土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
73 巻, 2 号
選択された号の論文の176件中151~176を表示しています
海洋開発論文集 Vol.33
  • 小林 薫, 石沢 彩夏, 相馬 嵐史, 森井 俊広
    2017 年73 巻2 号 p. I_899-I_904
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     半乾燥地における地盤の塩害防止策の1つとして,礫層(粗粒土層)とその上に砂層(細粒土層)を重ねた地盤であるキャピラリーバリア(CB)が有効である.しかし,半乾燥地における乾燥砂は,下部礫材の間隙に混入しやすく,層状地盤の層境界面の長期的な安定性の確保が困難である.筆者らは,この課題に対し,礫代替材に扁平な破砕貝殻を用いることで,CB機能(降雨浸透水の遮断・貯留効果)を保持したまま,乾燥砂の下部粗粒材の間隙への混入も同時に防止できる貝殻型CBを見出した.
     本研究では,礫代替材として破砕貝殻を用いた貝殻型CBの多機能効果の内,(1)塩分上昇遮断効果と(2)破砕貝殻から溶出したカルシウムが植物の発芽・生育に及ぼす影響について実験的に明らかにした.
  • 中村 倫明, 鷲見 浩一, 小田 晃, 武村 武, 落合 実
    2017 年73 巻2 号 p. I_905-I_910
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     本文は東京湾を対象として,河川から負荷されたダイオキシン類について,Hybrid box modelを用いて算出した流動場に吸着・脱着,無機化やスキャベンジングの作用を考慮した海水層(溶存態,小粒子及び大粒子吸着態)と溶出,埋没,生物擾乱を考慮した海底層(境界層(海水層と粒子層),生物擾乱層,拡散層の 3層)のカップリングによるモデル展開を図った.
     モデルにより海底堆積層の濃度分布を算出し,既往の現地観測結果との比較することにより過去50年間のダイオキシン類量を推定した.その結果,濃度解析による拡散分布,海底土堆積濃度とも観測値と類似した傾向を示し,仮定したダイオキシン類量の信憑性が確認された.
  • 中村 倫明, 鈴木 真帆, 三浦 正一, 鷲見 浩一, 小田 晃, 武村 武, 平田 悠真, 和田 明
    2017 年73 巻2 号 p. I_911-I_916
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     本研究は海底土内の移行過程を考慮した東京湾における放射性物質の濃度解析モデルを構築することにより,中・長期的な将来予測を可能として環境アセスメントが実施できる環境を整えることを目的としている.海底土内は3層(P層:粒子層,B層:生物攪乱層,D層:拡散層)に分割し,海水と海底土の相互作用には境界層を設定することによって海水モデルと海底堆積モデルを結合している.このモデルによる計算結果は,実測値との比較から分布形状,海底土内の移行過程の概念には概ね良好な結果を示したが,具体の値では初期の河川流,密度流の影響を受けることが課題としてあげられた.
  • 大塚 文和, 中本 壮祐, 吉田 誠裕, 川西 利昌, 増田 光一
    2017 年73 巻2 号 p. I_917-I_922
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     本研究は,東京湾における代表的な親水海浜であるふなばし三番瀬海浜公園の干潟域に最も大きく影響すると考えられる真間川河口前面海域の放射性物質の存在実態を,柱状採泥結果を基に3次元的に把握した.また,先の干潟域における放射線量の経年的な計測結果を通して放射線量の実態の概要を把握した.これらの結果を基に,東京湾における代表的な親水海浜であるふなばし三番瀬海浜公園の干潟域における放射線量の変動の可能性についても検討した.
  • An HU, Takashi TSUCHIDA, Genki TAKAHASHI, Hiroki MURAKAMI
    2017 年73 巻2 号 p. I_923-I_928
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     Great East Japan Earthquake on March 11th, 2011 destroyed Fukushima No. 1 nuclear power plant and generated a huge amount of wastes contained radioactive cesium to the environment of Fukushima Prefecture and adjacent prefectures. The purpose of this study is to find out the proper sealing material for the sealing layer of coastal disposal facilities. Previous research shows that the target of hydraulic conductivity of sealing material should be less than 5.0×10-10 m/s to avoid radioactive contaminant leakage to environment with harmfulness. This study focus on Matsushima Bay Clay mixed with bentonite and zeolite and tests the adsorption properties for cesium with consolidation-permeability test. The performance of cesium adsorption of Matsushima Bay Clay mixture can be measured.
