日本小児血液・がん学会雑誌
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第60回日本小児血液・がん学会学術集会記録
シンポジウム1: 小児悪性固形腫瘍に対するinitial surgical interventionのあり方
  • 曽根 美雪
    2019 年 56 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
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    画像ガイド下経皮的針生検は,超音波,CT,X線透視などの画像を用いた低侵襲な組織採取法であり,近年,個別化医療の台頭により施行数が増加している.生検前のプランニングにおける画像の検討が重要であり,細胞量が豊富であることを反映する所見がみられる部位を標的とし,安全な穿刺ルートを選択することによって,病理組織診断,遺伝子変異解析に必要な検体を,短時間で低侵襲に採取することが可能である.さらに,IVRの技術を用いた深部病変への針誘導などの技術の発達により,体幹部では,ほぼ全ての部位を生検の対象とすることが可能となっている.このため,小児においても,画像ガイド下経皮的針生検が行われる機会が増加しているが,検体量への懸念などから,未だ標準的な検体採取法とはなっていない.本稿では,画像下コアニードル生検の実際を紹介する.

  • 本多 昌平, 菱木 知郎, 横井 暁子, 風間 理郎, 高間 勇一, 星野 健, 田口 智章, 檜山 英三
    2019 年 56 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    PHIT試験は小児肝がんに対する初の国際共同臨床試験である.PHIT試験の外科療法ガイドラインはPRETEXTに基づいており,①超低リスク群と低リスク群の肝芽腫(HB)では至適なタイミングで手術を行いかつ化学療法を減らすこと,②高リスク群・転移性腫瘍については,地固め化学療法中により積極的な外科切除を行うことを目指した推奨治療を示している.さらに切除困難例については,非定型的高度肝切除や肝移植に習熟した施設へ早期に紹介することの重要性を強調している.難易度の高い肝切除についてリアルタイム外科コンサルテーションが受けられる体制を整え,定められたタイミングで適切な手術が行われているかを評価する.また診断時一期的切除は,PRETEXT IまたはIIの腫瘍のうち画像上中肝静脈からの距離が1 cm以上あるものについて施設の裁量で考慮する.本試験では腫瘍破裂や腹部コンパートメント症候群により血行動態的に不安定な場合を除き,試験登録に際して腫瘍組織を得ることが求められる.外科的レビュー研究として,POST-TEXT IIIおよびIV HBの外科的治療の評価研究を行い,得られたデータは難治性腫瘍に対する最適な外科的アプローチを評価するための基礎データとなる.本試験によってもたらされる成果はHB/肝細胞癌患児の予後改善に多大なる恩恵をもたらすことが期待される.

  • 大植 孝治, 越永 従道, 福本 弘二
    2019 年 56 巻 2 号 p. 113-117
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    小児腎腫瘍に対する初期治療方針は,①一期的全摘術を行い,手術所見・病理所見をもとに術後化学療法・放射線治療を行う米国COG方式と,②化学療法を先行して腫瘍の縮小を図った後に全摘を行うSIOP方式の2つに大別される.日本Wilms腫瘍研究グループ(JWiTS)では今まで米国の方式に従って多施設共同研究を行ってきた.いずれの治療方針でも遜色ない治療成績が得られるが,米国の治療方針では,まず腫瘍を摘出するため,正確な病理診断,病期診断に基づく適切な術後化学療法を選択でき,生物学的予後因子を治療方針に組み込みやすいという利点がある.一方SIOPの治療方針では,化学療法により腫瘍が縮小するため手術リスクが軽減され,また腫瘍縮小によるDown Stageによりアントラサイクリンや放射線治療による晩期合併症を軽減できる利点がある.

    SIOPのプロトコールでは化学療法前の組織診断に関しては必須としていないが,化学療法前に針生検を行っても病期III扱いにはならない.JWiTS-2の病期III症例の検討では,腫瘍のspillageにより病期IIIになった症例が53%もあり,手術リスクが高い症例ではSIOPの方針に従って,針生検の後化学療法を行い,腫瘍を縮小させてから安全に摘出する方が,手術リスクを軽減し,病期IIIにならずにアントラサイクリンと放射線治療を回避できる可能性がある.

