日本心理学会大会発表論文集
Online ISSN : 2433-7609
日本心理学会第85回大会
選択された号の論文の1004件中201~250を表示しています
3.社会・文化
  • 山本 佳祐, 池上 知子
    セッションID: PC-024
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    援助行動は社会的に望ましい行動であるにもかかわらず,援助者が利己的と評価されることがある(Carlson & Zaki, 2018;山本・田中,2018;山本・池上,2019;山本・池上,印刷中)。本研究は善意の援助者が正当に評価されるための手立てを探るため,援助規範の顕現化が利他的動機の推測を促し利己的動機の推測を抑制する効果について検証した。援助規範の顕現化は,援助規範に関する記述文を実験参加者に呈示する形式で操作を行った。大学生220名を対象にオンライン上で質問紙実験を行った。実験参加者は,援助規範に関する文章あるいは無関連の文章を読んだ。その後,倒れた自転車を起こす手伝いをする援助場面のシナリオを読み,援助者に対する印象を評定した。階層的重回帰分析の結果,規範介入の有意な効果は示されず,予測は支持されなかった。本研究では援助規範のプライミング操作を顕在意識レベルで行ったために適切に機能しなかった可能性が考えられる。ただし,援助者に対して利他的規範意識が帰属されると,利他的動機が推測されやすくなることが示され,少なくとも両者の関連性は示された。

  • 髙尾 堅司, 水子 学, 瀧川 真也, 山根 嵩史, 佐々木 新
    セッションID: PC-025
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    障がいを有する子と同居する親にとって,障がい状況に応じた防災対策の実行は喫緊の課題であり,その心理的規定因を確認することは重要である。防災対策意図に関する心理学的理論(たとえば,元吉・髙尾・池田,2008;広瀬,2014)に基づくと,リスク認知や防災対策の実施に対する責任感,防災対策に対するコスト評価や便益の評価が防災対策意図を規定することが予想される。また,目標を達成するための志向性(Higgins, 1997)を踏まえると,促進焦点の傾向を有する者においては防災対策に付随する付加価値が防災対策意図を規定し,予防焦点の傾向を有する者はリスク認知や親として防災対策に取り組む責任感が防災対策意図を規定することが予想される。障がいを理由に自らの意思で防災対策を実行できない子(20歳から49歳)と同居する親(40歳から69歳)を対象に調査を実施した。分析の結果,防災対策の付加価値評価と相対的制御焦点の交互作用項は,相対的予防焦点は防災対策の付加価値の単純傾斜は有意ではなかったが,相対的促進焦点においては防災対策の付加価値の単純傾斜が有意であった。

  • 村山 陽, 山崎 幸子, 長谷部 雅美, 高橋 知也, 山口 淳, 小林 江里香
    セッションID: PC-026
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    経済的困難を抱える単身中高年男性は援助要請に消極的とされる一方,その心的メカニズムは明らかではない。そこで,生活困窮経験者への面接調査(Murayamaら2021)から構築した仮説(経済的苦境将来展望を諦める意識(将来諦め)を高め,それにより援助要請が抑制される)を検証する。方法:東京都A区の単身者50-70代から無作為抽出した4000人に郵送調査を実施(回収率46 %)。質問紙は1)経済状況(現在/幼少期),2)将来諦め:将来展望意識尺度(村山ら2021,2因子:将来諦め/将来不安),3)援助要請の抑制態度:BHSS(Wilsonら2005,2因子:自己解決/他者不信),4)援助要請(意図):GHSQ(Addisら2005),5)個人属性で構成された。結果:男女別多母集団同時分析を行ったところ,仮説通り将来展望の諦めは男性特有の援助要請の抑制因であることが示された。具体的に,男性は経済的苦境(現在)将来諦め他者不信を高めることを介して援助要請を抑制するパスが有意であった。一方,女性は経済的苦境(幼少期)自己解決他者不信を高めることを介して援助要請を抑制するパスが有意であった。

  • 寺田 和永, 津川 秀夫
    セッションID: PC-027
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    ポジティブ心理学では,感謝や利他行動(親切)が,ウェルビーイング向上させることが示されてきた。本研究では,感謝や利他行動の効果を質問紙調査により再検討することを目的とした。大学生83名を対象として,日本語版感謝尺度(GQ6-J),利他行動尺度,人生満足度尺度(SWLS),心理的ウェルビーイング尺度短縮版(PWBS)を用い調査を実施した。その結果,GQ6-Jは,SWLSに有意な正の影響があった。またGQ6-Jは,PWBS合計および,下位因子の〈人格的成長〉〈積極的他者関係〉等に有意な正の影響が認められた。利他行動は,PWBS合計および,〈環境制御力〉等に有意な正の影響があった。以上から,感謝をすることや利他行動をおこなうことによって,先行研究と同様にウェルビーイングが高まることが示唆された。また,感謝と利他行動では,心理的ウェルビーイングの下位因子に及ぼす影響に違いのあることが認められた。すなわち,感謝は自身が成長している感覚や良好な人間関係を築けている感覚に主として影響を与え,利他行動は自分が環境に対応できているという感覚に影響を与えることが示された。

  • 金政 祐司, 荒井 崇史
    セッションID: PC-028
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究の目的は,前向き調査によって,恋愛関係崩壊後のストーカー的行為(ST行為)と関連する恋人や他者との関係性の要因を明らかにすることであった。恋人のいる10~30代の6182名に1年間の縦断調査(計4回)を実施し,調査期間中に恋人から別れを告げられたと回答した男性152名,女性145名を分析対象とした。第一波では,交際期間,交際時の関係性,関係満足度,援助要請スタイル,知人との付き合いの頻度,心理的暴力被害・加害,身体的暴力・加害等に回答を求めた。また,恋人と別れた後にST行為への回答を求めた。第一波の各変数とST行為との間に,別れを報告した調査時期を統制した偏相関分析を行った。その結果,男女とも,ST行為は援助要請自立型得点と有意な負の相関(r=−.16, p<.05;r=−.29, p<.001)を,心理的暴力加害(r=.22, p<.01; r=.27, p<.001)と正の相関を示した。また,男性では唯一性と心理的暴力被害(r=.26, p<.01; r=.20, p<.05)と,女性では身体的暴力被害(r=.21, p<.01)と正の相関を示した。

  • 北村 英哉, 田村 ひなの
    セッションID: PC-029
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    大学生の就職活動への準備段階として,「やりたいこと探し」にいかに取り組むか,その動機づけについて,自己決定理論に基づく萩原・櫻井(2008)の尺度を用いて検討した。自己決定理論では外発的から内発的へ向かう段階を想定し,内発的な動機は文化的自己観に照らした場合,相互独立的な志向性とより結びつきがあり,他者追随動機,安定希求動機は相互協調的自己観と関係するだろうとの仮説を立て,関東近県を中心に大学生ら419名(女性,195名,男性221名,平均年齢19.6歳)から回答を得た。調査では,萩原らの動機尺度,高田ら(1996)の自己観尺度,さらに職業関連の親の態度認知尺度(鹿内,2005)の回答を得,3つの動機づけを目的変数としてこれら尺度得点等を説明変数とする重回帰分析を行った結果,安定希求では評価懸念と親和・順応が高いこと,自己充足志向では個の認識・主張が高いことが影響するなど,仮説を支持する結果が得られた。さらに親の態度認知の交互作用で,父親認知と母親認知の組み合わせにより自己充足志向が高くなる結果も得られた。文化的自己観がキャリア活動への準備に対して影響を有することが確認された。

