日本急性血液浄化学会雑誌
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最新号
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総説
  • 加藤 隆寛, 大西 正文
    2024 年15 巻2 号 p. 93-97
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/01
    ジャーナル フリー

    βラクタム系抗菌薬(βラクタム薬)は抗菌薬のなかでもよく用いられ,適切な投与が重症患者の転帰に重要な影響を与える。重症病態においてその薬物動態は健常人とは大きく異なり,病態の経時変化に伴う分布容積,タンパク結合率の変動や,個体差も大きい。とくにβラクタム薬について,臨床では腎代替療法(renal replacement therapy:RRT)設定に応じて投与量調整が行われるが,背景にある薬物動態変化の影響もあり,血中濃度のばらつきが大きいことが知られている。このことから,RRT設定からおおよそのクリアランスを推定しても,適切な血中濃度範囲から逸脱する患者を特定することは難しいと考えられる。一方,βラクタム薬は安全性が高く,その毒性を考慮した上でトラフ濃度が最小発育阻止濃度の6〜10倍を超える場合に減量が推奨される。とくに薬物動態が不安定で,患者の転帰に大きな影響を与える重症病態の初期においては,十分な血中濃度を確保するための投与設計が望まれる。

  • 利尿剤vs限外濾過
    丸山 高史, 阿部 雅紀
    2024 年15 巻2 号 p. 98-104
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/01
    ジャーナル フリー

    心不全と腎不全は共通する部分があり,両者の合併は日常診療でもしばしば経験する。心不全に合併する腎障害の病態として腎虚血だけでなく腎うっ血も含まれており,後者の場合,除水が腎不全にも有用である。除水の手段として利尿剤やextracorporeal ultrafiltration method(ECUM)があるが,過剰体液を速やかに解消する必要があるにもかかわらず,利尿剤の投与後腎機能が低下し,利尿が得られない場合にはECUMが必要となる。除水能力や安全性においてECUMは利尿剤よりもすぐれているという報告がある一方,治療時間や除水量が増えるにつれて安全性や腎予後が悪くなる報告もあり,腎虚血に留意して治療時間や除水量の調整が必要である。利尿剤においても腎虚血併発に留意した薬剤の選択が腎予後のために必要である。腎うっ血の有無にはCVPが参考になるが代替する簡易に判断できる指標が今後待たれる。

解説
第34 回日本急性血液浄化学会学術集会Best Presentation Award(BPA)受賞論文
原著
  • 西村 優一, 本田 陽平, 宇田川 彩花, 田代 嗣晴, 藤本 潤一
    2024 年15 巻2 号 p. 111-114
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/01
    ジャーナル フリー

    CKRTにおいて返血側エアートラップチャンバ(venous chamber:VC)は血液凝固が多い部位であり,その要因の一つに血液滞留があげられる。今回,血液滞留因子である血液流量(QB),補充液流量(QS),液層分離の3点に着目し,垂直流入式VCの血液滞留に与える影響について検討を行った。VCはJCH-55X2-CHDF-2(ジェイ・エム・エス社)を使用した。評価項目として,QB(80,150mL/min),QS(0,0.3,0.6L/hr),液層分離(あり・なし)に分類し,計12通りで検討を行った。QBはVC中部と下部の攪拌効果が強く,高QBは低QBより滞留を軽減した。QSの使用は,希釈とVC液面への滴下衝撃の効果によってVC上部の滞留を軽減した。液層分離は,VC液面への滴下衝撃を軽減するが,血流の旋回力に好影響を与えた。高血液流量,補充液の使用,液層分離の併用は垂直流入式返血側エアートラップチャンバ全体の滞留を軽減する。

  • 清水 弘太, 山田 格, 森山 和広, 加藤 稚菜, 栗山 直英, 原 嘉孝, 中村 智之, 森西 洋平, 西田 修
    2024 年15 巻2 号 p. 115-121
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】CKRT回路のVチャンバー内の流れを数値流体シミュレーションを用いて可視化し,チャンバー設計の違いがVチャンバー内の流れに与える影響を評価した。【方法】作動流体を33%グリセリン溶液,流量を150mL/minとし,容量15mLで設計したVチャンバー内での流れを数値計算により可視化した。Vチャンバーの流入方式とフィルターの有無を検討項目とし,各計算結果を流線図と速度コンター図により図示した。【結果】水平流入方式ではフィルターの有無にかかわらず作動流体は旋回流で流れ,Vチャンバー下部ではフィルターの整流効果が確認された。垂直流入方式では作動流体流はチャンバー底部で跳ね返った後,Vチャンバー中央付近まで上昇し,再度下降しながら流出口へ流れた。またフィルターの有無にかかわらず,チャンバー上流では停滞が生じていた。【結語】今回の数値計算では,水平流入方式+フィルターありがVチャンバー内全体で淀みなく流れる設計であった。

