1991年に「放射線腫瘍学データベースの構築」のグループ活動が開始されて, 9年間が経過した. 本報告は, その中で登録数が最多であった「肺癌」に注目して, そのデータの解析を行い, 国内での肺癌治療の現状と問題点を検討する.
本報告は1992年から1998年までの第2-8次のデータ集積結果の内, 臓器単位では最多であった肺癌症例2,082例の集積結果である.
患者の性別は男性1,584名 (76%), 女性498名 (24%) であった. 年齢分布は, 最頻が60歳台で36%, 次いで70歳台で27%, 50歳台で17%であった, また最高齢は87歳であった.
患者の病期分類は1期が6%, II期が5%, III期が34%, IV期が54%であった.
組織分類は, 腺癌が35.1%, 扁平上皮癌が26.4%, 小細胞癌が14.3%, 大細胞癌が3.3%であった.
治療方法は, 放射線治療単独が52%, 放射線+化学療法が31%, 放射線+手術療法が10%, 放射線+化学+手術療法が4%であった.
治療対象病巣は, 原発巣のみが16%, リンパ節のみが9%, 転移のみが37%, 原発+転移が28%, その他が10%であった.
治療方針は, 根治目的が24%, 準根治目的が11%, 対症目的が27%, 姑息目的が37%であった.
2-7次のデータの追跡調査に基づく1,775例のうち, 転移なし876症例に限定してみると累積生存率はKaplan-Miere法を用いて, 脱落症例を生存ないし死亡と仮定した場合, 1年が86.7%-36.8%, 2年が73.6%-18.2%, 3年が59.6%-11.2%, 5年が40.1%-7.0%とかなり広い幅で算出された.
データ欠損率の割合は, 組織型のGradeが88%と最頻であった. T分類は17%, N分類は18%, M分類は12%, S tage分類は14%欠損していた. 治療の一時効果も11%, 合併症も16%と欠損率が高く, また合併症の部位は, 自由記載方式であったために記載に混乱が見られた.
JASTROデータベースは, 今回の検討課題を参考にして, データベース入力項目の再検討と, データ登録者への継続的な啓蒙活動が必要であると考えられた.
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