日本プライマリ・ケア連合学会誌
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38 巻, 2 号
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原著(研究)
  • 斜森 亜沙子, 森山 美知子
    2015 年 38 巻 2 号 p. 102-110
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    ジャーナル フリー
    目的 : プライマリ・ケア診療所において, 診療所の果たすべき機能とそこで働く看護師の役割, 必要な能力を明らかにする.
    方法 : プライマリ・ケア診療所に勤務する医師6名と看護師11名を対象に, フィールド調査 (面接法及び参加観察法) を実施し, 質的帰納的分析を行った.
    結果 : プライマリ・ケア診療所には「外来機能」「在宅支援機能」「地域支援機能」の3つが抽出され, それを支える看護師の役割として「個人及び家族の健康を守る役割」「人々が住み慣れた場所で安心して療養でき/最期を迎えることを支援する役割」「地域の健康問題に対処する役割」, これらの機能を支える「診療所をマネジメントする役割」の4カテゴリーが, 役割に対応する能力として9カテゴリーと, プライマリ・ケアを実践する専門職者に必要な4つの基本能力が抽出された.
    結論 : 診療所におけるプライマリ・ケア看護師は幅広い役割と能力が必要とされていることが明らかになった.
  • 和座 一弘, 藤田 伸輔, 山田 隆司, 大野 毎子, 山岡 雅顕, 三瀬 順一, 大西 弘高, 佐藤 幹也, 高栁 宏史, 佐藤 健一
    2015 年 38 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    ジャーナル フリー
    目的 : 地域疾病管理推進のために, かかりつけ医が, 適切なタイミングで他の医療機関に紹介する能力を評価する指標を抽出すること.
    方法 : 1都会型診療所の2011年9月1日から2012年8月31日までの全紹介症例を分析した. かかりつけ医師が記録した症状や診断を診療録から, また, 専門医によっての最終診断も返信から集積した. 症状や診断名は, ICPC-21)で分類し, 紹介率・入院率・紹介先等も分析した.
    結果 : 1ヶ月の平均受診実患者数1402名であり, 平均紹介患者数は23人 (紹介率1.6%) , 紹介した患者の6.75人 (29.1%) が入院した. 紹介患者の症状・疾患は, ICPC-2の章として, AからZまで分布していた. 入院患者は, 肺炎 (R81) 24%, 尿路感染 (U70, U71) 9%, 急性胃腸炎・脱水 (T11,D73) 9%等に診断された.
    結論 : 紹介率や入院率, 紹介・入院疾患の分布等をプライマリ・ケアに於けるトリアージ機能の指標として抽出した. これらは, 「医療の質」評価の指標として今後検証すべきである.
  • 國吉 保孝, 加村 梓, 安田 すみ江, 田代 実
    2015 年 38 巻 2 号 p. 116-120
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    ジャーナル フリー
    目的 : アナフィラキシーを呈した即時型食物アレルギーの小児例について, 年齢・原因食物別の内訳と臨床像を把握する.
    方法 : 2008年1月~2013年12月までの6年間に, 当院救急外来を受診した15歳以下のアナフィラキシーを呈した即時型食物アレルギー49例について, 診療録より後方視的に検討した.
    結果 : 原因食物の内訳は, 魚卵 (9例) , 鶏卵 (8例) , ソバ (8例) が三大原因であった. このうち, 0歳は鶏卵58% (7/12) , 1~6歳は魚卵31% (5/16) , 7歳以上はソバ38% (8/21) がそれぞれ最多であった. アドレナリン筋肉内投与が実施されたのが12例で, 内訳はソバ4例, 鶏卵3例で, 魚卵は1例のみであった.
    結論 : アナフィラキシーを呈した即時型食物アレルギーの小児例の原因食物は, 年代によって傾向が異なり, 年齢を考慮した啓蒙が必要と考えられた. 他の報告と比較して魚卵の頻度が高く, 地域の食習慣による影響が示唆された.