  • 東 さやか, Nasroden PAGAYAO, Maria Antonia N. TANCHULING, 日比野 忠史
    2017 年73 巻2 号 p. I_929-I_934
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     パシッグ川はマニラ首都圏の中心をラグナ湖からマニラ湾に向かって東西に流れている.下水処理施設の未整備によりパシッグ川の支流・水路には生活排水が直接流入し,47の支流・水路では過剰な有機物により著しい水質汚濁の問題がある.本論文ではパシッグ川支流の水質特性と直面する問題についてまとめた.その結果,雨と潮位変動に伴った流れが支流・水路でのBOD,CODの持空間の分布を変化させていること,CODが平均的に100を越え,BOD/CODが1/2程度に分布する水塊には,常時のBOD(生活排水)の流入に加え,底泥からのCODの拡散が年を通して継続的に起こるため,CODには底泥起源の還元物質の含有率が高いことを明らかにした.
  • 加島 史浩, 竹山 佳奈, 浜谷 信介, 和栗 成樹, 山内 裕元, 鵜飼 亮行, 岩本 裕之
    2017 年73 巻2 号 p. I_935-I_940
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     土砂処分場の不足により,浚渫土の有効利用が課題となっており,近年,干潟や浅場などの造成材としての利用が進められている.一方,製紙業では製紙汚泥の減容化の過程で発生するPS灰の再資源化が求められている.PS灰の吸水性等が着目され,高含水比,高有機質の泥土への使用が可能な泥土改質材としてこれまでに様々な研究がおこなわれているが,水域利用に関する知見は少ない.そこで,浚渫土にPS灰系改質材を添加した改質土について,水中における性状の把握,および浅場造成の際の施工方法の提案を目的とした試験を実施した.その結果,施工の際に転圧をおこなうことで,浅場等の基盤材として使用できることが明らかになった.
  • 森本 優希, TOUCH NARONG , 日比野 忠史
    2017 年73 巻2 号 p. I_941-I_946
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     石炭灰造粒物(GCA)は石炭燃焼時に得られるフライアッシュを造粒し製造されている.高温で燃焼された石炭灰は急激に冷やされることでその構造はガラス状となりCa2+やSO42-等のミネラルと酸化物質を容易に溶出できる分子構造となる.本研究はGCAから溶出されるミネラルに注目し,GCAによるリン酸の固定機構を考察した.その結果,GCAによるリン酸の固定はpH及びリン酸濃度に依存することが明らかとなった.リン酸はpH>10でリン酸カルシウムとして固定されること,GCAには溶液全体をpH>10まで上昇させる能力がないことから,GCAを構成するCaOが溶解時にGCAの極近傍にpH>10範囲が形成され,リン酸を固定していることが推定された.
  • 竹山 佳奈, 浜谷 信介, 加島 史浩, 和栗 成樹, 山内 裕元, 岩本 裕之, 鵜飼 亮行
    2017 年73 巻2 号 p. I_947-I_952
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     近年,様々な産業系リサイクル材を活用した環境改善に関する研究開発がおこなわれている.PS灰や浚渫土もその一つであり,干潟・浅場造成等の自然再生での利用について検討されている.これまでPS灰の水域での利用に関して高pHの影響が懸念されていた.そこで,pHが中性に近いPS灰系改質材と浚渫土を使用した改質土を干潟・浅場造成の材料として利用するため,生物に対する安全性および生物加入状況を確認することを目的とした実海域試験を実施した.その結果,改質土は再泥化することなく,生物出現状況についても,底生生物とアサリの出現状況は対照区である砂と比較して同等かそれ以上であった.そのため,本改質土は干潟材料としてだけではなく,アサリ漁場に利用できる可能性があることが示唆された.
  • 浜谷 信介, 加島 史浩, 竹山 佳奈, 和栗 成樹, 山内 裕元, 岩本 裕之, 山中 亮一, 上月 康則
    2017 年73 巻2 号 p. I_953-I_958
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     近年,浚渫土を浅場造成の材料として活用し,生物の生育地を整備する事例が見られる.この際,浚渫土は強度増加や施工性向上のために改質材を添加,混合して改質土とすることがあり,改質土には生物生育地としての安全性や適用性が求められる.そこで本研究では,浚渫土に製紙汚泥焼却灰を原料とする改質材を添加,混合した改質土を植物生育基盤へ有効利用することを目的として,淡水条件及び海水条件での植栽試験をおこない,供試土壌の強度,pH変化,および,供試植物の地上部の本数と草丈を調査した.その結果,改質土が植物生育基盤として適用可能であることがわかった.
