E-journal GEO
Online ISSN : 1880-8107
13 巻 , 1 号
選択された号の論文の38件中1~38を表示しています
調査報告
  • 澤田 康徳, 秋元 健作
    2018 年 13 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本研究では,関東地方の夏期降水発現時における気温低下の地域的特徴を明らかにした.夏期平均気温の高低は降水頻度の高低と相関が強く,平均気温の低下に降水雲の出現による日照時間の低下が関わっている.また,降水発現時の気温の標準偏差は平野北部より南部で大きい.南部では気温が高い日中のほか,降水発現前に日照時間が寡少で低温な広領域曇雨天時および夜間の降水発現事例が北部より多く,広領域曇雨天時は降水強度が大きく気温低下幅が大きい.一方,局地的に発現した対流性降水事例は北部で多発し,日中においては,降水発現時前に日照時間が気温低下に先立って減少し,降水強度が夜間より大きくその後の気温低下も大きい.対流性降水事例では,発現後5~8時間で領域晴天日の気温の日変化とほぼ同じになった.平野南北における降水発現時の気温の標準偏差の違いには,降水強度とともに降水発現前の日照の有無などによる気温の差異が関与している.

  • 上杉 昌也, 樋野 公宏, 矢野 桂司
    2018 年 13 巻 1 号 p. 11-23
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本研究は,居住者の社会経済的な属性に基づいて近隣地区を類型化したジオデモグラフィクスデータを用いて,社会地区類型による手口別の窃盗犯発生パターンの特徴を明らかにするものである.東京都市圏の12都市を対象とした分析の結果,社会地区類型による空き巣・ひったくり・車上狙いの窃盗犯の発生パターンの違いを明らかにした.またこの社会地区類型は,地区の建造環境や都市間の差を統制しても犯罪発生に対して一定の説明力をもっており,特に空き巣において顕著であった.これらの知見は手口に応じた防犯施策の重点地区の特定など,近隣防犯活動へのジオデモグラフィクスの活用可能性を示すものといえる.

  • 野澤 一博
    2018 年 13 巻 1 号 p. 24-49
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    地域経済活性化のために,新たな技術を導入するなどして,競争力を失った地域産業の再生を図る取組みが各地で行われている.北陸地方では繊維産業の競争力強化のために,県が中心となり国の助成事業を活用し,炭素繊維複合材の開発を積極的に行っている.本稿では,北陸地域で展開されている炭素繊維複合材開発の状況と政策展開を明らかにし,産地企業の新技術を用いた実用化の取組みについて分析する.炭素繊維複合材に関して,石川県では大学を中心に研究開発が行われており,企業間のつながりもあり実用化の動きに広がりが見られた.一方,福井県ではコア技術をもとに公設試が中心となり,実用化の展開が図られていた.炭素繊維複合材の開発は,従来産業である繊維産業産地の高度化というより,将来,航空機や自動車部品という全く違った産業のサプライチェーンの一部となる可能性がある.

  • 高橋 昂輝
    2018 年 13 巻 1 号 p. 50-67
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本論は,鹿児島県奄美大島の瀬戸内町嘉鉄において,Iターン者の価値観と集落の機能に注目し,Iターン者を取り入れた集落の維持形態を明らかにした.1990年代末以降,嘉鉄には大都市圏からの移住者が継続的に流入している.彼らは島内の都市的地域を避け,選択的に嘉鉄に居住する.Iターン者が嘉鉄に住居を確保するには,住宅所有者の社会的ネットワークに参加することが求められる.また移住前,住民は会合を開き,移住希望者に対し集落行事への参加を確認する.閉鎖的な住宅市場と集落行事に関する合意形成は,地域社会に適合する人材を選別する役割を果たす.移住後,集落行事は従前の住民がIターン者を受け入れる場所となる.非都市的生活を希求するIターン者と彼らを選別して受け入れる集落の機能が結びつき,嘉鉄ではIターン者を空間的・社会的に取り入れた集落維持が行われている.本論は,限界集落論を反証する事例として位置づけられる.

