日本小児腎臓病学会雑誌
Online ISSN : 1881-3933
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14 巻, 2 号
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原著
  • 山崎 恒, 大久保 総一郎, 中山 正成, 桜井 守, 内山 聖
    2001 年 14 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     剣道練習後にミオグロビン・ヘモグロビン尿 (myohemoglobinuria) を呈した14歳女児の1例を報告した。原因は踏み込み動作による血管内溶血と運動に伴う骨格筋融解と考えられた。運動後に一過性の尿中β2ミクログロブリンの上昇,クレアチニンクリアランスの低下を認め,ミオグロビンおよびヘモグロビンによる糸球体・尿細管機能障害の可能性が考えられた。この一過性の腎機能障害は,サポーターなどで衝撃を緩和することで軽減されることを確認した。剣道練習によるミオグロビン尿,ヘモグロビン尿は時に経験される。急性腎不全へ進展する可能性は低いと考えられるが,腎機能障害を回避するために衝撃の軽減や脱水の予防などの対策をとる必要があると考えられた。
  • 五十嵐 隆, 関根 孝司
    2001 年 14 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     専門医育成と卒後教育に関する問題点を明らかにするため,現在活躍中の小児腎臓病医にアンケート調査を行った。90%以上の者が小児腎臓病に関する知識・診察・治療,学校検尿有所見者への適切な対応,画像検査,腎生検を専門医として必要な知識・技術と考えていた。自分が受けた研修は80%が良かったと評価していた。しかし,教育実習施設は79.4%が不足していると考え,専門医制度は71.8%が必要,卒後教育の充実を95%が求めていた。専門医の育成には多数の患者が集まり,慢性透析や腎移植を行い,総合的に患者を治療できる施設を各地域に整備することが先決である。また,他科の支援体制があり,十分な質と数の指導医がいることも不可欠である。今後小児腎臓病学会は小児腎臓病専門医として必要な研修ガイドライン (到達目標) を作り,透析,腎病理組織診断,各種画像検査などの知識・技術を教育するための実習形式の講習会を定期的に開催するなどの教育活動を積極的に展開することが必要である。
  • 林 篤, 瀧 正史, 臼井 大介, 小川 誠, 青山 興司, 後藤 隆文
    2001 年 14 巻 2 号 p. 99-102
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     先天性腎尿路異常を基礎疾患とする小児期発症の慢性腎不全 (CRF) 患児17例の身長発育について検討した。7例に遺伝子組換え型ヒト成長ホルモン (hGH) による治療が行われた。hGH投与群の身長標準偏差値スコア (SDS) は-3.5±0.3 SDから-2.6±1.5 SDと有意に (P<0.05) 身長の改善が得られた。長期間継続してhGH投与がなされた6例中4例において-2 SD以上の身長が得られた。一方,hGH非投与群10例の最終観察時の身長SDSは平均-3.6±1.1 SDで,7例においては最終身長に到達していたが,いずれも-2 SD以下の著明な低身長であった。hGH治療中に急速な腎機能の低下はなく,hGH投与に伴う有害事象は明らかではなかった。CRF患児における成長障害に対して長期間のhGH治療は有効であると思われる。
  • 北川 康作, 酒井 圭子, 三木 葉子, 前田 衛作
    2001 年 14 巻 2 号 p. 103-107
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     Glomerulocystic kidney disease (以下GCKDと略す) の15歳男児例を経験した。
