的に検討した.2012年度から2016年度にかけて入院患者,延べ入院患者日数,造血細胞移植患者数は経時的に増加傾向であった.カルバペネムは,処方機会数は経年的に減少し,DOTs/1,000患者日数は76から40へ有意に減少した.抗緑膿菌薬全体およびグリコペプチド系薬では,経年的に処方機会数は増加傾向であったが,DOTs/1,000患者日数は有意に減少していた.これにより年間約500万円の医療費の削減が得られたと考えられた.対象期間において全死亡者数と感染症関連死亡者数は明らかな変化は認めなかった.当院で行っている小児がん専門医と小児感染症専門医が協力して行うASPは,小児がんおよび造血細胞移植患者において安全にかつ有効に広域抗菌薬の使用量を減少させることができたと考えられた.

  • 福澤 太一, 和田 基, 佐々木 英之, 工藤 博典, 中村 恵美, 安藤 亮, 山木 聡史, 大久保 龍二, 仁尾 正記
    2020 年 57 巻 3 号 p. 271-274
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    【目的】膵solid pseudopapillary neoplasm(SPN)は若年女性に多くみられる比較的稀な低悪性度腫瘍で,外科的切除により良好な予後が得られる疾患である.今回,当科におけるSPNの手術成績について検討した.【対象と方法】1990年4月から2019年10月までに当科で外科的治療を施行したSPNを対象とし,患者背景,腫瘍発生部位,治療経過,転帰について診療録をもとに後方視的に検討した.【結果】症例は6例で全例女児,年齢は6歳–14歳(中央値10.5歳),発生部位は膵尾部4例,膵体部2例だった.手術術式は,脾合併膵体尾部切除術4例,腫瘍核出術2例が施行された.術後合併症は,術中出血により術後輸血を必要とした貧血1例,保存的に治療したgrade Bの術後膵液瘻(postoperative pancreatic fistula, POPF)を2例に認めた.術後在院日数は8日–28日(中央値14.5日),観察期間は1か月–122か月(中央値50.0か月)で全例無再発生存中である.【考察】これまでの報告と同様,女児に多くみられ予後は良好であった.腫瘍が脾門部に進展している場合は脾動静脈との癒着が高度で剥離が困難なため全例で脾合併切除を施行したが,腹腔鏡下に脾臓周囲の剥離を行うことは有用だった.【結語】当科では膵SPNを6例経験し経過は良好だった.

  • 守田 弘美, 本田 裕子, 水城 和義, 浅井 完, 押田 康一, 白山理 恵, 樋口 尚子, 楠原 浩一
    2020 年 57 巻 3 号 p. 275-280
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    【目的】訪問看護ステーションの小児の受け入れ増加に伴い,小児がん患者においても自宅で最期を過ごすことが可能となりつつある.今回,当科における最近8年間の終末期医療の現状と課題について検討した.【方法】2011年11月~2019年10月の間に終末期を迎えた小児がん患者16例について終末期医療の後方視的検討を行った.また,近隣の89の訪問看護ステーションに対して,小児がん終末期在宅医療に関するアンケート調査を実施した.【結果】2016年以前の症例の終末期在宅期間中央値は16日と短期間であったが,訪問看護などが介入できた2016年以降の症例では149日と長かった.また,訪問看護に対するアンケート調査では,条件付きではあるが,約6割の施設が小児がん終末期患者の受け入れの意思を示した.小児がん患者の受け入れに際し,医療者の知識不足とともに患者・家族とのコミュニケーションや病状把握が困難などの問題点も浮き彫りになり,病院との連携が重要であることが示唆された.【結論】訪問看護や訪問診療の介入により一部の在宅医療処置が実施可能となり,今後在宅期間の延長が期待できる.当科では教育研修会の開催などで地域医療との連携を強化するとともに,即時連絡がとれるような体制を検討していく.

症例報告
  • 奥廣 有喜, 岡田 恵子, 谷村 一輝, 比良 洸太, 中野 嘉子, 山崎 夏維, 仁谷 千賀, 藤崎 弘之, 福島 裕子, 井上 健, 原 ...
    2020 年 57 巻 3 号 p. 281-284
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    Ph-like急性リンパ性白血病(ALL)はPh1陽性ALL(Ph+ALL)と同様な遺伝子プロファイルを有する高リスク群である.従来の細胞遺伝学的,分子学的解析では遺伝子変異の検出ができないが,Ph+ALLと同様にチロシンキナーゼ阻害剤の有効性が期待されている.array comparative genomic hybridization(aCGH)を契機にNUP214-ABL1融合遺伝子の同定に至ったB前駆細胞性ALLの1例を経験し,同種移植後の髄外再発に対しダサチニブが著効した.NUP214-ABL1融合遺伝子を有するPh-like ALLにチロシンキナーゼ阻害剤が有効な場合があることを示唆する経過である.

