チモールのベンツオール核第6の位置の水素を,沃度を以て置換せる新化合物6沃度チモールの殺菌作用,發育拒止作用を25種の各種細菌に就て檢した。6沃度チモールはチモールに比し一般的に見ると概して其殺菌力減弱せられて居るが,抗酸性菌(各型結核菌,鼠癩菌,ケドロウスキー氏,クレーグ氏,渡邊氏及び著者の所謂癩菌)に封して稍其態度が選擇的である。即ち殺菌作用試験に於てはチモールのそれと大差なく明白とは稱する事が出來ないが,發育拒止作用試験に於ては,例へば人型結核菌の發育限度チモールの濃度4000倍なるに比し6沃度チモール20000倍なるが如くすべてに於て其作用が優る事數倍である。
6沃度チモールは強き表面張力能動性被吸着性及類脂肪可溶性を有する。恐らく之等物理的諸性状が抗酸性菌體特異化學的物質と本物質との結合上に重大な意義を有して居ると思推せられる。而して又この際遊離せられたる沃度原子の媒介作用をも考慮せらるべきである。
6沃度チモールの毒力はチモールより稍弱い。皮下に注射せられたる6沃度チモールは1部直ちに分解吸牧せられて沃度及び2クロールチモールグルクロン酸として數日間特に第2日に於て最も多量に尿中に現れる。1部は可成長期間皮下に蓄積せられ,この間の排泄は極めて徐々である。
尚詳細は獨文原著に譲る。
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