シンポジウム2: 小児がん領域におけるゲノム医療
  • 熊本 忠史
    2019 年 56 巻 2 号 p. 118-125
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    がんゲノム医療の普及に伴い,遺伝性腫瘍と診断される患者の増加が見込まれる.しかし,本邦では遺伝性腫瘍患者,特に小児では最も高頻度に診断されることが予測されるリー・フラウメニ症候群(Li-Fraumeni syndrome, LFS)に対するがんサーベイランスプログラムなどの診療体制が未整備である.本稿では海外で行われているLFSがんサーベイランスプログラムのうち,すでに論文化された6件と,がんサーベイランスで頻用される全身MRIのメタアナリシスの論文をレビューすることにより,本邦におけるLFSがんサーベイランスの実行可能性について考察する.海外ではToronto/Utah/CHLA LFS studyが行っている「トロント・プロトコール」の経過報告が肯定的に捉えられ,これを元に6か国で12のがんサーベイランスプログラムが進行している.全身MRIの陽性率は高く,さらなる技術開発を要するが,がん検出率は7%と高く,また,がんの早期発見,早期治療によりLFS患者の生命予後を改善しうる可能性があり,本邦でもLFS患者に対するがんサーベイランス研究を進めることが望まれる.

シンポジウム3: 形態学的,分子生物学的アプローチによる小児固形腫瘍の病理診断
  • 孝橋 賢一, 山元 英崇, 山田 裕一, 木下 伊寿美, 小田 義直
    2019 年 56 巻 2 号 p. 126-130
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    小児軟部腫瘍は稀なため,病理医・臨床医ともにその診断や治療法の選択に難渋することも少なくない.そのため,病理組織診断の概念や枠組み,それを取り巻く分子生物学的背景についてよく理解しておくことが必要である.現在広く用いられているWHO分類は細胞の分化に基づく組織分類であり,12の項目と3つの悪性度により分類されている.また,解析系の発達により様々な遺伝子異常が判明しており,組織分類に反映されている.しかし,悪性度が異なる腫瘍が同一のキメラ遺伝子を有する例や腫瘍特異的と考えられた遺伝子異常がその他の腫瘍群でも見つかるなど,すべての症例で1対1対応しているわけではない.分子生物学的解析についても,検体採取や解析上のエラーが一定の割合で生じうる.病理診断は時間との戦いでもあるため,解析の妥当性について長時間の検討を許されず,日々の精度管理が重要である.したがって現状では,組織診断を基本線として,分子生物学的解析結果によりエビデンスを補強するというスタイルが大切となる.また,現在小児腫瘍はほぼ全例が中央病理診断されているが,標本の回覧や各施設で行われなかった解析を実施するなど,時間がかかってしまうことも多い.速やかな治療のためには,臨床医が自施設でどの程度の病理学的分子生物学的検討が実施できるかを理解したうえで,どの範囲まで求めるかを病理医と検討しておくことが重要となる.

  • 吉田 朗彦
    2019 年 56 巻 2 号 p. 131-135
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    こんにち,ユーイング肉腫はEWSR1/FUS-ETS融合を有する遺伝子的に純粋なグループとして狭く定義され,非典型的な遺伝子異常や形質を示す小円形細胞肉腫(いわゆるユーイング様肉腫)については,ユーイング肉腫とは異なる疾患として理解されている.後者には,①EWSR1-nonETS融合遺伝子を有する肉腫,②CIC肉腫,③BCOR関連肉腫の3群が大きく区別される.EWSR1-nonETS融合を有する肉腫については,報告数が少なく,疾患単位として確立しつつあるのは,EWSR1-NFATC2肉腫とEWSR1-PAZ1肉腫くらいであり,その臨床的振舞いについてもまだよくわかっていない.CIC肉腫は比較的頻度が高く,大部分はCIC-DUX4融合を有し,特徴的な組織像,WT1やETV4免疫染色陽性像,およびきわめて予後不良な臨床像など,特異な腫瘍型であることが明白である.BCOR関連肉腫にはBCOR-CCNB3,BCOR variant fusion,BCOR-ITDといった遺伝子異常を伴う複数の肉腫が含まれる,それぞれ違った臨床像を呈するが,組織像はいずれも類似しており,BCOR免疫染色の陽性所見も共通している.ユーイング様肉腫と総称される腫瘍群はこのように内的に不均一で,グループとして取り扱うことの合理性には疑問があり,少なくとも上記3群についてはそれぞれ特定して語られることが望ましい.

  • 大喜多 肇
    2019 年 56 巻 2 号 p. 136-140
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    横紋筋肉腫はICR分類にて胎児型,ぶどう状型,紡錘細胞型,胞巣型に分類されてきたが,2013年に発刊されたWHO分類第4版では紡錘細胞・硬化型が独立し,胎児型,胞巣型,多形型とともに4つのカテゴリーに分類されている.胞巣型の大部分にはPAX3-FOXO1あるいはPAX7-FOXO1融合遺伝子が存在し,本遺伝子の存在が胞巣型の組織型より,より強く予後と関連することが報告されている.本遺伝子の存在を予測する病理学的代替マーカーも開発され,臨床上,融合遺伝子の存在がより重視されるようになってきている.一方,乳児の紡錘細胞型では,VGLL2TEADSRFの関与する融合遺伝子を持つ腫瘍が予後良好な腫瘍として報告された.また,年長児の紡錘細胞・硬化型や胎児型の一部ではMYOD1変異を持つ腫瘍が報告され,臨床病理学的特徴と合わせ,今後,疾患単位として認識されていくと考えられる.今後,分子異常を加えることにより,より精緻な分類が可能となることが期待される.

