2009年度の全国集計結果で,「システムとしての精度管理」のチェックリスト達成率は対策型検診施設42.9%に対して任意型検診施設で27.8%と低く,精度管理が不十分である可能性が示唆された。そこで2009年度全国集計登録データを用い,任意型検診施設(任意型施設と略),任意型+対策型検診施設(任+対策型施設),対策型検診施設(対策型施設)のプロセス指標と技術体制的指標を比較し,今後の改善につなげるため,今回の検討を行った。要精検率は任意型施設,任+対策型施設,対策型施設でそれぞれ7.2%, 6.6%, 6.9%であった。同様に精検受診率は57.2%, 83.4%, 83.8%,乳癌発見率は0.18%, 0.25%, 0.29%,陽性反応適中度は2.4%, 3.8%, 4.3%,早期癌比率は48.2%, 53.5%, 44.8%であった。マンモグラフィ単独法およびマンモグラフィ視触診併用法で40~69歳の対象者に絞ってプロセス指標を比較すると,要精検率は任意型施設,任+対策型施設,対策型施設でそれぞれ8.6%, 7.0%, 7.6%であった。同様に精検受診率は60.7%, 79.8%, 76.6%,乳癌発見率は0.23%, 0.27%, 0.26%,陽性反応適中度は2.7%, 3.9%, 3.4%であり,任+対策型と対策型間の乳癌発見率を除く各項目で有意差を認めた(p<0.05)。技術体制的指標では,説明,撮影,読影の精度管理の項目ではほぼ差はなかったが,システムとしての精度管理のデータ収集の項目順守率がそれぞれ26.6%, 38.4%, 36.9%と任意型施設で低かった。以上より任意型施設は,精検受診率が有意に低く,技術体制的指標のうちの「システムとしての精度管理」が不十分であった。その一因として結果把握のシステムおよびこれに係る人的資源の有無,個人情報保護法による結果把握の困難さが推測された。
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