日本プライマリ・ケア連合学会誌
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35 巻, 1 号
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Editorial
原著(研究)
  • 木村 琢磨, 野村 恭子, 高橋 理, 青木 誠, 矢野 栄二, 福井 次矢
    2011 年 35 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル フリー
    目的 : プライマリ・ケア (PC) 医志向の2年次研修医の特性を検討する.
    方法 : 2006年3月, 2年次研修医7344名を対象に質問紙票で調査し, 回収率56.7% (n=4167) のうち臨床を志望すると回答した3838名を解析した. PC医志向のオッズ比 (OR) と95%信頼区間 (95%CI) をロジスティック回帰モデル (PC医志向=1 vs. 専門医志向=0) で算出した.
    結果 : PC医志向は56%で, 開業を希望し (OR 1.44, 95%CI : 1.20-1.73), 医学博士号の取得を希望せず (OR 1.29, 95%CI : 1.07-1.55), 診療科として内科系を希望していた (OR 1.44, 95%CI : 1.07-1.94).
    結論 : PC医志向の2年次研修医の特性として, 開業を希望すること, 医学博士号の取得を希望しないこと, 診療科として内科系を希望していることが明らかとなった.
  • 稲熊 良仁, 岡山 雅信, 古城 隆雄, 原田 昌範, 高木 史江, 山本 令子, 今野 和典, 石川 鎮清, 三瀬 順一, 梶井 英治
    2011 年 35 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル フリー
    目的 : 全国の総合診療科の初診時問診票を分析し, 診察前に収集される医療情報を明らかにする.
    方法 : 日本総合診療医学会 (現日本プライマリ・ケア連合学会) のホームページ6) に掲載された総合診療科を標榜する302施設 (2010年3月の時点) を対象とし, 問診票の提出を依頼した. 得られた問診票の形態と内容について分析を行った.
    結果 : 収集した初診時問診票には共通した書式は認めなかった. 形態はA4版が58枚 (68%) で最多であり, 質問項目数は平均19.7項目であった. 研究協力施設間で共通して記載されていた問診票の分野は, 頻度が高い順に, 既往歴に関する項目が28項目 (31.8%), 生活歴に関する項目19項目 (21.6%), 患者社会情報と生殖歴が共に7項目 (8.0%) であった.
    結論 : 全国の総合診療科で使用されている問診票の質的評価を行い, 医師が初診患者の診察前に求めている医療情報を推測することが出来た.
  • —新医師臨床研修制度導入による影響—
    山本 亮, 由井 和也, 小松 裕和, 大西 弘高
    2011 年 35 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル フリー
    目的 : 新医師臨床研修制度 (以下新臨研) 導入後, 初期研修における地域医療研修の有用性, 必要性についての評価を行い, これらに影響のある要因を探ること.
    方法 : 佐久総合病院で1996~2007年に初期臨床研修を行った医師を対象とした, 質問紙調査.
    結果 : 111名に質問紙を発送し, 73名 (65.8%) から回答を得た. 佐久総合病院での初期研修を選んだ理由の割合は, 研修指導体制, 総合診療科・総合外来, 職員の雰囲気の3項目で新臨研導入後有意に増加した. 地域医療研修の有用性は男性で高くオッズ比 (95%CI) が3.77 (1.31~10.9), 必要性は新臨研導入後に低下し, オッズ比は2.99 (1.05~8.55) であった.
    結論 : 新臨研導入後, 研修医が当院の初期研修を選ぶ理由として重要視しているものは, 研修プログラムの運営指導体制と院内でジェネラルに診療できる環境であった. プライマリ・ケア重視を打ち出した新臨研導入後, 当院での地域医療研修の必要性は相対的に低下した.
  • 横谷 省治, 堤 円香, 高屋敷 明由美, 中村 明澄, 阪本 直人, 前野 貴美, 前野 哲博
    2011 年 35 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル フリー
    目的 : 中学生がもつ喫煙に対する認識について, 家族の喫煙, 特に父母の喫煙との関係を明らかにする.
    方法 : 中学生を対象として, 家族の喫煙者および加濃式社会的ニコチン依存度調査票 (KTSND) により喫煙に対する認識を調査した. KTSNDスコアと学年, 性別, 家族の喫煙, 父および母の喫煙との関係を分析した.
    結果 : 842名中761 (90.4%) の有効回答を得た. 家族に喫煙者がいるのは543名 (71.4%), 父の喫煙は394名 (51.8%), 母の喫煙は214名 (28.1%) だった. KTSNDスコアと関連があったのは, 家族の喫煙 (10.55 vs 9.46, p=0.009) および母の喫煙 (11.18 vs 9.87, p=0.002) であった.
    結論 : 中学生の, 喫煙を肯定的にみる認識には, 家族の喫煙, 特に母の喫煙が関連する. 喫煙予防として, 子どもをもつ世代の女性に対する禁煙推進が有効である可能性がある.
  • 新井 香奈子, 安成 智子, 太田 千寿, 坂下 玲子, 片田 範子
    2012 年 35 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル フリー
    目的 : 本研究の目的は, 子どもが病気になった際の就労中の母親の対応とニーズについて明らかにすることである.
    方法 : 兵庫県の保育所 (園), 放課後児童クラブ在籍児の母親を対象にアンケート調査を実施した.
    結果 : 1,804部を分析対象とした. 子どもが病気の際, ほとんどの母親が仕事を休んでいたが, 引け目を感じる, 休んだ分の収入が減る, 仕事を頼める人がいないという困難を感じていた. 仕事を休まなかった場合にも, 子どもをみてくれる人を探す事に苦慮していた. このような状況の中, 鼻水・咳などの症状だけではなく, 平均38.0±0.4°Cという発熱している状況でも保育を希望したいというニーズがあった. 子どもをあずける際には, 実家でみてもらう, 安価である, 自宅からの距離を重視していた.