シンポジウム4: 放射線治療: QOLを考慮した局所治療
  • 亀井 美智, 村井 太郎, 岩田 宏満, 高木 大輔, 近藤 知史, 荻野 浩幸
    2019 年 56 巻 2 号 p. 141-147
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    小児がんの治療のためには,化学療法,外科療法および,放射線療法などによる集学的治療が重要である.小児がんの治療成績は目覚ましく改善し,現在は治療の層別化により,治療強度と治療合併症を考慮した治療開発が進められている.放射線感受性のある小児がんのがん腫は多く,放射線治療は重要な役割を担っており,放射線による合併症の詳細が様々な研究で明らかになってきた.近年,陽子線を含む粒子線治療や,強度変調放射線治療(Intensity-modulated radiation therapy: IMRT)など,技術開発が目覚ましい.一方で,Oncology emergencyや緩和治療には,従来のリニアックによる治療も有用である.さらに,合併症を軽減するための隣接臓器への照射回避を目的として,スペーサー留置術や妊孕性温存の治療技術が試みられている.小児がんの治療において,放射線治療の方針決定には小児科医のみならず放射線治療医を含めた専門医との連携,協力が不可欠であり,放射線治療の特性を理解したうえで治療戦略を立案する必要がある.小児科医としてどのように考えていくべきか,小児がんにおける放射線治療の現状と今後の展望について述べる.

  • 佐々木 良平, 出水 祐介, 岩田 宏満, 亀井 美智, 文野 誠久, 赤坂 浩亮, 王 天縁, 妹尾 悟史, 犬伏 祥子, 宮脇 大輔, ...
    2019 年 56 巻 2 号 p. 148-152
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    粒子線治療は,外科的治療が困難な難治がんに対しても有効な治療選択肢であるが,腫瘍と腸管などの正常組織が近接する症例では根治的線量を照射することが困難である.我々は,独自開発した生体適合性材料である吸収性PGA(ポリグルコール酸)手術糸を不織布に加工した体内吸収性PGAスペーサーを外科的に留置し,粒子線治療の期間にのみ腫瘍と正常組織の間隙を作り,スペーサー留置なしでは根治的治療が困難な症例に対して,根治的粒子線治療を可能にする方法を開発した.小児がんに対して,陽子線治療が保険適応されたことを受け,小児科医,小児外科医と研究グループを組織し,吸収性スペーサーと陽子線治療を目的とした小児部会(放射線腫瘍科,小児科,小児外科間の連携)を設置し,小児がんに対してオールジャパン体制での研究連携が可能となる拠点の選定をしつつ,小児がんに対してスペーサー留置と陽子線治療の前向き試験を検討し,妊孕性の保持や被曝を低減する照射法や手術法を開発中である.今後はPGA吸収性スペーサーを更に改良し,より癒着が少なく,より低侵襲な生体適合性材料を用いた次世代・吸収性スペーサーに関しても試作を進めているが,これまでの開発の経緯を踏まえ,PGA吸収性スペーサーの今後の方向性を報告する.

教育セッション3: 倫理
  • 真部 淳
    2019 年 56 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    古来,医学に関するさまざまな書物が著されてきたが,論文の評価あるいは科学誌における査読,すなわちpeer reviewのシステムが確立されたのは16世紀の英国であり,さほど長い歴史を有するものではない.さて,医学・医療における新知見をどのように発表するか.日本語論文と英語論文の違いは前者に比べて後者が格段に多くの読者を得られることにある.本稿では英語論文を書くにあたってのコツを論じる.また,最近のトピックスとして不正行為(misconduct)がある.不正行為が明らかになると,論文の撤回(retraction)に至る.剽窃・盗用(plagiarism:他論文からの無断引用)は不正行為とみなされ,論文はrejectされる.捏造(fabrication)・改ざん(falsification)はすぐには発覚しなくとも,論文が受理されて世の中に出た後に,他の研究者が同じ結果を再現できないことにより問題になる.一度不正行為を行うと,科学の世界から永久に追放されると考えるべきである.とはいっても,本当に誤りを発表してしまうこともあるかもしれない.その場合には誠実な誤り(honest error)として自ら論文を撤回することが可能である.最後に,査読を引き受ける際の注意点を論じる.

