日本乳癌検診学会誌
Online ISSN : 1882-6873
Print ISSN : 0918-0729
ISSN-L : 0918-0729
23 巻, 2 号
選択された号の論文の27件中1~27を表示しています
第23回学術総会/教育講演
  • ―MMGとUSを対比して―
    辻本 文雄
    2014 年 23 巻 2 号 p. 161-184
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    乳がん検診で行われる画像診断はマンモグラフィ(MMG)が主流である。超音波検査(US)は検査者依存性が高く,再現性も乳房自動走査装置で乳房全体が隈なく撮像されない限り非常に低い。USはその技能習得に多大な労力と時間を要すため,現時点では検診には不向きである。ただし,本邦の乳癌発生年齢は欧米に比し低く,MMGでdense breast内に小腫瘤を検出することは難しい。浸潤癌は径1 cmを境として腫瘍倍加時間が加速する。非浸潤性乳管癌は生命予後が良好なため,乳がん検診では径1 cm以下の浸潤癌を検出することが大命題である。MMGは広い視野とその再現性により,ダブルチェックの読影が可能であるが,断層像でないので腫瘍と乳腺実質との濃度差を認識できないことも多い。乳房内組織の重なりにより偽陽性のことも多い。USは断層像であるが,瞬時に捉えなくてはならない情報量が多く,診断しながら走査する必要があるため,検査者により偽陰性となり得る。USに熟達した検査者が走査すれば疑陽性はMMG に比し少ないが,精査施設でない検診に従事する検査者が良悪性の鑑別を行いながら走査すればやはり疑陽性も多くなる。解決法として,カラードプラを走査時に用いれば,比較的容易に良悪性の鑑別を行うことができる。いずれにしても,USで最も問題となるのは検査者に診断結果が依存していることである。この問題を解決する方法として,筆者は新しい診断技術を提唱する。B-モード画像で捉えることのできない微細石灰化の集簇像をtwinkling artifactにより捉える方法とmultidetector-ultrasonography (MD-US)である。
第23回学術総会/パネルディスカッション1
検診精密検査施設の精度管理と標準化について
  • 2014 年 23 巻 2 号 p. 185
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
  • 佐野 宗明
    2014 年 23 巻 2 号 p. 186-192
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    乳がん検診は一次検診と二次検診という手順を踏む。マンモグラフィを中心とする一次検診の精度は精中委の活躍によりある程度標準化しているが,精密検診の精度管理は未だ道中端であり,一次と二次で精度の逆転が多く見られる。本稿では精検施設の精度指数であるPPVを中心に検討し,具体例として政令都市の新潟市と新潟県のPPVを用いた。著者の自験9,460人の精検症例のPPVは6.2%であり,初期の精検例1,307例を地域がん登録と照合した結果,10例が抽出されたが,その8例は自施設で観察中に発見されたものだった。新潟県では県も市も医師会主導で医師会,行政,専門医師で構成される委員会で精度管理について検討される。県全体のPPVは4.14%であるが,新潟市以外の郡市部と比較すると新潟市のPPVは6.07%と良好であった。その理由として新潟市は元々専門医と基幹病院が集中しており,さらに精検施設の基準作成と認定施設を指定し,要精検者を誘導したことが大きく影響した。また,精検施設でカテゴリー1か2と判定された中に,次回の検診で再び要精検になる症例がある。これらに精検施設が所見と診断根拠と図を日付入りで患者に持たせる。受診者は次回検診時そのコピーを持参し,読影医はそれを参考にすることにより要精検率が抑えられる。
  • 東野 英利子
    2014 年 23 巻 2 号 p. 193
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
  • 堀田 勝平
    2014 年 23 巻 2 号 p. 194-199
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    がん検診の目的である乳癌死亡を減少させるためには,有効性のある検診方法で精度の高い検診を多くの対象者に行う必要がある。精度の高いマンモグラフィ検診は,検診,精密検査施設に関わらず,高品質のマンモグラムで高い読影を行うことが求められている。そのため,マンモグラフィ検診精度管理中央委員会(現 日本乳がん検診精度管理中央機構;精中機構)・施設画像評価委員会は,2004年9月からアナログ画像とデジタル画像を,2012年4月からはソフトコピー画像評価の活動を行っている。本パネルディスカッションでは,施設画像評価からみた精度管理の標準化に伴うデジタルマンモグラフィの品質管理における諸問題を検討し,改善策の話題を提供した。