  • 大杉 尚之, 河原 純一郎
    セッションID: PC-030
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    日本において,「お辞儀」が第一印象に影響することは,学校教育や入社後の新人研修セミナーで特集を組まれるなど一般的に信じられている。この傾向はお辞儀に関する実験的研究でも示されており,お辞儀により顔の魅力が上昇することが明らかとなっている。しかし,これまでの研究では,大学生を対象とし,実験室で個別に実験が行われたため,結果の普遍性や再現性の観点で制限がある。そこで本研究では,日本人参加者を対象にウェブでのお辞儀効果の再現実験を行った(山形大学と北海道大学の大学生:N=37, N=30,クラウドワーカー:N=181)。コンピュータグラフィック(CG)の人物モデルにお辞儀をさせ,動作後にその人物の魅力を評定させた。停止時間ありのお辞儀,なしのお辞儀,静止(統制)条件を比較した結果,静止条件に比べてお辞儀条件の魅力が高くなること,停止時間が長いお辞儀が短いお辞儀よりも魅力が高くなることが再現された。すなわち,ウェブ実験により,幅広い属性の日本人参加者が,日常に近いノイズが多い環境で実施した場合でもお辞儀が魅力を上昇させることが明らかとなった。

  • 西川 里織
    セッションID: PC-031
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    パンデミック時においても,子どものコロナウィルスへの恐怖感は,レジリエンスとウェルビーイングに関連している(e.g., Tang et al., 2021)。本研究の目的は,子どものコロナウィルスに対する恐怖感とエゴレジリエンス,またアタッチメントスタイルの関連性を明らかにすることとした。1300名の小学5年生から中学3年生(男子502名と女子798名)を対象とし,1)新型コロナウィルスに対する恐怖尺度(Wakashima et al., 2020),2)エゴ・レジリエンス(畑ら,2013),3)RQ(Relationship Questionnaire;加藤,1998)にウェブ上で回答した。主な結果は,アタッチメントスタイルは不安定型が安定型よりも多く,特にとらわれ型が最も多く成人を対象にした先行研究(加藤,1998)と同じとなった。エゴレジリエンスは,コロナウィルスへの恐怖感と不安定型アタッチメントと不の相関を示し,安定型と正に相関した。さらに,安定型が不安定型よりも低いレジリエンスを有することを示した(p<.005 &.05)。

  • 李 艶
    セッションID: PC-032
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究は在日中国人留学生を対象に,対人関係を重点に異文化への適応について質的調査と量的調査を行い,異文化適応の心理的メカニズムを明らかにことを目的とした。既存の対人関係尺度を参考にし,留学生用の友人関係尺度を作成し,さらに半構造化面接方法で,インタビュー調査の設問を用意した。分析を行った結果から,留学生の対人関係の心理構造が明らかになった。語学力は対人関係と深い関係があったことによって,日本人との人間関係は留学生の日本語能力に影響を与えていると考えられた。インタビュー法を分析した結果,異文化適応には,異文化に生きる人間同士のお互いを理解しようという受容的な気持ちと,向き合う姿勢が大切なことであると分かった。

  • 谷口 友梨
    セッションID: PC-033
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    遺伝的本質主義の考えは加害者の子どもへのスティグマの連合を促進する(Mehta & Farina, 1988)。本研究は,犯罪原因の所在を実験的に操作することで,加害者の子どもに対する排斥行動を抑制できるかを検討した。Web上で実験を実施した。「犯罪の原因は親からの遺伝にある」または「犯罪は周囲の環境から誘発される」ことを主張する文章のうち一方を提示した。その後,動機の悪質性が異なる2種類の犯罪シナリオのうち一方を提示し,加害者とその子どもの印象,子どもとの心理的距離および加害者家族に対する態度を測定した(有効回答数は363名)。その結果,「犯罪原因は遺伝にある」という信念が強いほど,加害者の子どもに対する排斥行動が生じやすいことが示された。一方,「犯罪原因は環境にある」という信念の強さは,動機の悪質性が低い犯罪行動に対しては,加害者の子どもに対する排斥行動の抑止に作用するものの,動機の悪質性が高い犯罪行為に対しては,加害者の子どもに対する排斥行動を促進することが示唆された。これより,環境信念が加害者の子どもへの排斥行動に及ぼす影響は,犯罪の性質に依存する可能性があることが示唆された。

  • 辻田 那月, 片岡 茉好, 船曳 康子
    セッションID: PC-034
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究では親子間のメディア利用に対する意識の差を,米国バーモント大学のThomas Achenbachらが開発した青少年のメディア依存質問紙であるMedia Activity Formを用いて検討した。11~18歳の子ども300人(男子150人・女子150人)とその親が調査に参加した。親は自分の子どもの,子どもは自分のメディア利用意識についてポジティブな2項目とネガティブな11項目について回答した。性差について女子の方が男子よりもメディアに時間を費やしすぎていると感じていた。また親子間では親の方が子どもより,子どもがメディアに時間を費やしすぎていると感じており,さらにメディアに費やす時間が減れば子どもはもっと家族と過ごし,睡眠をとり,学業成績が良くなるだろう,などメディアについてネガティブに捉えていることが分かった。一方,子どもの方が親よりもメディアを通して役立つ情報を得る,メディアの利用は学業の役に立つ,などメディアについてポジティブに捉えており親子のメディアについての意識には違いがあることが分かった。

  • ターン 有加里ジェシカ, 橋本 剛明, 唐沢 かおり
    セッションID: PC-035
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    最後通牒ゲームという実験パラダイムでは,参加者は2人組になり,そのうち片方(提案者)は実験者から受け取ったお金を,もう片方(応答者)と分け合う方法を提案する。応答者が提案を受け入れれば提案者の提案通りにお金が分配されるが,応答者が提案を拒否すれば2人とも何も受け取れない。このゲームにおいて,提案者が不公平な提案をすると,応答者はその提案を拒否する傾向があり,その動機として,応報動機(不公平な提案をしたことに対して相手を罰したい)と抑止動機(相手がもう不公平な提案をしないよう牽制したい)が先行研究で挙げられている。しかし,どのような状況においてどちらの動機が拒否行動につながりやすいかは明らかでない。本研究では,不公平な提案をした提案者に対して応答者が抱くネガティブな印象の確実さに着目し,そのネガティブな印象が確実であるほど応答者は応報動機を抱きやすいのに対し,不確実であるほど応答者は抑止動機を抱きやすいという仮説を立てた。オンラインで繰り返しの最後通牒ゲームを実施した結果,仮説を間接的に支持する結果は得られ,不公平を拒否する態度と他者に対する印象形成の関連を示すことができた。