英語口演4: 血液基礎
  • 片山 紗乙莉, 鈴木 未来子, 笹原 洋二, 呉 繁夫, 山本 雅之
    2019 年 56 巻 2 号 p. 159-162
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    3q21と3q26との間の逆位や転座を伴う急性骨髄性白血病は,極めて予後不良であることが知られている.近年,発症機構の解明が進み,3q21に存在するGATA2遺伝子エンハンサー(GATA2-distal hematopoietic enhancer: G2DHE)が,3q26上のEVI1遺伝子に近接し,EVI1遺伝子の発現を活性化することが白血病発症の原因であることが明らかにされた.EVI1遺伝子によるG2DHEの獲得は,同時に片アリルのGATA2遺伝子のG2DHEの欠失をもたらし,GATA2遺伝子の発現を低下させる.GATA2遺伝子のヘテロ欠失は骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病との関連が知られていることから,筆者らはG2DHEによるEVI1高発現を再現するモデルマウスである3q21q26マウスとGATA2遺伝子ヘテロ欠失マウスを用いて,白血病発症におけるGATA2の発現低下の貢献を検証した.3q21q26::Gata2+/−マウスは3q21q26マウスと比べて有意に早く白血病を発症した.3q21q26::Gata2+/−マウスの白血病細胞は骨髄系細胞への分化が抑制され,増殖能が亢進していた.このことから,3番染色体長腕の逆位・転座を伴う急性骨髄性白血病においてGATA2ハプロ不全は分化の障害と増殖能の亢進をもたらし白血病発症を促進することが明らかとなった.

原著
  • 正畠 和典, 東堂 まりえ, 岩崎 駿, 安部 孝俊, 山道 拓, 村上 紫津, 山西 整, 廣瀬 正幸, 曹 英樹, 臼井 規朗
    2019 年 56 巻 2 号 p. 163-167
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    胎児や新生児の頭頸部に発生する胚細胞腫瘍は,腫瘍が巨大になると気道狭窄を来すため,出生後に致死的な経過をたどることがある.われわれは,胎児・新生児の上気道周囲に発生する胚細胞腫瘍(以下,本症)の治療経験から,本症の治療手段と問題点について検討した.対象は1989年から2018年までの期間に当院で経験した本症10例とし,臨床データを後方視的に検討した.診断は上顎体7例,頸部奇形腫3例であった.腫瘍の発生部位は前頸部3例,咽頭3例,硬口蓋2例,鼻中隔1例,頭蓋底1例であった.病理組織診断は成熟奇形腫5例,未熟奇形腫5例であった.非出生前診断症例4例は全例が成熟奇形腫で生存退院した.出生前診断は,未熟奇形腫の5例と成熟奇形腫の1例になされた.出生前診断された6例中2例は,胎児・新生児の要因により死亡した.残る4例は出生時の気道確保が困難であると予想されたためEXITを施行し,頸部奇形腫1例を除く3例で気道確保に成功した.EXITで気道確保に成功して腫瘍切除できた2例が生存退院した.胎児・新生児の上気道周囲に発生する胚細胞腫瘍症例において,EXITでの気道確保は有効な手段である.しかし救命には,気道確保の方法だけでなく,出生直後の治療計画を予め検討しておくことも肝要である.

  • 三藤 賢志, 米田 光宏, 上原 秀一郎, 中岡 達雄, 神山 雅史, 塚崎 雪乃, 西本 聡美, 中村 哲郎, 原 純一, 藤崎 弘之, ...
    2019 年 56 巻 2 号 p. 168-171
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    【目的】小児白血病・リンパ腫ガイドラインでは小児成熟B細胞性リンパ腫への初期治療には化学療法が推奨されている.一方,腸重積で発症したバーキットリンパ腫(以下,BL)は緊急的に外科療法を選択せざるをえないことも多い.今回,我々が経験した症例を後方視的に検討し,BLにおける外科療法の意義について考察した.

    【方法】2001年から2015年までに我々が経験した腸重積により発症したBL5例を対象とし,初期治療として原発巣を切除した群(以下,切除群)としなかった群(以下,化学療法群)に分け,後方視的に検討した.

    【結果】年齢中央値は13歳(2–21歳),Murphy分類はStage IIが2例,Stage IIIが2例,Stage IVが1例であった.切除群3例,化学療法群2例で,切除群のうち完全切除は2例であった.手術(生検)から化学療法開始までの期間は切除群48日(18–50日),化学療法群5日(1,9日),治療期間は切除群3か月(2–7か月),化学療法群6.5か月(6,7か月)であった.化学療法群の1例は腫瘍残存のため回盲部切除を要した.追跡期間は31か月(0–173か月),死亡した1例を除いて無再発生存中である.