  • ―標準化は可能か―
    吉田 雅行, 荻野 和功, 小倉 廣之
    2014 年 23 巻 2 号 p. 200-206
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    政令市浜松の浜松市医師会では,平成16年度より従来の医師会型検診を基盤にMMG併用検診を導入している。精度管理の一環で,毎年,検診の成績と今後の課題を報告しているが,精検結果未把握率が30%以上と高く,問題となっている。今年度より医師会に「がん検診委員会」が発足し,行政・医師会・検診施設が一体となった精度管理の協議の場が設けられ,精度管理体制が一歩前進した。今回は,精密検査施設対象のアンケート調査で,精度管理の現状把握と課題を見つけ,標準化の可能性を検討することを目的とした。浜松市医師会管内の精密検査施行10施設に対し,「乳かん検診の精密検査実施機関基準」の各項目の達成度をアンケート調査し,結果より課題を検討した。「1)精密検査実施機関」については,健診センターでは細胞診のみで針生検が実施されていないが,他は全施設,視触診・精検MMG・US・細胞診・針生検が実施可能であった。「2)精密検査実施機関の基準」では,乳腺専門医(認定医)の常勤が半数で,特に診療所で問題となる。施設画像評価は,診療所3施設以外は受けていた。他の項目は,針生検・外科的生検を施行していない1健診センター以外は,基準を満たしていた。「3)記録の整備と報告」はすべての施設が◯回答であった。「4)精度管理」は委員会が今年度からの開始で,精度管理委員会への参加や細胞診などの成績の報告は今後の課題である。課題としては,1)乳腺専門医(認定医)の常勤,2)診療所の施設画像評価,3)精度管理委員会(がん検診委員会)の整備が挙げられ,「がん検診委員会」の実効的な役割が期待されるが,総合病院と診療所の同じ尺度での標準化は現時点では難しい。
  • 遠藤 登喜子, 大内 憲明, 大貫 幸二, 笠原 善郎, 園尾 博司
    2014 年 23 巻 2 号 p. 207-212
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    乳がん検診の精度に影響を与える精密検査施設の精度を向上させるため,都道府県における精密検査実施機関基準の現状を明らかにすることを目的に,日本乳癌学会と日本乳癌検診学会が策定した「乳がん検診の精密検査機関基準」についてのアンケートを都道府県・政令指定都市を対象に行った。回収率は,都道府県41/47 (87.2%)・政令指定都市15/20 (75.0%)で高かったが,乳がん部会の設置は,都道府県34/41 (82.9%)・政令指定都市2/15 (13.3%)で,政令指定都市ではほとんど設置されていないことがわかった。乳がん部会の開催頻度は,年1回が25/35 (71.4%),次いで1回未満の開催で,開催頻度は低いことも明らかとなった。精密検査機関名簿を作成し,受診者に明示しているのは20/41県(前回19/39)であった。日本乳癌検診学会と日本乳癌学会の精密検査実施機関基準は,知っているが39/41 (95.1%)で,前回22/39 (56.4%)から大きく改善したが,精密検査機関基準を決めているのは20/41(前回19/20)で変化なく,今後決める予定ありは3/17に過ぎなかった。精密検査機関基準を決めている20県についてもその内容は,「細胞診・針生検が可能」「マンモグラフィ装置の基準」「撮影技師の受講」は比較的高頻度に求められていたが,その他の項目を求めている県は少なく,精密検査実施機関の精度保証は危ういことが明らかとなった。今後,委員への意識向上を継続的に働きかけることが求められている。
  • 2014 年 23 巻 2 号 p. 213-217
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
第23回学術総会/パネルディスカッション2
がん検診におけるメディカルスタッフ(事務、保健師、看護師)の役割
  • 2014 年 23 巻 2 号 p. 218
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
  • ―乳がん検診と人―
    福田 護
    2014 年 23 巻 2 号 p. 219-226
