日本火災学会論文集
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70 巻, 1 号
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論文
  • 飯塚 洋行, 桑名 一徳, 今村 友彦
    2020 年 70 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー

    高温面による予混合気体の着火特性は火災安全上重要な情報である。本研究では,一定のパワーで加熱される壁面に衝突する予混合淀み流の着火条件を理論的に検討した。燃焼反応が流れ場に及ぼす影響を無視した拡散・熱的モデルを採用し,定常解を数値的に得た。加熱壁面から気相へ向かう熱流束と壁面温度の関係として,着火・消炎現象でよく見られるS字曲線が得られた。このS字曲線は,燃焼解,消炎解,弱い燃焼解の3種類の解で構成される。熱流束の値がある臨界値を超えると,定常解としては燃焼解しか存在しないため,いかなる初期条件からも着火に至る。このことは着火に至る臨界熱流束が存在することを示唆しており,これまでの実験結果と矛盾しない。また,漸近解析により着火条件を求め,数値解と比較した。

  • 山下 平祐, 平島 岳夫
    2020 年 70 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー

    本研究では,様々な水分条件を有するコンクリート試験体の重量減少測定実験を実施し,800°Cまでの温度上昇時におけるセメント水和物の水分損失について考察を行った。まず,気乾および封かん試験体では,100°Cを超えると水分の蒸発による重量減少が顕著になった。100°Cから200°Cにおける蒸発速度は,試験体の含水率に比例して増加した。また,C-S-Hのゲル水の脱水は500°C程度まで継続した。250~500°Cにおけるゲル水の脱水速度は,試験体のゲル水量に比例して増加した。そして,骨材の結晶水の影響を検討した結果,1.5°C/分の加熱条件では,600°Cから800°Cにおけるセメント水和物の分解に伴う水分放出は極めて少ないと考えられる。

  • 渡邉 憲道, 須川 修身, 上矢 恭子, 内海 重宜
    2020 年 70 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー

    この論文は,融合した旋回火炎の発生機序や火炎高さの推定に関する最初の包括的な実験的研究を提示する。実験には角度調整可能な16枚の衝立によって作製した管状装置を用いた。装置底面の円周上に軸対称に配置された複数火源を用いた燃焼テストを行った。衝立角度が狭い場合,小さい分離距離において融合した旋回火炎が発生することがわかった。融合した旋回火炎形成の複雑性は,随伴空気による燃焼の促進と火源間への流れ込みの強化の競合によって決定され,自由空間における融合火炎の特性とは明らかに異なった。さらに,融合した旋回火炎にはフルードモデルが適応可能であることに基づいて,融合した旋回火災の火炎高さのモデル式を提案した。

ノート
  • 廣井 悠, 岩見 達也, 髙梨 成子, 樋本 圭佑, 北後 明彦
    2020 年 70 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー

    本研究は,熊本地震の影響を少なからず受けたと考えられる九州地方の全消防本部に地震発生から1ヶ月間の火災を尋ね,それらを精査することで熊本地震における地震火災を網羅的に調査し,その実態を報告する調査研究である。調査の結果として18件の火災の詳細を把握することができた。得られた調査データが少ないため,ここで得られた傾向は地震火災に関する普遍的な知見とはいえないものの,東日本大震災と同じく非常用電源からの火災が発生していること,消防活動上の影響や建物の地震による被害があった場合は大規模延焼に繋がりやすいこと,熊本地震時は初期消火があまり成功していないことなどが示唆された。

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