日本プライマリ・ケア連合学会誌
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40 巻, 3 号
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Editorial
原著(研究)
  • 佐藤 公子
    2017 年 40 巻 3 号 p. 116-125
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2017/09/29
    ジャーナル フリー

    目的:本研究では,多様な地域社会の要望に対応できるウェルネス・プログラムを構築するため,2015年10月から11月にコミュニティセンター利用者を対象にSCに関するアンケート調査を実施した.

    方法:アンケートはコミュニティセンターで配布と回収を行い,104名から回答を得た.分析方法はSCへの参加意欲とICTの関連などをカイ二乗検定で検討した.不参加群を平均年齢から57歳以下群と58歳以上群の2群に分け,2群間の比較をMann-WhitneyのU検定で行った.

    結果:対象集団は,10歳代から80歳代までの各年代で,平均年齢は57.6歳±13.5歳である.SCウェルネス・プログラムでは健康関連セミナーが最も要望が高く,参加意欲はSC認識と情報伝達などに正の相関関係が認められた.

    結論:これらのことから,「専門的強みを生かした講座設定,広報活動,交通整備,人材,予算」の5項目を整えていく必要性が示唆された.これに加えて,予防的活動と演習を取り入れていくことが住民のニーズの高い健康関連の講座提供になると考える.

  • 青木 拓也, 福原 俊一
    2017 年 40 巻 3 号 p. 126-130
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2017/09/29
    ジャーナル フリー

    目的:これまで日本からプライマリ・ケア研究がどの程度国際発信されているか,検討はなされていない.そこで本研究は,プライマリ・ケア主要国際学術誌における日本の論文数シェアを調査することを目的とした.

    方法:PubMedを用い,2011年1月~2016年6月の期間にプライマリ・ケア主要国際学術誌5誌に掲載された臨床研究もしくは系統的レビューを報告した論文を検索し,抄録レビューを実施することで,年別・学術誌別の日本の論文数シェアを算出した.

    結果:本研究の対象となった5つの学術誌に掲載された総論文数は,2,602編であった.そのうち,日本発の論文は計4編であり,日本の論文数シェアは0.15%であった.

    結論:現状では,プライマリ・ケア主要国際学術誌における日本の論文数シェアは極めて少なかった.今後日本からプライマリ・ケア研究を国際発信するためには,インフラストラクチャーの整備や研究者の育成及び連携を推進していく必要があると考えられる.

  • 山口 陽子, 田中 博之
    2017 年 40 巻 3 号 p. 131-135
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2017/09/29
    ジャーナル フリー

    目的:救急救命士らが意識レベルをJapan Coma Scaleで1(以下,JCS-1)と判定する際,何を根拠にJCS-1と判断しているのか,を調査する.

    方法:2011年7月1日以降25ヶ月間に救急車で当院へ搬送され,救急救命士らが現場で意識レベルをJCS-1と判定し,かつ当院搬入後,確認のための質問に対する回答が得られた症例を対象として調べた.

    結果:対象となった105例を調査すると,救急救命士らが意識レベルをJCS-1と判定した根拠として,「ボーッと,あるいはボンヤリしていた」が61.0%,「反応が鈍い」あるいは「返答が遅かった」が47.6%で挙げられていた.

    結論:救急救命士らは上述の「印象」によってJCS-1と判定していた.このような印象は「今ひとつハッキリしない」状態を捉えるには有用と考えられる.ただし,救急救命士らはJCS-2あるいは-3に該当するかもしれない症例をJCS-1と判定している可能性があり,見当識あるいは見当識障害を正しく認識できていないと考えられた.

  • 山路 由実子, 市川 周平, 竹村 洋典
    2017 年 40 巻 3 号 p. 136-142
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2017/09/29
    ジャーナル フリー

    目的:我が国の在宅高齢者に対する服薬支援の状況と課題の全体像を捉えるため,職種横断的に文献検討した.

    方法:2000年1月から15年間に出版の原著論文を,「高齢者」「在宅」「服薬管理/服薬指導」のキーワードを組み合わせ検索した.対象文献から,結果に高齢者に対する服薬支援の状況と課題についての記述を抽出し,内容分析を用いて質的に分析した.

