肺類表皮癌は, 限局性発育を示しながら気管支に沿って連続性に浸潤し, かつリンパ行性に順次進展することから局所療法である放射線治療にとっては好条件をみたしている腫瘍といえる.ところが, 放射線治療の対象となる症例の多くは, すでに縦隔リンパ節転移や遠隔転移を有しており, 原発巣の制御が直接予後と結びつかないことが少なくない.そこで, 縦隔リンパ節転移の認められない肺類表皮癌の放射線治療成績を分析し, 局所制御と予後に及ぼす因子について検討した.対象は, 群馬大学病院で, 1976年から1989年までの間に根治的放射線治療を行った肺癌患者のうち, 胸水貯留を伴わなずNOならびにN1と診断された肺類表皮癌患者94例とした.治療は10MVX線を用い, 86%の患者に縦隔照射を行った.総線量は単純分割照射法で60Gyから80Gyの照射を行った.全体の2年, 5年生存率はそれぞれ44%, 22%で, 中央値MsTは17か月であった.Perfbrmance status (PS) 別では, PS 0-1の患者の予後がPS2以上の患者にくらべ良好であった (中央値, 22.5か月対12か月, p<0.05).T病期別ではT260例の予後がT324例の予後より良好であった (中央値, 19か月対13.5か月, p<0.1).腫瘍径では, 径5cm以下の47例の2年局所再発率は25%であったのに対して, 5cmを越える症例の2年再発率は39%であり, 両者の生存率には有意差が認められた (p<0.01).総線量では, 80Gy以上照射された症例の局所再発率は60-74Gy照射例に比し低く, 20%にすぎなかったが, 呼吸不全となる例が多くみられ, 5年生存例は認められなかった.予防的縦隔照射線量についてみると, 原発巣の再発例を除くと, 40Gy以上照射された照射野内の縦隔再発は認められなかった.縦隔へ40Gy以上照射された症例の5年生存率は32%であったが, 40Gy未満の症例では9%であり, 両群間に有意差が認められた (p<0.05).年齢, 性別, 原発巣の発生部位では生存率に差は認められなかった.以上の結果から, 縦隔リンパ節転移を伴わない切除不能の肺類表皮癌に対する放射線療法は, 根治を期待しうる標準的治療法であると考えられた.
抄録全体を表示