地理教育総説記事
特集
解説記事
  • 井上 孝
    2018 年 13 巻 1 号 p. 87-100
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/13
    ジャーナル フリー

    筆者は,2015年6月に「全国小地域別将来人口推計システム」の試用版を公開した.このシステムは,小地域(町丁・字)別の長期(2015~2060年)にわたる日本全国の推計人口(男女5歳階級別)を,初めてウェブ上に公開したものである.システム構築にあたっては,小地域の人口統計指標を平滑化する新たな手法を提案した.その後,本システムにはさまざまな改良が加えられ,2016年7月に正規版が公開されるに至った.本稿では,まずこのシステム開発の経緯に言及したあと,システムの理論面の根幹である,新しい平滑化法の概要を述べる.つづいて,推計方法と推計精度を中心に本システムの概要を述べたあと,その操作方法について解説し,最後にむすびに代えて今後の展望を示す.

  • 関根 智子
    2018 年 13 巻 1 号 p. 101-108
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/13
    ジャーナル フリー

    本論文では,GISによる近接性研究の進展について,近接性と公平性,近接性と移動性,そして潜在的近接性に関わる公共交通の近接性から論じる.GISは,地理情報の重要性を社会に認識させるとともに,近接性の研究に対しても,1)分析地域の広域化,2)分析対象のミクロ化,3)距離の測定方法の変化,4)単一交通手段から複数交通手段への考慮,5)近接性の可視化など,研究方法を大きく変化させ,詳細な研究結果を得ることを可能にした.また,近接性の概念が,人々と場所を隔てる距離の側面から,移動性を通じて距離を克服する能力の側面へ変化している.GISは,距離を克服する能力として,複数の交通手段による移動を測定する交通手段間近接性や,出発時間や到着時間を測定する行程近接性での分析を可能にした.

  • 秋山 祐樹
    2018 年 13 巻 1 号 p. 109-126
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/13
    ジャーナル フリー

    商業集積地域の分布とその盛衰は,その近隣住民の生活や来訪者の行動に日々影響を与えているが,これまで商業集積地域の詳細な位置と規模を全国規模で迅速かつ継続的に把握する手法は存在しなかった.そこで本稿ではマイクロジオデータの一つである,日本全国の店舗・事業所の位置と業種が把握できるデジタル電話帳を用いて,日本全国の商業集積地域の分布と規模をポリゴンデータとして把握できるデータである商業集積統計の開発について紹介する.また商業集積統計と商業統計との突き合わせ検証により,同データを用いることで商業統計に掲載されている全国の多くの商業集積地区の位置,規模ともに把握できることが確認された.さらにいくつかの商業集積地域において現地調査を実施し,同データが実在する商業地域の空間的分布を適切に把握できることが明らかとなった.

  • 駒木 伸比古
    2018 年 13 巻 1 号 p. 127-139
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/13
    ジャーナル フリー

    本稿は,マイクロジオデータである「商業集積統計」を用いて,中心市街地活性化計画認定都市の基本計画区域内における商業・サービス業の集積状況を業種に基づき分析・検討したものである.その結果,人口規模の小さな自治体ほど,基本計画区域内への商業・サービス業の集積が高まる傾向にあることが明らかとなった.また業種によってその集積状況は異なっており,高次の業種は集積する一方で,日常的に利用される業種の集積は低かった.さらに,基本計画区域内での業種構成は地域性がみられてグループ化が可能であること,自治体の人口規模とも関連していること,そして地理的分布にも特徴がみられることが明らかとなった.

