1979年2月から1991年3月までの間に, 密封小線源治療を受けた, T1, T2の口腔底癌患者は46例であった.4例は局所再発, 放射線障害共に無かったけれども, 2年以内に他病死したので, 局所制御率, 放射線障害発生率の算出からは除外した.
42例の2年局所制御率は93%(39/42) であった.密封小線源治療単独群では, 100%(27/27), 外照射および化学療法併用群では, 80%(12/15) であった.線量効果関係でみると, 密封小線源治療による70Gyでの治癒率88%, 外照射を加えた80Gyでの治癒率90%で, 制御率向上はなかった.腫瘍の進展範囲でみると, 歯肉浸潤群, 口腔底限局群, 舌浸潤群の制御率はそれぞれ75%(6/8), 100%(19/19), 93%(14/15) で, 差は無かった.
下顎骨露出を指標とした2年放射線障害発生率は, 10%(4/42) であった.密封小線源治療単独群では7%(2/27), 外照射併用群では13%(2/15) であった.線量効果関係でみると, 障害発生率は密封小線源治療による70Gyでは5%で, 外照射を加えた80Gyでは13%と急激に増加していた.腫瘍の進展範囲でみると, 歯肉浸潤群, 口腔底限局群, 舌浸潤群での障害発生率はそれぞれ13%(1/8), 5%(1/19), 13%(2/15) で, 差は無かった.
T1及びT2口腔底癌患者の局所制御率は密封小線源による70Gyからは, 外照射を加えても向上せず, 一方放射線障害は急速に増大していた.腫瘍の進展方向では大きな差は無かった.従って, 腫瘍が歯肉に及んでいる症例でも, 密封小線源単独で治療した方が外照射を併用するより良いと考えられた.
重複癌は28%(13/46) に認められた.特に消化管に多く, 治療前, 及び経過観察中での全身検索の必要性が示唆された.
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