     患児は,腎機能低下を主訴に他院より紹介され,高砂市民病院小児科を受診した。腎生検の結果,多数のglomerular cystを認め,先天性奇形や発達障害を認めないことより,GCKDと診断した。患児には蛋白尿・血尿は認めないものの持続した低調尿を認め,経過観察中腎機能は安定 (CCr: 66.3~70.7ml/min/1.73m2) していた。腎臓は年齢体格に比較して著しく小型 (右:8.1×3.5cm,左:7.8×3.9cm) であった。家族検索をすすめたところ,母親にも患児と同程度の腎臓機能低下と低調尿が認められ,母親の腎臓も小型 (右:7.0×3.2cm) であることがわかった。これらの所見より,本症例をFamilial hypoplastic GCKDと診断した。筆者の調べた限り,これまでに本邦では本疾患の報告はなかった。
  • 山本 勝輔, 松本 小百合, 大島 利夫, 里村 憲一
    2001 年 14 巻 2 号 p. 109-113
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     1996年7月,堺市で病原性大腸菌による集団食中毒が発生した。病原性大腸菌感染症後に出現する尿異常の長期経過を明らかにするため,大阪府立母子保健総合医療センターまたはベルランド総合病院を受診した溶血性尿毒症症候群を呈していない患者のうち,初回の検尿が発症後1カ月以内に行われた400名を対象とし,その後の検尿結果を検討した。1カ月以内の検尿で (1+) 以上の尿潜血を認めた患者において,1年後の尿潜血陽性率は20%,2年後でも16.3%が (1+) 以上の尿潜血を持続していた。同様に,発症後1カ月以内に尿蛋白を (1+) 以上認めた患者の尿蛋白陽性持続率は,1年後は25.5%,2年後は16.2%であった。溶血性尿毒症症候群を呈していなくとも病原性大腸菌感染症罹患後には,一過性の尿異常のみならず,長期にわたり尿異常が持続することが示され,病原性大腸菌感染症が検尿異常の一因となりうることが示唆された。
  • 原 聡, 西崎 直人, 佐藤 智幸, 竹内 梨江子, 吉川 尚美, 川村 理佐子, 大友 義之, 金子 一成, 山城 雄一郎
    2001 年 14 巻 2 号 p. 114-118
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
    【目的】 先天性水腎症を超音波検査(Ultrasound sonography:以下,US)で評価するさいの客観性について検討する。
    【対象】 先天性腎盂尿管移行部狭窄症と診断された小児17名(男15名,女児2名,範囲0カ月∼110カ月,平均月齢21カ月)における合計31腎。
    【方法】 順天堂大学医学部6年生と小児科医が同時にUSにおける水腎症の重症度評価を行った。そのさい,腎盂最大前後径 (Central echo complex; 以下,CEC) を計測するCEC計測法と胎児泌尿器科学会 (Society for Fetal Urology; 以下,SFU) が提唱した表記法 (以下,SFU分類法) による記載を行い,両者の結果を比較した。
    【結果】(1) CEC計測法の計測値とSFU分類法のGradeはよく相関した (相関係数rs=0.943,危険率P<0.01)。
    (2) CEC計測法でもSFU分類法でも医師と学生の判定は7割以上の例で完全一致した。
    (3) 学生と医師の所見が全く異なる例は,CEC計測法で3.2%,SFU分類法で0.0%であった。
    【結論】 SFU分類法は従来のCEC計測法と互換性があり,同等以上の客観性・迅速性も有する。したがって今後,先天性水腎症のUS評価にはSFU分類法を用いた方がよいと思われた。
  • —1施設における統一された診断からフォローアップまでの臨床的検討—
    豊浦 麻記子, 吉村 博, 安次嶺 馨, 末吉 健志, 大城 潔
    2001 年 14 巻 2 号 p. 121-128
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     当院において1995年1月より1999年12月までの5年間に尿培養にて診断した上部尿路感染症 (以下上部UTI) 427例について検討した。発熱以外の症状として3歳未満の乳幼児では無呼吸,呻吟,チアノーゼなどの非特異的症状が特徴的であった。診断時白血球尿を伴わない症例が21%にも認められた。起炎菌は大腸菌が73.8%と最も多いが,特徴として緑膿菌による上部UTIのほぼ全例に尿路奇形が認められた。膀胱尿管逆流現象 (Vesicoureteric reflux以下VUR) は31%に見られ,VURのgradingと腎瘢痕の有無について明らかに関連性が認められた。