  • 上原 教善, 鈴山 勝之, 鈴木 隆宏, 山川 匠, 菊池 睦
    2017 年73 巻2 号 p. I_959-I_964
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     ケーソン据付等の大型船を用いた海上工事では,工事の中止基準を下回る海象条件であっても,船の動揺が原因で工事が中止になる場合がある.この原因の1つに「うねり」の存在が考えられるが,有義波高等の代表諸元を用いた解析では,その存在を明らかにすることが困難である.本研究では,方向スペクトルを用いた分析から,低波浪時に海上工事が中止になった期間の波エネルギーの特徴を明らかにするとともに,出現率の経年変化傾向を調べた.この結果,東北管内では,0.05~0.09Hzの周波数帯(11~20sの周期帯)のうねり性の波エネルギーの出現率が増加傾向にあり,その出現特性は太平洋域の海面水温の変動と密接な関係があることが明らかとなった.
  • 小竹 康夫, 松村 章子, 熊谷 裕, 梅津 順一, 中村 友昭
    2017 年73 巻2 号 p. I_965-I_970
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     防波堤の築造は海上工事を伴い,据付前のケーソンや作業船は浮遊状態にあるため,常に波浪の影響を受ける.そのため施工現場では,従来から,作業時の安全性や施工精度の確保を目的として,予め施工限界波浪を設定し,作業予定日当日の波浪予測に基づいて,作業実施の可否を判断してきた.ただしこれら施工限界の波浪条件は,一般的には過去の実績や作業員の経験に基づき設定されることが多く,ケーソンや作業船の動揺状態を定量的に整理した知見は限られる.そこで本研究では,施工時に施工限界波浪を簡易かつ定量的に設定することを目的とした数値解析を,浮遊状態のケーソンを対象に実施している.そして,施工限界波浪設定の簡易図表作成方法を提案し,短周期側ではswayあるいはroll,長周期側ではheaveあるいはrollにより施工限界が規定されることを明らかとした.
  • 琴浦 毅, 田中 仁
    2017 年73 巻2 号 p. I_971-I_976
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     WAMやSWANなどの第三世代波浪推算モデルは,設計波の算定,日々の波浪予測などの実務に活用されている.著者らはWAMを用いて海上工事の施工可否判断への適用性について検討を進めるなかで,低波浪時において波高を過大評価,周期を過小評価するケースがあることを確認していた.この要因として考えられるのは高周波数側のエネルギーを過大評価に起因するものであると推察された.
     本研究では高周波数側のエネルギーの過大評価の改善を目的とし,エネルギーソース項のうち逸散項に着目して,高周波数側のエネルギー逸散について検討を実施した.その結果,高波浪時期には波高の過小評価となるケースがあるものの,低波浪時には推算精度向上が図れ,WAMを用いた海上工事施工可否判断の精度向上につながる可能性が高いことが確認された.
  • 長野 晋平, 和田 雅昭, 田中 修一, 中田 稔, 阿部 幸樹, 田原 正之, 長野 章
    2017 年73 巻2 号 p. I_977-I_982
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     漁港港湾工事における作業船の運用にとって,工事発注者及び受注者の双方で,解決すべき次の4点の問題がある.(1)災害早期復旧に活用できる作業船の機能と位置情報の把握,(2)計画的発注のため作業船の機能とその位置情報の把握,(3)作業船に係わる漁港港湾工事の回航および避難回航履歴明示,(4)工事実施と運用管理のため作業船位置情報及び気象海況情報の把握である.その解決のため,作業船の位置情報発信システムの構築,気象海況情報の組込み及び送信蓄積情報の表示アプリケーション(アプリ)構築を行った.そして,それらを長崎県下の作業船に実装し運用を行った.
  • 兵頭 武志, 瀬賀 康浩, 高橋 宏直, 安部 智久
    2017 年73 巻2 号 p. I_983-I_988
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     2000年の改正SOLAS条約により,一定規模以上の船舶へのAIS(船舶自動識別装置)の搭載が義務付けられ,従来よりも効率的に周辺海域の動静把握が可能となることで航行の安全性向上が期待されているが,AISデータには有益な情報が含まれているにもかかわらず,十分に活用されている状況にない.
     本研究では,海上施工現場における安全確保の観点から,既往の輻輳度分析手法における課題を抽出した上で,時間的・空間的に膨大なAISデータを処理して理解されやすい分析結果を提示できるメッシュデータ手法を提案した.また,北九州空港東側に計画される新門司沖土砂処分場事業(II期)の工事を対象に本手法で分析して,船舶の輻輳度や台風等の荒天時の動静が把握できたことから,浚渫土の運搬や作業船舶の曳航等の計画立案の際,より安全な海域,経路の選定に本手法が有効であることを示した.