調査報告
  • 小川 芳樹, 秋山 祐樹, 金杉 洋, 柴崎 亮介
    2018 年 13 巻 1 号 p. 140-155
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/13
    ジャーナル フリー

    将来予測されている南海トラフ地震が発生した場合における危機管理対応を的確に実施するために,本研究は高知市周辺を対象として,近年の観測技術の向上に伴い蓄積されている観測ビッグデータを用いて被害予測に適用可能なミクロデータを整備することで高精細な被害推定を目指す.そのためにGPS付帯の携帯電話のプローブデータ,住宅地図,電話帳などのジオビッグデータを用いて時空間内挿することで,季節ごとの数日間ずつを対象に15分単位の詳細な人の流動が把握できる人流データを開発した.また,整備した人流データを用いて津波・倒壊・火災による人的被害を統合的に推定する環境を構築した.さらに,多様な被害推定結果を分析することで地域ごとの被害尤度分布を明らかにし,地域ごとに起こり得る最大被害・最尤被害を明らかにした.その結果,地域により被害が大きくなりやすい地域とそうでない地域の分布が明らかになった.

特集
解説記事
  • 氷見山 幸夫
    2018 年 13 巻 1 号 p. 158-163
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    1991年に旭川市で始められた「私たちの身のまわりの環境地図作品展」はこれまで,国内唯一の全国規模の地図展として発展してきた.その成果は環境教育,地理教育,地図教育,生涯学習など多岐にわたる.本稿では大学のアウトリーチ,すなわち社会貢献ないし社会との連携の観点から,北海道教育大学生涯学習教育研究センターがその発展に果した役割,およびこの地図展に関連した各種実践活動とそこで育まれた人々のつながりに焦点を当てた.その結果,この地図展が歩み来た道が,大学のアウトリーチを推進する上で有用な示唆に富み,それが学術的,教育的,社会的なさまざまな成果に結びついていることが再確認された.特に重要なのは,大学を中心とする環境,地図,教育に関わる小・中・高・大・官・民の連携が,学術–教育–社会の協働・協創を促進し,日本最大の地図展を発展させ,それが大学ないし学術のアウトリーチの一つのあり様を提示しているということである.

  • 長谷 川均, 鈴木 厚志
    2018 年 13 巻 1 号 p. 164-169
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    日本地理学会は,GISと地域調査の2分野で4種類の資格の認定事業を管轄している.これらの資格制度は,地理学の社会的地位を高め地理学会が社会貢献をするために設置され,大学教育における地理学の発展を図ることを目的とした.制度の設立は,アウトリーチを意識したものではなかった.しかし,二つの資格制度は,有資格者のバックグラウンドが地理学であることが認知されることで,地理学会の存在を外に向かってアピールすることに貢献している.今後は,日本地理学会サマースクールの充実を図ることなど,地理学会が主導して専門的な視点からのアウトリーチを行うことが必要である.さらに,日本地理学会は,地理学におけるアウトリーチ,社会連携・社会貢献を活性化させるために,さまざまな方法を試みる必要がある.

  • 森 岳人
    2018 年 13 巻 1 号 p. 170-183
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    本稿は地理学のアウトリーチについて,出版や書店という側面から検討したものである.主に書店の販売データを用いて,一般向け地理学関連書籍が書店や読者にどのように受け入れられているかを調査した.その結果,地理関連書籍は,歴史分野などと比べると発行点数も売上も少なく,読者も中高年の男性に偏っていることがわかった.また,意識的に地理コーナーを設置している書店も少なく,適切に販売する条件が整っていないことが明らかとなった.本稿によって,地理学が世間でどの程度関心をもたれているのか,またどれだけ世間に浸透しているかについて,推測することができる.

  • 岩船 昌起, 田村 俊和
    2018 年 13 巻 1 号 p. 184-201
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    自然災害の認識の向上に関する地理学的な「アウトリーチ」の一環として,岩手県山田町で『東日本大震災記録誌』の制作に携わった.筆者らが構成・執筆した『津波の来襲と避難』の節では,次を試みた.避難行動については,的確な時空間の表現に不慣れな被災者から聞き取った経路や時間推移の情報を鍵に,地図に表し,津波高の推移と重ねた時間–位置図表に整理した.そこには,移動経路がパーソナル・スケールで時空間的に復元されており,避難者の思いや判断を地点ごとに対照できる.一方,日常生活が営まれ,避難行動が具体的に展開された各地区で,避難に関わる“地域性”あるいは“環境特性”を整理して記載した.このような,いわば地理学的な手法で体系化された情報は,後世や他地域の人が避難行動を追体験し,学校や地域社会で防災・減災教育を進めるために,さらには集落移転を含む長期的な地域計画を考える際にも,有用な資料となることが期待される.