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    乳がん検診を含め,わが国のがん検診受診率は先進国の中で低く,これを解決するためにさまざまな施策や活動がなされてきた。しかし,乳がん検診が医療である以上,検診を支え,それを発展させる「人」についてもっと考慮すべきである。その人とは,1)エビデンスに基づいた検診方法を研究する人,2)その検診を行う制度をつくる人,3)精度の高い検診に寄与する人,4)受診をしてくれる人,5)受診率の向上に寄与してくれる人,である。NPO法人マンモグラフィ検診精度管理中央委員会(精中委:現精中機構)の活動により,精中委が認定した読影医師,撮影技師数がそれぞれ12,965名,12,620名に達した。これらの「精度の高い検診に寄与する人」により,全国のマンモグラフィ検診の精度が上がり,乳がん検診レベルの均てん化が可能となった。「受診をしてくれる人」は受診率として表わす。2012年の乳がん受診率は地域保健・健康増進事業報告(地域保健・老人保健事業報告)で17.4%,2000年の国民生活基礎調査で31.4%であり,まだ目標の50%より低く,受診率の向上が必要である。認定NPO法人乳房健康研究会は2年毎に調査を行い,受診率を向上させるためには,正確な知識を持ってがん検診を勧める身近な人が必要であると考えた。そこで,「受診率の向上に寄与してくれる人」を作るためのピンクリボンアドバイザー制度を開始した。第1回目試験で,2,069人がピンクリボンアドバイザー初級に認定された。その内訳は12歳から76歳,小学生から専門医の人である。乳がん検診のさまざまな領域で「人」が育成されてきたが,その中心を担うのがメディカルスタッフである。
  • ―撮影技術を除く視点から―
    広藤 喜章, 加納 裕士, 工藤 元, 田島 好人
    2014 年 23 巻 2 号 p. 228-233
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    乳房画像診断はアナログからデジタルハードコピーそしてソフトコピーに移行しつつある。乳がん検診を行う撮影技師のレベルは講習会などを通じ向上しているが,機器全般の取扱いという視点では,すべての方が最新技術に精通しているかというと必ずしもそうとは言えない。そこで,撮影技術を除く視点から,最新機器の取扱いや受診者の放射線被ばく管理を考慮した乳がん検診におけるリスクマネージメントについて考えてみた。マンモグラフィはデジタル化に伴い,受診者被ばく線量の増加が懸念されたが,受光器技術の発達などにより被ばく線量は上がっていない。しかし,Tomosynthesisなど新たな検査法ではこれまでの検査を超える線量となる可能性がある。無論,この技術を検診に応用するべきかが問題となるが,精査機関で追加撮影を行った線量とも比較する必要もあるであろう。一方,ソフトコピー診断ではこれまでと異なった知識が必要となる。例えば,読影医に画像が届くまでには,DICOMタグの意味,ビュワーの仕組み,モニター管理など多岐に及ぶ知識が必要となる。また,読影側も所見記載方法や,他モダリティと並べて観察するなど,変化が起きてきている。受診者に有用な検診を行うためには,撮影側と読影側,またベンダーを含めた連携(コミュニケーション)が最も大切と言え,それぞれのリスクマネージメントについても理解し,ともに向上することが大切である。
  • 今村 陽子
    2014 年 23 巻 2 号 p. 235-237
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    マンモグラフィによる乳がん検診の手引きには,「がん検診では,有効な検診を正しく行うことが求められる。有効な検診とは,標的とするがんの死亡率を下げる効果がある検診である。正しく行うとは,乳房X線撮影装置や撮影する診療放射線技師,読影する医師の技術が確かで,検診データを正確に把握,整理し,後に評価できることである。」と記されている。マンモグラフィの精度管理とは,乳房X線撮影装置システムとポジショニングに分けて考えることができる。乳房X線撮影装置を用いた乳がん検診を行う施設は,受診者に対して安全性,信頼性ならびに精度の高い検査を保障するため,機器の性能を維持するための品質管理を計画的に実行することが大切である。ポジショニングでは,受診者とコミュニケーションをとりながら,病変もれのないように乳腺組織全体を十分に広げて描出することが大切である。マンモグラフィによる乳がん検診の精度向上のためには,精度管理が必要であると同時に診療放射線技師の教育や働く環境の整備も大切である。スマートに乳がん検診を受けていただくためには,検査を受ける人,検査をする人,ときには装置を整備する人の協力が大切である。
  • ―英国の現状―
    有馬 由里子
    2014 年 23 巻 2 号 p. 239-245