  • 赤倉 康寛, 荒木 大志, 玉井 和久
    2017 年73 巻2 号 p. I_989-I_994
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     我が国においては,欧米基幹航路の維持・拡大を目標とした国際コンテナ戦略港湾政策が展開されている.当該政策目標を達成できるかどうかは,我が国の将来状況だけでなく,東アジア内での相対的な位置付けにも大きく影響される.
     以上の状況を踏まえ,本研究は,中長期の世界コンテナ流動OD量の将来見通しを試算したものである.その結果,北東アジアの東南アジア航路や南アジア・中東航路が欧米基幹航路と同レベルのコンテナ量となること,北米航路において東南アジアコンテナ量が大きく伸びること等を明らかにした.さらに,これらの結果を基に,特に東南アジア航路に視点を置いて我が国港湾政策について考察した.
  • 中泉 昌光
    2017 年73 巻2 号 p. I_995-I_1000
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     政府が民間と国産水産物・食品の輸出倍増に取り組んでいる中で,本論文は,主要産地の港湾からの活・生鮮・冷蔵ものの輸出の現状と輸出拡大の可能性を明らかにし,輸出促進における港湾機能について論じたものである.現状でどの輸送機関や経路が利用されているかは,港湾が所要の鮮度が保持できるリードタイムで経済的に安定的・確実に輸送できる物流機能を有しているかどうかに依存していることがわかった.港湾が高い鮮度保持での効率的な物流機能を有すると,輸出促進につながるものと考えられる.また,高度衛生管理型漁港の生産機能と港湾の物流機能が連携することも重要であることがわかった.
  • 赤倉 康寛, 小野 憲司
    2017 年73 巻2 号 p. I_1001-I_1006
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     大規模地震・津波の発生時には,被災地域への緊急支援において大量輸送が可能な船舶に頼る部分が大きい.受け入れる被災港湾は,使用できる施設が限定される状態にあり,より効率的なバース利用を,速やかに調整しなければならない.
     以上の状況を踏まえ,本研究は,AISデータを用いて発災後のバース・ウィンドウを作成し,災害時の利用実態を把握・分析したものである.その結果,東北地方太平洋沖地震では利用可能な係留施設が著しく限定され受入能力が非常に低かったこと,熊本地震では緊急支援船により係留需要が大幅に増加していたことが判った.さらに,これらの結果を基に,被災港湾における事前準備及び発災後の効率的な施設利用についての考察を示した.
  • 熊野 直子, 土田 晃次郎, 田村 誠, 増永 英治, 桑原 祐史, 横木 裕宗
    2017 年73 巻2 号 p. I_1007-I_1012
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     気候変動に伴う海面上昇への適応策を講じるに当たっては,複数の対策の費用便益を考慮した効率的な選択が重要である.その際に,海岸防護の費用を把握することは適応策を判断するための有用な情報となる.そこで本稿では,まず,これまで設置された防護施設(堤防・護岸)費用を収集し,一人当たり実質GDPとの関係やモデル堤防を用いて防護新設・嵩上げの将来費用を導出した.次に,日本において将来の海面上昇や社会経済を考慮し,堤防の新設と嵩上げを組み合わせた防護シナリオに基づく将来の防護費用の評価を行った.これらの防護費用を過去の実質GDPと海岸事業費の割合と比較した.その結果,現在設置済みの施設の更新は新設することでも可能だが,新規設置と嵩上げの両方を組み合わせることで費用はさらに抑えられることが確認できた.
  • 道前 武尊, 樋渡 和朗, 帯田 俊司, 琴浦 毅, 西畑 剛, 平山 達也, 野口 孝俊
    2017 年73 巻2 号 p. I_1013-I_1018
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     建設産業における生産性向上,現場の労働力不足解消のため,港湾の「i-Construction」が推進されている.港湾の「i-Construction」化を進めていく上では,水中部を高精度かつリアルタイムに可視化する技術の開発が必要不可欠である.一般的に,水中部の可視化に使われているナローマルチビームソナーは,リアルタイムに水中部を把握するとは困難である.本稿は,水中部をリアルタイムに可視化可能な水中ソナーを用いた施工実験を実施し,ドック内を排水後に地上レーザー測量で施工出来形を測定した.施工出来形と設計断面を比較することでリアルタイム水中ソナーを使用した際の施工精度,有用性を確認するとともに,ノイズ処理による精度向上について評価したことを報告する.
