日本プライマリ・ケア連合学会誌
Online ISSN : 2187-2791
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46 巻, 4 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
Editorial
原著(研究)
  • 牧 信行, 中谷 英仁, 浅田 彩乃
    2023 年 46 巻 4 号 p. 124-131
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/27
    ジャーナル フリー

    目的:孤独死の構成要素を調査することで定義について考察し,コロナ禍前後の変化も調査する.

    方法:対象は2017~2022年に検案・AIを行った患者で,うち自宅内死亡例を孤独死とした.死因,死後経過期間,同居者有無,生前の症状等を調査し,孤独死群と自宅外死亡群の比較,孤独死群の要素と死因の関連を分析した.

    結果:孤独死129例と自宅外死亡41例を解析した.孤独死群は自宅外死亡群より若年だった.死後発見まで1日以上,独居,高齢者はいずれも孤独死の半数未満だった.死後1日以上経過例と高齢者では外傷が多かった.孤独死を含む検視事例数や死因はコロナ禍前後で変化はなかった.

    結論:孤独死対策は高齢者,独居,死後長期間経過例に限定すべきではない.突然死以外の病死,高齢者の外傷,生前に症状や受診歴のある例等で死亡を回避できる可能性がある.孤独死の対策はコロナ禍に関わらず今後も重要である.

  • 粟村 健司, 新居 学, 渡邊 里香, 中西 永子, 真鍋 雅史, 河野 孝典, 芳賀 邦子, 撫養 真紀子, 坂下 玲子, 小野 博史
    2023 年 46 巻 4 号 p. 132-141
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/27
    ジャーナル フリー

    目的:看護小規模多機能型居宅介護(看多機)に特徴的なサービス情報の発信と運営状況との関係を明らかにする.

    方法:介護サービス情報公開システムに公表された全国の看多機のテキスト情報を厚生労働省から入手し,KH Coderを用いて語の使われ方の特徴を分析した.看多機に特徴的である医療依存度や看取りに関する語を使用していた事業所とそれ以外に分け,利用者数や従業員数,サービスの実施状況を比較した.

    結果:医療依存度や看取りに関する語を使用していた事業所は,使用していない事業所よりも要介護5の利用者数,看護職員の常勤人数が有意に多く,処置の実施率も人工肛門の1項目を除く,12項目で有意に高かった.

    結論:医療依存度や看取りに関する語を発信していた事業所は,より多くの利用者を確保し多様なサービスを展開していることが示唆された.今後は事業所管理者が看多機サービスの理解を深め,運営に反映できるような支援が求められる.

  • 上田 晃輝, 奥村 知香, 大野 友久, 藤島 一郎
    2023 年 46 巻 4 号 p. 142-148
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/27
    ジャーナル フリー

    目的:医師と共同で作成した便秘治療支援プロトコールを基に薬剤師によるProtocol Based Pharmacotherapy Management (PBPM)を実施し,便秘改善効果を検証した.

    方法:2020年8月~2021年5月のPBPM実施患者が対象で,介入初日と退院時のConstipation Scoring System(CSS)とBristol Stool Form Scale (BSFS)の評価を後方視的に採取した.Wilcoxonの符号付順位検定でp < 0.05を有意とした.

    結果:23名中3名が除外され,解析対象は20名となった.CSSは中央値[4分位範囲]は,介入初日11.5点[8.25-16.75],退院時5.5点[2.75-10.25],BSFSはType 2[2-3]とType 3.5[3-4]で有意差が認められた.

    結論:便秘治療支援を目的とした薬剤師によるPBPMの実施により,便秘の改善が認められた.

原著(事例報告)
  • 奥根 百合, 杉峰 啓憲, 池田 由香, 儘田 光和, 吉田 晃
    2023 年 46 巻 4 号 p. 149-152
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/27
    ジャーナル フリー

    症例は1か月男児.生後2週間頃に家族内で感冒様症状を認め,その後の約1か月の経過で咳嗽と無呼吸が徐々に出現し,チアノーゼを認めたため近医を受診した.無呼吸は,嗚咽するような湿性の咳き込みを契機に出現していた.呼吸器病原体マルチスクリーニングでライノウイルスが陽性で,無呼吸発作を繰り返すため集中治療室にてhigh-flow nasal cannula (HFNC)で管理したところ改善した.入院7日目にHFNCの離脱を試みた際には無呼吸発作が再燃したが,浣腸等で腹満を軽減した後はHFNCから離脱でき,入院14日目に退院した.乳幼児の無呼吸の病態には,呼吸中枢の未熟性のほか,喉頭の化学受容器が引き起こすlaryngeal chemoreflex(LCR)が知られている.本症例ではHFNCによる呼吸努力の軽減に加え,加温加湿による去痰作用,腹満の軽減による胃食道逆流の減少が奏功したと考えられた.

  • 早川 史広, 丹羽 美和子, 丹羽 治男
    2023 年 46 巻 4 号 p. 153-156
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/27
    ジャーナル フリー

    障がい者施設の入所者に発症した蟯虫症への対応を経験した.症状を伝えられない,感染対策への理解が得られないなど,入所者に合わせた対応が必要であった.また,パモ酸ピランテルでの治療に失敗し,本邦では保険診療で適応が認められていないメベンダゾールを使用した.

    蟯虫症は,現在も国内では最も多い寄生虫症と考えられている.障がい者施設では,接触頻度が多い集団生活や障害に由来した手指衛生不良など,蟯虫症の感染リスクが高い因子が多く,再感染や感染伝播が起こりやすい環境と考えられる.そのような施設で蟯虫症が発生した場合には,入所者の特性に合わせた感染対策と治療,他の入所者へのスクリーニング検査や治療が必要となるため,施設と連携した対応が求められる.

  • 佐々木 紀仁, 岡本 悠, 木村 一隆, 南田 英俊
    2023 年 46 巻 4 号 p. 157-161
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/27
    ジャーナル フリー

    高度徐脈と門脈ガス血症を伴う非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)が反復した1例を報告する.80代男性で突然発症した腹痛で受診,意識は清明,顔色不良で冷汗あり,バイタルサインは洞性徐脈(HR42)以外は正常で,腹部CTで門脈内ガスを認めた.その後の14か月間に同徴候を3回繰り返し,初回と2回目は副交感神経遮断薬で症状は軽快したが,3回目は同薬剤が効かず,さらに多量の門脈内ガス,小腸壁内ガス,高乳酸血症を認め,腸管壊死の可能性があり,緊急手術となったが,術中所見では腸管壊死を認めず,ICG蛍光法では血流障害はなかった.これらの所見から,この症例の腸間膜虚血はNOMIによるものと判断し,これを抑制する目的で亜硝酸薬の貼付薬を開始,その後,4年間NOMIの再発はない.これまで高度徐脈と門脈ガス血症を伴うNOMIで反復した症例の報告はなく,ここに公表した.

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