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    英国の医療福祉サービスの基本概念にはチーム医療とEvidence Based Practiceがある。乳がん検診から診療を通じて,事務職,看護婦,技師,医師が各々の分野の専門家として役割分担し,より良いサービスをより円滑に行えるように努めている。各々の分野内メンバー間のチームワーク,施設内での各分野間のチームワークは必然であり,コミュニケーションが重要な役割を果たす。 各々の分野にガイドラインが設定されていて,必要人員から業務内容,達成目標など細かく記載されている。また,地域格差のない医療福祉サービスが提供できるようにとガイドラインの設定だけでなく,業績の集計,定期的な審査の体制が整っている。各職員の能力開発や教育についても施設内で公式および非公式に配慮されている。生涯罹患リスクが8人に1人の英国では国民の乳がんに関する意識も高く,チャリティー団体やボランティア人員も乳がん診療や啓蒙に欠かせない要員である。個人の意思尊重,インフォームドコンセントが原則で,提供する文書や情報についてもガイドラインや校正機構がある。 ここでは医療経費削減の危機のなか,サービス向上に努める英国の現状を紹介する。
  • ―札幌ことに乳腺クリニックの場合―
    増岡 秀次, 三神 俊彦, 桜井 美紀, 吉田 佳代, 白井 秀明, 下川原 出, 浅石 和昭, 三原 大佳, 野村 直弘, 森 満
    2014 年 23 巻 2 号 p. 247-254
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    現在,乳癌罹患者数は7万人に達すると推計される。2012年の乳癌死亡数は初めて減少を認めたが,進行癌も未だに減少していないのも事実である。さらなる減少をさせるためには受診率の向上が不可欠である。受診者が受診し易いよう,また繰返し受診を啓蒙する必要がある。そのためにはメディカルスタッフの役割が重要である。当院は医師,看護師,臨床放射線技師,臨床検査技師をはじめ,事務職員,外来クラークとすべての職員がそれぞれの役割を果たしている。医師,管理職以外はすべて女性スタッフとしている。外来がスムーズに進むように外来棟を新築し,3診体制とした。また最新の診断機器を導入,院内の画像診断ネットワークを構築し,受診者に精度の高い診断結果を提供できるようにしている。受診者が最初に訪れるのは「受付」である。窓口での対応は「事務職員」である。いわば病院の「顔」である。笑顔で対応するようにしている。ここでの対応が受診者のイメージに影響を与える。また「問診」をはじめ,看護師の役割が非常に重要である。検診初診者は自覚症状があるわけではないが,何らかの不安があるものと思われる。看護師の丁寧な対応は心理的なサポート,信頼関係の構築,不安の緩和に繋がる。検査技師はすべて女性で,事前に受診者に検査の内容を説明し,不安や緊張をほぐして検査に参加してもらえるように心がけている。それぞれのメディカルスタッフがそれぞれの役割を担っている。
  • 奥山 晶子, 荒木 眞代, 堀内 絵里, 安藤 美智子, 佐藤 亜希, 石垣 洋子, 吉田 勝美, 千 哲三
    2014 年 23 巻 2 号 p. 256-261
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    当院では,平成16年4月より職域における乳がん検診を実施している。職域検診は対策型検診と違い,検診項目が年齢によって区分されておらず,個人・会社によって項目はさまざまである。そのため,20~30歳代の若年層に対しマンモグラフィ単独検診,60~70歳代の高年齢層に超音波単独検診が設定されているなど,個人の乳腺構造や所見に合わない例が生じているのが現状である。当院ではこういった事例を解消するため,経年受診者において検診結果と乳腺構造を元に乳腺担当医が「次回推奨検査項目」(以下,「推奨検査項目」)を設定し,次回どの検査を受けるべきか提示するというシステムを採用している。「推奨検査項目」は結果とともに受診者に通知し,次回受診の際の参考となるようにしている。次回受診時の項目と「推奨検査項目」が合わない場合は,検査当日に受診者に直接紙面もしくは口頭にて,項目の追加・変更を促している。初回受診者に対しても紙面にて説明を行っており,また経年・初回に関わらず,すべての受診者が検査当日でも項目の変更や追加が可能なシステムを作り,運用している。これに際し,医師をはじめ放射線技師,看護師,受付,情報管理課など各部署が連携し,検査の現場で受診者にとって最適な乳がん検診を提案できるような体制を整えている。今回は,当院で行っている乳がん検診の概要と乳腺構造と所見を考慮した個別対応について紹介する。
  • 笠原 善郎, 辻 一郎, 大貫 幸二, 鯉淵 幸生, 坂 佳奈子, 古川 順康, 増岡 秀次, 村田 陽子, 森田 孝子, 吉田 雅行, 雷 ...