  • 阪田 宏樹, 森口 武史, 針井 則一, 後藤 順子, 原田 大希, 菅原 久徳, 髙三野 淳一, 上野 昌輝, 伊瀬 洋史, 渡辺 愛乃, ...
    2024 年15 巻2 号 p. 122-127
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/01
    ジャーナル フリー

    透析室における一般的な血液浄化療法については,全国的な調査によりインシデントの内訳が示され,これに基づく安全マニュアルが策定されている。一方,重症患者に対する急性血液浄化療法については,インシデントの内訳に関する報告は少なく安全対策は十分とはいえない。当院では急性血液浄化関連のインシデント解析を行い,これに基づく安全対策を実施してきた。その結果,労働環境の変化によりインシデントの増加が懸念されていたにもかかわらず,過去5年間の急性血液浄化に関連するレベル3a以上のインシデントは減少していた。すなわち,急性血液浄化療法においては,業務の固定化,可視化,簡略化,および多職種連携を行うことでインシデントを抑えることができる。

原著
  • 風呂 正輝, 花澤 勇一郎, 窪田 彬, 渋谷 陽平, 鈴木 俊郎, 柴原 宏
    2024 年15 巻2 号 p. 128-132
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/01
    ジャーナル フリー

    非カフ型カテーテル(non-cuffed hemodialysis catheters:NCC)使用時は,留置後比較的早期から血栓が形成されることが報告されている。血栓による合併症として,脱血不良などのカテーテル機能不全や肺血栓塞栓症,カテーテル関連血流感染の重症化,血管狭窄・閉塞などの発症リスクがある。今回,当センターにおいてNCCを使用して血液浄化療法を導入した症例のうちNCC抜去時に超音波検査を施行した症例を抽出し検討した。観察されたNCC留置血管は右内頸静脈14例,左内頸静脈5例でNCC留置期間は中央値(四分位範囲)で7(6〜11)日であった。19例中17例(89.5%)と高率に血栓形成が認められた。血液浄化療法を必要とする場合に緊急時に使用されることの多いNCCであるが,NCC留置血管には高率に血栓を形成している可能性があり注意が必要である。

  • ポリスルホン膜とセルローストリアセテート膜の比較
    栗原 佳孝, 関口 雅弥, 小林 こず恵, 小久保 謙一, 久保田 勝
    2024 年15 巻2 号 p. 133-137
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/01
    ジャーナル フリー

    治療中のヘモフィルタの凝固はさまざまな問題を起こすため,血小板などの血球の付着の少ないヘモフィルタを使用することは重要である。今回,材質の異なる2種類のヘモフィルタの基礎性能をin vitro実験にて検討することを目的とした。実験は新鮮ブタ血液を用いて,濾液を循環血液に戻す長時間in vitro実験モデルでヘモフィールSNV(SNV-1.0)とUTフィルター(UT-1100)の比較を行った。血液流量100mL/min,濾液流量10mL/min,実験時間24時間とし,実験中はACTが200〜300秒になるようにヘパリン添加速度を調整した。膜間圧力差は時間経過とともに有意に上昇し,UTがSNVに比べ有意に増加しやすかった。24時間後の膜への赤血球付着量と血球総付着量はSNVに比べUTが有意に高値を示した。これより,SNVはUTに比べ膜に付着した血球成分が少なかった。

症例報告
  • 関口 紗千, 阪 名月, 松隈 英樹
    2024 年15 巻2 号 p. 138-141
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/01
    ジャーナル フリー

    1週間前からの胃腸症状で入院となり,COVID-19を契機にANCA関連血管炎が顕在化しARDSに至ったと考えられる79歳女性に対してPMMA膜を用いて間歇的に施行したCAH-CHDFとPMX-DHPを併用し救命した症例を経験した。入院時には重症の急性腎性腎不全を発症しており,入院直後にARDSとなり人工呼吸器管理を要した。循環不全・呼吸不全に対してサイトカイン吸着目的にCAH-CHDFとPMX-DHPを施行し,改善を得た。第5病日にANCA陽性が判明したため血漿交換およびステロイドハーフパルス療法を開始した。第9病日にスタッフのCOVID-19を契機にPCR検査を再施行したところ陽性と判明し,大学病院に緊急搬送となった。その後3回挿管と抜管を繰り返したが,4ヵ月後,気管切開および維持血液透析を導入状態で,車いすレベルで当院療養病棟に帰院した。

  • 水本 竣, 澤田 真理子, 中村 美咲季, 濱端 隆行, 荻野 佳代, 林 知宏, 齋藤 真澄, 浅野 健一郎, 脇 研自
    2024 年15 巻2 号 p. 142-146
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/01
    ジャーナル フリー