  • 園部 雅史
    2017 年73 巻2 号 p. I_1019-I_1023
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     2014年1月より将来の需要に適切に対応することを目的とし, 那覇空港の沖合に2本目の滑走路の増設工事を行っている.このような大規模な海洋開発事業においては, 周辺環境への影響が懸念され, 定期的なモニタリングが必要である.本研究では, 工事着手前後に観測されたLandsat-8衛星データによるマルチスペクトル衛星観測情報を利用し, 工事進捗のモニタリングと正規化植生指標値および輝度温度の解析による周辺環境への影響について調査した.これらの検討結果から同観測条件で定期的に観測されるリモートセンシング画像情報の有効性について考察した.
  • 前山 浩毅, 辻本 剛三, 外村 隆臣, 柿木 哲哉
    2017 年73 巻2 号 p. I_1024-I_1029
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     河口域干潟は,環境・防災等において重要な役割を果たしているが,地球温暖化に伴う環境変化により,干潟地形の消失や変化が懸念されている.このため,詳細な干潟地形を把握する必要があるものの,特に潮間帯の干潟地形は平面的に測量することが困難である.航空機によるレーザ測量や船からの音響測深で計測可能であるが,天候やコスト等の問題から定期的な調査方法としては適さない.一方,GPSやトータルステーションを用いた一般的な測量方法は,観測できる点数に限りがあり,軟弱地盤を歩き回るには大きな危険も伴う.本研究では,UAVを用いることで効率性や安全性に配慮し,白川河口干潟を潮汐が遡上する様子を撮することで,広範囲の河口干潟の地盤高や流動観測の適用性を確認することができた.
  • 野口 孝俊, 細野 衛, 吉江 宗生
    2017 年73 巻2 号 p. I_1030-I_1035
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     平成27年の台風17・18号および平成28年の台風9号による降雨により,河川などから大量の漂流物が東京湾に流入した.漂流物は海上を航行する船舶への衝突防止のため直ちに回収した.漂流物の回収は,過去の回収実績と目視および漂流予測を活用して,効率的に実施している.本稿は東京湾に大量に流入した漂流物の移動と回収実績について取りまとめ,効率的な漂流物回収技術と今後の海域利用への影響検討を報告する.
  • 岡辺 拓巳, 村上 智一, 河野 裕美, 水谷 晃, 下川 信也
    2017 年73 巻2 号 p. I_1036-I_1041
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     本研究では,サンゴやウミショウブなど,多様な生物相を有している西表島崎山湾および網取湾を対象とし,可搬型蛍光X線分析装置と画像解析技術を用い,サンゴ礁リーフや河口干潟,流入河川における底質の元素組成や粒径・色の特徴を把握するとともに,その空間的な特徴を明らかにした.採取した76地点の底質より,13の化学元素が共通的に検出された.両湾の湾口では生物由来の底質であることを示すカルシウム(Ca)含有量が卓越しており,その空間分布は湾奥からの距離におおよそ比例して増加していた.また,調査地点の1/3において,コバルト(Co)が河川や両湾の干潟,東側リーフで検出された.底質の元素含有量,粒径および色情報を用いた階層的クラスター分析により,その特徴は湾奥から湾口に向かって空間的に分割されることがわかった.
海洋開発論文集 Vol.33(第41回海洋開発シンポジウム特別セッションのまとめ)
  • 加藤 茂
    2017 年73 巻2 号 p. I_1042-I_1044
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル 認証あり
     静岡県では全国に先駆けて海岸保全に関する様々な取り組みがなされている.平成28年度の海洋開発シンポジウムが静岡県浜松市で開催されるにあたり,静岡県での様々な取り組みを広く全国に発信し,対策の経緯や計画・議論の過程,今後の課題などに関する情報を共有するとともに,今後の海岸保全事業の方向性などについて意見交換・議論することを目的として,本特別セッションが実施された.本特別セッションでは,静岡県の取り組みについて3件の報告と,本セッションに関係の深い2件の研究論文の発表が行われた.
  • 橋本 典明
    2017 年73 巻2 号 p. I_1045-I_1049
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル 認証あり
     温暖化にともない甚大化する可能性のある高潮災害に対して,今後,取り組むべき防災・減災対策について議論することを目的として,特別セッション「高潮防災」が平成27年度および平成28年度の2年に亘り行われた.今年度の特別セッションでは,昨年に引き続き,これまでに蓄積されてきた高潮に関する情報や技術のレビュー,および今後取り組むべき課題の抽出などを主な議論の目的として,4件の研究論文発表とパネルディスカッションが行われた.論文発表や討論を通して,今後の高潮防災における重要な知見および課題が抽出された.
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