    2014 年 23 巻 2 号 p. 263-267
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    2009年度の全国集計結果で,「システムとしての精度管理」のチェックリスト達成率は対策型検診施設42.9%に対して任意型検診施設で27.8%と低く,精度管理が不十分である可能性が示唆された。そこで2009年度全国集計登録データを用い,任意型検診施設(任意型施設と略),任意型+対策型検診施設(任+対策型施設),対策型検診施設(対策型施設)のプロセス指標と技術体制的指標を比較し,今後の改善につなげるため,今回の検討を行った。要精検率は任意型施設,任+対策型施設,対策型施設でそれぞれ7.2%, 6.6%, 6.9%であった。同様に精検受診率は57.2%, 83.4%, 83.8%,乳癌発見率は0.18%, 0.25%, 0.29%,陽性反応適中度は2.4%, 3.8%, 4.3%,早期癌比率は48.2%, 53.5%, 44.8%であった。マンモグラフィ単独法およびマンモグラフィ視触診併用法で40~69歳の対象者に絞ってプロセス指標を比較すると,要精検率は任意型施設,任+対策型施設,対策型施設でそれぞれ8.6%, 7.0%, 7.6%であった。同様に精検受診率は60.7%, 79.8%, 76.6%,乳癌発見率は0.23%, 0.27%, 0.26%,陽性反応適中度は2.7%, 3.9%, 3.4%であり,任+対策型と対策型間の乳癌発見率を除く各項目で有意差を認めた(p<0.05)。技術体制的指標では,説明,撮影,読影の精度管理の項目ではほぼ差はなかったが,システムとしての精度管理のデータ収集の項目順守率がそれぞれ26.6%, 38.4%, 36.9%と任意型施設で低かった。以上より任意型施設は,精検受診率が有意に低く,技術体制的指標のうちの「システムとしての精度管理」が不十分であった。その一因として結果把握のシステムおよびこれに係る人的資源の有無,個人情報保護法による結果把握の困難さが推測された。
第23回学術総会/ワークショップ2
乳がん検診の新たなモダリティ展開
  • 2014 年 23 巻 2 号 p. 269
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
  • 植松 孝悦
    2014 年 23 巻 2 号 p. 270-278
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    近年,デジタルマンモグラフィの技術を応用した新モダリティとしてブレストトモシンセシスが登場した。その技術は低線量のX線を使用した多数回撮影による2次元画像から3次元画像データを習得して1 mmスライスの再構成乳房断層像を表示することができる。その結果,通常2次元マンモグラムでは病変と重なる乳腺組織を軽減または除去する効果があり,マンモグラフィの診断精度が向上する。ブレストトモシンセシスを併用したマンモグラフィ検診は統計学的有意差をもって乳癌発見率を向上させ,より多くの浸潤癌を発見できることもすでに報告されている。また,マンモグラフィ検診のharmである偽陽性の減少効果も期待されている。また,心配されるこの検査に伴う被曝線量は一乳房一方向あたり通常の2次元デジタルマンモグラフィ撮影とほぼ同様であるが,現在では乳房トモシンセシス画像からの合成2次元デジタルマンモグラム技術が確立されて,“二重被曝”問題は解消された。近い将来にブレストトモシンセシスが乳癌臨床の場で必須モダリティになることは間違いなく,さらにマンモグラフィ検診の主流になるのも時間の問題である。本稿ではわれわれのブレストトモシンセシスの臨床使用経験と文献的考察を交えて,ブレストトモシンセシスの乳癌検診導入への期待と解決されなければならない問題点について述べる。
  • 川本 雅美
    2014 年 23 巻 2 号 p. 280