    【緒言】腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome:TLS)は腫瘍の急速崩壊で多臓器不全となり生命予後に影響する疾患である。T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)の治療中にTLSによる高K血症に至り緊急透析を行った一例を報告する。【症例】15歳,男児。体重52.9kg。T-ALLと診断しプレドニゾロン15mg/m2を投与した。TLS高リスクであり治療開始後K 7.3mmol/L,Cre 1.77mg/dLへの上昇と心電図変化を認めTLSによる高K血症と急性腎障害に対し緊急血液透析を実施した。抗凝固薬はヘパリン,血液流量は160mL/分,透析液流量は500mL/分で4時間施行後,K 4.4mmol/L,Cre 0.81mg/dLに改善した。以降は補液と利尿薬で管理可能となり現在は維持療法中である。【結論】症例毎に腎代替療法(renal replacement therapy:RRT)のモダリティを検討し必要時には迅速にRRTを行う必要がある。

  • 持田 泰寛, 守矢 英和, 村岡 賢, 御供 彩夏, 丸山 遙, 山野 水紀, 石岡 邦啓, 岡 真知子, 真栄里 恭子, 大竹 剛靖, 日 ...
    2024 年15 巻2 号 p. 147-152
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/01
    ジャーナル フリー

    破砕赤血球を伴う溶血性貧血の代表的な疾患に血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)があがるが,軽微ながらも破砕赤血球を認めた発作性夜間血色素尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria:PNH)を診断し,TTPとの鑑別に苦慮した症例を経験したため報告する。症例は60歳台,女性で,倦怠感を認め受診した。COVID-19抗原が陽性で,破砕赤血球を伴う溶血性貧血,腎機能障害,血小板減少を認めた。血栓性微小血管症を呈しており,TTPが強く疑われた。全血漿交換療法によりLDHは減少するも血小板数の改善に乏しく,CD55/CD59の赤血球表面マーカーに加えPNHタイプ赤血球の定量検査を施行した。上記表面マーカーの欠損を認めたためPNHと診断した。PNHでは通常赤血球膜形態は正常であるが,時に破砕赤血球を伴うこともあり鑑別を要する。

技術・工夫
  • 小松 聖史, 中村 智之, 栗山 直英, 早川 聖子, 原 嘉孝, 川治 崇泰, 山下 千鶴, 森山 和広, 西田 修
    2024 年15 巻2 号 p. 153-156
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/01
    ジャーナル フリー

    ICU入室が必要となる患者の敗血症性腎障害は死亡率に大きく影響を及ぼすことがわかっている。つまり,敗血症患者の腎保護管理は全身状態を改善する可能性がある。当科の治療戦略の特徴は生理学的,薬理学的アプローチによる腎保護管理である。抗菌薬選定や輸液管理にとどまらず,循環作動薬,利尿薬や血液浄化療法を含めた治療を生理学的な根拠をもとに治療する。この戦略の根底にあるものは尿流維持と,メディエータの制御が重要であると考えている。血中から原尿中にサイトカインなどが濾過されると尿細管上皮障害から尿細管閉塞を生じやすく,GFR低下を招くこととなるので,尿流を維持することは腎保護となる。自施設では,水分バランス管理においても安易に血液浄化による除水に頼るのではなく,できる限り自尿を維持した管理を行っている。血液浄化療法は,施行条件を病勢に応じて使い分け,血中と尿中のメディエータ制御を意識した管理を行っている。

  • 小宮 翔喜, 功力 未夢, 岡本 裕美, 岩﨑 良太, 佐川 竜馬, 髙梨 隼一, 別所 郁夫, 小竹 良文
    2024 年15 巻2 号 p. 157-160
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/01
    ジャーナル フリー

    慢性期における透析中のブラッドボリューム計(BV計)は安全な治療を行う上で重要なモニタリング項目の一つとされている。TR-2020に急性期領域で初めてBV計が搭載されたが,その精度に関する報告は少ない。そこでTR-2020で測定するBV計の⊿BV(⊿BV_TR)の測定精度をin vitroにて検討した。今回は牛血を使用して生体の循環モデルを構築し,そのモデルからTR-2020へと血液を循環させた。臨床における輸液と除水を模擬するため,持続的に補液のみ,除水のみ,補液と除水を行う条件下で⊿BV_TRと実測⊿BV(⊿BV_control)を測定し比較した。Bland-Altman分析の結果,補液のみ,除水のみ,補液と除水時では負方向の固定誤差を認めた。また,limits of agreement(LOA)は,慢性透析時で使用されているBV計の誤差範囲内であったことから,continuous renal replacement therapy(CRRT)でも使用可能なモニタリングであると考えられた。

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