正常マウスの全身を薄板状 (2mm×3cm) 電子線錐を用いた櫛状に照射し, 不均等線量分布の正常組織への影響を定量的に調べた. 電子線は45MeV直線加速器からのものを用い, 照射はマウスをパルス式の遠隔移動台にのせ, 2mm幅 (beam width) の一本の線錐を用い行なった. 非照射野の幅 (Beam interval) を0mm, 1mm, 2mm, 3mm, 4mmに調整し照射し, その効果をLD
50/30を指標にして調べた. 線量, 線量分布の測定はTLD (Termoluminescence Dosimeter) とFCR (Fuji Computed Radiography) imaging plateを用いて行なった. 一本のビームを照射した時の, ビーム中心, アクリルファントム表面の線量を指示線量とした. LD
50/30はBeam intervalが0mmの場合, 9.3Gy, 1mmの場合, 10.2Gy, 2mmの場合, 15.0Gy, 3mmの場合, 26.3Gy, 4mmの場合, 29.8Gyであった. LdをLD
50/30, Rvをbeam width/(beam width+beam interval), つまり照射野の全照射野に対する割合 (Relative volume) と定義し関係式 (1) を得た.
Ld=8.21×Rv
-1.12 (1)
指数-1.12の95%信頼限界は-1.73と-0.52の範囲であり, この指数-1.12は統計的に-1.0と有意差がなかった. 指数が-1.0であると仮定するとLD
50/30とRelative volumeの積が一定であることを示す. 照射は一本のビームで行なわれており, 照射により受けるマウスのtotal energy (integral dose) はbeamの指示線量と照射した全スリットビーム数の積に比例する. 一方, 照射したスリットビームの数とRelative volumeも比例関係にある. よって, この実験の範囲では, LD
50/30はマウスが受けるintegral doseに依存し, beam intervalとは関係がないと考えられた.
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