  • 近藤 有美香, 平野 真理, 三浦 正江, 岡島 義
    セッションID: PC-036
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    問題と目的 本研究は,現代の女性観を測定する女性観尺度短縮版を作成し,その因子構造と信頼性・妥当性の検討を目的とした。方法 男女計1,000名を対象に十分な倫理的配慮を行った上でWeb調査を実施した。調査項目は①発表者ら作成の女性観尺度原版93項目,②平等主義的性役割態度スケール短縮版(SESRA-A:鈴木,1994),③性差観スケール(SGC:伊藤,1997)であった。結果と考察 女性観尺度原版の因子分析の結果,6因子55項目が抽出され,第1因子「細やかな思考力・判断力」,第2因子「社会の中でのチャレンジと成長」,第3因子「献身的で愛情深い」,第4因子「自立しておらず補佐的」,第5因子「感情的でしたたか」,第6因子「見た目がよく清楚」と解釈された。次に,各因子の因子負荷量が高い4項目を選定した短縮版について確認的因子分析を行った結果,十分な適合度が示された。続けて,女性観尺度短縮版のCronbachの α 係数を算出したところ,一部に十分とは言えない値もみられたが一定の信頼性が確認された。また,SESRA-A及びSGCとの相関係数を算出し,本研究で作成した尺度の妥当性が確認された。

  • 平野 真理, 近藤 有美香, 三浦 正江, 岡島 義
    セッションID: PC-037
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    問題と目的 本研究は,現代の日本社会における女性観が,女性の精神的健康にどのように影響するか検討することを目的とした。方法 女性 1,000 名(大学生300 名,20-40 代の社会人700 名)を対象にWeb調査を実施し,①女性観尺度短縮版(近藤ほか,2021),②一般性自己効力感尺度(坂野・東條,1986),③本来感尺度(伊藤・小玉,2005),④ハーディネス尺度(堀越・堀越,2008),⑤人生キャリア成熟度尺度(坂柳,1999)への回答を求めた。結果と考察 女性観尺度の6因子を独立変数,自己効力感,本来感,ハーディネス,人生キャリア成熟度を従属変数とした重回帰分析を行った結果,女性観のなかでも「社会の中でのチャレンジと成長」因子が,本来感(β=.23),ハーディネス(β=.23-.30),人生キャリア成熟度(β=.19-.30)に影響を与えることが示され,社会の中で積極的に活動して成長するといった女性観を抱いている女性ほど,本来の自分のまま振舞えている感覚が強く,チャレンジ精神が旺盛でコントロール感をもって物事に取り組む姿勢や自分の人生やキャリアに対して自律的・計画的である傾向が示唆された。

  • 山下 倫実, 加藤 陽子, 石田 有理, 布施 晴美
    セッションID: PC-038
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究の目的は,共起ネットワーク分析を行い,出産前後の夫婦関係の関連について検討することであった。令和3年3月に,第1子が生まれて3年以内の父親/母親(各100名)を対象にWEB上で調査を実施した。調査内容としては,「子どもが生まれる前の2人の関係性」,子どもができた後の「夫婦の関係に変化があった点」,「夫婦の関係に変化がなかった点」について自由記述で回答を求めた。その結果,夫を対象とした分析では,産前の夫婦関係と産後の変わらない夫婦関係で共起する語は6語であり,「仲よし」「夫婦」「趣味」「友達」「信頼」「普通」といった関係性が継続していると意識されていた。また,変化した夫婦関係と変化しない夫婦関係として共起する語は7語あり,特に「子ども」「中心」は出現頻度が高かった。一方,妻を対象とした分析では,産前と産後の変わらない夫婦関係で共起する語は「仲良し」「穏やか」の2語のみであった。また,変化した夫婦関係と変化しない夫婦関係として共起する語は7語あり,「子ども」「夫」「お互い」の出現頻度が高かった。妻と夫で出産前後の夫婦関係の変化を異なるものとして経験している可能性が示唆された。

  • 加藤 陽子, 山下 倫実, 石田 有理, 布施 晴美
    セッションID: PC-039
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究の目的は,理想の夫婦関係と産後の夫婦関係に対する妻と夫の認識差について,共起ネットワーク分析用いて探索的に検討することであった。調査は,第1子誕生後3年以内の男女(各100名)を対象に,2021年3月にWEBにて行われ,「理想の夫婦関係」「産前の夫婦関係」「産後の夫婦関係(変化した点/変化しなかった点)」について自由記述で回答を求めた。分析の結果,男女ともに理想の夫婦関係として「仲良し」「お互い」「子ども」「協力」などが抽出された。また,理想および変化がなかった産後の夫婦関係について共起した語は,夫が「夫婦」「仲良し」「友達」「家事」「関係」で,妻は「仲良し」「家事」「一緒」「分担」「穏やか」「ケンカ」であった。他方,理想および変化した産後の夫婦関係で共起した語は,夫が「家族」「子育て」であったのに対し,妻は「子ども」「協力」「生活」であった。さらに,理想および産後の夫婦関係(変化あり・変化なし)で共起した語は,夫が「お互い」の1語のみであったのに対し,妻は「お互い」「子ども」「関係」であった。以上から,産後の夫婦関係に対して妻と夫ではそのとらえ方が異なる可能性が示唆された。

  • 橋本 剛
    セッションID: PC-040
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    近年の援助要請研究では,回避型のみならず依存型(過剰型)の援助要請も不適応的という主張が散見される。しかし,援助要請スタイルと心理的適応の関連に関する実証的論拠はまだ少ない。そこで本研究では複数の調査を通じて,援助要請スタイルと心理的適応の関連を検討した。2019年秋に大学生を対象とした研究1では,回避型が孤独感と正,自尊感情,人生満足感,協調的幸福感と負の関連を示し,回避型と不適応の関連が示された。しかし過剰型と自立型は,いずれも心理的適応と関連を示さなかった。成人を対象として2020年1月~2月に調査を実施した研究2では,回避型と孤独感,自立型と自尊心がそれぞれ正の相関を示したが,過剰型はいずれの心理的適応指標とも関連を示さなかった。さらに,2020年10月に成人への調査を実施した研究3では,協調的幸福感が自立型および依存型と正,孤独感が依存型と負,回避型と正の関連を示した。また,心理的適応指標はサポートと関連し,サポートは依存型と正,回避型と負の関連を示したが,自立型とは関連しなかった。したがって通説に反して,依存型が不適応的であることの明確な論拠は示されなかった。

  • 増井 啓太
    セッションID: PC-041
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究では,ネット荒らしに及ぼす二分法的思考と社会的排斥の影響を検討した。二分法的思考とは,「白か黒か」「0か100か」といった,物事を二律背反なものとして思考することである。二分法的思考は攻撃性の高さと関連することから,本研究においても二分法的思考の強い人ほどネット荒らしを行いやすいと予想した。加えて,社会的排斥は被排斥者の攻撃行動を促進することから,社会的排斥が二分法的思考とネット荒らしとの関係性を強めると予想した。513人の男女(男性248名)にオンライン調査を実施した。各参加者には二分法的思考尺度,排斥経験尺度,ネット荒らし尺度へ回答を求めた。分析の結果,二分法的思考,被排斥経験いずれもネット荒らしと正の関連を示した(rs>.25, ps<.01)。また,二分法的思考が強く,かつ排斥経験の多い人は,排斥経験の少ない人よりもネットを荒らす傾向にあった(B=.24, SE=.05, t(509)=5.27, p<.001)。二分法的思考の強い人ほどネット荒らしを行いやすいが,その傾向は,とりわけ社会的排斥経験の多い場合に顕著となることが示された。

