口腔癌における術後照射の成績向上のため, 特に照射野と再発の関係を術後残存度に従って調べた. 1984年から1998年に36人の口腔内扁平上皮癌患者が術後照射を受けた. 内訳は, 5人の病期I~III, 15人の病期IV, 16人の再発癌からなる. 術後残存は, 19人の原発巣 (7人顕微鏡的, 12人肉眼的) と8人のリンパ節残存 (5人顕微鏡的, 3人肉眼的) があった. 術後照射は, 平均で52Gy125分割135日間であった. 全5年生存率と5年無再発生存率は, 各々38%と21%であった. 20人の再発は6ヶ月以内であったが, 4人においては4年前後に原発巣に再発した. 再発にかかわる因子は, 術後残存度及びリンパ節陽性数であった. 残存腫瘍に対する制御率は, 原発巣では5116人 (31%), リンパ節2/5人, 両者残存では3人中全例再発した. リンパ節転移のない9症例の内, 原発巣のみの照射で, 照射野内再発は3例あったが, 照射野外再発はなかった. リンパ節陽性例で完全に摘出され原発巣も残存のない場合, 原発巣を照射野外にした5例中4例が原発巣に再発したが, 原発巣も照射した4例では原発巣に再発はなかった (p<0.05). リンパ節陽性例で完全摘出され原発巣に残存がある10例では, 主に原発巣に照射されたが, 4名の頸部リンパ節再発の内3名が照射野外であった. 下頸部照射9例には, 照射野リンパ節再発はみられなかった. しかし, 照射野外再発率は, 患側頸部のみの照射と両側頸部の照射で統計的な違いはみられなかった.
結論; 術後腫瘍の残存度に従った照射野の設定は局所領域再発の制御に重要である. リンパ節転移のない場合では, 患者のQOLからみても原発巣のみへの照射で良いが, リンパ節陽性例では原発巣も含み下頸部までの照射が必要であろう. しかし, 両側頸部照射の必要性はみいだせなく, 患側のみの照射で充分であるかもしれない.
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