著者らは, 腹部外傷の手術術式を海外で報告された術式をもとに, 改良あるいは開発していったので, その経緯と術式を述べる. 繰り返しエコーやCT検査で腹腔内出血量が増加している III b型肝損傷では, 壊死部を切除する必要があること, 肝損傷深部からの出血は肝切除を施行することによって確実に止血できるとの観点から損傷面を利用した肝切除を施行した. 17例中2例が出血死した. 主膵管損傷の中でも, 膵実質の損傷が高度ではない場合, Letton&Wilson手術ではなく膵管再建術を10例に施行した. 膵瘻は3例であったが保存的に治癒した. 十二指腸損傷の付加手術としては, 十二指腸憩室化術20例, 幽門閉鎖術4例を施行し, 後者で1例の縫合不全があった. 腹膜刺激症状が不明瞭でCTで遊離ガスが認められない小腸損傷 (穿孔) 疑い18例に対して, 全身麻酔下に腹腔鏡検査を施行した. 開腹遅延例はなく, 非治療的開腹は1例であった.
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