    結果:34文献が抽出された.服薬支援者は,家族・身近な人,訪問介護員,看護師,医師,薬剤師,服薬支援装置であった.支援の状況は<服薬介助><服薬管理><連携調整>に,支援の課題は<職種間の情報共有と連携><高齢者の能力と生活に合った対応><服薬支援のための体制整備>に分類された.

    結論:在宅高齢者の服薬支援における問題として,支援者間での情報共有と連携が不足していることが明らかになった.

  • 太田 龍一, 金子 惇
    2017 年 40 巻 3 号 p. 143-149
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2017/09/29
    ジャーナル フリー

    目的:日本において人口の高齢化に伴う住民の健康問題の変化を調べた研究はない.プライマリ・ケア国際分類第2版(ICPC-2)によって明らかにされた現在の健康問題と先行研究を比較しその変化を考察する.

    方法:沖縄県離島で後ろ向きオープンコホート研究を行い受診患者すべての健康問題についてICPC-2を用いて集計した.また1990年に出版されたプライマリ・ケア健康問題国際分類注解第2版(ICHPPC-2 defined)を用いた同地域の健康問題のデータと比較検討した.

    結果:1年間で4660件の受診があり,15歳未満が826件,15-64歳が2146件,65歳以上が1688件であった.本研究は先行研究と比較しL筋骨格,S皮膚,A全身及び臓器が特定できないものの頻度が高かった.本研究で診療の包括性の指標である全健康問題の上位50%以内に含まれる健康問題の種類が多かった.

    結論:本研究において沖縄県の離島診療所では整形疾患や皮膚疾患へのニーズが高まり,診療の包括性が高まっていることが示唆された.

原著(症例報告)
  • 難波 雄亮, 山賀 亮之介, 永島 徳人, 本村 和久
    2017 年 40 巻 3 号 p. 150-152
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2017/09/29
    ジャーナル フリー

    症例は66歳女性.上肢の動かしづらさで発症し,複数医療機関受診で小脳症状優位である多系統萎縮症(MSA-C:Multiple System Atrophy predominated in Cerebellar ataxia)の診断を受けていた.発症6年の経過で終日ベッド上で過ごすADL(Activities of Daily Living)となり,当院訪問診療を開始となった.往診導入前より頚部・腰部・四肢の疼痛を認めていたが,経過中に疼痛の増強を認めた.アセトアミノフェン・NSAIDs(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)・トラマドールの内服を行ったが改善せず,呼吸困難出現もありモルヒネ皮下点滴を開始し,疼痛コントロールを行った.多系統萎縮症ではパーキンソン病と同様に全身の疼痛を来たす事が知られている.モルヒネを使用するまでの疼痛の報告はないため,文献的考察を踏まえ報告する.

  • 西岡 大輔, 栄原 智文
    2017 年 40 巻 3 号 p. 153-155
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2017/09/29
    ジャーナル フリー

    緒言:Ambulatory Care-Sensitive Conditions (ACSCs)とは「適切なタイミングで効果的なケアをすることで入院を減らすことができる状態」のことであり,ACSCsである患者の入院回避は重要である.ACSCsの高齢心不全患者に慢性疾患ケアモデルを適用し再入院までの期間を延長しえた事例を報告する.

    症例:92歳男性.慢性心不全のために定期通院しており,2014年4月まではコントロール良好であった.その後の入院頻度が増えたため,2015年2月より慢性疾患ケアモデルを適用した.その結果,心機能は継時的に増悪していたにも関わらず,再入院までの平均日数が適用前後で30.5日から64.3日と延長した.

    考察:利尿剤のスライディングスケールを用いた治療は,欧米では慢性疾患ケアモデルに基づき実施されている.慢性疾患ケアモデルのもとでフロセミドのスライディング療法を開始したことでACSCsにある患者の再入院までの期間が延長できた.

  • 草野 俊亮, 見坂 恒明, 山本 哲也, 秋田 穂束
    2017 年 40 巻 3 号 p. 156-159
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2017/09/29
    ジャーナル フリー

    猫ひっかき病はBartonella henselaeに感染した猫による受傷から発症する.今回,複数領域にわたるリンパ節腫脹を来した猫ひっかき病の64歳男性の症例を経験した.悪性腫瘍の転移が鑑別の上位に上がり,診断の遅れとともに多数の検査が行われた.診断困難な症例であったが,ペット飼育歴を含む詳細な病歴聴取や,忘れられがちな大腿部を含む下肢の診察を丹念に行ったことが,診断に有用であった.

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