  • 山森 彩子, 前村 遼, 坂口 大俊, 吉田 奈央, 松本 公一, 濱 麻人
    2020 年 57 巻 3 号 p. 285-289
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    Tyrosine kinase domain変異フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)は高い薬剤耐性を有し,特にT315I変異Ph+ALLは予後不良である.症例は8歳男児.前医でPh+ALLと診断され,寛解導入療法後に当院に転院した.イマチニブ不耐容とダサチニブによる肝障害のため複数回の休薬を要し,その間に再発を来した.遺伝子解析によりT315I変異を認めたため,非寛解期のまま,シタラビン・ミトキサントロン・プレドニゾロンによる化学療法に引き続いて,メルファランおよび全身放射線照射12 Gyからなる骨髄破壊的前処置を行い,ヒト白血球抗原一致同胞から骨髄移植を施行した.移植後17日目に生着を認め,重篤な合併症なく経過し,移植後7年で無病生存中である.T315I変異Ph+ALLに対する骨髄移植の有用性について,多数例での検討が望まれる.

  • 古東 麻悠, 瓜生 英子, 山中 純子, 奥野 安由, 島田 真実, 末永 祐太, 吉本 優里, 田中 瑞恵, 赤松 智久, 佐藤 典子, ...
    2020 年 57 巻 3 号 p. 290-295
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    小児急性リンパ性白血病寛解導入療法中に十二指腸穿孔を来したが外科手術を回避して保存的治療で軽快した症例を経験したので報告する.症例は3歳男児.繰り返す感染と白血球減少で発症し,前駆B細胞急性リンパ性白血病と診断された.寛解導入療法開始15日ごろより便秘と腹痛が遷延した後,26日めに急激な腹痛の悪化と腹部膨満および発熱を認めた.化学療法を中止し,抗菌薬・H2受容体拮抗剤の投与を開始した.28日めの腹部造影CT検査で遊離ガス像と十二指腸球部の穿孔所見を認め十二指腸穿孔と診断した.症状の増悪や腹膜炎の進行を認めなかったため絶飲食・経鼻胃管留置・プロトンポンプ阻害剤などの保存的治療を行い症状は軽快した.外科療法は行わなかった.その後潰瘍や穿孔の再燃はなく完全寛解を維持している.化学療法中の消化管穿孔は予後不良のため,腹部症状が遷延する場合には消化管潰瘍に対する予防的な支持療法も検討が必要である.

  • 岡本 駿吾, 左 信哲, 時政 定雄
    2020 年 57 巻 3 号 p. 296-299
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    小児急性リンパ性白血病は発熱,貧血,出血傾向など多彩な症状で発症するが,診断前に脊椎圧迫骨折を生じる頻度は低い.症例は4歳女児で,腰痛で近医整形外科を受診し単純X線にて第10胸椎圧迫骨折を指摘された.単純MRI検査で第10胸椎椎体近傍に腫瘤を認めたため精査目的に当科を紹介された.骨髄検査の結果B前駆細胞性急性リンパ性白血病と診断された.化学療法によって完全寛解が得られ,現在は維持療法を継続し寛解維持している.発症時の第1腰椎から第4腰椎の骨密度は−4.5 SDと低下を認めた.白血病の治療期間中,胸腰椎全体で椎体の減高を一時的に認めたが,圧迫骨折の再発はなく経過した.椎体の圧迫骨折を伴って発症した急性リンパ性白血病患者の臨床的特徴はまだ解明されておらず,化学療法開始後に別の椎体の圧迫骨折が出現したり,椎体修復不全のリスクが上昇する可能性があり,骨密度の低下に対して早期に介入すべきか検討が必要である.

  • 八重樫 未来, 佐野 秀樹, 高橋 信久, 大原 喜裕, 小林 正悟, 田中 秀明, 清水 裕史, 橋本 優子, 望月 一弘, 細矢 光亮, ...
    2020 年 57 巻 3 号 p. 300-303
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    初発時2歳5か月の男児.123I- metaiodobenzylguanidine (MIBG) 集積陰性と陽性の腫瘍が混在して発症した左副腎原発の神経芽腫Stage4で,MYCN増幅を伴っていた.高リスク群プロトコールにて完全寛解となったが,治療終了1年2か月後(4歳5か月)に左顔面神経麻痺にて受診,左小脳橋角部,左眼窩骨,骨髄に再発を認めた.再発病変はMIBG集積陰性~弱陽性で,尿中カテコラミンの上昇はなく,骨髄転移細胞のTyrosine Hydroxylase染色は陰性で,MIBG集積陰性かつカテコラミン非産生の腫瘍成分を主体として再発したと判断した.近年,MIBG集積陰性初発神経芽腫は陽性神経芽腫よりMYCN増幅例が多く,予後良好との報告があるが,MIBG集積陰性の中でもカテコラミン非産生神経芽腫は,より未分化で悪性度の高い腫瘍成分を有している可能性が高く,早期の再発に注意が必要である.