  • 桂 瑠以, 橋本 和幸
    セッションID: PC-042
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究では,高齢者2,000名を対象に調査を行い,高齢者のネット利用状況を年代,性別で比較し,高齢者のネット利用を促進させる心理要因を検討することを目的とした。その結果,高齢者のネット利用状況には,年代,性別で違いが見られ,総じて,若年層ほどネット利用が多いこと,男性ではパソコンによる情報検索や娯楽を目的とした利用が多く,女性では携帯電話での通話やメールによるコミュニケーションを目的とした利用が多いことなどが示唆された。また,ネット利用に関する心理要因がネット利用に及ぼす影響を検討するため,携帯電話及びパソコンでのネット利用量を従属変数,ネット利用への関心・意欲,ネット利用への肯定感,ネット利用の効力感,満足感を独立変数,年代,性別を統制変数として,共分散構造分析を行った。その結果,全ての独立変数がネット利用量を増加させる効果が認められ,特に,ネット利用への関心・意欲の影響が大きい可能性が示唆された。これらの結果から,高齢者のネット利用を促進させる上で,ネットツールの特性や有効性を高齢者に理解されるように示し,ネット利用の関心・意欲を高める支援を行っていくことが重要と考えられる。

  • 橋本 和幸, 桂 瑠以
    セッションID: PC-043
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究では,高齢者2,000名を対象にWeb調査を行い,高齢者のネット利用への不安に関する心理要因を検討した。このために,ネット利用への不安尺度(使い方への不安,ストレス・トラブルへの不安,外部からの攻撃への不安),ネット利用の効用尺度(情報獲得,気分転換,対人交流),使用する機器(携帯電話とパソコン)への満足度尺度,性別,年代を用いた。まず,ネット利用への不安尺度に性別×年代の分散分析を行った結果,使い方への不安とストレス・トラブルへの不安で性別に有意差が見られ,女性の方が高かった。そして,ネット利用への不安尺度を従属変数,ネット利用の効用尺度と使用する機器への満足度尺度の得点高群・低群を独立変数とするt検定を行った結果,使い方への不安は情報獲得尺度と使用する機器への満足度尺度の得点低群の方が高かった。ストレス・トラブルへの不安は,全ての尺度で得点高群の方が高かった。外部からの攻撃への不安は,情報獲得尺度得点と使用する機器への満足度尺度の得点高群の方が高かった。以上より,ネット利用の効用(特に情報獲得)を感じているほど,ネットへの不安が高くなる場合があることが示唆された。

  • 栗田 創一, 山田 祐樹, 福川 康之
    セッションID: PC-044
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    行動免疫とは,個人の生存や繁殖を脅かす感染源(例えば保菌者)に出会った際に,嫌悪感情や回避行動を促すとされる情報処理システムである。行動免疫の活性条件については,これまで,1)感染リスクが高い時や場所,2)女性,3)高齢者,が指摘されている。本研究の目的は,新型コロナウイルス感染症が蔓延している現状における上記の傾向を検証することである。10代から80代の日本人男女にオンライン調査を行い,行動免疫の指標として易感染性(感染症への罹患しやすさの自覚)と感染嫌悪(病原体が付着しやすい状況における不快感の自覚)の2因子からなる感染脆弱意識尺度(福川他,2014)を施行した。これにより得られたコロナ禍発生前(2018年)の1,366名と発生後(2021年)の2,913名のデータを分析したところ,以下の結果が得られた。1)コロナ前よりコロナ後は易感染性と感染嫌悪のいずれも高い。2)易感染性と感染嫌悪はいずれもコロナ状況と無関係に女性が男性より高い。3)コロナ後は男女とも高齢者ほど感染嫌悪が高い。以上の結果は,ヒトの行動免疫が,少なくとも部分的にはコロナ禍で活性化した可能性を示唆するものである。

  • 堀田 結孝
    セッションID: PC-045
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    人々は様々な他者と関係を結び,複雑な社会的ネットワークを形成している。社会心理学の分野において,新たな関係形成機会の多寡として定義される”関係流動性”は,対人場面における個人の行動及び心理に影響を及ぼす社会環境要因として議論されている。更に,関係流動性の議論から,他者一般に対する信頼である”一般的信頼”は,流動的な社会において関係を拡張させていく役割を担う心理メカニズムであると予測される。本研究では,この議論の妥当性を検証する目的の調査を行った。大学の学部一年生を対象に友人関係のネットワークの測定を行い,個人の一般的信頼,関係流動性の認知,及び社会的ネットワークの特徴量との相関を分析した。分析の結果,関係流動性の認知については,一般的信頼及び社会的ネットワークの特徴量と有意な関連が見られなかった。一方,親しい友人として参加者が挙げた人数と一般的信頼との間に正の相関が見られた。結果は,一般的信頼は新たな関係形成場面において社会的ネットワークの拡張を促す心理傾向である可能性を示唆している。

  • 木川 智美, 今城 周造
    セッションID: PC-046
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    日常生活における他者操作方略尺度(木川・今城,2020)では,構成概念妥当性の検証が課題であった。今回は他の諸概念との比較を,多次元尺度解析を用いて探索的に試みることを目的とした。Web調査会社モニターの大学生302人(男女比半々)から,①木川・今城の尺度(2020;前出),②Tactics of Manipulation(Buss, 1992),③他者操作方略尺度(寺島・小玉,2004),④機能的アサーション尺度(Mitamura, 2018)について回答を得た。Buss(1992)について探索的因子分析を行い,4因子を得た。多次元尺度解析の結果,第2象限に木川・今城の「圧力」とBussの「威圧」,第3象限に木川・今城の「策略」「率直」とBussの「論拠・直截」,第1象限と4象限の境に寺島・小玉の操作「自己優越的感情」「自己卑下的感情」「自己優越的行動」「自己卑下的行動」,三田村のアサーション「課題達成」「語用論的配慮」,Bussの「企み」「社会的比較」が位置した。次元1(横軸)は欺瞞,次元2(縦軸)は強制と解釈された。木川・今城の他者操作の独自性が示され,「率直」の新規性が確認された。

  • 高橋 綾子, 北村 英哉, 桐生 正幸
    セッションID: PC-047
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究では,現代の人々において,日本の「伝統的価値観」と「認識」されているものの考え方,感じ方を整理し,それが文化的自己観といかに関係するかを検討する。伝統的価値観は予備調査において取り出すことのできた考えのうち,すでに別領域での研究の多い伝統的性役割観については除いた上で,自分自身の行動指針,行動規範となり得るものに焦点をあてることとした。また,おみくじをひく等の具体的な日常的宗教行為と伝統的価値観がいかに関わるかについても探索する。オンライン調査によって648名(女性430名,男性218名,M=33.94)から得た有効回答を用い,研究1では伝統的価値観尺度,日常的宗教行為尺度を構成し,それぞれ7因子,4因子構造であることと,信頼性・妥当性を確認した。さらに,研究2では文化的自己観との関連を探り,「祟りとばち(a kind of vitalism)」の伝統的価値観が空気信仰を高めることを通して文化的自己観に影響することが確認された。以上の結果から,現代日本においても伝統的価値観が社会的相互作用に対して重要な役割を果たしていることが示された。