    【結論】切除群では化学療法開始までの期間が長くなるが,治療期間短縮というメリットもあった.外科療法の意義は基本的に急性腹症に対する緊急処置であるが,治療期間短縮につながる可能性もある.

  • 井深 奏司, 飯野 香菜子, 樋口 紘平, 清水 真理子, 浅原 章裕, 森崎 美佐紀, 丸石 桃花, 稲岡 千佳子, 藤原 太, 木下 真 ...
    2019 年 56 巻 2 号 p. 172-175
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
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    小児におけるメトロニダゾール(MNZ)静注薬の投与は,これまで使用報告が少なく適正な用法・用量や,その効果及び安全性について未だ明らかでない.当院における小児患者に対するMNZ静注薬投与例を検討することにより,小児に対する今後のMNZ静注薬の投与方法,投与効果,安全性等の根拠となるデータを得ることを本研究の目的とした.2014年7月1日から2016年6月30日までの2年間に,当院でMNZ静注薬を投与された15歳以下の造血幹細胞移植を含む抗がん剤治療を受けた小児患者を対象とし,患者背景,投与方法,投与期間,総投与量,有効性,副作用,先行使用していた抗菌薬について診療録にもとづき後方視的検討を行った.対象は4例で,のべ6件で投与を行った.年齢の中央値は8歳5ヶ月(2歳5ヶ月–10歳7ヶ月)で,基礎疾患は急性リンパ性白血病が2例,慢性肉芽腫症が1例,腎芽腫が1例であり,MNZ10 mg/kgを1日3回,8時間毎,1回20分かけて点滴投与した.投与期間の中央値は9(3–15)日,投与回数の中央値は23.5(6–43)回,総投与量の中央値は4,750(900–17,200)mgであった.全例でMNZ静注薬の投与は有効であった.1例で併用内服のタクロリムス血中濃度が上昇する副作用を認めたが,他の副作用は認めなかった.経験症例数は少ないが,MNZ静注薬を併用薬に注意して比較的安全に使用し,効果を得た.

  • 中野 嘉子, 石井 裕子, 中村 さやか, 山崎 夏維, 仁谷 千賀, 岡田 恵子, 藤崎 弘之, 宇野 光昭, 多田羅 竜平, 原 純一
    2019 年 56 巻 2 号 p. 176-181
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    現在,Adolescent and Young Adult(AYA)がん患者への対策が進められつつあるが,治療経験,特に心理社会的問題の国内からの報告は限られている.われわれはAYAがん患者への対応の改善の一助とするため,当科で経験した症例について診療録をもとに後方視的に検討した.対象は2005年1月から2015年12月までに当科入院時の年齢が15歳以上の64例である.年齢中央値は17歳(15歳から41歳)で,造血器腫瘍が27例,脳腫瘍21例,固形腫瘍16例.転帰は生存35例,死亡27例,不明2例であった.専門医に紹介され確定診断や標準的治療が開始されるまでに時間を要したことが予後にも影響したと考えられる症例が10%あった.就学については高校生の23.6%,大学生の4例全例に進学や進級に影響がでていた.AYAがん患者の心理は,多岐に渡り,闘病中に生きる意味を考えたり,死の受容が伺える発言もみられた.また,治療後も慢性合併症や発病前と同様の日常や友人関係に戻る難しさ,就職困難など様々な悩みを抱えており,自殺に至った例もあった.一方で,がんの経験を肯定的に捉え内面的な成長がみられる症例もあった.AYA世代の特性を踏まえた上で,症例ごとのアセスメントを丁寧に行い支援を行うこと,またAYA患者の生の声が共有され,今後の医療実践に反映されることが望まれる.

  • 田畑 阿美, 荒川 芳輝, 梅田 雄嗣, 坪山 直生, 松島 佳苗, 加藤 寿宏
    2019 年 56 巻 2 号 p. 182-188
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    小児脳腫瘍は小児がんの中で白血病に次ぐ頻度で発症し,学習や社会経験の構築に重要な小児期に発症するため,治療中や治療後の復学は大きな課題の一つである.認知機能低下や社会不適応などが生じた小児脳腫瘍患者の報告もみられるが,国内における報告は少ない.今回,復学後の小児脳腫瘍患児の認知機能,生活の質(quality of life:以下QOL)および学校生活における適応行動に関して探索的に調査し,作業療法の立場からの支援の可能性を検討した.対象は京都大学医学部附属病院に通院中の復学後の6~16歳の小児脳腫瘍患児10名で,認知機能評価として日本版WISC-IV知能検査,QOL評価としてPediatric Quality of Life Inventory version 4.0日本語版コアスケールおよび,日本語版脳腫瘍モジュール,適応行動評価として旭出式社会適応スキル検査を実施した.合成得点の平均は全検査IQ 92.9±10.3で,認知機能の明らかな低下は認めず,QOLは比較的保たれている患児・家族が多かった.その一方で,40.0~90.0%の患児において認知機能の個人内差を認めた.過半数の患児において適応行動の低下を認め,特に日常生活スキル,対人関係スキルで低下していた.これらの結果から,作業療法による適応行動の改善を目指した支援が有効となることが期待される.さらなる症例集積から適切な支援方法の検討が必要である.