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    従来の全身用PET,あるいはPET/CTでは,径1センチ以下の小さな乳癌の検出・評価には限界がある。全身用PETの空間分解能,呼吸性移動による検出能の低下,健常な乳腺組織への生理的なFDG分布などが主たる原因であるが,これらの課題を克服すべく,開発されたのが乳房専用のPET装置である。乳房が体表面に位置していることを最大限に利用した装置であり,検出器により乳房を固定,あるいは腹臥位で撮像することにより呼吸性移動を低減させ,検出感度の向上をはかっている。 さらに乳房のみを時間をかけて撮像することで,乳腺内のFDG分布を詳細な画像として得ることができ,健常部と病変部のコントラストが明瞭に描画される。 当施設ではマンモグラフィのように2枚の平板状の検出器で乳房をはさんで撮像を行う対向型の乳房専用PET 装置を乳癌の診療に用いている。マンモグラフィや造影MRIと同程度の感度・特異度を有する乳房専用PETは乳癌の検診においても有用な手段になると考えられる。
  • 田渕 隆
    2014 年 23 巻 2 号 p. 282
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    乳がん診断におけるMRI検査の有用性は数多く報告され,MRIでのみ描出可能な乳がんが存在することが知られている。また,他の検査法同様に,高い精度管理の必要性から,2012年5月日本乳癌検診学会が中心となり,「乳がん発症ハイリスクグループに対する乳房MRIスクリーニングに関するガイドライン」が作成された。当院では2010年より,このガイドラインにおいて引用している欧州乳房画像診断学会のガイドラインを参考に作成した撮影プロトコルで,80~100件/月の乳房MRI検査を施行してきたが,同時に,乳房画像診断を専門とする放射線科医の協力のもと,MRIガイド下生検を施行できる環境を整備し,任意型検診としての乳房MRI検査を開始した。ここでは,まず当院の乳房MRI検査の撮影プロトコルを紹介し,ガイドラインに定められている撮影のポイントを整理する。また,広報はホームページに留め,より精度の高い検診を望まれ,かつ造影剤の使用に関しても十分な理解を得られた方にのみ提供してきた任意型検診88例について,被験者も対照群や動機の分析結果と発見された異常所見を供覧する。最後に,総合健診機関と専門性の高い乳がん治療施設の架け橋となることを目的とした,確定診断までを行なえる放射線科専門医による「乳腺画像診断外来」の試みについて報告する。
  • 位藤 俊一
    2014 年 23 巻 2 号 p. 284-289
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    肝臓領域における造影超音波は,1980年代初頭に炭酸ガスとアルブミンを用手撹拌にて作成した炭酸ガスマイクロバブルをエコー源として動注したのが最初である。その後,1999年には第1世代超音波造影剤レボビスト®,さらに2007年1月には第2世代超音波造影剤ソナゾイド®が肝腫瘤性病変に対して認可された。ソナゾイド造影第2相,3相臨床試験を経て,2012年8月乳腺腫瘤性病変に対しても保険適応となった。ソナゾイド®は,鶏卵由来の安定剤である水素添加卵黄ホスファチジルセリンナトリウムとペルフルブタンから成る径2~3μmの微小気泡(マイクロバブル)である。乳腺腫瘤性病変に対するソナゾイド造影第2相で造影剤の標準用量が設定され,第3相臨床試験では超音波Bモード法(非造影)や造影MRIに比較して,正診率で造影超音波が優った。肝腫瘍とくに肝転移診断においては,造影超音波は優れた診断精度を有する,すでに確立されエビデンスのある検査である。乳房領域の造影超音波に対応した超音波診断装置や表在用探触子も増え,安全かつ簡便な検査としての威力が発揮される準備はすでに整っていると考えられる。臨床試験で用いられた診断基準も分かりやすく客観性を重視した内容となっている。鑑別診断だけでなく,乳癌の術前広がり診断や薬物治療効果判定など日常臨床で遭遇するさまざまな局面での造影超音波の果たす役割は大きい。時間分解能,空間分解能で他のモダリティを凌駕する造影超音波がさらに広く行われ,被験者に大きな利益をもたらすことが期待される。
