日本プライマリ・ケア連合学会誌
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38 巻, 1 号
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Editorial
原著(研究)
  • 増茂 正泰
    2015 年 38 巻 1 号 p. 5-8
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    目的 : 大豆摂取による閉経女性の骨粗鬆症予防効果は, 近年多数報告されているが, 望ましい大豆摂取量はまだ定まっていない. 本研究では, 閉経女性の骨粗鬆症予防のための推奨大豆摂取量の提案を試みる.
    方法 : 2008年3月から2013年5月までに骨塩量測定した152人のうち, 50人の閉経女性について, 一日あたり大豆摂取当量が20g, 25g, 30gを大豆イソフラボンへの曝露・非曝露の閾値と仮定して, それぞれについて有意に骨塩量十分である割合が高いかを検証した.
    結果 : 大豆摂取当量30g以上の群において, 有意に骨塩量十分である者の割合が高かった (p<0.01). 20g, 25gを閾値とした場合は, 有意差がなかった.
    結論 : 閉経女性が骨粗鬆症予防効果を得るために十分な大豆摂取当量は一日あたり30gであることが示唆された. 用量依存性に効果が増大することが考えられるが, 上限は食品安全委員会の定めた52.7gである.
  • 嶋﨑 寛子, 宮口 英樹, 石附 智奈美, 小野田 修一, 原澤 慶太郎, 及川 友好, 金澤 幸夫
    2015 年 38 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    目的 : 南相馬市の仮設住宅住民の仕事と余暇の特徴と, 生活と健康関連QOLの関連を明らかにすること.
    方法 : 仮設住宅住民115名を対象に, 平成24年8月の1ヶ月の間で以下の調査を行った.
    1. 基本情報 (性別, 年齢, 職業, 経済状況)
    2. 生活調査 a) 典型的な1日に行う活動と要する時間
    b) 各活動は対象者にとって仕事, ADL, 余暇, 休息のいずれに該当するか
    3. 健康関連QOL (調査票はSF-36を使用)
    結果 : 有効回答は90名 (男性38名, 女性52名, 平均年齢69.9±11.9歳) であった. SF-36は多くの項目で国民標準値を下回った. 仕事において, 男女ともに食事を仕事と捉える者がいた. 余暇において, 女性が余暇と捉える活動は, ボランティア等から提供される活動が多く見られた. 男性が余暇と捉える活動のうち, 提供される活動は少なかった. 生活と健康関連QOLの関連では, 女性は50代以下において余暇時間と負の相関 (r=-0.89) , 70代以上において余暇時間と正の相関が認められた (r=0.48). 男性では有意な相関は認められなかった.
    結論 : 70代以上の女性に対する活動提供は有効である. 男性に対する活動提供の内容を検討する必要がある.
  • 小幡 史明, 影治 照喜, 田畑 良, 長瀬 紗季, 生田 奈央, 森 敬子, 谷 憲治, 坂東 弘康
    2015 年 38 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    背景 : 発症4.5時間以内の急性期脳梗塞患者に対するrt-PA静注療法が認可され有効性が報告されているが, 医療過疎地域では専門医不足と地理的条件からその実施は困難なことが多い.
    目的及び方法 : 2013年2月から2014年2月までの間, 当院に救急搬送された急性期脳梗塞患者は75例あり, このうち4例 (5.3%) に遠隔画像システム (k-support) を用いて画像診断を行いrt-PA静注療法のdrip and ship法を行った. この4例をretrospectiveに再評価し, 発症後の時間経過や治療転帰などについて検討した.
    結果 : 4例に対してdrip and ship法を施行し, 1例において閉塞血管の再開通が得られ症状の改善が見られた.
    考察 : 遠隔画像システムを利用することによってrt-PA静注療法のdrip and ship法が医療過疎地域においても安全に実施できると考えられた.
  • 巻 直樹, 髙橋 大知, 高田 祐, 柳 久子
    2015 年 38 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    目的 : 要介護高齢者における, 呼吸機能とADL・QOLの関連を検討することを目的とした.
    方法 : 要支援1・2及び要介護1・2・3の介護認定を受け, 通所リハビリテーションを利用している65歳以上の要介護高齢者87名を調査. 呼吸機能検査および, 心身機能検査, 嚥下機能検査と, 質問紙によるADL・IADL・QOL評価を実施し, Spearmanの順位相関検定を行い, 有意な相関が得られた項目を説明変数とする重回帰分析を行った.
