日本外傷学会雑誌
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31 巻, 2 号
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総説
  • 北野 光秀
    2017 年 31 巻 2 号 p. 71-78
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/06/20
    ジャーナル フリー

     著者らは, 腹部外傷の手術術式を海外で報告された術式をもとに, 改良あるいは開発していったので, その経緯と術式を述べる. 繰り返しエコーやCT検査で腹腔内出血量が増加している III b型肝損傷では, 壊死部を切除する必要があること, 肝損傷深部からの出血は肝切除を施行することによって確実に止血できるとの観点から損傷面を利用した肝切除を施行した. 17例中2例が出血死した. 主膵管損傷の中でも, 膵実質の損傷が高度ではない場合, Letton&Wilson手術ではなく膵管再建術を10例に施行した. 膵瘻は3例であったが保存的に治癒した. 十二指腸損傷の付加手術としては, 十二指腸憩室化術20例, 幽門閉鎖術4例を施行し, 後者で1例の縫合不全があった. 腹膜刺激症状が不明瞭でCTで遊離ガスが認められない小腸損傷 (穿孔) 疑い18例に対して, 全身麻酔下に腹腔鏡検査を施行した. 開腹遅延例はなく, 非治療的開腹は1例であった.

  • 森村 尚登, 北野 光秀, 林 宗貴, 土井 智喜, 藤田 尚
    2017 年 31 巻 2 号 p. 79-86
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/06/20
    ジャーナル フリー

     わが国で初めて自治体が設置した外傷センターの開設経緯と現況を概説した. 横浜市は地域疫学調査で防ぎ得た外傷死の現況を明らかにし, それに基づき体幹部の出血性ショック症例を外傷センターの主たる診療対象とし, 施設要件を規定し, 既存の8救命救急センター中2ヵ所に機能を付与した. 次に救急隊プロトコルを策定し周知した. 指定2病院は市の補助により初療室や手術室機能の強化を図り開設に至った. 単施設搬送例の検討では設置前後で予測外生存率が増加した. 外傷診療の目標は, 確実な救命, 機能予後の最善化, 整容的後遺障害の最小化であり, 今後は "外傷センター" の定義を明確にし, 防ぎ得た「死と後遺障害」の双方を回避するための, 地域医療計画に基づく継続的な質向上を可能にする包括的な診療体制を全国的に検討していくことが必要である.

第31回日本外傷学会抄録
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