  • 土屋 雅子, 田崎 牧子, 鷹田 佳典, 高橋 都
    2019 年 56 巻 2 号 p. 189-197
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は,小児期,AYA期発症がん経験者の初めての就職活動における病気開示の意思決定への影響要因および病気開示後の採用面接担当者の反応を定性的に明らかにすることである.16名に半構造化個人面接を実施し,初めての就職活動時の病気開示の状況が明らかであった12名の逐語録に対して帰納的主題分析を行った.その結果,病気開示の意思決定への影響要因は,《治療後の健康問題やがん経験者としての自己認識》《病気開示に関する周りの人々からの助言》《病気を開示することによる採用選考結果への影響》《病気を開示しないことによる心理的負担への影響》《病気を開示しないことによる就職後の困難の予測》であった.治療後の日常生活上の健康問題はないと認識した者は,病気を開示しない傾向にあったが,病気を開示しないことによる心理的負担の増大を懸念した者や就業配慮が必要であると判断した者は,病気を開示する傾向にあった.病気開示後の採用面接担当者の反応は,《淡々とした態度》《他の従業員との比較》《現在の病状に関する質問》であった.採用面接担当者の反応は肯定的なものばかりではなく,その反応は同病あるいは類似の障害を有する従業員の有無や病気の知識により異なることが示された.この世代のがん経験者に対する就職支援として,病気開示のメリットやデメリットを情報提供し,いつどのように伝えるか等の戦略的な意思決定支援が必要であろう.

症例報告
  • 横山 能文, 森 真理, 平手 友章, 篠田 邦大, 桑原 祐也, 宮﨑 太地, 大城 一航, 金山 朋子, 野田 美香, 山下 達也, 門 ...
    2019 年 56 巻 2 号 p. 198-201
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    10歳女児.発熱,頭痛を主訴に近医を受診した際に,白血球高値,貧血,血小板減少を認め当科紹介受診となった.骨髄検査にてAML(FAB-M2)と診断し,治療を開始した.1コース終了時点で寛解を確認したが,FLT3-ITD陽性と判明し造血幹細胞移植を行う方針となった.初診時陽性であった末梢血WT1mRNAは,1コース終了時より<5.0×101を維持していたが4コース終了時点で1.3×102に上昇を認めた.前処置CY+TBI,GVHD予防FK506+sMTXで臍帯血移植を行い,day32に生着を確認した.Day35で行った骨髄検査では寛解を維持していたが,末梢血WT1mRNAは1.7×102(day34),2.3×102(day39)と上昇を認めた.day40よりFLT3阻害薬sorafenib 200 mg/bodyの内服を開始した.末梢血WT1mRNAはday81より<5.0×101を維持し,その後約2年間sorafenib内服を継続した.現在内服終了後1年が経過し,末梢血WT1mRNAは<5.0×101を維持し,再発を疑う所見を認めていない.本例においてFLT3-ITD陽性AMLに対する移植後維持療法としてのsorafenib内服は,安全かつ有効であったと考えられた.

  • 西澤 侑香, 多賀 崇, 池田 勇八, 木川 崇, 丸尾 良浩
    2019 年 56 巻 2 号 p. 202-206
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    脊柱管内に腫瘍性病変を認めた小児の非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin lymphoma; NHL)はまれであり,仙骨部脊柱管内浸潤例の報告はない.仙骨部脊柱管内に腫瘤性病変を認めた鎖骨原発のNHL症例を経験したので報告する.症例は8歳男児.右肩から前胸部にかけての腫瘤を自覚し,当院に入院した.FDG PET-CT検査では,右肩の腫瘤および仙骨部脊柱管内に異常集積があり,仙骨部MRI検査では,同部位に造影効果を伴う腫瘤を認めた.右肩腫瘤生検の結果,仙骨部脊柱管内浸潤を伴う鎖骨原発のB前駆細胞性リンパ芽球型リンパ腫と診断した.JPLSG ALB-NHL03に準じて治療を行った.骨原発のリンパ腫はまれであり,また仙骨部脊柱管内に腫瘤を認めた小児リンパ腫の報告はなく,治療終了後8か月経過したが,再発は認めず経過良好である.

