1980年より1994年までに放射線治療を施行した1, II期頭頸部非ポジキンリンパ腫107例を対象とした.治療は, 1980年より1986年までは放射線治療単独, 1987年以後は放射線と化学療法の併用療法を基本として行った.照射線量は, 39~48Gy, 照射野は, 眼窩, 鼻腔副鼻腔初発の場合は腫瘍の浸潤部位を, ワルダイエル輪, 頸部リンパ節等の初発は浸潤部位及び周囲のリンパ節を含めた.化学療法は, 1980年より1984年まではCOP, VEMP等アドリアマイシンを含まないregimenが, 1985年以降は, CHOPが施行された.
107例中, 95例がCRとなった.CRが得られなかった12例中9例が鼻性T細胞リンパ腫 (進行性鼻壊疽) であった.CR後の照射部位内への再発は, 95例中, わずか鼻性T細胞リンパ腫患者1例にしかみられなかった.原病5年生存率は, ワルダイエル輪: 77%, 頸部リンパ節: 87%, 鼻腔副鼻腔: 47%, 眼窩: 95%で, 鼻腔副鼻腔は, 有意に (p<0.01) 予後不良であった.とりわけ, 鼻性T細胞リンパ腫は, 5年の原病生存率が27%と極めて不良であった.鼻性T細胞リンパ腫を除きかつ組織型が中等度または高度悪性群の77例で原病生存率に対する多変量解析を行うと, 年齢 (P<0.02) が最も有意な予後因子であり, 組織型, 5cm以上のbulky病変の有無及びアドリアマイシンの投与量は, 有意ではなかった (p<0.08).患者を60歳未満と60歳以上に分けて分析すると, 60歳未満の群では, アドリアマイシンを含む化学療法を施行された群では未施行群に比べ有意 (p<0.05) に予後が良好あった.しかし, 60歳以上の群では, 全く差がみられなかった.また, 60歳以上の群では, 5cm以上のbulky病変の存在及びstageが有意な予後因子であったが, 60歳未満の群では, 両群問に差がみられなかった.
鼻性T細胞リンパ腫を除いた症例では, CR後の照射部位内の再発はみられず, 局所制御における放射線治療の有用性が示された.60歳以上の群では, 予後に影響を与えるほどの化学療法の効果はみられなかった.
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