  • 楠見 孝, 嘉志摩 佳久
    セッションID: PC-048
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    新型コロナウイルスに対するリスク認知と集合的感情を明らかにするために,全国の男女1002人に対するweb調査を2020年12月に実施した。個人的/集合的感情についての質問項目は,自分/社会一般が,12のコロナ関連対象(例:患者)に対して9つの感情(例:不安)をもつか否かの回答を求めた。他に,感染リスク認知,政府のコロナ対策の評価,情報源の信頼度等について評定を求めた。その結果,個人/集合的感情については,コロナウイルスに対する不安(47 %/49 %)の回答比率は双方とも高い。医療従事者への感謝(84 %/79 %)は個人がやや高い。一方,個人よりも集合的感情の方が高いのは,患者への不安(34 %/42 %),マスクをしない人(36 %/54 %)や首相(29 %/40 %)への怒りである。つぎに,9つの個人/集合的感情ごとに12の対象への該当数を感情スコアとして,他の変数との相関を求めた。感染リスク認知と恐怖の相関は,個人に比べ集合的感情は低い(.24/.06)。また,政府のコロナ対策の評価,政府情報への信頼度は,個人/集合的感情の双方の怒りと逆相関(-.32/-.20;-.28/-.17)であった。

  • 横谷 謙次
    セッションID: PC-049
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    人間の習慣は,仲間の習慣やコメントによって形成される。我々は,この習慣形成の一般原理を,ギャンブルをやめるためのオンライン自助グループにおけるギャンブル断ちに適用した。参加者は,オンライン自助グループに参加している1,089名のギャンブラーであり,161名は自助グループに参加してから3年継続でギャンブルを断っており,928名は3年連続でギャンブルを断てなかった。彼・彼女らは自助グループに参加した最初の3年間で269,317のコメントをグループの仲間から受け取っていた。ギャンブルを3年間継続してギャンブルを断っている仲間のいるギャンブラーは,本人も3年間継続してギャンブルを断つ可能性が高かった。また,自助グループで多くのコメントをもらったギャンブラーは,ギャンブルを断つ可能性が高まっていた。オンライン・ソーシャル・ネットワークを利用した介入は,ギャンブル依存症への新たな治療法となる可能性がある。

  • 品田 瑞穂
    セッションID: PC-050
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究は,成人期の攻撃行動に対して社会的情報処理様式が及ぼす影響について検討する。児童期・青年期における攻撃行動に関しては,社会的状況の手がかりの認知から解釈,行動反応の選択に至る社会的情報処理理論(Crick & Dodge, 1994)によって広く検討が行われてきた。一方,成人期における攻撃行動と社会的情報処理との関連は未だ蓄積が少ない(Tuente, Bogaerts, & Valing, 2019)。そこで本研究は,曖昧な対人葛藤場面における成人の社会的情報処理様式を測定する尺度として,被害的認知尺度を作成し,攻撃性との関連を検討した。被害的認知尺度は,意見や価値観の合わない人とのやりとりにおいて,他者の悪意や敵意を感じる程度を測定する7項目によって構成した。20歳から49歳の男女に対してオンライン調査を実施し,510名(女性254名,男性252名,その他4名)から回答を得た結果,被害的認知尺度とBuss-Perryの攻撃性質問紙における身体的攻撃・敵意・短気との間には,中程度の正の相関(.40-.53),言語的攻撃との間には弱い相関関係(.15)が得られた。

  • 熊谷 智博
    セッションID: PC-051
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    被害に対する報復が被害者の満足感を高めるのは,それによって加害者へメッセージが伝わると考えるためである。しかし代理報復であっても同様であるかは明らかになっていない。そこで本研究では国家間紛争における代理報復をどのような集団が行った場合にもコミュニケーション機能が生じるか,更には和解的態度が強まるかを検証した。20歳から22歳までの日本人男女609名が実験に参加した。参加者は日本と中国の間の紛争について代理報復要因4水準(日本/アメリカ/ロシア/アイスランド),謝罪要因2水準(謝罪あり/謝罪なし)を操作したシナリオを読み,コミュニケーション機能認知2項目,公正回復1項目,報復的態度2項目,寛容性3項目,満足2項目の質問に回答した(全て6件法)。結果は代理報復国がアメリカよりも,ロシア,ロシアよりもアイスランドが代理報復を行った場合に加害者にコミュニケーション機能が高いと認知され,それを介して和解的態度が強まった。この事から,代理報復によるコミュニケーション機能認知は国家間関係によって調整され,必ずしも和解的態度を促進するわけでは無いと考えられる。

  • 高木 彩, 武田 美亜, 小森 めぐみ
    セッションID: PC-052
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究では,人工知能など情報分野の先端科学技術に対する認知と受容に感情要因が及ぼす影響を検討した。2020年3月に15歳から64歳までの1000名に対してWEB調査を実施し,人工知能,機械学習,自動運転,仮想現実の4つの技術に対して,受容態度とそれを規定することが予想される主たる要因(リスク認知,ベネフィット認知,対象技術の性能に対する信頼感)を測定した。加えて感情要因に関しては,ポジティブ/ネガティブの感情価だけでなく,個別の感情の影響を検討するために,対象技術に対する畏怖,嫌悪,穢れ忌避感情と,日頃これらの感情を経験する個人差をそれぞれ測定した。その結果,どの技術の受容態度及び主たる要因に関しても技術に対するネガティブ感情は有意であり,技術のリスク認知を高め,ベネフィット認知と性能への信頼感を低め,受容態度に対して負の関連を示した。それに対して,技術に対する穢れ忌避感情や畏怖感情の影響や,これら感情の日常的な経験の個人差による影響は,技術の種類により異なった関連が確認された。

  • 牧野 幸志
    セッションID: PC-053
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究では,オンラインによる心理ゲームがコミュニケーション・スキル(以下,CS)に与える効果を検討した。参加者は大学生39名(男性19名,女性20名,年齢幅18~22歳,平均年齢 19.59歳)。手続き 参加者に事前態度測定を実施した。2週間後,実験群は人狼ゲームを6回おこなった。統制群はゲームを体験しなかった。ゲーム実施の約2週間後,全員に事後調査を行った。調査項目の構成 CSを測定のためにCS尺度(藤本・大坊,2007)(6因子)を使用した(7段階評定)。結果と考察 心理ゲームの有無(実験群,統制群)と事前事後(before, after)の2要因を独立変数とし,6つのCS得点を従属変数とした混合計画。分析の結果,自己統制因子と自己主張因子において,心理ゲームの主効果が見られた。統制群の方が実験群よりも,2つのスキルが高かった。また,関係調整因子において,心理ゲームの主効果が有意,交互作用が有意傾向であった。下位検定の結果,事前では統制群が実験群より得点が高かったが,事後には実験群と統制群の間に差がみられなかった。対面による心理ゲームと比べて,オンラインによる促進効果はあまりみられなかった。