  • 森 真理, 篠田 邦大, 横山 能文, 傍島 有美, 佐々木 汐里, 平手 友章, 金山 朋子, 大城 一航, 野田 美香, 門井 絵美, ...
    2019 年 56 巻 2 号 p. 207-211
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    症例は4歳男児.乳児急性リンパ性白血病の外来維持療法中に,経口摂取不良のため血球回復が遷延,体重も減少していた.維持療法終了直前にノロウイルス腸炎に罹患し,体重減少が進行し入院.持続補液と経管栄養を開始したが血球減少が進行し骨髄検査施行.巨赤芽球を認め,葉酸低値もあり,葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血と診断.葉酸の補充により貧血は改善した.その後痙攣を認め,ビタミンK欠乏による硬膜下血腫と診断.ビタミンKの補充と緊急血腫除去術を施行し,経静脈栄養を開始した.以後体重増加と経口摂取の改善を認め,神経学的後遺症なく退院した.本症例は原疾患の治療,家庭環境,ノロウイルス腸炎の罹患など,様々な要因が重なり巨赤芽球性貧血とビタミンK欠乏性出血症を発症した.白血病治療中の葉酸欠乏の報告は散見されるが,ビタミンK欠乏性出血症や両者をきたした報告はまれであり,栄養アセスメントの重要性を含め報告する.

  • 井上 一利, 西川 拓朗, 平木 翼, 佐々木 裕美, 義岡 孝子, 中川 俊輔, 児玉 祐一, 岡本 康裕, 谷本 昭英, 河野 嘉文
    2019 年 56 巻 2 号 p. 212-215
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    1歳9か月の男児.左前腕部の腫脹に気付き紹介医を受診,MRI検査で6 cm弱の充実性腫瘤を認め当科紹介となった.転移巣なく,生検術を行った.当初,生検材料の病理検索ではinfantile fibrosarcomaを考えたが,中央病理診断ではmyofibromaが疑われた.臨床的な判断に基づいて,vincristine,actinomycine,ifosfamideによる化学療法を開始したが,腫瘍径は変化なかった.中央病理診断の結果と治療反応から,化学療法は開始2か月で中止した.中止3か月後より腫瘤が増大し,中止4か月後に腫瘍辺縁切除術を行った.この際の病理診断はspindle cell sarcoma, unclassifiedであった.局所照射,vincristine,ifosfamide,doxorubicinによる化学療法を3クール行い治療終了した.病理診断が臨床経過に合わない場合は,再度検体を採取し,病理検査を行うことを考慮する.

  • 河村 佑太朗, 井上 彰子, 鈴木 亮, 瀧谷 公隆, 富樫 佑一, 富山 英紀, 竹下 篤, 内山 和久, 玉井 浩
    2019 年 56 巻 2 号 p. 216-220
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    症例は8歳女児.生後8ヶ月時に発症した乳児神経芽腫stage IVに対し,多剤併用化学療法,自家末梢血幹細胞救済大量化学療法および副腎腫瘍摘出術を行い,寛解を得た.治療終了7年後の定期検診時に,腹部エコー検査で膵体部に2 cm大の腫瘤性病変を認めた.各種腫瘍マーカーは陰性であったことから膵solid pseudopapillary neoplasm(SPN)が疑われ,直ちに膵体尾部切除術を施行し確定診断に至った.術後1年10ヶ月の現在,再発なく経過している.SPNは低悪性度腫瘍ではあるが,周囲組織への浸潤,転移,再発をきたすことがあり,今後も注意深い経過観察が必要である.本例では発症年齢が典型的なSPNとは異なっており,神経芽腫治療後の2次がんの可能性や異時性発症の重複がんの可能性が考えられた.小児がん治療後の画像検査を含めた長期的フォローアップの重要性を再認識した.

  • 中野 智太, 新妻 秀剛, 片山 紗乙莉, 渡辺 祐子, 入江 正寛, 力石 健, 笹原 洋二, 呉 繁夫
    2019 年 56 巻 2 号 p. 221-224
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    Wiskott-Aldrich症候群(WAS)の重症例では自己免疫性炎症を合併することが知られている.われわれは,ステロイド抵抗性の全身性自己免疫性炎症を合併したが,rituximabによって寛解を得ることができたWAS症例を経験した.症例は男児で,難治性湿疹と感染症を繰り返し,生後1か月でWASと遺伝子診断された.11か月頃から自己免疫性皮膚・血管・関節炎を合併した.Prednisolone,cyclosporine Aなどが無効であったが,rituximabが劇的に奏効して寛解が得られ,WASの根治療法として同種臍帯血移植を行うことができた.近年,WASの自己免疫性炎症において液性免疫の関与が注目されており,rituximabはその制御に有効である可能性が示された.