  • 春田 峰雪, 福田 達, 尾股 定夫
    2014 年 23 巻 2 号 p. 291-295
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    今日,わが国においても乳がんの罹患者は増加傾向にあるが,欧米では日本の5倍から10倍ときわめて深刻な問題となっている。また,このような乳がん患者の増加は後進国でも急速な対応が求められている。そこで,乳がんの最適治療には早期発見が重要であることから,マンモグラフィやPETなどさまざまな先端医療診断装置が使用されているが,世界中の女性から乳がんなどのシコリを簡便に,しかも家庭でも容易にチェックできるようなパーソナルユース型の乳がんチェッカーが待望されている。本研究室においても乳がんのシコリを触診と同様な特性として硬さをイメージングする乳がん触診プローブの試作開発を行い,予備的な実験に成功した。この触診プローブは超音波素子を「位相シフト法」による原理で駆動する装置で,触診の特性を弾性イメージングできる特徴をもつので,シコリの硬さをヤング率として画像化できる。しかし,この装置は手軽に使用するには高価であることから,家庭でも容易に使用できる乳がんチェッカーとして,光デバイスを利用した新しいパーソナルユース型乳がんチェッカーの試作開発を行い,動物実験によるモデル実験レベルまで達したので,これまでの研究成果を報告したい。
  • 2014 年 23 巻 2 号 p. 297-299
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
原著
  • ―各自治体別の比較検討―
    久保内 光一, 八十島 唯一, 小田切 邦雄, 蔵並 勝, 土井 卓子, 川口 正春, 荘 正幸, 羽鳥 裕
    2014 年 23 巻 2 号 p. 301-309
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    神奈川県には,横浜・川崎・相模原の3政令指定都市をはじめとして33の市町村があり,それぞれが独自に自治体としての乳がん検診を行っている。平成12年の厚生省通達以降,マンモグラフィ併用検診が徐々に取り入れられて,平成18年には全33自治体に導入されたが,平成21年現在部分的に視触診検診が残されている。受診率は無料クーポン券の影響で増加に転じ,県平均15.8%となったが,周辺町村部に高いところがあり,指定都市は県平均レベルであり,県央の中小都市が低かった。要精検率・陽性反応適中度・癌発見率等のいわゆる「検診のプロセス指標」は,指定都市等人口の多い都市が県全体をリードし,県央の中小都市では改善を要するようなデータが多く見られた。検診受診率は大きな都市で低く,小都市で高い傾向が見られたが,県央の中小都市ではその傾向に逆らって低いところが目立った。早期癌率も57.3%と悪くない値で,今後全体の受診率の増加が見込めれば,乳癌死亡の減少につながる可能性が示された。本県の乳がん検診は,全体としては指定都市をはじめとして比較的良好な精度管理といえるが,県央の中小都市の幾つかにおいては,精度管理上の各指標において劣るところが見られ,改善を要する部分が少なくなかった。
  • 武部 晃司
    2014 年 23 巻 2 号 p. 310-316
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    2001年から2010年まで香川県全域を100%網羅した乳癌登録を実施した。今回の検討は香川県内の乳癌の疫学的動向を目的として行った。乳癌初回治療症例において性別,年齢,来院経緯,組織型,リンパ節転移,エストロゲンレセプターを検討項目とした。2001年の乳癌症例は343例,その後2007年までは毎年増加し,2007年に546例になり,6年間で59%の増加が認められた。その後はやや減少し,2010年は519例であった。それを基にして日本全体の乳癌罹患者数を推定すると,66,000から70,000人になり,一般に流布している全国の乳癌罹患者推定数よりも多かった。