  • 高野 了太, 澤田 和輝, 野村 理朗
    セッションID: PC-054
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    畏敬は,現在の認知的な枠組みが更新するような広大な刺激に対する感情反応である。従来,雄大な自然等の刺激から生じる畏敬が自己主体感を低下させ,目の前の超越的な出来事を説明するための新たな意味体系(神等)を見出すよう動機づけること等が指摘されている。これらの知見は,畏敬が「人は行いにふさわしい成果をこの世界で与えられる」という公正世界信念(Belief in a just world,以下BJWとする)と関わる可能性を示唆する。BJWは対象を自己としたBJW-自己と,他者としたBJW-他者の2種からなり,例えば,BJW-自己は,自分の運命をコントロールする点から自己主体感と正に関わる一方,BJW-他者は,世界に意味体系をもたらす点から宗教的信仰心と正に関わることが示されている。ゆえに本研究では,日常的に畏敬を経験する傾向(気質畏敬)とBJW-自己・他者の関連を検討した。結果,他のポジティブ感情の効果を統制した際,気質畏敬は,BJW-自己を負に,BJW-他者を正に特異的に予測した。これらの結果は,畏敬が,自他の対象によって異なる形で,世界を理解するための枠組みとしての信念と関わることを示唆する。

  • 柳田 航, 村田 光二
    セッションID: PC-055
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    キャリアアップとしての転職も注目され始めている中,我が国の管理職に対する女性比率は著しく低い。そこで本研究では管理職への中途採用時における評価に男女差があるか調べるため,場面想定法による質問紙実験を実施した。大学生107名を対象として実験を行い,適性(3)×候補者の性別(2)の被験者間計画であった。課長職の中途採用場面を想定してもらい,候補者の経歴として,適性が高い,あいまい,低いの3種,性差は名前だけで表され,これらは参加者間で異なっていた。参加者は計6種の経歴のうち1つを読み,候補者がどれほど課長職に適任かについて10段階で尋ねられた。結果は適性と候補者の性別において,交互作用が有意(F(2,97)=11.34, p<.001)で,これは候補者の適性があいまいな場合と低い場合に,男性より女性の方が有意に高い評価を受ける傾向を示した。従来の男女差別の研究においては,女性よりも男性が高く評価される傾向にあったが,本研究では逆の結果となった。昨今の女性に対する差別はよくないという,社会的規範の強まりにより,参加者は女性を低く評価することに強い抵抗を感じたのではないだろうか。

  • 荘島 幸子
    セッションID: PC-056
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    ヒトのよそおい行動にはジェンダーが深く染み込まれている。<男><女>らしさを演出し,ジェンダーをまとう実践をジェンダーワークと捉え,他者とのコミュニケーションの1つとして捉えなおした。出生時に指定されたジェンダーを隠し,望みの性別で生きる人々の語りから,ジェンダーワークを検討した結果,第1に,ジェンダーワークとは身体も含めた自己のトータルコーディネートであり,他者との相互作用の中で現れる社会的行動-地ならし,揺らぎ,分化する-であった。第2に,ある<ジェンダー>をもつ自己を確認,形成する側面を持ち,一生を通じて再編集を繰り返す実践であることが明らかになった。また,彼らの実践が生まれの性別のまま生きる者の実践にも通じていることを確認した。ジェンダーワークとしてのよそおいは,ジェンダーにまつわる抑圧や抵抗といった力が働く磁場において実践され,翻って<男><女>の境界線を定めたり,定めなおしており,よそおいは自己に密接に結び付くだけでなく,よそおう身体とその実践を通じて社会にも一石を投じている。

  • 圷 信子
    セッションID: PC-057
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    化粧は不安や喜びなど様々な感情に影響を及ぼし,それにより行動も変化する。今回,化粧がストループ検査の課題正答数へ及ぼす影響について検討した。[方法]日常的に化粧をする習慣のある健常成人女性14名(平均年齢20.9±0.8歳)を対象とし,化粧有無でのストループ検査,GACLによる素顔および化粧顔での心理指標の評価,素顔および化粧顔に関する印象や気持ちについてのアンケートを実施した。[結果及び考察]ストループ検査の課題1~4の正答数において,素顔よりも化粧顔での正答数が多く,課題4では有意差が認められた(p<0.01)。素顔及び化粧顔の状態の「覚醒度」と「ストレス度」をGACLで調べたところ,「覚醒度」は素顔よりも化粧顔の状態で高かったが(p<0.01),「ストレス度」は両者間で差がなかった。本研究にて素顔よりも化粧顔でストループ検査の課題正答数が多いことを示した。化粧行為,あるいは,仕上がった化粧顔により覚醒度が高まったことが一因として考えられる。

  • 藤島 喜嗣, 石井 萌波, 白石 まどか, 宮本 祐里
    セッションID: PC-058
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    Diener, Wirtz, & Oishi(2001)は,実験参加者に肯定シナリオもしくは否定シナリオに,ほどほどに幸せな人生数年を情報として追加するかどうかを操作して提示し,登場人物の人生を評価させた。その結果,素晴らしい人生が突然終わる場合,その後程々に幸せな人生が数年続くよりも好ましく評定し,悲惨な人生の後に数年少しだけましな年月が続く場合,悲惨な人生が突然終わるよりも好ましく評定した。本研究は,このDiener et al.(2001)の追試を行った。研究1(n=237)では,元研究では参加者内要因であった追加情報の有無を参加者間要因とした。研究2(n=188)では,元研究と同様に追加情報の有無を参加者内要因とした。その結果,研究1では支持的証拠を得られなかったが,研究2では支持的証拠を得た。要因配置の違いで追試の成否が異なったことから,ピーク・エンドの法則が成り立つためには,シナリオの対照が必要である可能性が示唆された。

  • 水田 恵三
    セッションID: PC-059
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    我々が行った浪江町に関する研究(2020)では,数は多くないが現在浪江町には帰住していない人々でも,高齢者を中心として帰住する意向を示している。本研究の目的は,原発災害によって故郷を離れた人々が,どのような理由で帰住するのか,そしてどのように故郷を再建しようとしているのかを研究することである。

  • 草野 颯太, 上市 秀雄
    セッションID: PC-060
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    近年,電子化による供給量の増加によりマンガ市場はコンテンツ産業の中でも特に重要視されている。そのさらなる発展のためには,消費者がマンガ作品を選ぶ選好要因を明らかにすることが重要である。しかし,マンガの選好に関する研究は少なく,マンガ作品の選好要因は個人によって異なる上に,体系化がされていない。そこで本研究では,マンガ市場において大きな影響力を持つとされるマンガ制作経験者(分析対象8名:男性4名,女性4名)に対して質問紙およびインタビュー調査を行い,マンガを読み始めるかどうかや続きをよむかどうかを決定する要因を内容から分類した。その結果,「ビジュアル」,「内容への関心」,「評判」,「人間関係」,「アクセスのしやすさ」の5つに分けることができた。また,マンガ作品を読み始めるかどうかの意思決定には「評判」などの外的要因が強く影響しており,読み始めたマンガ作品の続きを読むかどうかの意思決定には「内容への関心」などの内的要因が強く影響していることが観察できた。より詳細な要因や統計的に信頼性のある結果をみるにはさらなる研究が必要と考えられる。

