木質部材の火災時の燃焼性状を数値解析により分析するためには,木材の熱分解による質量減少速度を把握する必要がある。本研究では4種類の堅木と5種類の軟木の粉末の熱重量分析を実行し,その結果を単一過程と三成分モデルで分析した。熱重量分析結果では,約350~380°Cには分解速度の折れ曲がり点があり,これ以降の分解速度は緩やかになった。また,堅木類では約300°C付近において質量減少速度が一定となる平坦部が観測された。熱分解速度のモデル化では,単一過程モデルでは軟木類の折れ曲がり点以前の質量減少速度を再現できたが,堅木類の再現誤差が大きかった。三成分モデルは堅木類と軟木類両方の900°Cまでの質量減少速度を再現でき,特に折れ曲がり点以前の再現精度が高かった。
本調査研究は,2018年胆振東部地震に伴って発生した火災の原因や地震時特有の状況を明らかにすることによって,将来の類似火災の予防に資する基礎資料として残すこと目的とした。北海道内の消防本部に対して電話,対面および書面による調査を行った結果,火災12件に関する情報を得ることができ,原因や火災種別を分類した。原因はろうそくが5件42%と最多であり,電気配線および,潤滑油に高温物接触がともに2件17%などであった.通電火災の可能性がある事案は2件17%であった。特筆すべき点としては,停電中の明り取りのために灯したろうそくを火源とする火災が5件(うち1件は死者1名)発生しており,そのなかでも震央から187.4 km 離れた地点においても火災が発生したことである。
本研究では,都道府県庁所在地を管轄する47消防本部を対象に,1948年3月7日の自治体消防発足時から2019年12月31日までの間に発生した火災出動に伴う殉職に関する調査を行い,情報が得られた62件について傾向を把握した。覚知時刻別に見ると,14:00 から15:59 で殉職事案が最も多く19%を占める。また,22:00 から翌5:59 の覚知時間帯に全体の52%が発生している。
事故発生時の活動段階は「放水開始~鎮圧前」が最も多く62%である。
殉職者の年齢層は20代が最も多く,20代と30代を合計すると,70%を占める。
本研究の結果を対策立案の基礎資料として,消防隊員のより安全な活動環境を整備されることを期待する。