人類は,有史以来数多くの巨大プロジェクトを成功させてきた.20世紀には,月への着陸をはじめとする宇宙開発プロジェクト,原子力の平和あるいは武力としての利用プロジェクト,わが国では,新幹線プロジェクト,東京オリンピックや万博などのイベント,巨大化学プラントの建設,東京オリンピックに始まったオンラインシステム,産業インフラの高速道路・空港・港湾の建設などなど.また,その背後には,小規模であっても社会の発展に大きな役割を果たした多数のプロジェクト,はたまた失敗に終わった無数のプロジェクトが横たわっている.それらの経験から,われわれはプロジェクトマネジメントについて多くを学んだに違いない. さて,21世紀には,どのようなプロジェクトが出現するであろうか.その予測は極めて困難であり,たいていの予測は当たらない.あえてその要因から考えてみると,まず,21世紀のキーワードとして,"地球上の人口爆発","地球温暖化などの環境問題","グローバル化"とその一方での"民族的な紛争",それらの影響による"難民の増加や貧困問題","ITやバイオ・遺伝子工学などの科学技術の発達"などが挙げられる.また,日本では"少子高齢化"が社会変化の大きな要因となっており,大地震などの大規模災害の発生や巨大システムの事故などに伴う危機管理やその後の修復や再開発のプロジェクトも重要になろう.以上のような課題に対して多くのプロジェクトが出現するであろうが,科学技術の進歩や社会的な仕組みの変化については予想もできない. ここでは,従来型の建設,プラント,情報システムなどとは異なるタイプのプロジェクトも念頭におきながら,21世紀のプロジェクトマネジメントのパラダイム,プロジェクトマネジメント学あるいは学会への期待などについて触れてみたい.
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