  • 佐山 公一, 王 暎瑄
    セッションID: PC-061
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    小樽は北海道の観光都市である。小樽への海外からの観光客は,中国,韓国,台湾が多数を占めてきた。なかでも台湾からの観光客はリピーターが多く,観光業にとって重要な意味をもつ。コロナ禍で,日本の観光地は海外からの来訪者の激減に悩まされている。訪問動機の高い台湾からの観光客は,観光業再興のためのきっかけを作ってくれると,日本中の観光従事者が考えている。海外からの観光客が日本の観光地の情報を得ようとするとき,SNSを使用することが一般的である。とくに,コロナ禍で現地に行くことができない今,SNSを通した適切な観光情報の提供は,他の観光地との差別化を図るうえできわめて重要である。本研究の目的は,台湾人訪日観光客の小樽への再訪と台湾人のSNSの使用傾向との関係を,探索的に調べることである。SNSを介して得た情報が,台湾人訪日観光客に小樽を再訪しようとする動機にどのように結びつくかを,Web上の質問紙調査により明らかにする。台湾人502名(男性205名,女性297名)が参加した。現在,Amosを使って共分散構造分析を行っている。参加者の属性にもとづき参加者間の違いを分析している。

  • 白木 優馬, 小山 智彦
    セッションID: PC-063
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    目的 本研究では,職場における対人関係の円滑化を図る「サンクスカード」の取り組みにおいて,サンクスカードのやり取りの特徴,またそのやり取りに影響を与える要因について検討した。方法 介護老人保健施設の実践活動として使用されたサンクスカード(2529枚)を分析の対象とした。当該期間中に一度でもカードを送った(送り主),またはもらった(受け手)人々のリストを作成し,カードをおよそ半年ずつ,第1期から第4期までの4つの時期に分割した。結果と考察 時期ごとのネットワークの構造の指標を確認したところ,ネットワークの密度はすべての時期間で高まっており,ネットワークの推移性・相互性については,いずれも第一期に最大値を取り,その後の第二期以降に増加する傾向にあった。各頂点の入次数および出次数と性別・年齢層との関連を分析したところ,若者のほうが活動に積極的に取り組んでいることがわかった。これらの結果から,サンクスカードの取り組みは時期を経るごとに職場内を伝播し,職員間の関係をより強固にしている一方で,カードの送り手は一部の若者に集中する傾向があることが分かった。

  • 鄭 姝, 松尾 由美, 田島 祥, 坂元 章
    セッションID: PC-064
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究では,低年齢の子どものインターネットへの理解の実態を把握するために,2021年2月に3歳児(年少)クラス相当から小学校3年生までの子どもと同居し,養育に最もよく関わっている保護者を対象にウェブ調査を実施した。不適切な回答を除き,1894名(男性165名,女性1729名)のデータを有効回答として分析に用いた。6つの項目(動画のプログラミング,ゲームのプログラミング,プログラミング全体,インターネットという用語,オフラインとオンラインという用語,情報の広がり)に対する子どもの理解(知っている,知らない,判断できない)と学齢および性別との連関をカイ二乗分析で分析した結果,いずれも有意であった(χ2s=169.25~320.27, df=22, p<.001)。残差分析の結果からは,学齢が上がるにつれていずれの項目においても子どもは理解するようになる傾向が見られた。さらに,プログラミングについて,就学前では男女とも「判断できない」と回答した保護者が多かったが,その後は男子のほうが理解の早い傾向が見られた。しかし,このような性差は小学校3年生になるとみられなくなった。

  • 松尾 由美, 田島 祥, 鄭 姝, 坂元 章
    セッションID: PC-065
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    低年齢の子どものインターネットに対する理解の現状を明らかにするために,3歳児から小学3年生の子どもの保護者を対象に2021年2月にWEB調査を実施した。不適切な回答を除いた1894名を分析対象とした。インターネットの存在(1:存在を知らない~4:未利用機器もインターネットに接続していると理解)と仕組み(1:外部とネットワークでつながっていることを知らない~4:全世界の人とつながっていることを理解)の理解について,自身の子どもに該当するものを選択するよう求めた。性別と学齢の12群と各レベルに該当すると回答したか否かについてカイ二乗検定を行った結果いずれも有意であった(χ2 s=43.76~220.081, df=11, p<.001)。残差分析の結果,インターネットの存在について,男女とも,学齢が上がるにつれて,レベル1・2の該当者が減り,レベル3・4の該当者が増えるという傾向が見られた。一方,インターネットの理解について,一部,男女で異なる部分もあるものの,概ね存在の理解と同じ傾向が見られた。

  • 筒井 雄二
    セッションID: PC-066
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    2011年に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故の直後から我々は福島県内の低線量放射線汚染地域で暮らす母子の,放射線による健康被害に対する不安や恐怖に起因すると考えられる精神症状について調査を行ってきた。放射線不安や心理的ストレスは事故からの時間経過に伴う一定の低下がみられたが,他県群に比べて高い状況は続き,心理的影響の長期化が懸念される(cf. Tsutsui et al., 2020)。ところで,ヒトは健康を害する可能性のある毒物や化学物質から行動的に忌避するメカニズムを生得的に有する可能性が示唆されている(Schaller & Duncan, 2007)。この仕組みは行動免疫システムとよばれ,福島事故による精神影響が長期化する原因の一つとの指摘がある(筒井,2019)。本研究では,チェルノブイリ原発事故の被災者を対象に事故後の精神影響と行動免疫システムとの関連性について調べた。分析の結果,チェルノブイリ被災者は福島事故の被災者と同様,感染脆弱傾向が高い場合に放射能汚染に対するリスク認知が上昇し,その結果として放射線不安やストレスなど精神症状が上昇することがわかった。

  • 水田 さくら, 甲田 菜穂子
    セッションID: PC-067
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    視覚に障害を持つ盲導犬使用者が感じる課題は,公共施設への盲導犬の同伴拒否や盲導犬に関する間違った認識など,社会の理解不足からなるものが多い。また,盲導犬事業は資金の大半を民間からの寄付で賄っており,効果的な啓発によって寄付を募る方法の見直しは,意味があると考えられる。本研究は,盲導犬使用者に対する必要な援助行動を整理し,社会の理解度や注目度を高める効果的な啓発についての考察を行った。調査対象は,日本の全11の盲導犬育成団体のWEBサイトであった。結果,盲導犬育成団体のWEBサイトでは,援助の効果を訴える援助効果広告よりも援助の必要性を訴える援助必要性広告が多く使用されており,盲導犬の画像を使用し,寄付を訴えるものが多かった。盲導犬育成団体にとって,寄付収益の確保は重要課題であり,寄付をより集めやすい援助必要性広告が中心となるのは必然的だと考えられる。改善点として,啓発に画像を使用していない団体は使用すること,また,盲導犬の寂し気な画像は負の印象を与える可能性があるため,感情的な訴えになりすぎないようにすることが挙げられる。今後は,啓発方法による啓発効果の差異の調査が有意義と考えられる。

