日本補完代替医療学会誌
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4 巻, 2 号
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総説
  • 藤野(隠岐) 知美, 鈴木 真由美, 山田 静雄
    2007 年 4 巻 2 号 p. 41-50
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/19
    ジャーナル フリー
    ノコギリヤシ果実抽出液 (SPE) は,ヨーロッパでは前立腺肥大症 (BPH) に対する治療薬として用いられ本邦でも健康食品として汎用されている.SPE の薬理作用には抗アンドロゲン作用などがある.臨床的には,SPE (320 mg/day) の 6 ヶ月投与により BPH やそれに伴う頻尿に有効との報告がある.排尿機能及び下部尿路受容体に対する SPE の作用を調べたところ,酢酸誘発頻尿ラットシストメトリーにおいて,SPE は排尿間隔及び一回排尿量を有意に増加させ,頻尿改善作用を示した.さらに SPE は前立腺 α1 受容体,膀胱ムスカリン性及び 1,4-ジヒドロピリジン系 Ca 拮抗薬受容体に対し結合活性を示した.SPE は反復経口投与により,テストステロン誘発肥大前立腺における α1 受容体数の増加を抑制した.また,SPE の反復投与はラットの血液臨床検査値,肝機能及び肝薬物代謝酵素活性に影響しなかった.以上,SPE は下部尿路受容体への直接作用による BPH の機能的閉塞の解除や頻尿の抑制などの薬理作用を示すことが示唆された.
  • 高柳 和江
    2007 年 4 巻 2 号 p. 51-57
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/19
    ジャーナル フリー
    医学文献では笑いについての科学的研究が少ないが,人間のコミュニケーションには大切である.補完代替医療では,笑いは特筆された存在である.上手に使うと,状態を軽くして,患者家族,介護者そして医療提供者との間の連携を強くするが,ブラックユーモアなどは,時に鬱の患者さんに,反対の効果をもたらす可能性もあるリスクの高い戦略である.
    多くの患者さんは苦しみを抱えていて,笑おうと思っても笑う状況にない.補完代替医療での笑いとはこういう人たちが本当に心から笑えるような場と空気を提供し笑いをひきだすことで精神的・身体的効果を得ることにある.
    I. 総説で笑いの中枢と回路,笑いと表情,笑いによるからだの動き,笑いの発達段階などを俯瞰した後,II. 具体的な補完代替医療として,病気の軽快を目的とした試みや方法を述べ,III. 現場での取り組みとして,著者が行っている笑い療法士について紹介する.
  • 卓 興鋼, 梅垣 敬三, 田辺 宏樹, 陳 文, 談 景旺, 渡邊 昌
    2007 年 4 巻 2 号 p. 59-69
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/19
    ジャーナル フリー
    近年,世界各国において補完代替医療 (CAM) を利用する癌患者が増えている.中国の多くの病院では中西医結合療法(西洋医療と伝統中国医療 (TCM) との併用)で癌を治療・予防し,多大な成果を挙げている.本研究では,中国語文献データベースから中国で行われた癌の中西医結合療法を検証した無作為化比較試験 (RCT) を調査しシステマティックレビューした.中国語学術雑誌に掲載された論文は国家科学技術図書文献センターが提供しているデータベース (http://www.nstl.gov.cn) を用いて検索した.限定的な条件で検索した結果から,14 報の RCT を特定しレビューした.ほぼ全ての研究では西洋医療に比べ,伝統中国医療との併用は良い結果が得られていた.日本において根拠に基づく CAM を推進するために,中国などで多く行われた CAM に関する RCT から,科学的根拠を収集・評価し,データベース化する必要があると思われる.これから,CAM のメタ分析など科学的な評価手法の開発及び確立が迫られる.
原著
  • 寺田 修, 鈴木 克彦, 栗原 佳子, 森口 覚
    2007 年 4 巻 2 号 p. 71-77
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/19
    ジャーナル フリー
    健康な若年者を対象とし,一過性および継続的な歩行運動の免疫能への影響を検討した.運動習慣のない健康な女子大学生 6 名を被験者とし,ルームランナーを用い歩行速度 6 km/h,1 日 30 分の歩行運動を週 6 日,3 週間運動トレーニングを実施した.採血は,運動トレーニング開始前と運動トレーニング開始 1 週間後,3 週間後のそれぞれ安静時,運動終了時に肘静脈より行った.リンパ球サブセット(フローサイトメトリー法),NK 細胞活性(LDH 法),T 細胞増殖能(PHA 刺激,MTT 法),血漿中サイトカイン濃度(ELISA 法)を測定した.NK 細胞活性,T リンパ球増殖能ともに有意な変化は認められなかった.運動トレーニング前に比べ 3 週間後の安静時では,血漿インターロイキン 12p40 濃度に有意な減少が認められた.本研究での運動強度では,免疫細胞の機能は大きな影響を受けなかったが,運動トレーニングの継続により Th1 優位のサイトカインバランスが誘導される可能性が示唆された.
Current View
  • 稲川 裕之, 河内 千恵, 杣 源一郎
    2007 年 4 巻 2 号 p. 79-90
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/19
    ジャーナル フリー
    我々は種々の臓器・器官に分布する組織マクロファージがネットワークを形成し,生体の恒常性維持に深く関与していると考え,この仮想的な制御機構を『マクロファージネットワーク』と名づけた.そこでマクロファージ活性化はマクロファージネットワーク自体を活性化して健康維持や疾病予防に繋がると考えている.これを実証するべく,長い食経験のある食品から,マクロファージ活性化物質をスクリーニングし,小麦共生グラム陰性菌由来の LPS (IP-PA1) を見出した.
    ところで LPS は強力なマクロファージ活性化作用を持つことが良く知られているが,脈管に投与される医薬品では有害物質であるとの認識が優先したため,免疫賦活素材として活用は考えられてこなかった.一方,LPS の免疫賦活活性に深く関わる TLR-4 経由のシグナル伝達は恒常性を維持する上で重要な制御機構であることが報告され,LPS の生体恒常性制御の意義が急速に認識されつつある.
    しかし,LPS や LPS を含む素材の免疫賦活作用を社会的有用性につなげるためには,個体に特有とされる健康維持機構の実態解明などの基礎研究,LPS の生理的意義の見直し等リテラシーの形成を促進すること,LPS の有用性の科学的実証の蓄積,が不可欠である.このためには,異分野・異業種からなる組織体制の整備が必要と考える.
    そこで,我々は,産官学連携により自主研究会,さらにヒトによる実証調査や食品等に含まれる LPS の質・量あるいは免疫賦活効果などの評価機能を有する NPO 法人,技術移転を行うとともに各種 LPS を機能性素材として開発し販売する大学発ベンチャーを設立し,行政からの支援を受け LPS 有用性の確立に取り組んでいる.本稿では,我々のコンセプトと新素材としての食経験を持つグラム陰性菌素材の開発の経緯について紹介する.
エラータ
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