  • 川崎 幸彦, 鈴木 順造, 永井 真紀, 片寄 雅彦, 鈴木 仁
    2001 年 14 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     Transtubular potassium concentration gradient (TTKG) は皮質集合管の主細胞に対するアルドステロン反応性の指標とされいる。従来よりTTKGの成人から幼児期までの正常値に関する報告は散見されるが,新生児におけるTTKGと血漿アルドステロン値 (PAC) との関係を検討し,これら両値を乳児期まで経時的に観察した報告はない。
     今回,我々は,新生児患児40例を正期産児と早期産時に分け,TTKGとPACを検討した。TTKGは正期産児,早期産児双方で生後週数が増加するにつれ高値を呈したが,正期産児では生後1カ月をピークにやや低下する傾向があった。PACは正期産児では生後週数が増加するにつれ低値を呈したが,早期産児では生後2週目まで高値が持続した。生後早期におけるTTKGの低値は,PACに対する感受性の低下を示し,新生児早期における遠位尿細管機能の未熟性を示唆する所見と思われた。
  • —シクロスポリンMEPC製剤での検討—
    霍見 久美子, 伊藤 雄平
    2001 年 14 巻 2 号 p. 135-138
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     シクロスポリンは移植,ネフローゼ症候群等に広く使用されている免疫抑制剤である。投与に際しては,個体差,有効域の問題などから血中濃度モニタリングが必須とされてきた。ただし,従来の製剤では吸収の不安定さ等の問題があったためmicro-emulsion pre-concentrate (MEPC) 製剤が開発され,モニタリング方法,その設定値について様々な検討が行われている。本稿では,従来の製剤とMEPC製剤の比較,移植におけるモニタリングの報告例について概説する。さらに自験例における頻回再発型ネフローゼ症候群での検討を基に,シクロスポリンの血中濃度モニタリングの意義について述べる。
  • 徳富 友紀, 松平 宗典, 天本 なぎさ, 中嶋 有美子, 樋口 洋一, 森内 浩幸
    2001 年 14 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     近年様々な病態に血液浄化療法が応用されるようになってきている。
     我々の施設では2000年4月より小児腎臓内科医が主体となり,血漿交換療法や持続濾過透析を中心に血液浄化療法を実施し,これまでにのべ14症例を経験した。全身性炎症反応症候群4例,自己免疫疾患の急性増悪3例,重症肝不全2例,慢性腎不全の急性増悪,溺水,溶血性尿毒症症候群,血栓性血小板減少性紫斑病,ABO不適合生体肝移植の術前処置,各1例であった。
     これらの経験から,体重10kg未満の小児でもブラッドアクセスの工夫や回路のプライミング,施行中の鎮静やモニタリングを適切に行うことで十分に効果を得ることができると考えた。
     しかし,従来の小児科病棟内で血液浄化療法を行うことは,スタッフにも過大なストレスを強いることになり,特に救命処置の一環として実施する場合には小児ICUの確立が不可欠であると思われる。
  • 永井 琢人, 後藤 芳充, 上村 治, 平林 靖高, 吉田 智也, 福田 革, 石井 睦夫, 神田 康司, 岩佐 充二, 安藤 恒三郎
    2001 年 14 巻 2 号 p. 145-148
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     2カ月男児の発熱に対して解熱剤 (アセトアミノフェンおよびメフェナム酸) が投与された。その数十分後に痙攣,意識障害が出現し,中枢神経,肝臓,腎臓,骨格筋を傷害した多臓器機能障害症候群 (以下MODS) を発症した症例を経験した。児は,全血漿交換療法を用いた集中治療管理により約10日間の経過で回復し,眼球運動異常を後遺症として残した。本症例では非常に速やかに臨床症状が改善しており,原因としては脳炎,脳症というよりは解熱剤投与による末梢血管拡張および体血圧低下によりMODSが引き起こされたと考えた。乳児期早期および新生児期での発熱に対し解熱剤投与は慎重にすべきである。