  • 古橋 健悟, 五十嵐 祐
    セッションID: PC-068
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    問題が生じた際に他者に援助を求める行動である援助要請行動は,問題に対する対処行動として有効である。先行研究では,援助者のコストが大きい場合,援助要請行動は抑制されることが示されている。一方,援助要請者は,援助者のコストを過大評価する傾向がある。本研究では,援助行動の想起を行うことにより,この援助者と援助要請者間の差異を減じることができるかどうかを検討した。実験では,援助体験・援助拒否体験・差異体験(援助者と援助要請者間の差異を感じた体験)を想起することの効果を検討した。参加者にいずれかの想起を行うように求めた後,参加者自身が援助者となるシナリオ・援助要請者となるシナリオのそれぞれについて,援助者のコストを評価するよう求めた。その結果,差異体験の想起により,援助者のコストが低く知覚されることが示された。一方,援助拒否体験の想起により,援助者のコストが高く知覚されることが示された。また,いずれの想起も,援助者・援助要請者間の差異を減じる効果は見られなかった。本研究の結果から,差異体験の想起は,援助行動・援助要請行動を促進する介入に繋がる可能性が示唆された。

  • 浅野 良輔, 一言 英文, 伊藤 健一
    セッションID: PC-069
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究の目的は,2つの累積データを用いて,北米および日本における都市居住者率と主観的幸福感の関連を検討することであった。研究1では,1972年から2018年に行われた総合的社会調査に回答した北米人60,054名,ならびに2000年から2012年に行われた日本版総合的社会調査に回答した日本人21,501名の主観的幸福感に関する設問を分析した。研究2では,第1回から第7回の世界価値観調査に回答した北米人12,923名,ならびに日本人9,248名の主観的幸福感に関する設問を分析した。両国の都市居住者率については,United Nations(2018)による報告を参照した。その結果,研究1と研究2に共通して,北米においては,都市居住者率が高い年ほど年平均の主観的幸福感が低かった一方で,日本においては,都市居住者率が高い年ほど年平均の主観的幸福感が高かった。この結果は回答者の性別や年齢を考慮しても頑健であった。本研究の知見は,北米の都市居住者は地方居住者よりも主観的幸福感が低いのに対して,日本の都市居住者は地方居住者よりも主観的幸福感が高いことを示唆している。

  • 安念 保昌
    セッションID: PC-071
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    ツイッターは,自発的な書き込みによって成り立っているため,ツイートをうまく取り出せれば,質問紙の動機問題を解消できると考え,その試金石として,2020年米大統領選挙と同時期に話題となった女優の婚約話題を取り上げ,ツイートの感情分析を行った。2020年10月2日から,11月11日までの約6週間にわたる,66400件のツイートを対象にUserLocal AIテキストマイニングを使用して,内容分析を行った。その肯定性においては,投稿された時間帯とトランプ/石原の間に5 %水準の有意な交互作用が認められたため,単純傾斜分析を行った。その結果,トランプよりも石原に対して肯定性が有意に高く,かつ,石原へのそれは,夜より昼のほうが高いのに対し,トランプは,昼夜にかかわらず,一定で低いままであることが分かった。これらの事から,政治的な関心を持った者は,時間帯に関わらず安定してツイートするが,女優へのファン層では,時間帯による影響がみられることが示された。

  • 中田 友貴, 吉田 史明, 高橋 典寿
    セッションID: PC-072
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究は,個人の発言が伝播していく上で伝播に関わる人物間のつながりの強さの影響を明らかにすることを目的とし,SNS上の発言とそれに反応を行う個々人の過去の反応から個々人の社会的影響力が情報伝播に与える影響をネットワーク構造の観点から検討した。twitterのAPIを用いて取得した,任意に選択した対象tweetへのretweetやコメントを行ったアカウントからに対し,それらのアカウントのフォローと過去のリツイートしたtweetの数,およびその発信者のIDを分析の対象とした。あるtweetに対し,関連するアカウントを頂点と見做し,またretweetを辺と見做して有向グラフを構成することで,SNSにおける情報伝播のモデルを構築した。さらに,各辺の端点であるアカウント同士のある関係を得点とし,PageRankを計算することで各アカウントの重要度を算出し,分析を行った。その結果,アカウントの重要度が情報の拡散に影響する可能性が示唆されたが,一部ではその傾向は見られなかった。これらの結果から情報拡散に及ぼす可能性のある要因を考察する。

  • 平野 智子, 藤 桂
    セッションID: PC-073
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    長期化一途を辿るコロナ禍の中で,訪問看護師は感染への脅威と,様々な業務方針の葛藤に迫られながら,責任を果たすために緊張感の中業務を続けてきたことで,心身の疲労が蓄積していることが指摘されている。一方,訪問看護師の心理的困難に着目した知見からは,現在の困難な経験がこれからの自分の看護に受け継がれていくというように「未来へ向けた継承的視点」から捉え直すことにより,「自らも支えられている」というケアリングの相互性の実感に至り,支援の継続に結びつくことも示されている。この過程がコロナ禍においてもみられるかを検証するため,本研究では新型コロナウイルス流行前後にわたる縦断的調査(2020年2月,8月,2021年3月)を行い,現職訪問看護師202名に対しコロナ禍において経験してきた心理的困難,精神的健康,未来に向けた継承的捉え直しについて尋ねた。共分散構造分析の結果,特に8月時点において,感染拡大後に経験された心理的困難が精神的健康を悪化させていたことが示された。しかし未来に向けた継承的捉え直しは,感染流行前のみならず,流行後の各時点においても有効に機能し精神的健康を高めていたことも明らかとなった。

  • 鈴木 公基, 鈴木 みゆき
    セッションID: PC-074
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    我が国では「共生社会」の実現が目指されている。その実現の一環として合理的配慮(reasonable accomodation)が求められている。ただし,この合理的配慮が個々人にどのように認識されているのか,については十分に明らかにされていない。このことから本研究では,合理的配慮の必要性という観点から心理尺度を構成し,その因子構造および内的一貫性について検討することを目的とした。大学生581名(男276名,女304名,不明1名)を対象に合理的配慮の必要性認知尺度24項目を実施した。探索的因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行った結果,4因子構造であることが明らかとなった。第1因子は教育場面における合理的配慮,第2因子は一般場面における差別的対応,第3因子は一般場面における合理的配慮,第4因子は就業場面における合理的配慮と解釈・命名された。下位尺度を構成し内的一貫性 α 係数を算出した結果,教育場面における合理的配慮が.90,一般場面における差別的対応が.90,一般場面における合理的配慮が.85,就業場面における合理的配慮が.89であり十分な内的一貫性を有していることが確認された。

  • 鈴木 みゆき, 鈴木 公基
    セッションID: PC-075
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    我が国では「共生社会」の実現が目指されている。その実現の一環として合理的配慮(reasonable accomodation)が求められている。鈴木・鈴木(2021)は,個々人の合理的配慮への意識(必要性の認知および実行の程度の認知)を4つの側面(教育・就業・一般場面の合理的配慮,一般場面の差別的対応)から測定する尺度を開発した。本研究では,合理的配慮への意識が,具体的な障がいや病者に対する行動とどのように関連するのか明らかにすることを目的とした。大学生159名(男57名,女102名)を対象とした質問紙調査の結果から以下のことが明らかとなった。第1に,合理的配慮の必要性認知・実行認知ともに障がい者・病者に対する行動との間に弱い有意な正の相関が示された。差別的対応の必要性認知との間には弱い負の相関が示された。第2に,合理的配慮の必要性認知および実行認知において,他方の変数との関連をコントロールした上で障がい者・病者に対する行動との偏相関係数を算出した結果,合理的配慮の実行認知でのみ関連が示され,必要性認知との関連は示されなかった。

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