  • 岡田 直樹, 藤澤 麗子, 伊藤 順庸, 佐藤 勝明, 渡邊 直人, 本野 望, 河野 美幸, 犀川 太
    2020 年 57 巻 3 号 p. 304-308
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    小児期の副腎皮質癌は高頻度に再発を認める予後不良の稀な悪性腫瘍である.14歳時に下腿浮腫,クッシング徴候および男性化徴候を認め,機能性右副腎皮質癌と診断した.腫瘍切除とミトタン併用全身化学療法を行ったが,初発診断後より47ヶ月後と104ヶ月後に右肺転移再発を繰り返した.無症状の再発の検出に18F-FDG-PET/CTが有用であった.

  • 原田 瑞生, 久保 暢大, 高地 貴行, 岩渕 晴子, 今村 勝, 齋藤 昭彦, 梅津 哉, 山中 崇之, 今井 耕輔, 岡田 賢, 今井 ...
    2020 年 57 巻 3 号 p. 309-313
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    症例は9カ月男児.繰り返す発熱,腋窩リンパ節腫大,全身の膿疱性皮疹を主訴に当院に紹介された.当初,前頭骨の骨融解像,臨床像,sIL-2R異常高値からランゲルハンス組織球症との鑑別を要し,皮膚生検を施行したが確定診断に至らず,腋窩リンパ節生検を施行した.生検組織からBCG菌が同定され,播種性BCG感染症と診断した.皮膚生検ではBCG菌は検出されず,BCG菌への過敏性反応による結核疹と考えられた.重症細菌感染,ウイルス感染の既往はなく,メンデル遺伝型マイコバクテリア易感染症を疑い精査した結果,IFNGR1遺伝子の既知のde-novoヘテロ変異が同定され,IFN-γR1部分欠損症と診断した.抗結核薬イソニアジド,リファンピシンの2剤による治療で症状は速やかに軽快した.18カ月間内服を継続し,終了後半年の現在も再燃なく経過している.ランゲルハンス組織球症として非典型的な皮疹や経過の場合にはBCG感染症を考える必要がある.

  • 金澤 剛二, 谷ヶ崎 博, 平井 麻衣子, 渡邊 直樹, 渡辺 嘉久, 陳 基明, 森岡 一朗
    2020 年 57 巻 3 号 p. 314-317
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    症例は神経芽腫で治療中の2歳女児である.入院時に貧血を認め,人赤血球濃厚液を輸血した.輸血開始20分後から全身に蕁麻疹が出現したため,グリチルリチン酸とヒドロコルチゾンの経静脈的投与を行った.その後,多剤併用化学療法を開始した.化学療法による骨髄抑制による血小板減少に対して血小板濃厚液を輸血したところ,血小板輸血開始4分後から呼吸困難,血圧低下と徐脈から呼吸停止に至った.ただちに心肺蘇生を開始し9日間人工呼吸管理を必要としたが,集中治療管理により神経学的後遺症なく回復した.以降,輸血時の前処置として,赤血球輸血時は洗浄赤血球を使用し,血小板輸血時は2回洗浄を実施することで,同様の副作用は繰り返さずに経過した.輸血副作用の精査の結果,患者血清のハプトグロビン(Hp)値は検出限界以下で,抗Hp抗体が陽性であった.さらにHp遺伝子の欠失を認めたことから,先天性Hp欠損症と確定した.先天性Hp欠損症と神経芽腫との関連性については今後の検討が必要かもしれない.

委員会報告
  • 大植 孝治, 越永 從道, 野崎 美和子, 桑島 成子, 田中 祐吉, 大喜多 肇, 瀧本 哲也, 福本 弘二
    2020 年 57 巻 3 号 p. 318-325
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル 認証あり

    【緒言】過去の多施設共同研究において両側性Wilms腫瘍(WT)の予後は良好であったが,腎温存に関しては満足のゆく結果は得られなかった.そこで腎温存を主眼とした新プロトコールを作成し,2014年より臨床試験RTBL14を開始した.今回臨床試験を終了したので結果を報告する.

    【方法】研究の主目的は一年後の両側腎温存率とした.両側性WT全例に3剤を用いた術前化学療法を行い,腫瘍の縮小を図った後に腎温存を目指した手術を行う方針で治療を行った.

    【結果】研究参加施設が23施設と少なく,登録症例数も3例と予定数を大きく下回ったため,これ以上継続しても予定症例数を集めることは困難と判断し,予定研究期間の5年で研究を終了した.登録された3例中1例は腫瘍内出血を起こしたためプロトコール逸脱症例となった.残りの2例はプロトコールを完遂したが,最終的に両側腎が温存できたのは一例のみであった.3例とも無病生存中で,予後は良好であった.

    【結語】医師へのアンケート調査では,研究に不参加の理由として両側性WTの症例が少ないためせっかく倫理審査を受審しても,症例を登録しないまま終わってしまう,という回答が最も多かった.小児腫瘍治療の集約化が進んでいない本邦において,このような超希少疾患で必要症例数を集めることは困難であり,治療法改善のためには,国際共同試験を積極的に進めることが不可欠であると考えられた.

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