  • 長谷川 直子, 横山 俊一
    2018 年 13 巻 1 号 p. 202-220
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    本稿では,学生が主体となった雑誌の出版やテレビ出演などのアウトリーチ活動から,社会がそれをどのようにとらえ,また学生自身が社会の反応をどのようにとらえたのかについて考察した.当初は授業の成果を出版することで地理学をアウトリーチする意図があった.しかし社会からは,男性的なイメージの強い地理に女子がいることの意外性から女子の側面が取り上げられ,発信した学生の中には当初の意図と違うとらえ方をされたことに対する戸惑いがあった.結果的には,その意外性から多くのマスコミに取り上げられ多くの人にアウトリーチできた.学生主体のアウトリーチは,学術的専門性とはまた別の次元でその親しみやすさ,面白さを伝えられるという点で,学問に直接的な興味をもたない人々へのアプローチを可能にする.研究者が先端的な研究内容をアウトリーチするのとは対象者・目的・内容が異なり,一つの効果的な社会へのアプローチ方法であると考えられる.

  • 三橋 浩志
    2018 年 13 巻 1 号 p. 221-228
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    大学・大学院で地理学を専攻した者の大半は,会社員,公務員等として就職し,教育・研究職以外の場で活躍している.このような人材が有する地理学へのアイデンティティや「想い」を地理学振興に活かすことは有用である.そこで,大学で地理学を学び,現在は教育・研究現場以外で活躍する「地理系社会人」が,地理学界を支援するためのあり方を,国家公務員有志が行っている二つの活動の経緯,成果,課題等を整理することで,事例分析した.その結果,1)地理系社会人の緩やかなネットワークづくりが基盤となる,2)ネットワークづくりには人材の発掘が肝要である,3)参加者が地理学徒であるというアイデンティティを共有する場づくりが重要である,などの見解を得た.そして,4)情報ネットワーク等の情報発信機能の充実と地理学界における顕彰機能等の意識改革,が今後は必要との示唆が得られた.

  • 一ノ瀬 俊明
    2018 年 13 巻 1 号 p. 229-235
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    地理学の成果を政策立案に生かすための行政支援の事例として,世界的に高い評価を得たヒートアイランド対策の体系化,および国連環境計画の地球版環境白書など,従前より筆者が関わってきた地理学のアウトリーチ活動を振り返り,アウトリーチ活動への提言をまとめた.研究活動が少なからぬ公的資金で支えられている今日,アウトリーチ活動は単なる社会奉仕にとどまらない.研究活動を見直し,強めていくプロセスでもある.とりわけ,アウトリーチ活動を通じて得られた各種ステイクホルダーからのリアクションを,自身の研究活動にフィードバックしていくことが重要である.

  • 早川 裕弌, 安芸 早穂子, 辻 誠一郎
    2018 年 13 巻 1 号 p. 236-250
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    現象を空間的に拡張して想像する「地理的想像」を喚起し,地理的思考を促すことは,地理学のアウトリーチにおいて必要なアプローチのひとつである.本研究では,特に3次元地理空間情報を用いた空間的現象の可視化の手法を,縄文時代の集落生態系を対象とした古景観の復原に適用し,その効果的な活用について検討する.まず,小型無人航空機を用いた現景観の3次元空間情報を取得し,古景観の復原のためのデータ解析を行う.次に,オンラインシステムを用いた古景観の3次元的な表示と,博物館における展示としての提供を行い,その効果を検証する.ここで,地理学,考古学,第四紀学的な研究成果の統合だけでなく,芸術分野における表現手法との融合的表現を試みることにより,さまざまな閲覧者の時空間的な地理的想像を補うかたちで,復原された古景観の直感的理解を促す効果が示された.これは,地理的思考の普及にも発展的に貢献できることが期待される.

