沙漠研究
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25 巻, 2 号
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原著論文
  • 上原 有恒, アユシュ エルデネチメグ, ガンバータル オノントール, 山崎 正史, 進藤 和政
    2015 年 25 巻 2 号 p. 17-24
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/27
    ジャーナル フリー
    モンゴルでは近年の家畜頭数の急増による草資源の劣化で自然災害のリスクが高まっており,科学的データに基づいた計画的な放牧地管理の重要性が指摘されている.本研究は牧養力算出のための基礎データを得ることを目的に,モンゴル国のステップ地域において放牧されているヒツジの採食量推定試験を実施した.試験は2012年9月から2013年4月に,ウブルハンガイ県タラグトソムの12頭の去勢ヒツジ(試験開始時明け2歳)を用いて行った.採食量は糞袋を用いて求めた排糞量と草中および糞中の酸性デタージェントリグニン(ADL)から求めた消化率を用いて推定した.試験地の植生はCarex,Agropyron,Stipaなどステップを代表する草種の優占度が高かった.地上部現存量は季節によって有意な差がみられ,9月(1.080 tDM/ha)に最も高く,2月には81.3%減少した.供試ヒツジの体重,排糞量,草中ならびに糞中のADL含量,消化率および採食量について,季節的変化を統計処理した.供試ヒツジの体重は季節で有意な差がみられた(P < 0.05)が,季節ごとの差は有意ではなく,10月(57.5 kg)で高く,4月(51.0 kg)で低い傾向がみられた.日排糞量(0.467~0.550 kg/日)および体重あたり日排糞量(0.83~0.96%BW/日)はいずれも季節で有意な差はみられなかった.草中のADL含量(DM中%)は9月(6.28)で低く,2月(10.85)と4月(11.63)で高かった.糞中のADL含量は9月(21.4)で低く,2月(31.20)と4月(31.80)で高かった.糞中のADL含量は9月から4月にかけて直線的に増加したが,草中のADL含量は,10月と11月で同じ値であった.これは11月の積雪がサンプリングに影響したためと考えられた.消化率(%DM)は9,10,11,2,4月それぞれ70.5%,68.2%,70.9%,65.1%,63.2%であった.日採食量(kgDM/日)は季節で有意な差がみられ,10月(1.73)で高く,4月(1.30)で低かった.体重あたりの日採食量は季節で有意な差がみられず,2.54 ~ 3.02%BW/日であった.本試験の結果から,冬と春の採食量は現在モンゴルで用いられている値より高かった.したがって,冬と春の牧養力はこれらの文献値より低くなることが示唆された.
  • 石川 尚人, 興野 若菜, 高 娃, 鳥蘭 吐雅, 阿拉騰達来 , 後藤 正和, 田島 淳史
    2015 年 25 巻 2 号 p. 25-30
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/27
    ジャーナル フリー
    内蒙古典型草原の地上部生産量(AGP)の地域差に関与する土壌成分を明らかにするために,生産量および放牧条件が異なる3地区の典型草原から,土壌および植物を採取した.克什克騰旗(採取地1:S1),錫林浩特市(S2),四王子旗(S3)に採取地を設定した.3段階の放牧条件区(高放牧圧:HG,低放牧圧:LG,禁牧:NG)を各採取地に設けた.5月上旬にHGおよびLGに,それぞれ,家畜からの防護柵(2 m × 2 m)を3個設置した.土壌および植物のサンプリングを行い,総窒素(TN),総リン(TP),硝酸態窒素およびリン酸の分析を行った. S2のHGにおいてのみ,AGP,植生および被度に対する放牧の有意な効果が認められた.この結果は,最も高い放牧強度を有するS2のH2における植生退化によるものかも知れない.一方,AGPと0-5 cmの深さの土壌中のTNとTPとの間に有意な正の相関関係が示された(それぞれ,r=0.820および0.543, P<0.05).土壌および植物中TPは1960年代の記録と比べて明らかに低かった.従って,土壌TPがAGPを制限する要因の一つかもしれない.しかし,土壌のリン酸および硝酸態窒素のレベルはいずれもAGPとの間に有意な相関関係が示されなかった.
小特集:沙漠誌分科会講演会(小特集原著論文)
  • -内モンゴル自治区シリンゴル盟を中心に-
    包 海岩
    2015 年 25 巻 2 号 p. 33-41
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/27
    ジャーナル フリー
    モンゴル牧畜民は,五畜といわれるウシ,ウマ,ラクダ,ヒツジ,ヤギを中心に飼育してきた.これらの五畜は,モンゴル牧畜民の日常生活の様々な場面で利用されている.さらに,重要なのは,畜フンの利用である.モンゴル牧畜社会では,五畜のフン名称は30以上も存在する.畜フンは乾燥かつ冷涼なモンゴル高原で,暖房と調理の最重要燃料であり,草原の極めて重要な肥料でもある.本稿では,内モンゴル自治区シリンゴル盟の事例を中心に五畜の畜フン名称体系の特徴を明らかにした.
小特集:沙漠誌分科会講演会(小特集資料・報告)
小特集:沙漠誌分科会講演会(小特集原著論文)
  • 遠藤 仁
    2015 年 25 巻 2 号 p. 53-58
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/27
    ジャーナル フリー
    半乾燥地に属するインド北西部では,家畜の糞や尿等の排泄物が資源として有効に活用されている.本稿では,ハリヤーナー州,ラージャスターン州,グジャラート州のコブウシやスイギュウの糞の利用法について,床の強化材や,燃料としての利用事例を報告する.特に燃料への利用としては,牛糞を円盤状に成形して乾燥させた保存用の燃料である牛糞ケーキ(cow dung cake)の製作,保存方法について詳細に報告する.そして,その燃焼時間の計測結果及び,燃焼実験の結果について報告し,分析した.牛糞の燃料としての利用は,半乾燥地で薪炭材として圧迫されている森林資源へのストレスを軽減させる有効なものである一方,薪よりも牛糞の燃焼が有害物質を多く輩出する等の問題点があることにも言及し,半乾燥地での家畜糞利用の持続可能性について考察した.
小特集:沙漠誌分科会講演会
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