従来,会計における仕訳の表現において,材料を現金で購入するとき,材料を「左側の借方」として,それを購入するために必要な現金を「右側の貸方」に書いている.しかし,これを技術系の人の考え方からみると,現金(貸方)がインプットであり,材料(借方)がアウトプットであると解釈できるので,仕訳の表現を左側にインプットとしての現金(貸方),右側にアウトプットとしての材料(借方)がくるように表現してみると,左から右へ因果関係のフロー(手順)を書くことに慣れている技術系の人にとって非常にわかりやすい表現となる.本論文は,そのわかりやすい表現を利用して,プロジェクト管理/会計の上流から下流までの因果関係を『新プロジェクト管理の方法(DTCN/DTC:Design To Customers' Needs/Design To Costの方法)』における手順(ステップリスト手法)の視点に合わせたプロジェクト管理/会計の表現方法としての検討をしてみた.結果として,損益計算書の表現は従来の表現位置のままで,仕訳の「借方-貸方」の表現位置を「貸方-借方」の表現位置に置き換えると,仕訳全体の表現が,左(上流)から右(下流)へ流れる手順型の因果関係のフローの形になるので,技術系の人に仕訳の内容の因果関係およびその手順の内容が理解しやすくなる.ちなみに現代においては,この仕訳の表現を置き換えることは,コンピュータにより同時に表示することもできるし,どちらか一方の表示もできるので,従来の表現位置になれた人の混乱は発生しないと考えることができる.従ってこの表現により,事務系の人と技術系の人が一緒になって考え共同作業をすることのできる共創の場を創り出せることができる.この共創の場により,事務系の人と技術系の人が,効果的・効率的に価値の高いプロジェクトの結果を共同して創り出すために,共に考え行動できるプロジェクト管理と会計の表現,考え方,メカニズム,その手順創りへの道がひらける.本論文は,その可能性の原点を示す論文として発表するものである.
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