非浸潤癌は年々増加し,2010年に21%に達した。55歳以上の乳癌症例が増加し,2010年には全体の63%に達したが,年齢層別罹患率のグラフは米国型の右肩上がりにならないことが判明した。30~49歳までの乳癌罹患率は米国と同等であった。検診の普及がその要因になり,小型でリンパ節転移のないER陽性の症例がこの10年間に著しく増加した。一方,リンパ節転移,腫瘍径2~5 cm,ER陰性症例数は変化なしか,もしくは減少した。若年者乳癌の検討では,34歳以下の乳癌比率は2005年以降減少傾向にあった。29歳以下の乳癌症例はこの10年では年平均1.6人と少なかった。
  • ―非検出率に注目して―
    横溝 十誠, 橋本 秀行, 宮内 充, 川上 義弘
    2014 年 23 巻 2 号 p. 317-322
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    当診療所で診断された乳癌症例1,129例について,MMGおよびUSの検出能を検討した。症例の平均年齢は53.0歳で,すべて女性であった。MMGおよびUSの非検出率はそれぞれ12.0%,0.83%であった。年代ごとにおけるMMG非検出率については,20代から30代において15.7%と最も高値であった。以降年代とともに低下し,70代から90代においては4.7%と最も低値であった。US非検出率は40代において1.6%であったが,それ以外の年代においては1%未満であり,いずれもMMGと比べ低い傾向にあった。MMGによる病変非検出群と検出群における平均年齢はそれぞれ51.4歳,53.8歳で,非検出群において有意に低かった(p=0.02)。平均腫瘍径はそれぞれ13.4 mm,19.6 mmで,非検出群において有意に小さかった(p<0.01)。さらに腫瘍径10 mm以下であった症例161例について検討すると,MMG非検出率は22.4%であった。非検出例(36例)と検出例(125例)の平均年齢はそれぞれ54.4歳と55.3歳で有意差を認めなかったが(p=0.39),平均腫瘍径はそれぞれ8.25 mmと8.73 mmであり,非検出例において有意に小さかった(p=0.04)。年齢に依らず,腫瘍径の小さい早期乳癌の発見のためにはMMGよりむしろUSの有用性が高いと考えられ,今後の乳癌検診のあり方について検討の余地があると考えられた。
  • 大岩 幹直, 遠藤 登喜子, 森田 孝子, 白岩 美咲, 渡邊 宏美, 水野 理恵, 伊藤 三栄子
    2014 年 23 巻 2 号 p. 323-330
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー
    精密検査では,マンモグラム(MG)で指摘された病変をUSで評価することが診断の最初のステップとなる。しかし検診で発見される小さな非触知病変では,その病変を同定することさえ容易ではない。われわれは二方向(内外斜位,頭尾方向)撮影されたMGにおける病変の位置を座標化することにより,乳房上での病変の位置を推定する方法を考案したので,これの精度を検証した。2011年8月~2012年2月に名古屋医療センターで撮像されたMGの中で,病変が二方向撮影でともに描出されており,USによりその病変が確認されて位置計測された,連続する100症例を検討の対象とした。乳房に,乳頭をゼロ点,矢状断方向をY軸とした座標軸を設定した。次にMG上にこの座標軸を求め,病変の中心から各座標軸までの距離を計測することにより病変の中心座標を決定した。USでこの座標を中心に走査することにより病変を同定し,中心座標を計測した。MGで計測された座標とUSで確認した座標は,X座標,Y座標ともにきわめて高い相関が認められた(p<0.001)。X座標は高い一致が得られ,Y座標も,MGの計測値はUSの計測値よりも絶対値で大きい傾向にあったが,その差は-10~20 mmの範囲にほぼ収まり,探触子幅(3.5 cm以上)でカバーされる範囲であった。以上からMG病変の位置を本法により座標化することは,USでの病変同定に寄与すると考える。
feedback
Top