    結果 : 呼吸機能は身体機能, 嚥下機能, ADL・IADL・QOLと有意な正の相関を認めた. 重回帰分析の結果, 一秒量, 嚥下機能はQOL (SF8身体&精神) , IADL, ADLに関連する要因だった. 要介護高齢者において, 呼吸機能とADL・IADL・QOLが関連していることが示唆された.
    考察 : 呼吸リハビリテーションにより身体機能を向上し, 呼吸機能, 嚥下機能を改善することにより, 要介護高齢者のADL, IADL・QOLを向上出来る可能性が示唆された.
  • 賀來 敦, 松下 明
    2015 年 38 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    目的 : 全国医学部医学科入試募集要項の横断調査を行い, 地域枠制度の全容把握と問題点の考察を行う.
    方法 : 2013年度に77大学医学部が実施した地元出身者のための地域枠・将来地域医療に従事する意志を有する者を対象とした入学枠について, 大学区分・選抜方法等をWeb上で調査した.
    結果 : 62大学・地域枠数148枠・総募集人数1305名を認めた. 国立大学で86枠, 推薦/AO入試で90枠を占めた. 卒業後進路限定条件を30枠, 奨学金受給義務を84枠, 確約書で任意団体への所属を求めているものを8枠で認めた. 出身要件は83枠で, 地域医療教育の特殊カリキュラムは13枠のみに認めた.
    結論 : 一部の入学枠で, 卒後進路制限・奨学金受給義務化・不適切な確約書の取得などの制度構成の問題点を認めた. また本邦の出身用件はWHOガイドラインで推奨するへき地出身者の定義と異なり, 特殊カリキュラムによる教育支援実施率は低かった.
原著(症例報告)
総説
  • 青木 拓也
    2015 年 38 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    プライマリ・ケアの質を評価する重要性は一層高まっており, 海外ではプライマリ・ケアの原理およびタスクに関する質指標が, 政策決定や医療提供者の質向上等に活用されている. 中でもプライマリ・ケアの原理を評価する上で, 患者中心性は重要な概念であり, 欧米では質評価尺度を用いた患者経験調査が実施されている. 残念ながら, 我が国での質評価に関する実効的な取り組みは現状では乏しいが, 先行研究によれば, 我が国で重要なプライマリ・ケアの原理は, 近接性, 包括性, 協調性, 時間的継続性, 良好な患者医師関係 (対人的継続性) , 地域志向性, 家族志向性と考えられる. 今後患者中心性を始め, 有効性や患者安全等, 複数の側面からの評価を通し, プライマリ・ケアの質的整備を推進していく必要がある.
活動報告
報告
  • 村田 亜紀子, 西村 真紀
    2015 年 38 巻 1 号 p. 56-59
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    第5回プライマリ・ケア連合学会学術大会 (2014年5月) で, 女性医師のライフキャリアを考える企画「ランチタイム女☆医☆会 in OKAYAMA」を開催した. 対象を医学生・イクメン医師*にも広げたことで, 性別を問わず様々な立場の人が自由に意見交換できどの立場の人にも有意義であった. 今後もキャリア形成に困難の多い女性医師とそのサポートを考える医師が情報交換し助け合える場の提供を, 男女共同参画委員会として継続する予定である.
    *注釈 : イクメン医師 : 育児や家事に積極的にかかわっている男性医師のこと
  • 賀來 敦, 松下 明
    2015 年 38 巻 1 号 p. 60-66
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    目的 : 大学医学部地域枠入学試験と連動した自治体奨学金募集要項・条例等の横断調査を行い, 奨学金受給による医師のキャリアへの影響を明らかにする.
    方法 : 2013年度に地域枠関連自治体奨学金制度を実施した42自治体について貸与総額・義務年限・勤務科の指定等の調査を2013年11月から2014年1月の期間にWeb上で行った.
    結果 : 53大学と関連する59奨学金制度を認めた. 貸与総額最頻値1440万円だった. 借款契約の特徴として, 高返済利率 (10%以上) を7割の制度で, 一括返済の記載を41制度に認めた. 義務年限内に3年以上後期研修先の自由選択可能なものが3制度, 自由選択期間がないものが48制度だった.
    結論 : 奨学金制度の8割では義務年限中に, 専門医制度研修プログラム整備指針で求められる最低3年の基本診療領域後期研修の確保が十分保障されない. 今後予想される奨学金辞退現象の低減には適正な返済利率・返済方法の設定および専門医取得の支援を要する.
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