  • ─救急救命士へのインタビューから把握したこと─
    鈴木 幸恵
    2015 年 38 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    ジャーナル フリー
    目的 : DNAR意思表示のある終末期がん患者の臨死時に救急車要請となった理由を救急救命士へのインタビューにより把握した内容から明らかにする.
    方法 : 某都道府県の救急救命士19名への半構成的面接. 音声録音により逐語録を作成し, 質的分析を行った.
    結果 : DNAR意思表示のある終末期がん患者が臨死時に救急車要請となった理由として, 《DNARに関する社会的整備が未確立》, 《救急車の役割に対する認識不足》, 《看取りのための医療支援が不十分》, 《介護施設での看取り体制が不十分》, 《救急隊に頼れば何とかなるという認識》, 《在宅死を避けたい家族の思い》, 《家族の動揺》の7つが明らかとなった.
    結語 : DNARに関する社会的整備未確立の背景があり, DNARの意思を尊重した看取りへの医療支援が不十分であることや家族側の要因によってDNAR意思表示のある終末期がん患者が臨死時に救急車要請となることが示唆された.
  • 中村 剛史, 岡山 雅信, 藍原 雅一, 古城 隆雄, 石川 鎮清, 中村 好一, 梶井 英治
    2015 年 38 巻 2 号 p. 127-130
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    ジャーナル フリー
    目的 : 高齢者が糖尿病の診療を受けるために通院する医療機関の地理的分布を検証する.
    方法 : 茨城県で2010年5月の1ヶ月間に糖尿病を主病名として通院し後期高齢者医療制度により保険請求された診療データを用いて, 市町村ごとにその中心地から医療機関までの距離を測定し, これらの医療機関の地理的分布を検討した.
    結果 : 対象は17,717件で, 住所地から地図上の位置情報に変換できた17,144件 (96.8%) を解析対象とした. 医療機関までの距離の中央値[四分位範囲]は5.5 [2.3-9.9]kmであった. これは, 性・年齢によってわずかに違いを認めるものの, 市町村の人口, 高齢化率, 市町村面積によって違いを認めなかった.
    結論 : 高齢者が糖尿病で通院する医療機関は市町村中心から概ね10km範囲に分布していた. いくつかの限界はあるものの, 後期高齢者が増加する際の効率的医療資源の配置の資料になり得る.
  • 嶋﨑 寛子, 宮口 英樹, 石附 智奈美, 小野田 修一, 原澤 慶太郎, 及川 友好, 金澤 幸夫
    2015 年 38 巻 2 号 p. 131-139
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    ジャーナル フリー
    目的 : 南相馬市の仮設住宅住民の仕事と余暇の特徴と, 生活と健康関連QOLの関連を明らかにすること.
    方法 : 仮設住宅住民115名を対象に, 平成24年8月の1ヶ月の間で以下の調査を行った.
    1. 基本情報 (性別, 年齢, 職業, 経済状況)
    2. 生活調査 a) 典型的な1日に行う活動と要する時間
    b) 各活動は対象者にとって仕事, ADL, 余暇, 休息のいずれに該当するか
    3. 健康関連QOL (調査票はSF-36を使用)
    結果 : 有効回答は90名 (男性38名, 女性52名, 平均年齢69.9±11.9歳) であった. SF-36は多くの項目で国民標準値を下回った. 仕事において, 男女ともに食事を仕事と捉える者がいた. 余暇において, 女性が余暇と捉える活動は, ボランティア等から提供される活動が多く見られた. 男性が余暇と捉える活動のうち, 提供される活動は少なかった. 生活と健康関連QOLの関連では, 女性は50代以下において余暇時間と負の相関 (r=-0.89) , 70代以上において余暇時間と正の相関が認められた (r=0.48) . 男性では有意な相関は認められなかった.
    結論 : 70代以上の女性に対する活動提供は有効である. 男性に対する活動提供の内容を検討する必要がある.