    結論 : 母親と児の生活を大きく変えることなく, 児が安心して療養できる病児・病後児施設が, 通常利用している保育所 (園), 放課後児童クラブに整備されることが望ましい.
原著(総説)
  • —システマティックレビュー—
    木佐 健悟, 川畑 秀伸, 前沢 政次
    2011 年 35 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル フリー
    目的 : 日本国内で診察時間を扱った研究がどのような報告をしているかを明らかにするために文献の検討を行った.
    方法 : 医学中央雑誌, CiNii, JMEDPlus, Google Scholar, MEDLINEを用いて, 日本国内で具体的に診察時間を測定している研究の論文を抽出し, 診察時間・診療時間に関する記述をまとめた.
    結果 : 26の文献が該当した. この中で診察時間を研究の中心のテーマとしたものは6件のみで, 7件は待ち時間が主な調査項目で外来診察時間は副次的な調査項目であった. 電子カルテ導入や医療秘書導入など外来診療へ何らかの介入をした際の影響を評価する一指標として診察時間を使用した研究があった. 適切な診察時間について考察していたのは3件であった. 2件が患者満足度をアウトカムに用いていた. 診察時間の定義は研究によって異なっていた.
    結果 : 患者アウトカムを調査した研究は少なかった. 今後, 診察時間の定義を明確にした上で, 測定された診察時間と患者アウトカムを関連づけた研究が必要である.
原著(活動報告)
  • —INRコントロールが可能となった症例—
    山村 恵子, 倉田 寛行, 重野 克郎, 長田 孝司, 足立 雄三, 長谷川 嘉哉
    2011 年 35 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル フリー
    目的 : 診察時に医師がワーファリン服用患者の最新のPT-INR (Prothrombin Time-International Normalized Ratio : PT-INR) と服薬状況を把握するため, クリニックと薬局の間でPT-INRモニタリング情報共有システムを構築し, システム機能を検証する.
    方法 : 患者は医療機関受診前に薬局でPT-INR簡易迅速測定器にてPT-INR自己測定する. 薬局薬剤師はPT-INR, 服薬状況を確認し施設間連絡票 (連絡票) を作成する. 医師は患者から提出された連絡票を参考に診察, 処方を行ない, 連絡票に診察情報を記載し患者に返す. 薬剤師は薬局を再訪した患者が持参した処方せん, 連絡票に基づき調剤, 服薬指導を行なう.
    結果 : 薬局にて患者の誤った思い込みによるコンプライアンス不良例を抽出できた. 患者情報の共有により処方量変更なく, 服薬指導にて治療域に到達した.
    結果 : 診察時に最新のPT-INR値を患者・医師・薬剤師が共有する本システムは, 通院患者のワーファリン処方量調節の迅速化に有用であり, 患者の利益に寄与すると考えた.
リレーエッセー:日本のプライマリ・ケアの論点
インタビュー:ジェネラリスト温故知新
臨床医学の現在(プライマリ・ケアレビュー)
  • 佐藤 健太
    2012 年 35 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル フリー
    下痢は「日に3回以上の軟便か水様便」と定義され, 一般人口における有訴者数は2%前後1) で, プライマリ・ケア診療所における新規健康問題の中でも1.9%を占めている2) .
     一般的に5-7日間続き, ほとんどの例で2週間以内に自然治癒するが, QOLを損なう症状であり, 脱水等を合併し入院することもある. 医療経済的な影響 (ロタウィルス性下痢症では年間直接医療費が100億円を超える3) も大きい.
     本稿では, プライマリ・ケア診療所で実施可能な診療フローチャートの紹介や治療法のレビューを行う. なお, 紙面の都合上, 旅行者下痢症4) や院内発生下痢症5) については割愛したため引用・参考文献をご参照いただきたい.
  • 佐藤 健太
    2012 年 35 巻 1 号 p. 62-65
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル フリー
     便秘は一般人口において10%以上の有病率1) であり, 女性や高齢者では20%以上と特に多い2) . 小児でも小児科受診者の3-5%3) と比較的多く, プライマリケア医であれば日常的に接するコモンな訴えである. また, 低収入者や僻地在住者で頻度が高いという報告4) もある.
     本稿では, プライマリケア現場で危険な疾患を除外しながら効率良く診療を行うために必要な知識をまとめる. なお, 診断・治療法のエビデンスに関する詳細なデータは紙面の都合上割愛してあるため, 適宜引用・参考文献を参照していただきたい.
  • 八藤 英典
    2012 年 35 巻 1 号 p. 66-69
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル フリー
     一般医を受診する患者ではその半数以上の者に睡眠障害があるといわれている1) .
     不眠症が疑われた場合, 睡眠衛生指導を主として, 適切な薬物療法を施行する. 適切な薬物療法とは睡眠薬の眠前単剤常用量投与とする2) .
省察的実践家入門
  • 宮田 靖志
    2012 年 35 巻 1 号 p. 70-75
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル フリー
     生涯学習を含めた多くの医学教育カリキュラムにおいて, プロフェッショナリズムがアウトカムとして設定されている. プロフェッショナリズムの要素は医療実践の場の文化やコンテクストによりある程度多様性があるが, その定義の基本は社会との契約という概念である. よって公共の善のために尽くすことが, 真のプロフェッショナル, プロフェッションとされる. プロフェッショナリズムを育んでいくためには, 個々の患者, 社会と向き合う最前線の混沌とした実践の中で患者, 社会への責任を体験しつつ, 省察を繰り返して自己変容学習につなげることが重要である.
総合カンファレンス
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