  • 植木 岳雪
    2018 年 13 巻 1 号 p. 251-272
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    2017(平成29)年8月に,千葉科学大学における教員免許状更新講習の一環として,地理の内容を含む講習を実施した.その講習は,「ブラブラ歩き」を含む千葉県銚子市内の野外観察,新旧地形図の比較,地形断面図の作成,空中写真判読などの室内実習,イラスト表現による修了試験という体験型の活動からなり,受講者は保育園,小・中・高等学校の教員20人であった.受講者の講習に対する満足度は非常に高く,講習の内容は今後の授業に役に立つと判断された.このような体験型の活動からなる教員免許状更新講習は,地理を専門としない学校教員に地理を普及・啓発するアウトリーチとして適当であり,今後の拡大が望まれる.

調査報告
  • 荒又 美陽, 大城 直樹, 山口 晋, 小泉 諒, 杉山 和明
    2018 年 13 巻 1 号 p. 273-295
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    東京は2020年にオリンピック・パラリンピック競技大会を開催することとなった.同メガイベントの招致は,1964年には高度成長を促進させたのに対し,今回はグローバル化に伴う脱工業化に合わせた都市改造となる可能性がある.本論文は,その流れを検討するために,1988年ソウル,1998年長野,2012年ロンドンのオリンピック大会の都市・地域開発,また伊勢志摩サミット開催地のセキュリティ面での対策とそれぞれの現在までのインパクトを,現地調査及び資料に基づいて分析するものである.明らかになったのは以下の点である.ソウルと長野の開発は,一方は経済成長,他方は財政状況悪化の象徴として扱われているが,いずれも現在まで残る都市基盤や地域産業の基礎を提供した.またロンドンは社会的剥奪の大きい地の再開発という一つの型を作り出したことに特徴があり,伊勢志摩では過剰な警備がその後の観光資源となるという意外な結果を生み出している.

  • 半澤 誠司
    2018 年 13 巻 1 号 p. 296-311
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    本論文では,2020年東京五輪開催によって何が実現されようとしているのかを検討するための準備として,2016年のリオデジャネイロ五輪と2014年のサッカーワールドカップという二つのメガイベントを短期間に開催したリオデジャネイロ市で行われた都市開発について,文献と補完的な現地調査に基づき分析する.オリンピック関連投資資金の調達と使途に関しては,一部の民間企業への利益誘導のかたちで多額の公的資金が,オリンピックの主要地区であり住民に貧困層が少ないバーハ・ダ・チジューカに集中投下されていた.この投資による受益層が限られる一方,多数の貧困層がファベーラから追い出され,そうではないほとんどの住民も少なからず犠牲を強いられた.このような事態は,メガイベントを開催したからこそ引き起こされたというよりも,強度と範囲共に巨大な影響を各所に及ぼすメガイベントによって,既存の政治・経済力学が極端なかたちで露呈したものといえる.

  • 杉江 あい
    2018 年 13 巻 1 号 p. 312-331
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    2017年8月25日以降,67万人以上のロヒンギャ難民がミャンマー国軍による弾圧を逃れてバングラデシュに流入した.この前代未聞の人道危機を受け,バングラデシュ政府およびさまざまな国際機関やNGOが協働して支援を行っている.本稿はロヒンギャ難民支援の実態をフィールドワークによって明らかにし,キャンプ・世帯間の支援格差がどのように生じているのかを検討した.現行の支援体制は,多種多様な支援機関とその活動を部門内/間で調整し,またキャンプの現状を迅速かつ頻繁に把握・公開して支援活動にフィードバックする機構を備えている.しかし,最終的には支援の濃淡を解消するための全体的な調整よりも,各支援機関による現場選択が優先されてしまい,中心地から遠く,私有地に立地するキャンプでは支援が手薄になっていた.このほかにも,配給のプロセスやその形態,共同設備の管理等,現行の支援体制において改善すべき具体的な問題が明らかになった.

地理紀行
2018年春季学術大会シンポジウム
2018年春季学術大会巡検報告
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