原著(活動報告)
  • 古本 尚樹
    2015 年 38 巻 2 号 p. 140-144
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    ジャーナル フリー
    竜巻による自治体の対応について調査を行う. これにより今後の竜巻への対応に活かしたい. 2013年9月2日午後2時頃に竜巻発生, 方法として, 2013年10月23日 (竜巻発生から51日目) 午後2時から, 越谷市役所にて聞き取り調査を行った. 質問事項は竜巻被害の対応と被災者支援の課題である. 結果は, かつての災害後で住民から要望が出た避難所での食事は円滑に提供でき, 質についても特段の問題が指摘されなかった. 竜巻被害ははじめてのことだったので, 竜巻被害のあった自治体に助言や支援を得た. 結論は, 避難所での食事提供について, 過去の災害における「教訓」が生かされ, うまく対応できた. 過去に竜巻被害にあった自治体からの情報は重要となった.
  • 堤 円香, 高屋敷 明由美, 阪本 直人, 前野 哲博
    2015 年 38 巻 2 号 p. 145-147
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    ジャーナル フリー
    最も喫煙率の高い世代は, 男女ともに働き盛りの30~40代である. 子供を通じて親の禁煙推進および健康増進の意識を高めるために有用と思われた方法を報告する. A社主催の家族を職場に招くファミリーデーにおいて, 子供向けに「君ならできる家族みんなの健康を守ろう」と題した健康教育講演を実施し, 親へ手紙を書いてもらった. 結果, 社員2名がファミリーデーをきっかけに禁煙を開始したことが報告された.
  • 男女共同参画委員会 , 村田 亜紀子, 西村 真紀
    2015 年 38 巻 2 号 p. 148-153
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    ジャーナル フリー
    託児所の設置は, 女性医師が働き続けやすい環境整備のためのポジティブ・アクションの手法の1つである. プライマリ・ケア関連領域では, 21世紀初頭, ニーズ調査や複数の当事者によるベビーシッター確保を契機に個別の学術大会・セミナー単位で託児所の設置が開始された. 3学会の合併により日本プライマリ・ケア連合学会が設立し, 2013年学会本部からの託児委託費の助成・男女共同参画委員会による託児所設置支援が開始した後より託児所充実へ向けた取組みが着実に進み, 2015年度現在, 学術大会 (懇親会含む) , 学会主催の4セミナー (春季・夏期・秋季・冬期) と1回の指導医養成講習会に託児所を設置している. 託児所の設置とプライマリ・ケア関連領域3学会の設立から合併, 現在に至るまでの流れ・学会員数等推移を照らし合わせて歴史を振り返る機会としたい.
報告
  • 男女共同参画委員会 , 村田 亜紀子, 西村 真紀
    2015 年 38 巻 2 号 p. 154-156
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    ジャーナル フリー
    2013年5月, 第4回プライマリ・ケア連合学会学術大会において, 女性医師の離職予防を考えるシンポジウムを開催した. シンポジスト4名が職場離職防止策とその導入の秘訣, 当事者・周囲に可能な取り組みと学会・行政の支援のあり方の2テーマにつき議論を行った. 現場における多様な働き方が可能な勤務制度の設計支援を学会・行政が実施する必要性と, 当事者の声を拾い整備を進めるための学会等委員会の意義が提唱された.
  • スカイ エリック, フェターズ マイク D., 本原 理子, 杉村 基
    2015 年 38 巻 2 号 p. 157-166
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    ジャーナル フリー
    日本では家庭医療研修プログラム認定を受けている施設も多いものの, そのほとんどで家庭医療レジデントに対する指導経験は限られたものである. 家庭医はプライマリ・ケア現場で遭遇する幅広い診療を専門とするため, 単一分野における深さを求められる従来の他科専門医の研修とは異なった独特の教育研修が必要となる. 家庭医療研修では, 家庭医療センターなどでの外来診療技術の研修に加え, 入院病棟や各専門診療科の外来診療現場で他科専門医からの指導が不可欠である. 従って家庭医療レジデントの指導において各分野の専門医が重要な役割を果たすが, 他科ローテーションでの教育内容は明確でないことが多い. 診療範囲の広い家庭医療に必要な専門性を獲得するためには, 他科専門医から指導を受ける際, その利点を最大限に引き出すために, 明確な教育目標を設定することがレジデントと指導医の双方にとって重要である.
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