  • 渡壁 麻依, 武山 雅博, 稲垣 有佐, 佐伯 しのぶ, 古川 晶子, 荻原 建一, 野上 恵嗣, 田中 康仁, 嶋 緑倫
    2019 年 56 巻 2 号 p. 225-228
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    Baker嚢胞が血友病に合併することは稀である.症例はエフトレノナコグアルファを定期補充している5歳の中等症血友病Bの男児(第IX因子活性3.2 IU/dL).打撲後に左膝窩が腫脹し,関節内出血と考えノナコグアルファを投与するも改善せず入院した.単純CTでBaker嚢胞が疑われたが,超音波検査では陳旧性の血腫と診断された.ノナコグアルファによる止血管理を行い,腫瘤の縮小は軽微であったが緊満感の改善があり退院した.その後腫瘤が増大し再出血を疑われ入院し,アルブトレペノナコグアルファで治療した.単純MRIにてBaker嚢胞の可能性を指摘された一方で,超音波検査では出血を疑われ,診断的治療として穿刺した結果,血性粘液を回収しBaker嚢胞内の出血と診断した.超音波検査は出血に対する感度が高い可能性がある.血友病患者における非典型的な膝の腫脹に対しては超音波検査およびMRIで評価する必要がある.

  • 牧野 理沙, 松林 正, 大箸 拓, 澁谷 温
    2019 年 56 巻 2 号 p. 229-233
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    本邦では非常に稀な異常ヘモグロビン症(Hb Sabine, Hb Evans, Hb Hazebrouck)を報告する.Hb Sabine,Hb Hazebrouckは本邦初報告である.症例1は幼児期から重症の溶血性貧血を呈し,無形成発作を繰り返したため,脾臓摘出術を施行した.遺伝子検査でHb Sabine [β91(F7)Leu→Pro, CTG→CCG(β)]と診断した.症例2は新生児期に溶血性黄疸を呈し,その後も軽度の溶血性貧血を認めていた.遺伝子検査でHb Evans [α62(E11)Val→Met, GTG→ATG(α2)]と診断した.その母も溶血性貧血(脾臓摘出術後)の既往あり,子の診断を契機にHb Evansと診断した.症例3は呼吸障害がないにもかかわらず経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)低値を呈し,動脈血酸素分圧(PaO2)との解離を認めたことから異常ヘモグロビン症を疑った.遺伝子検査でHb Hazebrouck [β38(C4)Thr→Pro, ACC→CCC(β)]と診断した.その父もSpO2低値を認め精査したところ,Hb Hazebrouckと診断した.全症例共通して程度はさまざまだが貧血を呈し,SpO2低値を認めた.「症例1」と「症例2の母」ではEMA染色と赤血球膜band3抗体で封入体は斑状陽性となり,これらの結合物が膜障害をきたし脾臓摘出後も溶血をきたしているものと考えられた.

  • 青柳 憲幸
    2019 年 56 巻 2 号 p. 234-237
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    ヒトパルボウイルスB19(PVB19)感染の臨床症状としては伝染性紅斑や,慢性溶血性貧血患者における無形成発作,非免疫性胎児水腫などが知られている.近年,PVB19感染に関連して,通常の発疹とは異なる点状出血性/紫斑性発疹がみられることがわかってきた.今回,躯幹中心に点状出血性発疹を認め,無形成発作を合併した遺伝性球状赤血球症(HS)の9歳男児というまれな症例を経験したので報告する.このような発疹に注目することが,慢性溶血性疾患の患者における無形成発作の早期診断につながると思われた.なお,本例では第6病週に伝染性紅斑としての発疹が認められた.

  • 井上 忠, 神薗 淳司, 生塩 加奈, 市川 光太郎
    2019 年 56 巻 2 号 p. 238-242
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル 認証あり

    劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)は致死率の高さやその急激な経過のため,早期から強力な治療が必要であるが,一方でCAPSの早期診断は極めて困難である.症例は15歳女性.発熱・倦怠感を主訴に夜間救急外来を受診した.来院時Hb 3.2 g/dL,Plt 8,000/μLであり,翌朝にかけて輸血を行ったがPlt 1,000/μLとなっていた.直ちに血漿交換・ステロイドパルス療法を導入したが,入院3日目に左被殻に出血性脳梗塞を発症した.その後も脳出血の進行を阻止できず入院4日目に脳死とされうる状態となった.後日,血栓症およびループスアンチコアグラント陽性が判明し経過と合わせてとCAPSと診断した.血栓傾向を伴う血小板減少と溶血性貧血を認めた場合,CAPSも鑑別に,血漿交換やステロドパルス,抗凝固療法の速やかな導入を検討する必要があり,本症例はその教訓となった.

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