  • 野坂 和彦, 春木 伸一, 海崎 泰治
    2001 年 14 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     3歳11カ月で全身型の若年性関節リウマチ (juvenilerheumatic arthritis: 以下JRA) を発症し,その8年3カ月後にアミロイド腸炎を起こし,9年7カ月後にアミロイド腎症を発症した女児を経験した。腸炎は基礎疾患のコントロールにて臨床症状の改善を得たが,腎症は基礎疾患の炎症が改善したあとに症状が顕在化した。高度の蛋白尿と高血圧があり,腎生検では,糸球体,尿細管間質,血管へのアミロイドの沈着を認め,糸球体硬化像と間質への細胞浸潤がみられた。アンギオテンシン転換酵素 (angiotensin converting enzyme,以下ACE) 阻害剤使用により高血圧と蛋白尿の改善が得られた。
     しかし,血清クレアチニン値は漸増しており,基礎疾患や腎臓の組織像より,本症例の予後は楽観できないと考えられる。JRAにおける続発性アミロイド腎症は早期に診断し,基礎疾患を十分にコントロールし,ACE阻害剤などを積極的に使用することで予後を改善できると思われる。
  • 田中 完, 鈴木 康一, 中畑 徹, 舘山 尚, 杉本 和彦, 柿崎 良樹, 和賀 忍
    2001 年 14 巻 2 号 p. 155-158
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     過去10年間に当科へ入院した腎疾患児347例の内,経過中に腎不全へ進行した症例は14例であった。これらの14例中,その発見動機が学校検尿であった症例は4例 (ANCA関連腎炎1例,膜性増殖性糸球体腎炎1例,両側矮小腎2例) であった。腎不全進行例でその発見動機が学校検尿であった例とそれ以外の例について,診断時の血清クレアチニン値,末期腎不全までの期間に有意な差はみられなかった。しかし,個々の症例についてみると学校検尿による発見とその後の管理が患児の腎不全進行をある程度抑制し,生活の質の向上に寄与していることがうかがわれた。
  • 森野 正明, 村山 圭, 伊波 潔, 岡田 浩一, 根元 博徳
    2001 年 14 巻 2 号 p. 159-162
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     軽症IgA腎症と診断された女児が1年後に半月体形成性腎炎を呈した。臨床上の特徴は(1)10歳で診断,(2)診断後1年で増悪,(3)赤血球円柱・白血球円柱が目立つこと,(4)初回腎生検で間質の浮腫が認められたことである。小児科領域で報告されているIgA腎症急性増悪例の年齢は10歳前後が多く,増悪時期は1年前後であった。軽症IgA腎症でも,診断後1~2年間は急性増悪の可能性を考慮し注意深い観察が必要である。
総説
  • 服部 新三郎, 吉岡 加寿夫, 本田 雅敬, 伊藤 拓
    2001 年 14 巻 2 号 p. 165-173
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     1999年のわが国の20歳未満の末期腎不全患者の調査を行った。1999年新規症例は102例 (男/女:67/35) で,原因疾患は異あるいは低形成腎が24.5%と最も多く,低年齢ほど腹膜透析がなされており,1年間の移植数は1000透析当り7例で全例が生体腎移植であり,死亡例はなかった。1998年の新規例の1年間の移植数は100透析当り10例で全例が生体腎移植であり,死亡数は100透析当り22例であった。1999年の20歳未満の既存症例は628名 (男/女:363/265) で,腹膜透析41%,血液透析17%,腎移植41%で,原因疾患はどの年齢においても嚢胞・遺伝性・先天性腎疾患が多かった。1999年の全症例の1年間の移植数は生体腎移植が49例 (92%),死体腎移植4例 (8%) で,100透析当り11例で,生体と死体腎移植の割合は10対1であった。1年間の死亡数は6例で,1000透析当り9例であり,死因は様々であった。
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