日本の火災シナリオにおけるRIPシガレットの有効性を検討するため,通常及びRIPシガレットを発火源とし,敷布団の圧縮率,敷布団の詰物素材を変更した条件下にて敷布団のくん焼実験を行った。さらに,長期間使用された敷布団を調達し,敷布団の厚さやシガレットの着火性を新品敷布団と比較した。使用済及び新品敷布団において,着火性の違いは確認されなかったが,実験用敷布団を圧縮することにより,くん焼継続回数が増加傾向を示した。また,実験用敷布団の詰物素材にポリエステルを配合することで,くん焼継続回数の減少傾向が確認された。以上の結果から,本実験条件下において通常及びRIPシガレットのくん焼継続回数の差を統計的に確認するには至らなかった。
高層建築物では,大規模な火災や非常事態が発生したときに,在館者が全館避難を強いられることがあり得る。その際,全館で一斉に避難を開始し,階段室内が混雑・高密度状態になることが危惧される。しかしながら,実際の高層建築物における全館避難時の実測データが少ないことから,これまで階段室内における滞留のメカニズムは断片的にしか解明されていない。本研究では,東京都内の25階建て高層事務所ビルで実施された全館避難訓練における避難者約800人の行動を観測した結果を分析し,合流解消後に階段室内で生じた滞留発生要因と伝播条件に関する考察を行なった。その結果,滞留の3つの発生要因および滞留の伝播が起こる可能性のある踊り場と階段部での密度の下限値を明らかにした。